会社は、平成19年1

〈事件名〉
事件名〉クボタ事件
クボタ事件
中労委平成21
中労委平成21年
21年9月2日命令
〈事案の
事案の概要〉
概要〉
会社は、平成19年1月26日にA工場で就労している派遣労働者Bを同年4月1日を
目処に直接雇用することを決定した。その後2月1日にBが加入する組合が直接雇用化の
前であるが、団体交渉を申し入れたので、一度は団体交渉に応じたが、その後は4月に直
接雇用されるまで団体交渉に応じなかった。
会社は2月1日に団体交渉の申し入れを受けた後に直接雇用後の労働条件の説明会を開
催していたが、大阪府労働委員会は不当労働行為であると認定し、会社がこれを不服とし
て再審査を申し立てた。
〈委員会の
委員会の判断〉
判断〉
(会社は使用者といえるか)
「労組法7条は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進するため
に、労働者が自主的に労働組合を組織し、使用者と労働者の関係を規制する労働協約を締
結するために団体交渉を行うことを助成しようとする労組法の理念に反する使用者の一定
の行為を禁止するものであるから、同条にいう「使用者」は、同法が上記のように助成し
ようとする団体交渉を中心とした集団的労使関係の一方当事者としての使用者を意味し、
労働契約上の雇用主が基本的にこれに該当するものの、必ずしも同雇用主に限定されるも
のではない。雇用主以外の者であっても、当該労働者との間に、近い将来において雇用関
係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存する者もまた雇用主と同視できる者であり、
労組法上の「使用者」と解すべきである。
」とし、本件会社はBと直接雇用契約を締結する
予定が現実的具体的に存在したとして、派遣労働者との雇用契約は派遣元会社と派遣労働
者の間にしかないが、使用者にあたり、団体交渉に応じないことは不当労働行為に当たる
とした。
〈解説〉
解説〉
派遣労働者の雇用契約は、派遣元会社と派遣労働者との間で締結される。派遣先会社と
派遣労働者の間には雇用契約はない。この原則と異なる判断がされたのはなぜだろうか。
本件には、まず直接雇用に至る経緯につき会社に問題があったことが背景事情としてあ
る。
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工場で偽装請負があるのではないか、また、派遣法の派遣可能期間の制限に違反してい
るとして大阪労働局から是正指導を受けていた、などの問題点が存在していた。会社とし
ては、このような状況を改善するためにも、派遣労働者を直接雇用することとした。
なお、会社側は、派遣労働者の直接雇用に際して、労働条件などの説明会を行っており、
そこで提示した労働条件に合意しない者は雇用しない方針であったので、すべての派遣労
働者が直接雇用されるかのような前提での使用者の認定に対して承服できないとの意見で
あったようである。
中労委は、このような事情があったとしても、直接雇用の予定が具体的かつ現実的に存
するものと認定するのに妨げないとし、使用者と認めた。
本件は直接雇用前の違法状態の解消という問題があったことが、労働契約を実際に締結
していない労働者との関係で会社を使用者とした事案であると考えられる。
そうすると、中労委のこの判断基準(
「現実的かつ具体的に」直接雇用の予定がある場合)
は全ての事案に適用されるかは疑問である。法を遵守して派遣労働者を使用している場合
にまでは派遣先会社を使用者とは認定しないように思われる。この中労委の判断を前提と
して(誤解して、あるいは拡大解釈して)団体交渉を申し入れてくる組合が増加しないか、
不安を感じる。
坂本正幸先生【鈴木久義法律事務所】
東京都中央区銀座1-4-6
電話番号 03-3561-4581
FAX番号 03-3561-4583
なおこちらの情報は2009年12月時点での情報です
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