2014. 7月号 - 経済広報センター

月刊
第36巻第7号通巻419号2014年7月1日発行(毎月1回1日発行)1980年10月23日第3種郵便物認可
7
2014年
M&Aと広報対応
◆企業広報研究
弁護士 永沢 徹
日本の将来と広報の必要性
クレアブ・ギャビン・アンダーソン
(株)副社長 土井正己 ◆視点・観点
向社会性研究所 主任研究員 小榑雅章
◆メディアに聞く
日刊工業新聞社 編集局 科学技術部長 藤元 正
419
July
企業にとっての
「思いやり」とは何か
今 月 の 表 紙
2014年7月号目次
住友生命は、子育てをしながら研究を継続している女
性研究者のため、
「スミセイ女性研究者奨励賞」を設け、
支援を行っている。写真は2013年度(第7回)表彰式
で喜びを語る受賞者
企業広報研究
M&Aと広報対応
2
イベントを活用した
インナーコミュニケーションの活性化 7
永沢 徹(弁護士)
一色 顕((株)リンクイベントプロデュース 社長)
日本の将来と広報の必要性
土井正己(クレアブ・ギャビン・アンダーソン(株) 副社長)
16
視点・観点
企業にとっての
「思いやり」
とは何か
小榑雅章(向社会性研究所 主任研究員)
4
メディアに聞く
『経済広報』では、裏表紙に関連する写真・イラストを表紙に
掲載しています。
実用化に近いテーマを取材
藤元 正(日刊工業新聞社 編集局 科学技術部長)
6
CC時代のインナーコミュニケーション⑥
新たな付加価値を生み出すインターナルコミュニケーション
ソニー(株)
10
経済広報センター活動報告
女性の指導的地位での活躍推進
―日独の状況と課題
7
13
ANGLE
変動期こそ広報の神髄は、企業理念
江上節子(武蔵大学 社会学部教授)
月の動き
国内
21
法律と広報④
名誉毀損と広報の対応
結城大輔(のぞみ総合法律事務所 弁護士・ニューヨーク州弁護士)
22
7日
5月の景気動向指数速報
(内閣府)
8日
5月の国際収支速報
(財務省)
6月の景気ウォッチャー調査
(内閣府)
10日
6月の消費動向調査結果
(内閣府)
14 ~ 15日
日銀の金融政策決定会合
24日
6月の貿易統計
(財務省)
経済広報センター NEWS
18
29日
6月の失業率
(総務省)
6月の有効求人倍率
(厚生労働省)
企業広報ニュース(ウェブサイト/教育支援/広報トピックス/ Book)
24
GLOBAL PR 6
アクティビストに狙われる日本企業
ロス・ローブリー(エデルマン・ジャパン(株) 社長)
連載
企業・団体のCSR活動(住友生命保険
(相)
)
7月の動き
海外
3日
ECB
(欧州中央銀行)
定例理事会
(ドイツ・フランクフルト)
6月の米雇用統計
(米労働省)
5月の米貿易収支
(米商務省)
15日
6月の米小売売上高
(米商務省)
17日
6月の米住宅着工件数
(米商務省)
29 ~ 30日
FOMC(米連邦公開市場委員会)
(米FRB(連邦準備制度理事会))
30日
4~6月期の米GDP
(国内総生産)
速報
(米商務省)
23
裏表紙
表紙裏
発行/一般財団法人経済広報センター 国内広報部
東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館 TEL:03-6741-0021
印刷/三葉株式会社 TEL:03-3294-4751
※本誌掲載の記事・写真・イラスト・図版の無断掲載を禁じます。
2014年7月号〔経済広報〕
1
企業広報研究
企業広報研究
M&Aと広報対応
永 沢 徹
(ながさわ・とおる) 弁護士
■聞き手:佐桑 徹 経済広報センター 国内広報部長
情報発信する際に工夫すべきことは何か。
永沢 様々なステークホルダーがいる中で、誰に向
を務めている。数多くのM&A(企業の合併・買収)を担当した永沢弁護士に、日本企業のM&Aと広報対応
について聞いた。
中には、対等合併という言葉を勝ち取ることに執
だ。取引先なのか、株主なのか、裁判所なのか。ど
心する経営者もいるようだが、統合とは、パイをよ
こを意識するかによって発信の仕方は違ってくる。
り大きくするために工夫することであって、パイの
法律家としては、法的に間違いのない手続きを行い
分け前を半分にすることが目的ではない。取り分の
たいので、裁判所にどう理解してもらうかという点
確保に一生懸命になるあまり、パイそのものが小さ
に非常に大きなウエートを置く。そのため裁判所に
くなってしまっては意味がない。
しか出さない情報もある。それをマスコミなどに先
■合併後、企業文化の統合を実現するためのコミュ
M&A成立後の広報の役割
ニケーションとは。
永沢 法律上の話ではないが、コミュニケーション
としては、統合される側にどう配慮するかというこ
■M&A成立後の広報の役割は。
とは大事だろう。一方で、過剰な配慮はかえって足
永沢 M&Aが成立して記者会見という段階になれ
かせになる懸念がある。人事上の配慮や就業規則、
M&A公表前の広報対応
ることになる。この時は慎重な対応が求められる。
ば、敵対的M&Aは別にして友好的M&Aの場合
勤務評価の点で、配慮し過ぎた結果、歪な人事構造
正式な決定が下されていなければ、コメントとして
は、弁護士や法務担当は前面に出ることはないだろ
になってしまった例もある。合併後、過渡期の激変
■2013年度の日本企業のアジアでのM&A件数
は
「現時点で決定している事実はない」
というものに
う。広報部門や経営者が主導して、いかにステーク
緩和措置はあるとしても、最終的には実力に見合う
が過去最高になったとの報道があったが、弁護士
なるだろう。しかし、他社との提携や資本増強のた
ホルダーに理解してもらうかが重要になってくる。
評価を行わざるを得ない。特に人事制度に関して
業をされていて実感はどうか。
めの新株発行などに関しては、綿密な準備をした上
■敵対的M&Aが成立した場合に、広報が注意すべ
は、合併する側に合わせていくしかないだろうと思
きことは。
いびつ
永沢 昨年初めごろから増えているという印象があ
で交渉を行っているので、その交渉の事実もないと
る。それも前向きなM&Aだ。数年前までは破綻処
受け取られると、ミスリードになってしまう。一方
永沢 今後の従業員の処遇や取引先との取引条件な
理や事業再生といった後ろ向きのM&Aが多かった
で、交渉内容を具体的に公表した場合、あたかも決
ど、まだ該当者に対して説明していないようなこと
が、最近では企業発展に向けた友好的M&Aが増え
定した事実であるかのように報道されるリスクもあ
まで公表してしまうのは問題だ。M&Aによるシナ
■最後に、多くの報道番組でコメンテーターを務め
ている。私が手掛けている案件も多くが友好的M&
る。事実誤認とならないよう、広報部門には注意
ジー効果を上げるためには、従業員や取引先と交渉
ているが、テレビで法律の難しい内容をコメント
Aだ。
し、工夫したコメントをすることが求められる。
しなければならないケースも出てくる。
「これまでと
う。
テレビでのコメントについて
する際、どのような苦労があるか。
■M&Aを行おうとする時、欧米では、PRコンサ
懸念されるのは、秘密が守れないような交渉相手
変わらない」と公表すれば該当者は安心するかもし
永沢 法律上の正確さと分かりやすさは、トレード
ルティング会社も社内の検討会議に加わるケース
と今後協議を継続できるかと思われてしまうこと
れないが、統合のメリットを出すためには、より強
オフの関係にある。結論だけを簡単に言い切ること
があると聞くが、日本では、社外の弁護士は加
だ。M&Aの協議内容には、部門の売却や人員の削
い方へシフトすることが肝要な場合もある。安易な
は、時に法律上の正確さを欠くことに繋がる。私は
わってもPR会社は入らない。この違いについて
減など、センシティブな条件についての交渉も含ま
公表で、ベストな選択の道が閉ざされてしまうこと
そのようなコメントはしたくない。もちろんメディ
どう感じているか。
れ、報道によって、これらの協議の継続が困難にな
にならないよう注意すべきだ。
アに出る以上は、専門用語を並べ立てて法律的に正
永沢 日本では、交渉段階で多くの人に訴え掛けて
る場合がある。
また、対等合併という言葉をよく聞くが、この言
確な話をするだけでは不十分だ。しかし、分かりや
理解を得ようとするようなM&Aは少ない。M&A
こちらは密行性の下、秘密を厳守して交渉してい
葉の使用にも注意する必要がある。合併される側の
すさだけを追求するのであれば、わざわざ専門家を
を成立させるためには秘密を守ることが極めて重要
るにもかかわらず、リークされたとなると、相手側
プライドや企業文化に配慮して、対等の精神で合併
呼ぶ意味はないだろう。正確さを欠くことのないよ
だ。情報が漏れることによって、第三者からの妨害
の情報保護体制を疑わざるを得ない。また、マスコ
するという意味で使っているのだろうが、本当に対
うコメントすることを第一に考えている。その上で
や、社内から反対論が起こるリスクがある。そのた
ミへのリークは、M&Aを快く思っていない者によ
等に扱おうとすると、合理的な判断ができなくなる
いかに分かりやすく伝えるかである。収録番組の場
め、日本では特に成立するまでは、できるだけ密行
る妨害の意図で行われることもある。そうすると今
リスクがある。対等合併ということを強調し過ぎる
合、時間の関係でコメントの一部だけを使われてし
性の下に行うことを旨としている。
後、信頼関係を保って協議を続けていくことは難し
と、適材適所が実現できなかったり、ポストを温存
まうこともあるが、生放送だとそのまま放映される
■では、密行性の下で交渉を行っている段階での、
いと考え、協議をいったん打ち切る判断をせざるを
させて統合が進まなかったりと、統合の効果が妨げ
ので、真意が伝えやすいという面もある。
得ない。現に、成立する直前まで進んでいたにもか
られてしまうことがある。
広報の役割とは。
永沢 密行性の下進めている段階では、情報を知る
かわらず、リークされたことによって破談になって
人数を極力限定するので、広報部門に伝えていない
しまったM&Aは数多くある。
が上げられるのであって、完全にイコールの統合と
ケースも多いのではないか。一方で、マスコミにス
■一方で、敵対的M&Aにおいては、双方が主張を
いうものはない。対等の精神で合併するのは悪いこ
クープされれば、適時開示により広報部門が対応す
2
慮された側も結果として不幸になり、本末転倒だ。
けてアプローチするのかという視点がとても重要
に公表することには抵抗がある。
永沢徹弁護士は、企業法務を専門とし、
「報道ステーション」
をはじめ、多くのテレビ番組でコメンテーター
する側の強みまで削いでしまうことになっては、配
〔経済広報〕2014年7月号
通すために報道合戦のようなことも行われるが、
それぞれの強みを生かすからこそ、シナジー効果
とではないが、「角を矯めて牛を殺す」ような、合併
k
昭和57年東京大学法学部卒業、昭和59年弁護士登録、平成
7年永沢法律事務所
(現 永沢総合法律事務所)設立。主な著
書:
『資産流動化の法律と実務』
(編集代表、新日本法規出
版)
、
『M&A攻防の最前線 敵対的買収防衛指針』
(共著、金融
財政事情研究会)
(文責:国内広報部主任研究員 大野祥子)
2014年7月号〔経済広報〕
3
視点・観点
視点・観点
企業にとっての
「思いやり」とは何か
小 榑 雅 章(こぐれ・まさあき) 向社会性研究所 主任研究員
ライバーたちが、市に申し出て集積所の物資の配送
を始めた。
救援物資を配布するにしても、無計画にただ配る
社 長 が10円 の 寄 付
だけだと、必要なところへ必要な物が届かない。例
を行い130億円の減
えば粉ミルクが必要な人に下着が届けられたり、防
益になるという話
寒着が欲しい人におむつが届いたり、ということが
を し た。 ス タ ッ フ
起こっていたのだ。その点、地域の事情を熟知して
