1 <テーマ> 和解(民事訴訟法からの視点) <関連条文> 和解(民法

<テーマ>
テーマ> 和解(民事訴訟法からの視点)
<関連条文>
関連条文> 和解(民法 695 条)起訴前和解(民訴法 275 条 1 項) など
今回より、テーマを契約法(民法・会社法等)から広げまして、民事訴訟法や行政法な
ども交え、社会保険労務士が知っておくべき法律について解説していきたいと思います。
第一回目は、私的な紛争が起きた場合の和解契約について、民事訴訟法の観点を含めて
解説をします。
裁判外の和解契約の特色と、裁判上の和解の違いについて、条文を参照しながら解説し
ていきたいと思います。
Copyright 2008 Brain Consulting Office Inc.
知って得する知識と知恵シリーズ08.10月号
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和解契約(
和解契約(裁判外の
裁判外の和解)
(和解)
民法
第 695 条
和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによ
って、その効力を生ずる。
(和解の効力)
第 696 条
当事者の一方が和解によって争いの目的である権利を有するものと認められ、又は相手方がこ
れを有しないものと認められた場合において、その当事者の一方が従来その権利を有していなかった旨の
確証又は相手方がこれを有していた旨の確証が得られたときは、その権利は、和解によってその当事者の
一方に移転し、又は消滅したものとする。
(錯誤)
民法
第九十五条
意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に
重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。
私法上の和解は、裁判外の和解ともいい、法律上は契約の一種として扱われます。
日常用語としては示談(じだん)という語が使われることもありますが、示談は一方が
全面的に譲歩する場合もあり得るのに対し、私法上の和解は「
「互譲が
互譲が要件」
要件」になっている
(民法 695 条)点に注意が必要です。
和解の要件(民法 695 条)
①当事者間に争いが存在すること
②当事者が互いに譲歩すること
③争いを解決する合意をすること
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和解と
和解と錯誤との
錯誤との関係
との関係
和解契約は、法律行為の一種なので、理論的にいえば、当事者に「
「要素の
(重要部
要素の錯誤」
錯誤」
(重要部
分についての誤
についての誤った認識
った認識)
認識)があった場合は、和解契約が無効であると主張される可能性が
あります(民法 95 条)
。
しかし、新たな事情が判明したという理由により和解が無効になるとすれば、紛争が蒸
し返されることになり、紛争を終局的に解決するために和解をした意味がなくなってしま
います。
争いの対象となった権利が和解で存在すると認められたのに、実際にはその権利がない
ことが後で判明した場合は、その権利は和解によりその者に移転したものとして扱われ、
逆に、和解で権利が存在しないと認められたのに、実際にはその権利が存在することが後
で判明した場合は、その権利は和解により消滅したものとして扱われます(民法 696 条)。
これを和解の確定力あるいは和解の確定効と呼んでいます。
裁判外の和解については、執行力(後述)が認められていないので、債務の履行に対し
強制力を持ちません。
金銭の支払いを条件に和解をしても、相手が任意に支払いをしない場合には、債務不履
行として結局裁判に出るしかない点で、終局的解決にはならない場合が多いと考えられま
す。
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裁判上の
裁判上の和解
(和解調書等の効力)
民事訴訟法
第二百六十七条
和解又は請求の放棄若しくは認諾を調書に記載したときは、その記載は、
確定判決と
確定判決と同一の
同一の効力を有する。
効力
(債務名義)
民事執行法
第二十二条
強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。
)により行う。
一
確定判決
二
仮執行の宣言を付した判決
(中略)
七
確定判決と
)
確定判決と同一の
同一の効力を
効力を有するもの(
するもの(第三号に
第三号に掲げる裁判
げる裁判を
裁判を除く。
裁判上の和解とは、裁判所が関与する和解のことをいい、訴え提起前の和解と訴訟上の
和解に分かれます。
裁判上の和解が成立した場合は、和解の内容が和解調書
和解調書に記載され、その記載内容は確
確
和解調書
定判決と
267 条)。
定判決と同一の
同一の効力を有することになります(民事訴訟法
効力
和解調書は、確定判決と同様、債務名義
債務名義(強制執行により実現される給付請求権の存在
債務名義
を公証する文書)となり(民事執行法 22 条 7 号)
