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1 かざられる名詞に関係するものをあらわす
「部分や付属物や側面に対する全体や本体」(学校の門) 「関係のあいて」(かれの先生)
「もちぬし、つくりぬし、メンバー」(父の家)
「うごき、状態、性質の主体」(あなたの運命)
「うごきやきもちの対象」(わが子のかわいさ)
先の「ごんぎつね」の例文では、
④うなぎの頭
⑦草の葉 ⑨お百姓のうち ⑭弥助の家内
が、これに該当するでしょう。④⑦は本体を、⑨は「うち」のもちぬしを、⑭は関係のあいてをあら
わしています。
これ以降についてもそうですが、わたしたちは、こうした「の格」があらわす関係づけを意識しな
ここまで、さまざまな格助詞について紹介してきました。それらはすべて、「名詞」+「動詞」の
いでつかっているものです。「この頭は、うなぎの頭なんだな」「この葉は、草の葉なんだな」「この
くみあわせでした。今回紹介する「の格」は、格助詞の
うちは、お百姓が住んでいるんだな」「この家内は、弥助という人のおくさんなんだな」と、常識的
中でただひとつ名詞と名詞をむすびつける格助詞です。
に考えることができます。が、子どもたちのすべてが、そうであるとはかぎりません。
名詞+の
名詞
父の
絵
「かざる名詞」 「かざられる名詞」
それだけに、文の中で多くつかわれます。この「の格」
「草の葉」というのは、どういう葉なのか映像化させてみないと、とんでもない絵を思いうかべて
のはたらきについて、今回も「ごんぎつね」を例に見て
いるかもしれません。この場合は、ごんがうなぎをおいた(おくことができた)場所です。この場合
いくことにします。
の「草の葉」は、ある程度限定されてきます。また、「うなぎの頭をかみくだき」というのは、映像
ごんは、①ひとりぼっちの小ぎつねで、②しだのいっぱいしげった③森の中に、あなをほって住
んでいました。
*②は別格です
ごんは、ほっとして、④うなぎの頭をかみくだき、やっと外して、⑤あなの⑥外の、⑦草の⑧葉
の上にのせておきました。
化すれば、かなり残酷なように思えます。が、ごんにとっては、
「うなぎの頭をかみくだく」ことで、
うなぎを殺し、自分の首にまきついたうなぎをふりほどくことができるということを知っていたとい
うことになります。しかし、ここににげてくるまでは、そうはしていません。それは、どういうこと
なのか?ということを子どもたちといっしょに考える手がかりをあたえてくれています。
2 かざられる名詞のあらわすものの属性をあらわす
…ごんが、弥助という⑨お百しょうの⑩うちのうらを通りかかりますと、⑪そこの、⑫いちじく
の⑬木のかげで、⑭弥助の家内が、お歯黒をつけていました。
か「の」になります。「しだがいっぱいしげった森」におきかえることができま
す。「の格」とは別ですが、これもまた、よくつかわれる形です。子どもたちと
をくわしくしていること、をおさえておくべきです。それがはっきりすれば、
ういう気持ちなのかを考える手だてになります。(意味として「しだ」「しげる」
というのがわからない子もいるだろうということも、想定しておかなくてはい
しげった
どんな森なのかという光景もうかび、そういうところに住んでいるごんは、ど
ヤの指輪) 「出身や経歴」(韓国製のテレビ)
「種類や身分など、位置づけ」(いぬのタロー)
「ごんぎつね」の例文では
①ひとりぼっちの小ぎつね
⑫いちじくの木
が、これに該当するでしょう。「ひとりぼっち」は、ごん=小ぎつねの属性です。「ごんは、ひとりぼ
いっぱい
森
文を読むときには、「が」におきかえてもいいこと、文になっていること、何か
しだの(が)
②のような、規定語節(名詞的な単語をくわしくしている文)の主語は、
「が」
「ようすや特徴」(茶色の小びん) 「部分の特徴」(あげぞこのとっくり) 「材料や原料」」(ダイ
けません。)
っちなんだな」というごんの「特徴・ようす」がしっかりとおさえられているかいないかで、このあ
との読みの印象や深まりがちがってくるでしょう。これから後にでてくるごんの行動の出発点は、こ
こにあります。また、「いちじくの木」と、わざわざ「木」の種類をはっきりさせているのも興味深
いところです。これは、歴史的な観点で、日本の家のことを調べてみるとおもしろいかもしれません。
今の子どもたちにとっては、「いちじく」というのは、縁遠い果物ですが、ほんの少し昔までは、日
本人といちじくは、身近な関係にあったようです。(これは、余談です。読みとは、直接の関係はあ
りません)
さて、1と2の「AのB」を読み比べると、一方は、「このBはAだ」といいかえること
さて、本来の「の格」についてです。「の格」のつかわれ方には、大きく6種類あります。その中
がさらに分類できるのですが、ここでは、大枠で紹介しておきます。(
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ができます。これは、どういうことなのでしょう?