も、 株 主 か ら 異 議
いるセールスドライバーは、きめ細かに計画を立
が出るかもしれな
て、必要な物資を必要な人のところに届けることが
いと身構えていた
できた。
と こ ろ、 何 と 会 場
実は、この作業は現地社員たちの全くの独断のボ
中内㓛会長兼社長時代のダイエーの取締役秘書室長を務めた小榑雅章氏が『思いやりはどこから来るの?』
(共著、心理学叢書、誠信書房刊)を共同執筆した。同書を紹介しながら、企業にとっての「思いやり」とは何
か、を論じていただいた。
企業は、なぜボランティア活動をするのか
困っている人を思いやる、できるなら助けてあげ
たいなと思う。人間には、この「思いやり」の心があ
から拍手が起こり、
ランティア活動だった。会社の指示も了解もないの
どんどん大きな渦
に、宅急便の自動車を使うなどということは決して
になった。そこにいた社員は胸が熱くなり涙が出そ
許されることではない。会社の資材や車を勝手に使
うになった、という。
うとは何ごとか、と叱責されるようなことだ。
「私たち、ヤマトの社員は一人ひとり、このバッ
団連が企業約1300社にアンケート調査をしたとこ
しかし、こうした動きを知った本社の木川眞社長
ジをつけていることを誇りに思っています。宅急便
ろ、回答のあった461社のうち、金銭的支援をした
は、叱責するどころか
「これぞヤマトの本来の使命
を1個配達するたびに、自分も参加して10円の寄
企業は438社715億円に上った。1社当たりにする
だ」と判断して、従来の宅急便の組織とは別に、「救
付をしているんだ、と思っているのです。こうい
と1億6400万円にもなる。
援物資輸送協力隊」を組織し、現場独自の活動を全
うことを堂々と行う会社に勤めて、ほんとうに良
面的にバックアップすることを表明した。
かったと思っているのです」と、ヤマトの社員は胸
る。でも、思いやりの心の強い人もいれば、知らん
経済界の支援は、もちろん金銭だけではなく、被
顔の人もいる。思いやりの心は、生まれながらのも
災者が必要としている食料品や飲料水、医薬品、衣
救援物資輸送協力隊は岩手、宮城、福島の3県の
のなのか、親がしつけるのか、学校で習うのか。動
服や防寒具など様々な物資を提供したという企業も
自治体と連携を取り、全国からの応援社員と共に、
物には、思いやりの心はないのか……この本では、
328社もあった。また、社員が被災者・被災地の支
救援物資の仕分けや避難所、集落、施設などへの
思いやりなんてあるはずがない、と考えられている
こういったことについて、10人の研究者たちが様々
援活動を行った企業は259社で、参加した社員の数
配送を行った。この大規模なボランティア活動は、
が、実は血も涙もある人間の集合体なのである。喜
に論じている。
は6万4700人、延べ人数にすると18万人を超える、
2012年1月15日まで、約10カ月にわたって続けら
びも悲しみも思いやりもいっぱい詰まっている。利
という結果が報告されている。
れた。
益を優先し、売り上げを上げろ、利益を出せ、と叱
日本心理学会というお堅い学会が、心理学をもっ
と広く一般市民にも知ってもらいたいと考えて、高
個人のボランティア活動はもちろん重要だが、企
校生にも分かる心理学叢書という出版を始めた。そ
業のボランティア活動も、非常に大きな力を発揮す
に会社に行くと、社員全員が胸に「宅急便ひとつに、
の1冊目が本書である。
「思いやり」という心や行動
るのでとても重要である。
希望をひとつ入れて。」と書かれたバッジを着けてい
は、心理学では利他性とか向社会性、援助行動、ボ
ランティア活動などという言葉で取り上げられてい
る。
育ててくれた地域社会への恩返し
ヤマトの支援活動は、これだけではない。震災後
た。
木川社長は、3月下旬に被災地を回り、息の長い
を張っていた。
無機質な株式会社という法人には血も涙もない、
咤しても、それだけでは社員は付いてこない。腹の
中ではそっぽを向いている。
最も重要なのは、トップの方向付けと決断だ。そ
の目指す方向は、明確に社会のため、困っている人
のため、地域のためという思いやりの心である。現
経団連の資料のように、東日本大震災の被災地支
支援が必要だと痛感。ヤマトグループとして、支援
地社員が配達用の車をボランティアに使うことも、
取り上げる対象は、当然、人間の心理だが、この
援に当たった企業が数多くあったが、本書では、目
できることは何かと考えた結果、
「宅急便1個につき
宅急便1個に10円寄付することも、利益を目的と
本の中では、人だけでなく、企業の思いやり行動に
覚しい思いやり行動をした会社の実例を挙げて検証
10円を寄付する、これを1年間行う」
、これは今ま
する株式会社の使命とは正反対の行動である。130
ついても論じられている。
している。
で「宅急便」を育ててくれた地域社会への恩返しだと
億円もの大幅な減益をしても、被災者の救済を優先
決意した。バッジの言葉は、
「宅急便1個につき10
させようというのは、経営者としてはあってはなら
円の寄付」という意味だった。
ないことである。しかし、その志と決断が、株主の
でも、個々の人間は、他者を思いやる利他の気持
ちを持つことができるが、人間のように“気持ち”を
そのひとつが、クロネコヤマトの宅急便で知られ
るヤマトホールディングス
(株)
の活動だ。
持たない、しかも利益を追求するのが目的の企業
被災地には救援物資が全国から送られてきて、自
が、なぜボランティア活動をするのか、企業にも人
治体や大きな避難所に山積みされているが、そこか
間と同じように人を思いやる気持ちがあるのか。
ある。企業にも思いやりの心がある。あるどこ
ろか、「思いやり」は、企業発展のための重要なキー
ワードなのである。
東日本大震災時の企業の救援活動について、経
4
6月に開かれた
株 主 総 会 で、 木 川
〔経済広報〕2014年7月号
「思いやり」は社員一丸のキーワード
深い共感を呼び、賛同の拍手が湧き起こったのであ
ら先の肝心の被災者には届けることができない。自
しかし、1年間に取り扱う宅急便の数は約13億
いう会社で働くことを誇りに思うという、大きな大
治体の市や町も被災し混乱し、救援物資を仕分けし
個にもなる。つまり、130億円も減収。ヤマトグ
たり配ったりする能力がないのだ。
ループの営業利益は、2011年度で約640億円、それ
この窮状に現地のヤマトの社員が気付いた。被災
し避難所で避難生活をしていたヤマトのセールスド
から130億円も引くとなると、大減益になる。そう
る。そして17万人という大勢の社員が、ヤマトと
きな価値をもたらしたのである。
「思いやり」は社員一丸の心をつかむ重要なキー
ワードなのである。 k
いうことを、社員や株主は認めるのか。
2014年7月号〔経済広報〕
5
企業広報研究
メディアに聞く
イベントを活用した
インナーコミュニケーションの
活性化
実用化に近いテーマを取材
科学技術報道の読者は産業界
■日刊工業新聞の科学技術報道の特徴は。
藤元 日刊工業新聞には新聞報道を行う上で3つの
柱がある。それは①中小企業、②技術、③モノづく
藤元 正(ふじもと・ただし)
一 色 顕(いっしき・あきら)
日刊工業新聞社 編集局 科学技術部長
(株)リンクイベントプロデュース 社長
りである。この中で科学技術部は、技術の分野を担
藤元 この4月で3年目に入った。読者の年齢層が
所、産業技術総合研究所、物質・材料研究機構のよ
高く男性が多いので、読んでもらうには科学技術系
うな公的研究機関や民間企業である。読者は一般紙
でもやや柔らかい記事も必要なのではと考えてい
と異なり、主に産業界の方やアカデミア、行政など
た。ちょうどそのころ、理系女子、すなわち“リケ
の専門家で、これらの方に役に立つ科学技術報道を
ジョ ”が話題になりつつあったので、このコーナー
心掛けている。従って、産業界の方がビジネスを進
を思い付いた。取材希望を募ると、すぐ多くの希望
める上で、どのような科学技術の研究開発に注目し
者が集まった。その後も取材してほしいとの申し込
ているかに主眼を置いて報道している。また、科学
みがかなりきており、リケジョとして頑張っている
■なぜ、インナーコミュニケーションが重要か。
技術を解説する際には、正確さを損なわないよう注
若い方が産業界に多くいることに驚いた。また、理
一色 ここ数年、特に個人の価値観が多様化すると
意しているが、学術誌ではないのでかみ砕いた報道
系の女子が就職活動や就職先を親に説明する際に、
ともに、グローバル競争下で事業の変革にスピード
を目指している。
このコーナーの記事を見せるなど、読者層の広がり
感が一層求められるようになった。その結果、多く
一色 インナーコミュニケーションの課題解決の手
や多様化は非常にうれしい。
の企業で各職務の専門化が進み、企業内のコミュニ
段のひとつがキックオフイベントや表彰式、周年行
ケーションが断絶している。各部門のミッションも
事などの社内イベントの機会である。我々は社内イ
細分化され、企業としての方向性や全体最適を見失
ベントを
「Why」を伝えるメディアと捉えている。社
■企業の技術広報に何か望むことは。
うと、戦略実行の停滞、理念の希薄化、時には企
内イベントを有効に活用することで、社員に伝えた
藤元 基礎研究よりも、少し実用化に近いテーマで
藤元 企業の技術に関するリリースを見ていると、
業不祥事にも繋がりかねない。そのため、企業は
いメッセージの核は何か、なぜそれが重要なのかを
の取材をするよう記者に話している。大学の研究は
技術的な優位性や市場へのインパクトはしっかり書
「統合」というキーワードを常に意識し、インナーコ
温度感、一体感と共に伝える。また、イベントは、
基礎研究が多いが、応用まで研究している例やベン
いてあるが、社会全体におけるその技術の位置付け
チャーで実用化していこうとのマインドを持ってい
についても明示してほしい。また、企業は
「世界初」
る先生もいる。そのような大学発ベンチャーの技術
という言葉を使いたがるが、どの範囲で
「世界初」
な
や、大学の技術を企業にライセンスするといった
のかも明確にしてほしい。特に大手企業や権威のあ
テーマも取り上げるようにしている。今、論文発表
る研究機関からの発表は、そのまま信用される傾向
が多いのは生命科学の分野で、新しい成果がたくさ
にあるので、正確な報道を行う上でもぜひ的確な説
ん出ているが、基礎研究が多い。その中でもiPS
明をお願いしたい。 取り上げるのは実用化に近い技術
■記事のテーマの選別は、どのような基準で行って
いるのか。
細胞のような、インパクトがあり実用化も含めて将
来、応用範囲の広そうなものを重点的に取り上げて
技術広報は社会での位置付けを明確に
k
(聞き手:国内広報部長 佐桑 徹、
文責:国内広報部主任研究員 磯部 勤)
いく方針である。
「リケジョ小町」
のインパクト
■第1面の「リケジョ小町」の連載は写真もあり、か
なり目立つが。
6
■聞き手:佐桑 徹 経済広報センター 国内広報部長
当している。取材対象は、大学のほか理化学研究
〔経済広報〕2014年7月号
(株)リンクイベントプロデュースは、インナーコミュニケーションに関するコンサルティング業務のほか、
周年記念・全社総会・表彰式など、企業を取り巻くステークホルダー向けのイベントの企画・実行を支援し
ている。社内イベントを活用した効果的なインナーコミュニケーションについて聞いた。
キーワードは「統合」
ミュニケーションに取り組む必要がある。
弊社を含めたリンクアンドモチベーショングルー
プでは、従業員のモチベーションを企業成長の原動
げてインナーコミュニケーションに取り組んでいる。
「Why」を伝え、主体性を引き出す
■インナーコミュニケーションにおいて、社内イベ
ントが果たす役割とは。
参加者の反応や参加者同士の対話から、メッセージ
の伝わり方も感じ取ることができる双方向のコミュ