、これに基づいて強制執行をすることが
できることになります。
債務者が債権者に対して一定の給付をする旨の内容の和解がされているにもかかわらず、
債務者が任意にその和解に基づく給付をしない場合(例えば、債務者が賠償金を支払う旨
の和解が成立したにもかかわらず、債務者がその支払をしない場合)には、債権者は、別
途判決を得ることなく、民事執行法が定める手続に基づき、債務者の不動産や債権(給料、
預貯金等)に対して強制執行
強制執行をすることができます。
強制執行
この点は前述した私法上の和解(裁判外の和解)と大きく異なる点です。
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訴え提起前の
提起前の和解
(訴え提起前の和解)
民事訴訟法
第二百七十五条
民事上の争いについては、当事者は、請求の趣旨及び原因並びに争いの実
情を表示して、相手方の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所に和解の申立てをすることができる。
2
前項の和解が調わない場合において、和解の期日に出頭した当事者双方の申立てがあるときは、裁判
所は、直ちに訴訟の弁論を命ずる。この場合においては、和解の申立てをした者は、その申立てをした時
に、訴えを提起したものとみなし、和解の費用は、訴訟費用の一部とする。
3
申立人又は相手方が第一項の和解の期日に出頭しないときは、裁判所は、和解が調わないものとみな
すことができる。
(以下省略)
訴え提起前の和解は、起訴前の和解ともいい、民事訴訟の対象となる法律関係に関する
争いについて、当事者双方が簡易裁判所に出頭してする和解のことをいいます(民事訴訟
法 275 条)
。
法律実務上は即決和解ともいいます。
制度の趣旨は、将来の訴訟の予防を目的として、訴えを提起する前に裁判所の関与の下
に和解をするところにあります。
実際上の運用では、起訴前の和解の申立てをする前に当事者間に既に合意が成立してい
ることが多く、簡易に債務名義を作成する目的で行われているのが実情のようです。
(公正証書の作成費用を抑える目的 裁判外の和解の強制執行の出来ない点を補う目的)
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訴訟上の
訴訟上の和解
(請求の放棄又は認諾)
民事訴訟法
2
第二百六十六条
請求の放棄又は認諾は、口頭弁論等の期日においてする。
請求の放棄又は認諾をする旨の書面を提出した当事者が口頭弁論等の期日に出頭しないときは、裁判
所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、その旨の陳述をしたものとみなすことができる。
(和解調書等の効力)
民事訴訟法
第二百六十七条
和解又は請求の放棄若しくは認諾を調書に記載したときは、その記載は、
確定判決と同一の効力を有する。
訴訟上の和解とは、訴訟係属中に、当事者が訴訟上の請求に関して双方の主張を譲歩し
て、口頭弁論期日等において、権利関係に関する合意と訴訟終了についての合意をするこ
とをいいます。
訴訟で権利関係や訴訟終了についての合意が成立した場合でも、相互の譲歩(互譲)が
なければ、訴訟上の和解ではありません。
被告が原告の請求を認めて争わない旨陳述した場合は請求の認諾といい(原告の10
0%勝訴)
、逆に原告が請求に理由がないことを認めて争わない旨陳述した場合は請求の放
棄といいます。
(被告の100%勝訴)
(民事訴訟法 266 条)
請求の放棄・認諾は、当事者の一方のみの行為によって訴訟が終了する点で訴訟上の和
解とは異なります。
互譲があるか否かについては、訴訟上の請求についての互譲だけではなく、合意の内容
を総合的に判断されます。
例えば、訴訟上の請求について被告が全面的に原告の言い分を認めた場合でも、訴訟の
対象にはなっていなかった別の法律関係について原告が譲歩する旨の合意がされている場
合は、訴訟上の和解として扱われることに注意が必要です。
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以上、民法・民事訴訟法における和解の概要について、基本的な部分を簡単にご説明い
たしました。皆様の、今後の業務推進上のお役に立てれば幸いです。
今月から、気分も新たに、「社会保険労務士が知っておきたい関連法規」ということで、
民法主体から若干幅を広げた連載を始めさせていただきます。
皆様に有益な情報を、これからも提供できるように精進したいと思います。
今後ともどうぞ宜しくお願い致します。
タキモト・
タキモト・コンサルティング・
コンサルティング・オフィス
代表 社会保険労務士・
社会保険労務士・CFP 瀧本 透
瀧本透先生【タキモト・コンサルティング・オフィス】
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なおこちらの情報は2008年10月時点での情報です
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