)は、例です。
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3 もともとはかざられる名詞に関係するものをあらわしながら、属性をあらわすほうへ転じている
以上、おおざっぱに「の格」についてみてきました。
もの
「父の絵」には、少なくとも、3つの意味があるのがわかったでしょうか。それは、ど
「つかいみちやつかいぬし」(かぜのくすり) 「部分、付属品、生産物の所属さき」(かきのへた)
のつかわれ方にあてはまるでしょう?
「対象、場所などが職種をあらわしているもの」(タクシーの運転手)
4 かざられる名詞のあらわすものの場所、時間、目的などの状況をあらわす
「の格」が格助詞の中で唯一、名詞的な部分とくみあわさることから、他の格助詞といっしょにな
「存在する場所や組織」
(奈良の大仏) 「出身地や産地」
(岡山のぶどう) 「ゆくさきの場所」
(東
北の旅)
「時間」(さいきんのこども)
「原因」(しごとのつかれ)
った次のようなものもあります。
「目的」(夕食のしたく)
「への格」
「ごんぎつね」の例文では
③森の中 ⑤あなの外
例) 東北への旅
⑥外の草 ⑧葉の上
⑩うちのうら
母への手紙
保護者へのよびかけ
わが子への愛
⑪そこのいちじく ⑬木のかげ
が、これに該当するでしょう。どれも、「どこの?」という疑問に対
「での格」
応するものになっています。つまり、場所をあらわしています。
「の格」をつらねていって場所をあらわすと、場所は、せまくせ
まく限定されます。「あなの外の、草の葉の上」のように。これは、
簡単な例ですが、図式化してあらわすと、子どもたちには、具体的
例) 式場でのあいさつ
草
葉
電話でのはなし
上
外
「との格」
あな
例) 保護者との懇談
な場所として映像化できます。
「からの格」
例) 岡山駅からの列車
5 かざられる名詞のあらわすことばや作品や思い・考えの内容をあらわす
サンタからのおくりもの
そらからのながめ
津山駅からの距離
昨日からの雨
「はなしの内容」
(結婚の約束) 「作品の内容」
(おどりこの絵) 「ゆめの内容」
(富士山のゆめ)
「思いや考えの内容」(退職の決意)
「感情や感覚の内容」(怒りの情)
これらは、「へ格」「で格」「と格」「から格」がもとになっています。ですから、意味的には、もと
の格の意味が反映されます。ただ、かざる単語の種類が違うために、こうした形をとっているといえ
「ごんぎつね」の中には、次のような文があります。
ごんは、うなぎのつぐないに、まず一つ、いいことをしたと思いました。
ます。もとの格助詞にもどして文をつくりなおしてみれば、より具体的ななかみがうかびあがってき
ます。
*以上は、これまで同様、「日本語の文法」高橋太郎他著(ひつじ書房)によります。
「つぐない」の内容が「うなぎ」です。ここでは、「うなぎ」が何をあらわしているか、再度おさえ
ておく必要があります。そして、「つぐない」という単語があらわす辞書的な意味としての感情や行
為もおさえます。ただ、この一文を最後までひきずってしまうと、ごんのとった行動がすべて「つぐ
ない」としてくくられてしまいます。しかし、そう読んだのでは、まちがいだと思います。たしかに
「うなぎのつぐない」という側面はあったでしょうが、「うなぎ事件」がきっかけとなって、ごんの
「Q1」について。たとえば、1の「学校の門」は、「この門は学校だ」とはいえませんが、2の「茶色の小びん」は、「こ
の小びんは茶色だ」といえます。それは、2が属性と主体の関係になっているからです。文においては、主語と述語の関係
は、主体と属性の関係です。ですから、2は、文におきかえることができるのです。
Q2について。「父が所有している絵」「父がかいた絵」(1)
「父の姿をかいた絵」(5)
心が、一方的に兵十によりそっていっているのが本当です。「うなぎのつぐない」からはなれられな
いまま「ごんぎつね」を読んでしまうと、この物語の主題にはせまれません。気をつけたいところで
す。
6 かざられる名詞の抽象的、一般的な意味を具体的に内容づける(正方形の形 自由化の傾向)
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