ニケーションメディアでもある。
力とするモチベーションカンパニー ®づくり、と
一方、社内イベントは情報の網羅性に欠ける側面
いうコンセプトで事業を行っている。その際、組織
もあるため、社内報やイントラネットなどとうまくメ
診断から人事・組織戦略の策定のコンサルティング
ディアミックスすることが重要だ。社内報やイントラ
だけでなく、採用説明会や研修、ビジョンの浸透を
は、イベントでは網羅できない具体的な
「How」
を伝え
目的とした施策の支援まで一貫してサポートしてい
る効果的なメディアだ。例えば、イベントでトップが
る。例えば、インナーコミュニケーションが効果的
メッセージを発信する。それを実現するための具体的
に機能していない企業の多くは、企業のビジョンや
な戦術や手法といった情報を、イベント後に配布され
方針が社員に浸透せず経営戦略が独り歩きしている
る社内報で発信することは非常に有効だ。
1987年東北大学工学部化学工学科卒、同年日刊工業新聞社
といった課題を抱えている。その理由は、社員を巻
入社。城南支局(現 南東京支局)を振り出しに、記者として
き込む効果的なプロセスがないこと、社員に伝達す
昨今の企業は紙の社内報だけでなく、イントラネッ
るフェーズで共感を獲得する手法が取られていない
トやSNS
(ソーシャル・ネットワーキング・サー
ためだ。この問題に気付いた企業は、すでに社を挙
ビス)
、ブログなど様々なツールを活用し、情報を
機械、建設、経済産業省、諏訪支局(支局長)、商社などを
担当。2008年科学技術部長に就任。
ただし、注意しなければならないのは情報量だ。
2014年7月号〔経済広報〕
7
企業広報研究
に分析・評価すればいいのか。
伝えようとしている。受け手側は、情報量が多過ぎ
るイベントとして
「カジノ」
がある。このイベントは、
単なる部門間交流ではなく、例えば世代で分け、世
るとメッセージをシャットダウンする傾向がある。
会社から社員に慰労の意を示すとともに、社員同士
代ごとに対話のテーマを分ける、などの設計を丁寧
一色 弊社では「コミュニケーションサーベイ」とい
また、自ら情報を取りにいかなければならないイン
の交流を深めることが目的だ。組織が拡大する中で
に施すことが重要である。
う64問から成るアンケートでの定量調査を取り入
トラなどは、社員の主体性が醸成されていない限り
も、法人や事業部を超えた交流が促進されるような
■社外向けのイベントとして行う周年事業を、社内
れている。企業のコミュニケーションがどういう状
活用されることはない。企業は、こうした点にも留
様々な仕掛けがされていることはもちろん、グルー
意して最適なメディアミックスを考える必要がある。
プ各社の社長・役員陣がディーラー役を務め社員を
一色 社内向けの周年事業は、特に近年のトレンド
るものである。このサーベイは会社内(全社)、部署
■
「伝わる」社内イベントを実施するポイントと具体
もてなすという演出も入れている。トップや幹部層
である。社外向けの周年事業の目的には、
「感謝の伝
間、部署内、会社外の4領域に分けており、部署ご
が社員に対する感謝の気持ちを持っていることを言
達」「プロモーション」「ブランディング」があるが、
とや階層ごとの分析も可能なため、どの部署やどの
一色 社内イベントに限らず、まずは伝えたい相手
葉で伝えるだけでなく、社員に体感してもらう、こ
そのうち後者の2つは周年記念の機会に限らず取り
階層のコミュニケーションに課題があるのかを把握
がどのようなタイプで、今どのような状態にあるか
の演出はエンゲージメント効果も非常に高い。
組むべきことである。そういった意味では、冒頭に
することができる。このサーベイとインタビューを
述べたように企業内の分化が進む昨今、周年の機会
組み合わせれば、企業のコミュニケーション課題の
にあらためて「理念浸透」
「ビジョンの共有」
「一体感
多くは分析・評価できる。
例は。
を把握する必要がある。受け手側の視点に立つこと
で、より「伝わる」コミュニケーションを実施するこ
とができる。
「何を伝えたいか」ではなく、「誰をどう
いう状態にしたいか」であり、「伝える」ではなく「伝
目的に合わせた社内イベントと周年行事
■インナーコミュニケーションの目的によってイベ
ントのやり方は変わってくるか。
向けに行う企業もあると聞くが。
の醸成」といったテーマに取り組む意義は大きい。
周年とは企業の設立から現在までの「過去」を振り返
態にあるか、社員の認識を数値化することで把握す
社内外のブランディングの統合を
■どのような組織体制でインナーコミュニケーショ
わる」イベントをつくることに意識を向けるべきで
一色 その通りだ。参加者にどういう心理変化、態
り、
「未来」に想いをはせる機会であり、
「統合」を図る
ある。だからこそ、社内イベントでは体感要素が重
度変容を起こさせたいか、どのような共通体験をさ
絶好のチャンスである。多くの企業がこのことに気
要なポイントとなる。失敗例としては、参加者側
せたいか、目的を明確に定める必要がある。
「視る・
付き始めており、周年事業を社内向けに実施してい
一色 昨今、インナーコミュニケーションの専門部
が
「聞くだけ」になってしまうイベントだ。例えば、
聴く・対話・共通体験」、イベントの手法は大きく
るのであろう。過去を振り返る、と一口に言って
署を設ける企業も増えてきているが、大前提として
キックオフイベントなどで最初に社長が30分ほど
4つあるが、目的に応じてこの4つを組み合わせて
も、企業が目指す方向によってその目的は異なり、
管理部門の連携が取れていることが重要だ。広報や
メッセージを発信した後、各部門のトップ5~6名
進めることがポイントだ。また参加者の態度変容と
大別すると3パターンに分けることができる。
IR、採用部門など情報発信が主なミッションの管
が20分ずつプレゼンテーションを行うケースは珍
いう観点では、イベント1日の流れも重要だ。社
しくない。この場合、参加者は3時間近く「聞くだ
員に意識変革を促したいからといって、ただ「変わ
過去の戦略や企業の原点に立ち返り、築き上げてき
んな情報を発信しているか認識していないケースは
け」の状態になってしまっている。これでは、聞き
れ!」という危機感アプローチでメッセージを発信
た歴史と現在の戦略や未来のビジョンを再度接続さ
珍しくない。一貫性がないメッセージを発信してい
手のモチベーションは向上しないばかりか、情報が
するのは逆効果だ。参加者が
「変わらなきゃ」
と自ら
せることだ。企業理念の風化が進んでいたり、活力
たり、同じような取材を別部署が同時に行っていた
多過ぎて意識もシャットダウンする。この失敗例は
思うような仕掛けを冒頭で行うことが重要だ。弊社
が失われている企業にとって重要な観点となる。
りといったケースも多い。また、社内向けと社外向
まさに、「伝える」ことばかりを重視し、参加者側の
の場合、イベントの1日は必ず「Unfreeze(解凍)」
感情や心理状態を無視している典型である。これで
→
「Change(変革)
」→
「Refreeze(再凍結)
」という
築き上げてきた基礎を踏み台に、そこから一段飛躍
社員の振る舞いや行動が、良くも悪くも企業ブラ
は社員をエンゲージメントする効果は低い。体感要
態度変容の3ステップをベースに設計し、参加者を
した未来像を描く目的がある。多くの企業が、事業
ンドに影響を与える時代である。そのため日ごろか
素を盛り込み、参加者の主体性を引き出してこそ、
目的に沿った変革に導く演出を施す。
イベントのコミュニケーションメディアとしての特
1つは、
「過去との再接続」を目的とする企業で、
2つ目は、「過去をベースにした新たな挑戦」だ。
ンに取り組むべきか。
理部門は多いが、実は管理部門同士で隣の部門がど
けのメッセージに整合性がないケースも目立つ。
が順調な局面において未来に向けて必要な投資や挑
ら、自社がどのようなブランドを社外に打ち出して
トップのメッセージを社員に浸透させたい場合、
戦を怠り、現状に満足してしまう。特に現場にはそ
いるかを社内で情報共有し、浸透させておかなけれ
トップが延々とプレゼンテーションを続けるのは、
の力学が働きやすい。会社が危機に瀕する前に、自
ばならない。つまり、アウターブランディングとイ
例えば、弊社では記者会見方式のプレゼンテー
メッセージが残らず、逆効果だ。例えば、顧客や取
ら節目を入れて新たな挑戦、新たな行動を起こすに
ンナーブランディングの統合が必要である。この際
ションを提案している。これは、単なる座学形式に
引先に対するインタビューを行い動画にする。トッ
は周年が絶好の機会となる。
にも、イベントというメディアは有効である。先述
なりがちな方針発表の場を、主体性を引き出すやり
プのメッセージが世の中のニーズに合致しているこ
3つ目が、
「過去との決別」
である。例えば、社長交
の通りイベントの中に顧客の声や外部視点を映像と
方へと変化させたものだ。記者会見方式のイベント
とを体感することができれば、社員の変革への意識
代を機とした第二の創業などが挙げられる。これま
して取り入れるのも一策である。また、アウター向
では、当日の内容は資料として事前に配布される。
は格段に高まるだろう。
でのパラダイムを断ち切り、再出発を果たす際には
けのイベント(例えば顧客向けの展示会やセミナー、
大きなエネルギーを必要とする。そのエネルギーを
新卒採用時の会社説明会、周年記念の顧客感謝祭な
醸成する起点と機会に周年は適しているのである。
ど)を一部の部署だけではなく、なるべく多くの社
性が生かされる。
参加者は事前に、もしくは当日グループワークの形
8
企業広報研究
最近は社員の自主性を重要視するということで、
で資料を読み込み、記者会見さながらに登壇者に質
対話型のイベントを実施している企業も少なくない
問する。その後、参加者がプレスリリース形式の記
が、これにも注意が必要だ。参加者側に任せっきり
いずれにせよ周年をインナーコミュニケーション
員を巻き込む形で行うのは、仕事の意義や部署間の
事を書くという流れだ。その記事を参加者が発表し
の形式では、議論のレベルが上がらず、成果に乏し
上の重要な機会とするには、社員がその意図
「Why」
繋がりを再確認する機会となる。このような取り組
てもいいし、後日社内報であらためて共有してもよ
い対話になってしまうケースが散見される。対話の
を十分に理解し、共感することが重要だ。社員を一
みができている企業は、社員のモチベーションや
い。いずれにせよ、参加者が能動的に情報を取りに
そもそもの
「問い」
やゴールへの道筋は、主催者側で
堂に集め、その意図や理由を温度感と体感要素と共
サービスの質の向上に繋がり、企業の成長に向けた
行かざるを得ない仕掛けが主体性を引き出すのだ。
きちんと設計することが重要だ。議論の選択肢を幾
に伝えるイベントは、その際の重要な手段になる。
好循環を生み出すことができている。 また、私どものグループで毎年、年末に行ってい
つか提示した上で対話してもらう、グルーピングを
■インナーコミュニケーション上の現状をどのよう
〔経済広報〕2014年7月号
k
(文責:国内広報部主任研究員 鈴木恵理)
2014年7月号〔経済広報〕
9
CC時代のインナーコミュニケーション⑥
CC時代のインナーコミュニケーション⑥
新たな付加価値を生み出す
インターナルコミュニケーション
ソニー(株)
ループを理解してもらうためのサポートツールの役
割も果たしている。
14
ソニーグループの情報誌
『Sony family』ではグループ内の相互理解の促進
2014年2月号
NO.192/Vol.38(季刊)
必ずご家庭にお持ち帰りください。
を目指しており、様々な事業の商品やサービス、事
CLOSE UP
平井さんメッセージ
成長に向けて大胆にシフトしよう
例が掲載されている。グループ会社同士がお互いの
PLAY! 世界を席巻!
PS4™ついに日本デビュー
特集 つくる
事業内容や現状を理解することで、ほかのグループ
ライブレポート
「Ken's Bar」
会社の社員がどのようにお客さまに感動を届けて
いるかを共有し、一人ひとりがソニーの存在意義を
ソニーグループはエレクトロニクス事業のほか、エンタテインメント(映画、音楽)、国内の金融事業など、
多岐にわたる事業をグローバルに展開している。さらに14万人を超えるグループ社員のうち海外にいる社員
は日本語以外でのコミュニケーションが中心である。このため同社では、グループ横断的かつグローバルな
インターナルコミュニケーションの実現を目指している。
考えるきっかけとなるようにしている。
「感動を届け
る」といっても、例えば、ソニー生命保険の営業マ
ンと、映画配給会社であるソニー・ピクチャーズエ
ンタテインメントの社員では、具体的に取るべき行
動は異なるだろう。しかし
「取り組んでいる仕事が
異なり、感動を届ける方法が違うからこそ、情報を
インターナルコミュニケーショングループ
の役割
る。グループ会社の担当者も交えたミーティングを
共有することで、新たな付加価値が生まれる可能性
年に数回開催し、グループ全体でのインターナルコ
が高くなる」と同社は考えている。
ソニー(株)の広報機能は「広報・CSR部」という
会社からの意見の吸い上げを図っている。
グループ全体で理念を共有し
「One Sony」
を目指す
コミュニケーション、CSRの4グループから成
る。インターナルコミュニケーショングループは、
●トップダウンとボトムアップを融合する
グローバル拠点との連携と課題
「Inter Sony」
社内広報のポータルサイト「Inter Sony」は基本的
インターナルコミュニケーショングループでは
に日本語と英語の2カ国語で運営されている。各グ
「Inter Sony」を英語でも運営しているが、中国をは
ソニーグループ全体のインターナルコミュニケー
同社はインターナルコミュニケーションを「社内
ループ会社や事業本部独自のイントラサイトもそれ
じめ言語対応ができていない地域では、インターナ
ションのハブ機能を果たし、同グループが担当する
広報」
ではなく、
「付加価値を生み出すためのコミュ
ぞれにあるが、「Inter Sony」では経営メッセージや、
ルコミュニケーションの実際の活動や運営は各地域
紙媒体の社内報
『Sony family』と、社内ポータルサ
ニケーション」と捉えている。単なる情報の周知徹
全社に共有すべきトピックスや事例を中心に掲載
の担当者に任せている。どの地域のイントラサイト
イト
「Inter Sony」は基本的にソニーの専用回線に接
底にとどまらず、そこから議論や課題意識を醸成
し、1日1回は新しいニュースをアップデートして
でも必ず掲載しているのは、社長メッセージと経営
続できるグループ社員も見ることができるように
し、新たな付加価値を生み出すことに重点を置いて
いる。掲載された内容は週に1回、全社員にメール
方針だ。これは、本社の担当者が各地域に情報を
なっている。
いる。
をすることで周知徹底を図っている。メールは文章
共有している。また、経営方針の徹底を図るため、
だけではなく、画像を張り付けたhtml形式で、社
フェース・ツー・フェースで担当者とのコミュニ
員の関心を喚起するように工夫している。
ケーションを行うことにより、インターナルコミュ
インターナルコミュニケーショングループは12
平井一夫社長は、
「One Sony」
というメッセージを
名体制で、コンテンツ企画とプロジェクト推進とい
社内外に発信しているという。金融、エンタテイン
う大きなタスクがある。コンテンツ企画は、実際の
メント、ゲームなども含めたソニーグループ全体で
特にアクセスが多いのは、トップからのメッセー
ニケーションの方針の確認や課題の共有に努めてい
コンテンツ制作を、プロジェクト推進は新たなコ
共有できるのは
「S・O・N・Y」
の存在意義、つま
ジを発信するコンテンツだ。例えば、
「Inter Sony」上
るという。本社からの情報発信のほか、平井社長の
ミュニケーションツール開発や既存の方法の改善策
り、人に感動を届ける、ワクワクさせるという理
には、平井社長のブログや、社外に発信したスピー
海外出張の機会を捉え、現地社員とのタウンホール
の検討、実行などを担っている。多くのメンバーは
念である。
『Sony family』や
「Inter Sony」といったコ
チの概要が掲載されている。社外へのメッセージを
ミーティングも積極的に開催している。
双方を兼任しており、一つのインターナルコミュニ
ミュニケーションツールに期待されていることは、
社内へも同時に伝えることで、自身がグループに貢
グローバル拠点との連携には課題もある。例え
ケーショングループとして機能している。また、メ
掲載されている様々なコンテンツを通して、社員一
献できることは何かを社員に考えさせる機会にしよ
ば、本社のインターナルコミュニケーショングルー
ンバーの中にはデジタルイメージング事業やBtoB
人ひとりに理念を考え、議論し、いかにその実現に
うとしている。
プにはマンパワーの関係上、グローバルに情報収集
事業など、各事業本部のインターナルコミュニケー
貢献できるか実際に行動してもらうきっかけとなる
ション担当も兼務し、各事業本部独自のイントラサ
ことだ。
イトを運営している者もいる。
●相互理解を促す
『Sony family』
一方、製品や技術の開発ストーリーにクローズ
を行うことが難しく、共有できるコンテンツが不足
アップした企画や、各事業部の取り組み好事例の特
している。トップダウンの経営方針やメッセージは
集など、ボトムアップのコンテンツも好評だ。ソ
英訳して配信しているが、ボトムアップのコンテン
ニーグループの中で具体的にどのようなイベントや
ツまでは手が回らないのが現状だという。そのた
ニーフィナンシャルホールディングスなどのグルー
同社の唯一の紙媒体となる
『Sony family』は、国
イシューがあり、それがどのように相互作用を及
め、将来的にはグローバル規模での一元化したコン
プ会社にもそれぞれ広報部門があり、インターナル
内のソニーグループメンバーと希望するOB・OG
ぼしているのか、という視点を意識している。この
テンツマネジメントの必要性も感じているという。 コミュニケーショングループは、各グループ会社の
に配布されている。社員が自由に持ち帰り、社員の
ようなトップダウンとボトムアップのコンテンツが
担当者との横串のコミュニケーションも担ってい
家族も読めるようにしているため、家族にソニーグ
「Inter Sony」上で混ざり合うことで、メッセージの
ソニー・ミュージックエンタテインメントやソ
10
浸透や共有のスピードが上がり、相互に理解が深ま
ると同社は考えている。
ミュニケーションの方向性や情報の共有、グループ
名称で、コーポレート、商品・技術、インターナル
『Sony family』
表紙
〔経済広報〕2014年7月号
k
(文:国内広報部主任研究員 鈴木恵理)
2014年7月号〔経済広報〕
11
経済広報センター活動報告
CC時代のインナーコミュニケーション
女性の指導的地位での
活躍推進 ―日独の状況と課題
インナーコミュニケーションの
連載を終えて
2005年に経済広報センター関係者を中心に翻訳
一色顕氏には、イベントを活用した効果的なイン
した『実践 戦略的社内コミュニケーション』(シェ
ナーコミュニケーションの実施例を紹介いただい
ル・ホルツ 著)は、情報発信だけでなく、社員間の
た。
コミュニケーションの促進を図ることも広報部門の
『実践 戦略的社内コミュニケーション』に話を戻
新しい役割のひとつだと指摘しており、それは当時
すと、同書には、
「知識管理の重要性」
「社員同士の交
としては新鮮だったが、今では、現実のものになっ
流を促進する」といった見出しが並んでいる。そし
ている。
て、広報部門は社内の公式・非公式コミュニケー
活躍推進―日独の状況と課題」をベルリン日独センター、ドイツ経済研究所と共催した。毎日新聞社社会部の
澤圭一郎編集委員がモデレーターを務めた。参加者は約280名。
基調講演
ウテ・クラマー
博士/デュイスブルク=エッセン大学 副総長
ドイツでは、女性の就労率は向上しているが、多
『経済広報』では、2月号から7月号にかけて、専
ションを活性化する触媒になるべきだとして、イ
門家5名のインタビューと6社の企業事例を掲載し
ントラネットにおけるバーチャル組織(ヨコ串を刺
女性比率は30%、監査役会や取締役会ではさらに
てきた。
す)の構築やイントラ上でのコンテストと表彰事業
比率が低く、クオータ制の導入も議論されている。
専門家へのインタビューでは、たくさんのキー
などを提唱している。今回の一連の取材で、そうし
女性が仕事と家庭の両立のため就業時間の短い職業
ワードをいただいた。産業編集センターの相山大
た試みが実践されていることが分かる。NTTデー
輔部長は「インナーコミュニケーションとは、社員
タは、社内の有志によりSNS(ソーシャル・ネッ
一人ひとりのモチベーションアップによって仕事力
トワーキング・サービス)を立ち上げ、チームワー
を高め、それをひとつにまとめて企業の発展力に変
ク文化の醸成とセクショナリズムの打破に取り組ん
今後は、女性の積極的登用や、そのための指導的
日本の女性が能力が高いにもかかわらず、その発
えるコミュニケーション活動である」と述べた上で、
でいる。キリングループは、グループ各社の拠点を
地位におけるクオータ制の導入、グラスシーリング
揮の機会が不十分なのは、家庭との両立や、固定観
活性化とベクトル化のためには、媒体ごとの特性を
中野本社に集約し、グループ会社別ではなく、各
の解消、男女の労働時間や賃金格差の是正、男女平
念に基づく意識の問題が主因だ。いわゆるM字カー
捉えた「クロスメディアでの取り組み」が重要である
社の広報、IRといった部門を全社横断的に1カ
等な時短就労の活用、「長時間働く=良い社員」との
ブ(年齢階級別労働力率の変化)は徐々に改善してい
意識の変革などが必要だ。また、そのためには、仕
るが、復職は非正規に偏っている。高能力者が離職
と指摘した。
所にまとめるフロア配置を行った。アステラス製
事・家庭を含めた男女平等な役割分担意識をもと
後も戦力として活用されるような働き方の実現も課
薬では、グローバル共通の社員の行動規範として
に、家庭内の仕事の男女格差の解消や、男性を含め
題だ。また、男性の育児・家事時間や育児休業の取
員一人ひとりが会社の目指す方向性を理解し、実
「Astellas Way ~5つのメッセージ~」を策定し、実
たワークライフ計画、老後の生計に関するリスク意
得が少なく、男性を含めての課題として取り組む必
現することを“自分ゴト化”していくことがカギとな
践事例のベストプラクティスをグローバルで共有す
識を高める教育なども必要だ。女性も含め様々な多
要がある。また、短時間労働をむしろ促進するよう
る」
と、
「自分ゴト化」が社員の行動と企業風土を変革
る
「Astellas Way Global Recognition Program」を 実
様性を受け入れ、社会的な平等を達成することが、
な税制・社会保障制度にも課題がある。文科省で
社会の持続的発展にも繋がる。
は、女性研究者活躍推進のため、理工系などの選択
する原動力になると述べた。ウィズワークスの豊田
施している。
電通の谷昭輝氏は
「社員が自ら行動するには、社
健一・ナナ総合コミュニケーション研究所主任研究
なお、インナーコミュニケーションに関する連載
員には、M&A(企業の合併・買収)の各段階におけ
は、今月号で終了し、9月号からは、グループ広報に
るインナーコミュニケーションの留意点について解
ついて連載する。インナーコミュニケーションの連載
説していただいた。また、メディアゲインの山村公
記事は、小冊子にまとめ、9月に刊行予定。 一氏には、米国企業の先進的なインナーコミュニ
ケーション事例を、リンクイベントプロデュースの
12
経済広報センターは、5月20日に日独の有識者と企業関係者によるシンポジウム
「女性の指導的地位での
〔経済広報〕2014年7月号
k
(文:国内広報部長 佐桑 徹、
国内広報部主任研究員 鈴木恵理)
くがパートなどであり、就労時間は短い。管理職の
を選び、企業も就業時間の制約や離職の可能性か
ら、女性を積極的に登用しないのが原因だ。男女の
固定的役割分担意識は変わりつつあるが、結婚後時
間がたつと伝統的な考え方に戻ってしまう。
板東久美子(ばんどう・くみこ)
文部科学審議官
を、初等・中等教育の段階から支援する取り組みも
進めている。
国としては、指導的地位に占める女性の割合を
少子高齢化と生産年齢人口減少、競争激化、産業
2020年までに30%程度とする目標を掲げ、首相自
構造の変化などの中、女性の活躍は社会経済の持続
身が強く推進している。企業に対するインセンティ
的発展のための生命線となる。女性の活躍は人材の
ブの付与、ライフステージに応じた活躍支援
(再就
確保に加え、イノベーション創出や景気好循環の維
職や起業)
、男性も含めたワーク・ライフ・バラン
持のためにも必要であり、成長の要因でもあり、成
ス推進などにも取り組む。6月末の新成長戦略策定
果でもある。
に向け、さらに具体的な政策を織り込む方針だ。
2014年7月号〔経済広報〕
13
経済広報センター活動報告
経済広報センター活動報告
女性の指導的地位での活躍―日独の現状と課題
中川順子(なかがわ・じゅんこ)
経団連 企業行動委員会女性の活躍推進部会
部会長/野村ホールディングス(株) 執行役員
た、諸制度の運用状況の見える化も重要だ。
客室乗務関係では、意思決定に関わる管理職に加
税・社会保障制度の検討などに、政府、教育界とも
え、現場のフライトマネージャーの育成や、客室
連携して取り組む。
乗務のプロとしての勤続という選択肢の確保など、
ベニング&カンパニー社
マネージング・パートナー/ウエラ社 前 取締役
多くのドイツ企業が女性活躍推進に関して自主目
経団連のアクション・プランは、①企業の自主
キャリアの多様な在り方にも配慮している。経営層
標を設定し、対策に注力しているが、目標を達成で
企業では育児休暇の取得が向上するなど、制度を
行動計画のウェブ公開のほか、②女性管理職養成
への女性登用は今後の課題であり、行動宣言をひと
きる会社は皆無だ。例外的にテレコム社は、両立支
「使う」ステージへ移行した。実は女性の就業率が高
講座、③管理職対象の「ダイバーシティ・マネジメ
つのステップとして、着実に進めていきたい。
援に加え、女性管理職増を支援するインセンティブ
いほど出生率も高くなる傾向があり、
「子どもを持つ
ントセミナー」、④就業前キャリア教育への企業人
ために経済力を高める」という良い循環が生じてい
派遣、⑤理工系女性社員の活躍の紹介
(産官学連携)
る、ともいえる。
だ。あくまで企業主体だが、女性自身や日本の成長
女性の管理職昇進への希望は男性より低いが、こ
れには、家庭との両立や職種の問題、ロールモデル
不在、長時間労働を評価する傾向など、様々な原因
がある。また、共働きが増えても男性の家事・育児
のため着実に進めていきたい。
エルケ・ホルスト
博士/ドイツ経済研究所 ジェンダー研究部長
制度も導入して取り組んでおり、中間・上級管理職
塩入徹弥(しおいり・てつや)
に占める女性比率目標
(2015年に30%)達成に向け
大成建設(株)
管理本部人事部人材いきいき推進室室長
成果を挙げている。
建設業は男性の職業の代名詞的業種だが、建設
パイプラインロスの削減
(労働時間や勤務地の柔
投資が激減する環境下、2006年から女性の活躍推
軟化、復職支援など)により中間管理職は増えるが、
進に取り組んでいる。採用拡大
(新卒女性採用は約
役員などの増加にはグラスシーリングの排除が必要
20%に増加)
、作業所や営業職への職域拡大、海外
だ。トップの資質として攻撃性や貫徹力を求めつ
配属、継続就業支援
(配偶者に伴う転勤、育児後の
つ、親切さ・優しさといった固定的女性像も押し付
再雇用)などだ。
けていては、女性トップの登用は進まない。拘束力
参加は進まず、根底には男女の固定的役割分担意識
ドイツでも労働力人口は減少傾向にあり、移民も
がある。男女の働き方・家庭への関わり方の見直し
切り札とはならず、女性の活躍推進が必須だ。日
が必要だ。
本と同様、男女の固定的役割分担意識や、「男性は
この成果として、外勤や営業職の増加、室・部長
のある目標と、トップのコミットメントが必要だ。
女性活躍の意義は、①優秀な人材の確保のみな
女性より統率力がある」という固定観念が、女性の
の誕生、各種受賞など効果が表れつつある。次の段
らず、②環境変化への対応力向上(意思決定力、商
指導的地位での活躍を阻んでいる。ドイツでは監査
階として、育休者ミーティングや、夫婦・結婚前
品・サービスの開発力など)、③日本経済の持続的
役会の女性比率についてクオータ制
(2016年までに
カップル向け両立支援セミナーにより、配偶者の協
成長
(GDP
(国内総生産)の上昇、所得税収・社会
30%)を導入した。これ以外の自主設定目標も含め
力や本音での話し合いを会社が支援している。ま
ヘンケルでは、2008年以来、ジェンダーに限ら
保障の維持、消費拡大、家事・育児関連商品・サー
実績を公表し透明性を確保しているが、トップ200
た、キャリアプラン研修や次世代リーダー研修によ
ずダイバーシティを推進している。管理職の女性比
ビス市場の創出)にもある。
社の取締役会の女性比率は4%、CEOはほぼゼロ
る育成とネットワーク拡大のほか、男性管理職向け
率は30%超となったが、さらに毎年1~2%増を
だ。仕事と家庭の両立の問題、すなわち男女の役割
に、男女間の考え方の違いや過剰な配慮の回避、セ
計画中だ。
分担意識が本質的な問題だ。
クハラを避けた上での日ごろからの密なコミュニ
企業には今後、女性活躍推進への自主行動計画の
公表を求めるが、あくまでも企業自身の「経営戦略」
マルクス・ドレッセル
ヘンケルジャパン(株) 人事ダイレクター
ヘンケルでは、2カ国または2分野以上のロー
テーションをルール化しており、これにより、女性
としての策定・管理が重要だ。役員・管理職登用に
今後は、①トップのコミットメント、②具体的目
向けては、①キャリア意識の向上(研修やロールモ
標設定(インセンティブやペナルティ、監視メカニ
建設業界では、女性技能労働者の増加、女性主体
が育児後に一層復職しやすい効果が生まれている。
デルの提示)、②キャリア形成支援(産休・育休期間
ズムを含む)
、③情報開示、④労働時間、働き方、
の工事チームや現場監督も推進している。女性活躍
日本法人では女性を積極的に採用しているが、退
の、査定対象期間からの除外など)、③管理職層の
評価の考え方の改革、⑤企業文化の改善(男性経営
推進の機運の高まりは、これまでにない追い風であ
職率も高い。家庭との両立への圧力が原因だ。ま
意識・マネジメント改革、などに取り組む。また、
陣を巻き込んだ、偏見の解消)などが必要であり、
りチャンスと捉えている。
た、女性の管理職は9%とグローバル
(32%)
に比べ
男女の固定的役割分担意識の改善のため、①在宅勤
こうした対策の全てが、企業が高能力者の獲得競争
低く、意識変革のため、採用や昇格検討の際に外国
務や裁量労働などの環境整備も含む、働き方の見直
を勝ち抜くために効果的だ。
人や性別などダイバーシティを必ず確保している。
ケーションなどを指導している。
し、②キャリア教育の充実、③働き方に中立的な
企業の状況報告
河本宏子(かわもと・ひろこ)
全日本空輸(株) 常務取締役執行役員
総合職、社内人財公募、自己啓発休職など多様な人
ディスカッション
クオータ制の是非
ンの禁煙と同様、成り行き任せでは実現できない。
中川 企業の経営戦略に女性活躍推進の自主目標を
財のさらなる活躍のための制度を、女性の声を反映
クラマー 自主目標が奏功しないことや、自分と似
加えて、ほかの要素と同様、定期的なレビューと新
し整備してきた。
た人の厚遇
(co-optation)による男性優位を是正する
たな目標設定のサイクルを回す。日本企業にはこの
必要からも、クオータ制が必要だ。ただし、長期的
PDCAサイクルを回す力があり、クオータ制は適
ANAでは全社員の約半数、客室乗務員と特定地
2014年2月には、女性活躍推進を経営戦略とす
上職のほとんどが女性だ。国際ネットワーク化や運
る行動宣言を公表、取締役数や管理職比率の数値目
には撤廃が望ましい。
当ではない。
用時間拡大により勤務形態が大幅に変わる中、短時
標を対外的にコミットし、諸施策を推進中だ。キャ
ホルスト 一定期間内に成果を出すためには、ある
板東 国はむしろ、積極評価
(積極的な対応や成果
間、短日数、育児日など、様々な就労継続支援策が
リアデザイン研修、管理職研修、メンター制度、管
程度の圧力と成果の監視が必要だ。
を支援判断に加味)や情報開示を採用している。義
生まれた。
理職ネットワークなどのキャリア開発支援や、iPad
ベニング=ローンケ 女性登用の成果を挙げ次に繋
務化以外にも圧力をかける方法はある。 を活用した情報共有による働き方改革などだ。ま
げるためには、一定割合の登用が必要だ。レストラ
また、最近はこれらに加え、職掌転換、地域限定
14
エルケ・ベニング=ローンケ
〔経済広報〕2014年7月号
k
(文責:国際広報部主任研究員 田中 勲)
2014年7月号〔経済広報〕
15
企業広報研究
企業広報研究
日本の将来と広報の
必要性
土井正己
(どい・まさみ)
クレアブ・ギャビン・アンダーソン(株) 副社長
とは、「現地の歴史や文化をレスペクトする」ことだ
グローバル・ゴール』2009年)
。つまり、日本の人
と思う。私も、前職で、海外で記者会見を行う場合
口は減ってきているが、世界レベルで見れば、人口
など、最も配慮したのは、その国の歴史を尊重した
の増大は急激で、経済も拡大する。しかし、ここで
メッセージを自社代表者のスピーチに入れ込むこと
喜んではいけない。サックス教授はさらに
「このG
だった。アジアにおいては、これは極めて重要だ。
DPの増加は、アジアを中心に起きていく。そして
また、そうしたメッセージは、必ず現地の新聞など
都市に集中する」という。つまり、アジアでは、都
に取り上げられ、共感を得た。アジアとのビジネス
市化問題が2050年に向けて、どんどんと拡大して
を進める上で、パブリックの信頼を得ることは不可
いく。それは、PM2.5などの大気汚染や水質汚染、
欠だといってよい。
交通問題、若者の失業、スラム化問題、都市衛生問
国内においても、アジアの成長の取り込みはビジ
トヨタ自動車が、約50年前にアジア市場に進出
実を考えると、そう簡単なことではない。アジアの
ネスの発展に欠かせない。海外からお客さまを呼び
した時には、「アジア・カー」として、インドネシア
企業は、想像以上に日本を勉強しており、
「トヨタ生
たいのであれば、中小企業であれ、日本酒の蔵元で
これらの問題解決こそ、日本がアジア各国に対
やタイ、フィリピンの市場に合わせたクルマをつ
産方式」などは日本よりも熱心に勉強している。I
あれ、自社の魅力を世界に発信しなければならな
して貢献できる分野だ。日本は、これらの問題に
くった。それは、人やモノの輸送に優れ、悪路でも
T系の技術も日本がリードしていたのは過去のこと
い。やはり、広報の役割である。
「フラット化」の時
1960年代、70年代に直面し、克服してきた経験が
壊れにくい、しかもコストを抑えたものとして開発
である。さらに、欧米の企業も、アジアの成長を取
代においては、顧客の方が、ニーズに合致する企業
ある。また、これらの問題解決には、日本の持つ技
された。しかし、今日のアジアでの主力車種という
り込むことに必死だ。これまでの歴史から、日本が
(サプライヤー)を探しにくる。新聞報道の内容を検
術力が大きな役割を担い得る。PM2.5に関しても、
とどうだろう。デザイン重視で、燃費や環境性能に
絶好のポジションにいることは否定しないが、これ
索し、評判を確認して、その企業のウェブサイトを
トヨタホームが開発した「高捕集率外気フィルター」
優れ、内装も豪華にできている。
「日本向けのクルマ
が続く保証は全くない。例えば、アセアンの自動車
調べにいく。アジアの大企業が、日本の中小企業か
などは、今後、中国やアジアの国々にも普及してい
といったいどこが違うのか」と問うてみたくなる。
市場が欧州に倣って「ディーゼル」化されていけば、
ら部品を購入するというアウトフローは、これから
くのではないかと思う。また、経済成長を阻害しな
また、最近ではジャカルタやバンコクを歩いていて
明らかに日本は不利になるだろう。また、アジア資
常識になると思う。これを活性化させなければ、日
い環境規制の在り方など制度設計の分野でも、貢献
も、街行く人のファッションは、日本人とほとんど
本が、日本の高い技術を持つ企業をどんどん買収す
本の中小企業は生き残れないし、また、地方経済も
が可能だと思う。
変わらず、日本人を見分けることは至難の業であ
るということも起きていくだろう。すなわち、「フ
持たないと思う。
る。
ラット化」というのは、日本にとってはチャンスで
このように、アジアは、明らかに均一市場化して
いる。我々が学生の時には、「アジア経済は雁行型
経済」と学んだ(渡辺利夫著『アジア中進国の挑戦』
もあり、脅威でもある。
極めて重要な広報の役割
観光も同様である。昨年の外国から日本への観光
いうことだ。
先ほど、
「企業広報の基本はパブリックを味方につ
けること」と書いたが、実は、企業経営そのものに、
客は、初めて1000万人を超えた。政府は、2020年
「パブリックの役に立ちたい」という理念・ビジョン
までに2000万人に増やす計画という。みずほ総合
がなければ、いくら広報が頑張ってもパブリックは
研究所によると、1000万人の訪日客はGDPを1.8
味方になってくれない。相思相愛以外はないのであ
1979年)
。すなわち、雁が群れを成して飛ぶように
では、こうした中で日本企業はどうすればいいの
兆円増やす効果があるらしい。アジアの
「フラット
る。
「フラット化」するアジアの経済力を取り込むた
日本が先頭で、その後に韓国、台湾、シンガポール
であろうか。企業の技術力の向上や生産性の向上な
化」した観光客は、ネットでホテル・旅館を探す。
めには、経営理念として、
「アジアの問題解決にどう
が続き、さらにその後をアセアン諸国が追い掛ける
ど国際競争力を高めることは、言うまでもなく、最
日本の観光施設が、こうした観光客を狙って、多言
すれば貢献できるのか」という姿勢を持たなければ
というような構造であった。しかし、今のアジア経
も重要なことである。しかし、それだけでは生き残
語での広報発信を行っていくことが極めて重要とな
相思相愛は成立しない。
済は、明らかに「フラット化」している。誰が先頭と
れない。重要なことは、それぞれの国や地域でパブ
るわけだ。
いうことでなく、横一線(フラット)である。経済だ
リックを味方につけることである。工場であれ、商
けでなく、ファッションや食品までフラット化して
店であれ、現地に出て行ってビジネスをやるのであ
きている。その背景には、アジア各国の急激な成長
れば、当然、パブリックを味方につけないとビジネ
で、一人当たりGDP(国内総生産)が日本のそれに
スはできない。これが、広報の役割である。
経営者はどうあるべきか
さて、最後に少し目線を上げて、これからの経営
の指針を考えてみたい。
経営者がそうしたビジョンを持ち、事業活動を行
い、それをもとに広報部隊がパブリックとのコミュ
ニケーションを図る。そうしたサイクルの連続が、
パブリックを味方につけることに繋がり、企業の成
長基盤を確かなものにしていくのだと思う。
近付いてきていること、また、インターネットの普
基本的に広報というのは、「企業とパブリックの
コロンビア大学地球研究所所長で、国連事務総長
及で音楽やファッションなどが同時的に流行をつく
メッセージのキャッチボール」である。
「自社はこれ
のアドバイザー的役割を長く務めておられるジェフ
は「TPP」(環太平洋経済連携協定)だけではない。
るということなどがある。
から、こういう理念で事業を行います。いいです
リー・サックス教授と昨年末に議論をする時間をい
企業の役割、広報の役割も十分に認識しておきたい
か」とパブリックに聞く。パブリックは「いいね」と
ただいた。教授によると、
「世界の人口は、2050年
ものだ。 言ってくれるか、
「よくないね」
と批判するかだ。批
までに4割増える。世界平均で見ると、一人当たり
判がくれば、再度、説明すればいいし、場合によっ
GDPは4.5倍になり、今の新興国の所得レベルも
「フラット化」
するアジアは
チャンスであり脅威
16
題など、多岐にわたる問題が起きると想定されると
「この成長するアジア経済の勢いをどのように取
ては企業の実態を変えなければいけない時も出てく
米国並みになる。その時の世界のGDPの合計は現
り込むか」、これが、日本の将来を決めることは間
る。広報活動というのは、これの繰り返しである。
在の6.3倍になる」という
(ジェフリー・サックス著
違いない。企業の成長もしかりである。しかし、現
パブリックからの信頼を得るために最も重要なこ
『地球全体を幸福にする経済学―過密化する世界と
〔経済広報〕2014年7月号
「フラット化」するアジアの成長力を取り込む手段
k
大阪外国語大学
(現大阪大学)
卒業。トヨタ自動車に31年間
勤務。主に広報分野、海外営業分野で活躍。プラハ駐在後、
グローバル・コミュニケーション室長、広報部担当部長を
歴任。2014年よりクレアブ・ギャビン・アンダーソンで、
政府や企業の国際広報コンサルタント業務に従事。コラム
ニストとしても活躍中。
2014年7月号〔経済広報〕
17
ジメント~環境未来都市の実現へ
関係を構築し、信頼される企業と
学した。常圧蒸留装置をはじめ、
~産業界の挑戦と都市マネジメン
なるために広報担当者が果たす
2010年に稼働を開始した重質油
麗澤大学の石郷岡建非
ト~国内と海外のエネルギー事業
“企業ビジョンの代弁者”としての
分解装置、バイオガソリンを生産
重要な役割や企業とメディアの関
する装置や計器室の見学を通じ
4月30日~5月16日
NEWS
Keizai Koho Center News
講師:山口 忠克 全日本空輸 企画
5
/
13
常勤講師と国際経済研究
の将来とその展開について」
、講
部主席部員)
所の西谷公明取締役・理事を講師
師:鈴木 健雄 千代田化工建設 営
係、メディアの仕組みなど、広報
て、同社が環境にやさしい石油製
とする講演会
「ロシア政治経済情
業本部営業企画セクション部長)
担当者が身につけておくべき基礎
品の生産に努めていることを学ん
知識全般について広く講義した。
だ。質疑懇談では、同社の企業理
参加者は約80名。
念や石油製品などについて意見交
東京五輪を迎えるにあたって-」
、
5
/
7
早稲田大学国際教養学
部で
「企業人派遣講座」を
実施した。
( テーマ:「日本企業論
勢-ウクライナ政変以後の世界」
を開催した。
石郷岡氏は、ウクライナ政変
部で
「企業人派遣講座」を
換が行われた。
の歴史的地政学的背景と、これ
実施した。
( テーマ:
「日本企業論
理念~日本の航空産業と国際戦
を取り巻くロシアと西側の政治・
~日本企業の国際戦略とその経営
5
/ 「企業人派遣講座」を実施
15
略」、講師:水野 徹 日本航空 国
外交関係について解説し、“ロシ
理念~日本の自動車産業と国際
した。
( テーマ:
「科学と技術~世
5
/
16
ア
(プーチン)=悪”という西側の
戦略
(1)
」
、講師:桐本 慶祐 ト
界同時不況後の成長戦略~」
、講
友化学代表取締役副社長執行役
偏った見方に警鐘を鳴らした。ま
ヨタ自動車 広報部グローバルコ
師:石田 文章 関西電力 総合企画
員)を開催し、第6回理事会・第
同志社大学経済学部で
5
/ 「企業人派遣講座」を実施
8
た、西谷氏は、ウクライナ政変
ミュニケーション室室長) 本部地域エネルギー開発グループ
3回評議員会付議事項について説
担当部長)
明した。
FUN 理事 元 東急ホテルズ取締
した。
( テーマ:「科学と技術~世
基に状況を説明し、同国情勢の行
役相談役)
界同時不況後の成長戦略~」、講
方を踏まえた世界経済・ロシア経
5
/
15
師:加賀山 慶一 東海旅客鉄道 技
済の動向について、不安定な状態
コスモ石油の堺製油所
5
/ (大阪府堺市)で「企業と生
16
動紹介プログラムの実施など3件
見インテグレーターの山見博康代
術企画部海外高速鉄道プロジェク
の長期化が懸念であると解説し
表取締役が
「企業広報の基本と記
活者懇談会」を開催し、社会広聴
らに、シンポジウム
「インドネシ
た。参加者は約110名。
者とのコミュニケーションの本
会員13名が参加した。
アの動向と今後の見通し」など4
4
/
30
横浜国立大学大学院都
市イノベーション学府で
「企業人派遣講座」
(横浜市と共催)
を実施した。
( テーマ:「都市マネ
~日本企業の国際戦略とその経営
際提携部部長) ジメント~環境未来都市の実現へ
~産業界の挑戦と都市マネジメン
ト~」
、講師:梅原 一剛 THE
慶應義塾大学商学部で
4
/ 「企業人派遣講座」を実施
30
トC&C事業室副室長)
前・後の同国訪問による生情報を
上 洋 東レ 常務取締役国際部門
5
/
9
長)
と題する「意見広告」を掲載した。
での企業の成長戦略」、講師:村
日 本 経 済 新 聞 に「『 企 業
人派遣講座』がスタート」
慶應義塾大学商学部で
5
/ 「企業人派遣講座」を実施
13
した。
( テーマ:「国際競争のもと
での企業の成長戦略」、講師:柏
5
/
7
横浜国立大学大学院都
市イノベーション学府で
5
/
12
現代中国研究家である
津上工作室の津上俊哉代
「企業人派遣講座」
(横浜市と共催)
表取締役を講師に、
「中国停滞の核
を実施した。
( テーマ:「都市マネ
心」のテーマで
「第25回中国勉強
ジメント~環境未来都市の実現へ
会」を開催した。
木 茂介 野村ホールディングス 執
行役財務統括責任者)
5
/
14
横浜国立大学大学院都
市イノベーション学府で
~産業界の挑戦と都市マネジメン
「企業人派遣講座」
(横浜市と共催)
ト~『ANAの経営戦略』-2020
を実施した。
( テーマ:「都市マネ
〔経済広報〕2014年7月号
同志社大学経済学部で
「企業広報講座
(第1回
東京会場)
」を開催し、山
質」をテーマに講演した。
した。
( テーマ:
「国際競争のもと
18
5
/
14
早稲田大学国際教養学
山見氏は、社会・顧客と良好な
第10回
「第103回事業企画委員
会」
(委員長:髙尾剛正 住
また、中国人留学生への企業活
企業概要および堺製油所につい
て説明を受けた後、製油所内を見
日本貿易会賞懸賞論文
について検討し、了承された。さ
件について報告した。
k
(国内広報部 岡本清美)
テーマ1:グローバル経済における“商社”のあり方
テーマ2:2020年の日本が持つ“資源”と世界の発展に果たす役割
【賞金】大賞100万円(1点)、優秀賞20万円(3点)
【言語】
日本語もしくは英語 【締切】2014年9月12日、
日本時間24:00
【審査委員長】
中島厚志 経済産業研究所 理事長
【副委員長】安部順一 中央公論新社 取締役雑誌編集主幹兼中央公論編集長、伊藤恵子 専修大学経済学部 教授
【お問い合わせ先】Tel. 03-3435-5964 / E-mail. [email protected]
(一社)日本貿易会 広報グループ 〒105-6106 東京都港区浜松町2-4-1世界貿易センタービル6F
詳細・ご応募はこちらまで www.jftc.or.jp/discourse/
2014年7月号〔経済広報〕
19
ANGLE
榊原定征氏を会長に選任
4月30日~5月31日
NEWS
-第7回理事会-
6月19日、経済広報センター第7回理事会を決議の省略の方法により行い、会長
(代表理事)
、副会長、顧問、
変動期こそ広報の神髄は、
企業理念
理事長(代表理事)、専務理事(業務執行理事)、常務理事
(業務執行理事)
が、以下の通り選任された。
Keizai Koho Center News
企
【会 長】
榊原 定 征
(新任)
経団連 会長
点から、筆者は、
「広報論」や
膨大な数のアルバイト大学生の
「コーポレート・コミュニケーショ
「ふたつの眼」が、現実の仕事現場に
ン 論 」の 講 義 を 行 っ て お り、 毎 年
在り、まさに広報活動がモニタリン
400人近い学生が受講している。今
グされているとも考えられる。
日、政治、経済、技術、社会のあら
日 本 で は、 経 営 理 念 と 企 業 理 念
ゆる局面で変動が進み、“社会の中
は、その定義を混同されて使用され
の企業”を捉え直す枠組みは法改正
るケースが多かった。東証一部上場
江 上 節 子
企業を調査したところ、経営理念と
(えがみ・せつこ)
企業理念で各社ホームページに公表
より切実に求められ、SNS(ソー
武蔵大学 社会学部教授
をしている企業がそれぞれ、35%ず
シャル・ネットワーキング・サービ
早 稲 田 大 学 第 一 文 学 部 卒 業。 リ ク
ルートで
『とらばーゆ』
『週刊B-ING』
な
どの仕事情報誌各誌の編集長を歴任、
編集企画室長。その後、東日本旅客
鉄道の民営化アドバイザー、技術推
進 企 画 部 担 当 部 長、 フ ロ ン テ ィ ア
サービス研究所長、経営企画部マー
ケティング担当部長。早稲田大学・
公共経営研究科客員教授などを経て、
現職。著書に
『パブリック・コミュ
ニケーションの世界』
(共編著)
、
『リー
ダーシップの未来』
(単著)
など。
つあり、その内容の性質の違いは判
という形で急進している。広報の機
能の双方向性や広報人の対話力が
ス)などの情報受発信環境の強化や、
【副 会 長】 岩
宮
荻
内
佐
沙 弘
原 耕
田 山田竹
々木則
道(再任)
治(再任)
伍(新任)
志(新任)
夫(新任)
三井不動産 会長
日本郵船 会長
アサヒグループホールディングス 相談役
トヨタ自動車 会長
東芝 副会長
説得の工学的アプローチ、共感性指
向のコミュニケーション技術などの
コンサルティングは活発である。し
かし、それだけでは、今日の変動期
の広報活動の質向上を図ることが十
【顧 問】 米 倉 弘 昌(新任) 経団連 名誉会長
【理 事 長】 久 保 田 政 一(新任) 経団連 事務総長
【専務理事】 濱
厚(新任) 経団連 専務理事
分とはいえない。
【常務理事】 中 山 洋(再任) 経済広報センター 事務局長
PR・IR・危機管理
8月号
率は、68.2%である注。
業と社会の関係を考える視
定価:1300円
(税込)
編集・発行
株式会社宣伝会議
購読申込
月刊「広報会議」読者サービスセンター
TEL:03-6418-3328
インターネットからもお申し込みいただけます。
http://sendenkaigi.com/
[巻頭特集]
アジア市場拡大を後押しできるか
「グローバル広報」
の第一歩
[新シリーズ]
ウェブ広報
「再」
入門 実践編
(1)ウェブメディア攻略 Yahoo! ニュースの仕組みと対策
[特集]
トップ広報とその演出法
〔経済広報〕2014年7月号
急速に、内部統制、コーポレート・
ガバナンスの枠組みが浸透し、経営
と執行を分離する制度的な組織体制
が整うと共に、概念と使われ方が明
らかになってきた。
事業集団としての企業の存立基盤
学生からの発言に、新鮮な問題提起を見つけるこ
そのもののアイデンティティーを明らかにする“企
とができる。例えば、専門ゼミで広報の文献講読
業理念”と、社会における企業活動をどのような価
や、企業の経営理念調査の内容分析をしていると、
値観、姿勢、態度、考え方で経営していくかという
大手流通チェーン店舗でのアルバイトをしている学
“経営理念”である。理念というものは、目には見え
生が、
「わたしは、企業理念や経営理念を店長から説
ないものであるが、毎日毎日の仕事の振る舞い、仕
明されたことは一度もない」という。
方、手続き、仕組み、方法、関係、判断、意思決定
広報活動の原点は、企業理念にある、と筆者は、
……という習慣が組織文化をつくり上げていき、企
常々語り、学生と議論を楽しんでいるのだが、こう
業理念、経営理念の言葉と一体化する。内なる広報
した目線の指摘に気付かされる。卒論研究でも、学
力が脆弱だと、外への広報活動はほころびやすい。
生たちからインターナル・リレーションズの重要性
社会環境の変動期こそ、企業理念と経営理念を共有
を研究テーマに据えたいとの発言が集中する。イン
するインターナル・リレーションズの基本を丁寧に
ターナル・リレーションズは、従業員こそが第一線
見直していくことが大切ではないだろうか。 k
での広報機能を果たせるようにすることである。彼
女は大手の流通企業の現場と重ね合わせ、インター
ナル・リレーションズの問題を捉えていた。全国の
大学在学者は、256.2万人おり、アルバイトの就労
20
然としない。しかし、ここにきて、
注「平成25年度学校基本調査速報値」
(文部科学省、平成25年
8月発表)
、
「第49回学生生活実態調査概要報告」
(全国大学
生活協同組合、平成26年2月発表)
2014年7月号〔経済広報〕
21
法
律
と
広
報
4
名誉毀損と広報の対応
GLOBAL PR 6
撃されやすいのだろうか。彼らが注
目するのは、以下の状況である。
今回は、「名誉毀損」の問題について企業広報が押さえておくべきポイントをまと
めてみた。
企業にとって、名誉毀損はどのような形で問題となり得るだろうか。名誉毀損と
いうと、政治家が不正を告発した雑誌を訴えたり、芸能人やスポーツ選手のスキャ
ンダルを報道した週刊誌が事実無根として損害賠償を命じられたりするニュースを
1. 株価が低迷、または業績が悪化
アクティビストに
狙われる日本企業
している
2. 事業戦略を実施できていない
3. 潤沢な現金資産、あるいは資金
イメージしがちである。これらは名誉毀損の典型的な場面であるが、企業にとって
を有効に運用できていない
も次のような状況に直面する可能性は実は決して低くない。例えば、報道などの内
4. コーポレートガバナンスが十分
容が事実と異なる場合である。
ロス・ローブリー ◦A社の社長は著名な経営者であるが、社内ではパワハラ・セクハラがひどい、独
エデルマン・ジャパン(株) 社長
裁体制で誰も声を上げられない、という内容の告発記事が週刊誌に掲載された。
結 城 大 輔
のぞみ総合法律事務所
弁護士・ニューヨーク州弁護士
ゆうき・だいすけ
1995年司法試験合格、1996年東京大
学法学部卒業、2010年米国南カリフォ
ルニア大学ロースクール
(LL.M.)修了。
1998年弁護士登録
(第二東京弁護士
会)
。2012年米国ニューヨーク州弁護
士登録。2000 ~ 02年日本銀行出向。
2008年から韓国ソウル、米国ロサン
ゼルス、ニューヨークの法律事務所
にて執務後、2013年11月帰国、のぞ
み総合法律事務所に復帰。
[email protected]
◦上場企業のB社が、インターネット上のファイナンス関連の匿名掲示板に、事実
に反する噂を書き込まれたため、株価が急落した。
◦従業員が個人的な犯罪行為で逮捕されたとのニュースの中で社名を報じられたた
米コロンビア大学の調査による
複数の証券会社で上級管理職を経験した
と、1998年から2009年までの約10
後、PR業界に入り、ギャビン・アンダー
ソンのマネージング・ディレクターとし
年間、アクティビスト投資家
(アク
め、C社に苦情が殺到した。
ティビスト)による日本企業への投
判例上、名誉毀損における「名誉」とは「人がその品性、徳行、名声、信用等の人
資は916件にも上ったが 注、リーマ
格的価値について社会から受ける客観的評価、すなわち社会的名誉」とされている
が、上記事例のように、企業の社会的名誉も低下することは十分あり得る。CSR
(企業の社会的責任)や広報、ソーシャルメディア上での情報発信などにより企業イ
メージを高めてきた努力が、事実無根の表現行為によって一瞬で打ち砕かれてしま
わないように、企業は名誉毀損に立ち向かう必要がある。
ンショック後、アクティビストの日
ない
6. 役員報酬が不当に高い
て、M&Aや外資系企業の日本市場参入
キャンペーンなどを手掛ける。プラップ・
ジャパン専務取締役兼最高執行責任者を
経て、2010 年より現職。
本への関心は遠のいた。
しかし近年、日経平均が回復し、日本企業の収益
と含み益が拡大するとともに、アクティビストは日
そしてアクティビストによる攻撃
はどのように始まるのだろうか。ア
クティビストから取締役会宛てに意
見書が送られたり、突然新聞紙上に取締役会宛ての
オープンレターが掲載されたり、株主総会で懸念事
項が発表されるなど、様々なケースがある。
本に再び注目している。かつてないほどキャッシュ
では、アクティビストに攻撃された際、企業は
けばよいだろうか。企業広報が名誉毀損に接する場面を大きく二分すると、マスメ
リッチな日本企業は、アクティビストに狙いを定め
どのような行動を取るべきだろうか。アクティビス
ディア対応とソーシャルメディアその他インターネット対応である。
られていることを想定すべきだろう。
トの主張に対する自社の考え方を、説得力のあるス
まずマスメディア対応では、報道される前に確認取材の連絡が広報宛てに入った
アクティビストの主な目的は企業価値を向上させ
トーリーにまとめたポジションペーパーにすること
ることであり、企業戦略の変更、財務体質の改善、
が第一歩である。そこには企業の主張が根拠と共に
コスト削減、資産の売却、ノンコア事業や特定市場
明確かつ論理的に記されていることが必須である。
からの撤退など、幅広い要求を投げ掛けてくる。ま
またそれは、内輪の論理であってはならない。ポジ
た、環境への配慮など、企業が社会的責任を果たす
ションペーパーがまとまっていれば、それをメディ
ように要求してくることもある。アクティビスト
アやデジタルチャネルを通じて広く発信することも、
側が報道を控えたり、あるいはトーンが少し穏やかになったりすることもある(メ
は、日本では理不尽な攻撃者と考えられる場合が多
顧客、投資家、社員などのステークホルダーに直接
ディアの担当記者にとっては、後に訴訟となって証人として尋問されたり、場合に
いが、海外では企業活動の監視者としての一定の評
コミュニケーションを行うことも容易になる。
よっては、個人として被告となることは大きな負担・苦痛となる)
。
価を得ており、それを背景に資金力を強化し、影響
時の対応が重要である。報道側にとっては、報道内容が事実に反し
(真実性)
、しか
誉毀損として不法行為となる
(場合によっては犯罪行為ともなる)
ため、報道内容が
企業に重大な影響を与えるものであればあるほど企業側に確認取材をすることが多
い。この時広報は、メディアに対し、その報道内容が事実ではないということ、ま
たその根拠を丁寧に示すことができれば、真実性・相当性の観点から、メディア
一方、ソーシャルメディアなどへの対応の典型例は、企業についてのネガティブ
情報がネット上で拡散し、炎上してしまうケースである。この場合、マスメディア
と違って、企業広報への取材などはないので、企業がそのようなネガティブ情報を
いかに早く把握できるかが重要である。そのためには、重要と考えられるソーシャ
ルメディアについて一定のモニタリングをすること以外にも、例えば自社のソー
シャルメディア・ポリシーで、ネガティブ情報を発見した従業員は広報に連絡する
というルールをつくるという対策もあり得る。
いずれの場合も、広報は、法務における純法律的な名誉毀損の成否に関する検討と
力を強めている。
を与え得るかを想定することが重要である。場合によっては、たとえ勝訴の見込みが
薄くても
(また予想される損害賠償額が少額でも)
、提訴などの断固たる対応を取り、
報道や書き込みが事実無根であることをアピールすることも必要である。 最も重要なのは、アクティビストの攻撃はいつで
も起こり得るという現実を受け止め、その前提で準
いずれの場合も、アクティビストは、メディアを
備をすることである。そして、突然の攻撃に対処す
通じて経営者への要求を広く世間に知らしめること
るには、自社の脆弱性を常に把握し、攻撃のシナリ
により、経営への影響力を行使することが多い。ア
オ別に対策を練っておくことが大切である。アク
クティビストの行動は、投資家と企業の交渉事を公
ティビストの活動状況や行動パターンを把握するこ
の目にさらし、経営の主導権を揺るがす事態を招き
とが、グローバル時代の日本企業に求められている
かねない。
と言えるだろう。
は少し違う観点で、当該報道や書き込みが企業や経営にとってどのようなインパクト
〔経済広報〕2014年7月号
5. 株主の要求を経営に反映してい
では、企業の広報部門としては、名誉毀損に関連する法律について何を知ってお
も、それを真実と信じて報道したことについて相当の理由
(相当性)
がなければ、名
22
に機能していない
アクティビストに攻撃されたら
k
注 “Investor Activism in Japan:The First 10 Years”
Columbia University Paper, 2010.
それでは、どのような企業がアクティビストに攻
k
2014年7月号〔経済広報〕
23
企業広報ニュース
ウェブ
サイト
企業広報ニュース
広 報
トピックス
ブレット版のプレスリリース掲載サイトをオープンした。
共 同 通 信 P R ワ イ ヤ ー が ス マ ホ・
第一生命保険は、消費者教育教材として、「ライフ
サイクルゲームⅡ~生涯設計のススメ~」を無償で提
供している。すごろく形式のゲームを楽しみながら、
人生の様々なリスクとそれらに対して必要な備えや、
消費者被害に関わる知識などを学ぶことができる教
材で、昨年6月に公益財団法人消費者教育支援セン
ターが主催する「第8回消費者教育教材資料表彰
(企
業・業界団体対象)」の最優秀賞を受賞した。当社は、
ゲームの提供だけでなく、教員などの指導者向けデ
モンストレーション授業や学生を対象とした出張授業も行っており、昨年度は中学、高校を中
心に47回開催し、約1600名が受講した。
このゲームでは、就職・結婚・子どもの誕生・マイホーム購入・セカンドライフなどのライ
フイベントや、病気・ケガ・災害などの人生のリスク、インターネットの架空請求詐欺や振り
込め詐欺など、昨今多発している消費者被害事例などを疑似体験できる。またゲームを通じて
お金の大切さや将来に備えることの重要性を体感でき、それはさらに消費者問題に関心を深め
る契機ともなる。
実際にゲームを体験した学生からは、
「ゲームを楽しみながら、人生のリスクやお金の計画的
な準備の必要性を学ぶことができた」
「消費者被害の例や被害にあった際の相談先を具体的に知
ることができ、困ったときは一人で抱え込まず相談していきたい」といった意見が寄せられて
いる。ゲームは当社ホームページ(http://www.dai-ichi-life.co.jp/tips/lc_game/index.html)よ
り申し込むことができる。 k
(第一生命保険(株)
DSR品質推進部 消費者関係推進室 次長 田中謙二)
企業・団体のプレスリリースを国内外の報道機関に配信して
いる共同通信PRワイヤーが、このたびスマートフォン版・タ
タブレット版サイトをオープン
Nittoグループが
ウェブサイトをリニューアル
Nittoグループは1918年の創業以来、グループの基
幹技術である粘着技術や塗工技術などをベースに、エ
レクトロニクス業界や、自動車、住宅、環境、医療関
連などの領域でグローバルに事業を展開してきた。近
年は、社会的コストの削減や環境負荷コスト低減への
貢献を念頭に、“グリーン・クリーン・ファイン”(環
境・新エネルギー・ライフサイエンス)などの新たな
事業領域への展開や、新興国での「エリアニッチトッ
プ™」製品の創出に取り組んでおり、新しい事業や
テーマが生まれ始めている。
2013年10月 に 実 施 し た ブ ラ ン ド 刷 新 に 合 わ せ、
ウェブサイトも全面リニューアルした。その狙いは、
グローバルでの事業拡大への貢献とNittoブランドの
グローバル展開の2つである。デザインは、グローバ
ル共通となるため、新ブランドのブルーを基調にした
トーン&マナーを踏襲し、かつBtoB企業らしいプロフェッショナルなイメージを連想させる
ものにした。中でも、最もこだわったのが製品検索の機能であり、お客さまが多種多様な製品
を複数の角度(視点)から検索できるように工夫している。
例えば「業界からさがす」では、Nittoの製品がどこでどのように使われているかを用途ごと
に3D画像で紹介することによって、お客さまにビジュアルで理解いただけるようにしてい
る。
「仕様からさがす」では、お客さまが様々な条件を選択していくことで必要な製品を絞り込
むことができ、また「機能からさがす」では、Nitto製品にあまり詳しくないお客さまでも簡単
に検索できるようにしている。
昨年度はNittoグループが注力するインドやブラジル、トルコなど新興国への公開を終え、
2014年度は北米や欧州、中国、韓国などへも展開していく予定である。 k
(日東電工
(株)
ブランド戦略部 課長 小野孝博)
同社は、わが国初のインターネットによる本格的プレスリ
リース配信サービス
(ワイヤーサービス)を2001年9月にスター
ト。国内約2000メディア、海外約3万5000メディアのリスト
を常時更新、活用しており、世界の広報通信社を通じて各国メ
ディアに配信している。また、国内では
「47NEWS」など、40以
上の主要ポータルサイト・ニュースサイトでプレスリリースを
自動掲載している。同社ウェブサイト(http://prw.kyodonews.
jp)でも掲載している。
これまでは同社のプレスリリース掲載サイトはPC版のみ
だったが、スマートフォン版・タブレット版をオープンしたことによって、メディアだけでな
く、一般の個人も、より手軽にリリースを閲覧できるようになった。また、スムーズに閲覧
できるようシンプルなデザインとなっており、リリース全文はもちろん画像や動画も閲覧でき
る。さらに各リリースのページに、「ソーシャルシェアボタン」を設置し、フェイスブックなど
の各種ソーシャルメディア上で簡単に共有することもできる。 k
(国内広報部主任研究員 伊藤貴範)
おもて
消 費 者 教 育 支 援 センタ ー 主 催
第8回消費者教育教材資料表彰
「最優秀賞」受賞
ボーナスチャンスカードの
クイズに正解すれば、
300万円の収入。
教育支援
宝くじ
2,000万円当選。
名前だけ貸して欲
しいと頼まれ、友人
の借金の保証人となった。
友人が返済できなくなっ
てしまい、保証人とし
て責任を負う。
被害額1,500万円
台風で自宅が浸水。
ふっきゅう ひ よう
復旧費用1,500万円が必要となる。
そん しつ
サイコロを振り、
損害保険に加入しており、
復旧費用の自己負担無し。
損害保険に加入しておらず、
復旧費用1,500万円を支払う。
ボーナ
スチャ
ンスカ
クイズ
ードの
に正
解す
400
れば
万円
、
の収
入。
損失発生
500万円を支払う。
ボーナスチャンスカードの
クイズに正解すれば、
500万円の収入。
公的年金
500万円をもらう。
子どもが
海外留学をする。
費用500万円
を支払う。
ボーナスチャン
スカードの
クイズに正解
すれば、
収入。
700万円の
サイコロを振り、
次の額を定年退職金
としてもらう。
2,000万円
2,500万円
3,000万円
2012.03/13
初校
M
C
se
K
Y
se
se
DIC
se
コート135
se
『グローバル・ブランディング
〔経済広報〕2014年7月号
し せつ
―モノづくりからブランドづくりへ』
第一生命の消費者教育教材
24
どう よう ご
寄付する。
Book
利益発生
500万円をもらう。
しん すい
じ
児童養護施設に
100万円を
同書は、スティーブ・ジョブスの
「アップルが成功するため
にはイノベーションに勝利しなければならない。そして、消費
者に伝えることができなければ、イノベーションで勝利するこ
とはできない」という言葉で始まっている。
人口減による国内市場の縮小と経済成長率の低下を背景に、
日本企業は海外へ活路を求めている。これまで品質や機能的価
値にこだわった「モノづくり」によって競争優位に立ってきた日
本企業だが、「良いものをつくっていれば自ずと売れる」時代は
終わった。編著者は、今日のグローバル市場で競争力を高める
ためには、プロダクト・アウトの
「モノづくり」からマーケッ
ト・インによる「ブランドづくり」に力を注ぐことが必要だと述
べる。
同書は、グローバル市場におけるブランドの重要性を説いた
上で、国際競争力を高めるためのブランド戦略を具体的に提示
している。第1章では、企業が顧客から選ばれるためには、
「グ
松浦祥子 編著、碩学舎
ローバルで適用可能な普遍的なブランド・アイデンティティを
規定し共有化する」
「グローバル広告で一貫したブランド・アイ 2014年3月発行、
(税別)
デンティティを伝える」など、グローバルブランドづくりの基 1800円
本的な法則を説明している。
第3章では、ヤング・アンド・ルビカム社のブランドデータ
ベースを用いたグローバルブランドの評価について、第4章では、ビジュアル・アイデンティ
ティ
(シンボルマークやロゴマークなどの視覚的な要素)の役割とその開発方法、最近のロゴ
マークのトレンドについて解説している。
このほかの章では、資生堂、キッコーマン、コマツ、東レにおけるブランド戦略の取り組み
事例を紹介している。 k
(国内広報部主任研究員 大野祥子)
2014年7月号〔経済広報〕
25
2014
7
企業・団体のCSR活動
住友生命の「未来を強くする子育てプロジェクト」~女性研究者への支援~
住友生命保険(相)
お問い合わせ先
HP
「未来を強くする子育てプロジェクト」事務局
TEL:03-3265-2283(平日10:00 ~ 17:30)
http://www.sumitomolife.co.jp/about/csr/community/mirai_child/
http://www.kkc.or.jp/
平成
昭和
年 月 日発行
(毎月 回 日発行)
第
年 月 日第 種郵便物認可
55 26
10 7
23 1
3
1
1
子どもと一緒に表彰式に参加
36
巻第
未来を強くする子育てプロジェクトの
「スミセイ女性研究者奨励賞」
表彰式での受賞者記念写真
境や生活環境を維持・継続するため、
「スミセイ女性
迎えた2007年から「未来を強くする子育てプロジェ
研究者奨励賞」を設け、受賞者に助成金を支給して
クト」
に取り組んでいる。
いる。その助成金は、研究費だけでなく保育料など
この
「未来を強くする子育てプロジェクト」の代表
の子育て関係費に充てることもできる。このプロ
的な取り組みとして文部科学省と厚生労働省の後援
ジェクトの特色は、まだ社会的な支援が十分とはい
を受け、
「子育て支援活動の表彰」
「女性研究者への支
えない人文・社会科学分野の女性研究者を対象とし
援」
の2つの公募事業を実施している。
て、萌芽的な研究の発展に期待する助成を行ってい
具体的には、「女性研究者への支援」では、育児の
ため研究の継続が困難となっている、あるいは育児
ることだ。毎年10人程度が選考され、2013年まで
に71人が助成を受けた。
女性研究者の子育てと研究を取り巻く環境は、女
性が働き続ける上での問題が凝縮されているとも言
われており、住友生命は、子育て中の女性が第一線
の研究の場で活躍できるための環境整備が、これか
らの日本の社会にとってますます重要になると考え
ている。子どもたちの笑顔とその未来を守り、強く
するための子育て支援活動を今後も積極的に行って
いく考えである。 k
(国内広報部主任研究員 杉山佳子)
表彰式後の懇親会場にて
発行:一般財団法人 経済広報センター
Printed in Japan
419
発行人/中山 洋 編集人/佐桑 徹 [ ISSN 0918–4600
]
東京都千代田区大手町一 三
(本体価格三〇〇円+税)
- 二
- 経団連会館 電話〇三 六
- 七四一 〇
- 〇 二 一 〒一〇〇 〇
- 〇〇四 ( 送料別、賛助会員の購読料は会費に含む)
ている少子化対策へ貢献するため、創業100周年を
7
号
を行いながら研究を続けている女性研究者が研究環
号通巻
住友生命保険は、現在の日本で大きな課題となっ