Ⅰ.はじめに 近 年 、 ADHD、 高 機 能 広 汎 性 発 達 障 害 で 不 登 校 等 の 二 次 障 害 に よ り 心 身 症 ・ 神 経 症 等 の 診 断 に て 、 小 児 科 、 児 童 精 神 科 に 入 院 し 、 特 別 支 援 学 校 (病 弱 養 護 学 校 )に 在 籍 す る 児 童 生 徒 が増加しており、その対応が大きな教育の課題となっている。これらの児童生徒の数は、平 成 15 年 度 と 平 成 18 年 度 を 比 較 す る と 2 か ら 3 倍 に な っ て い る 。 そ の 多 く は 、 具 体 的 な 状 態 として不登校、対人恐怖、過剰な不安状態などを呈し、心身症・神経症等の診断で入院し、 特 別 支 援 学 校 (病 弱 養 護 学 校 )に 在 籍 し て い る 。 こ れ ら の 児 童 生 徒 と 関 連 す る 小 中 学 校 の 児 童 生徒を対象に、具体的に次の4点について研究し明らかにする。 (1)米 国 T.M. Achenbach ら が 開 発 し 、 国 際 的 に 通 用 し て い る 子 ど も 用 の 情 緒 や 行 動 の 包 括 的 な 質 問 紙 [ 親 用 の CBCL(=Child Behavior Checklist)、 教 師 用 の TRF(=Teacher's Report Form)と 本 人 用 の YSR(=Youth Self Report)] を 使 用 し 、 親 、 教 師 、 本 人 の 三 者 の 立 場 か ら 多 面 的 に 情 緒や行動を評価し、客観的・主観的実態を検討し、3者間のずれ、プロフィールの特徴を解 析し、心理、行動特性を明らかにし、自尊感情の低下を防ぐ。 (2) 発 達 障 害 の 子 ど も が つ ま ず き や す い 聴 覚 情 報 を 視 覚 に 訴 え る い わ ゆ る 視 覚 支 援 教 材 の 開 発 を 行 い 、 そ れ を 活 用 す る こ と に よ り 、 児 童 生 徒 が 「 で き た 」、「 わ か っ た 」 と い う 学 習 面での達成感、成功感を味わわせる機会を増やし、自尊感情を高める機会を確保する。 (3)本 人 、 親 、 教 師 の 評 価 が 著 し く ず れ て い る ケ ー ス や 、 適 応 状 態 に 改 善 が み ら れ た 児 童 生 徒 の 事 例 研 究 を 行 い 、 学 校 適 応 (特 別 支 援 学 校 へ の 適 応 と 小 学 校 、 中 学 校 へ の 適 応 を 含 む ) へ の 障 壁 、 そ の 再 適 応 へ の 過 程 (心 理 面 と 学 習 面 の 両 方 )を 明 ら か に す る 。 (4)(1)(2)(3)を 検 討 す る 中 で 、 個 々 の 児 童 生 徒 の 実 態 に 応 じ た 教 材 開 発 や 個 別 指 導 の 在 り 方 (LD、 ADHD 等 の 児 童 生 徒 に 配 慮 し た 教 科 学 習 の 内 容 ・ 方 法 )に つ い て 、 適 応 状 況 に 改 善 が み ら れ た 事 例 を 検 討 し て い く 中 で 、 ADHD、 高 機 能 広 汎 性 発 達 障 害 で 不 登 校 等 の 二 次 障 害 のある児童生徒への支援に関するガイドブック−学習支援編−を冊子としてまとめ、教育現 場に配布する。 な お 、 こ の 研 究 を 進 め て い く 過 程 に お い て 、 I C F ( WHO 国際生活機能分類)の考え方 を使って現状分析を行い、問題発生予防の考えに従って学級・学校経営から個別指導までの プロセスを明らかにする。 Ⅱ.ICFの考え方を使って現状分析を行う。 1 ICFとは、 障 害 に 関 す る 国 際 的 な 分 類 と し て は 、 こ れ ま で 、 世 界 保 健 機 関 ( 以 下 「 W H O 」) が 1980 年 に「 国 際 疾 病 分 類( I C D )」の 補 助 と し て 発 表 し た「 W H O 国 際 障 害 分 類( I C I D H ) が 用 い ら れ て き た が 、 W H O で は 、 2001 年 5 月 の 第 54 回 総 会 に お い て 、 そ の 改 訂 版 と し て 「 I C F ( International Classification of Functioning、 Disability and Health)」 を 採 択 し た 。 ICFは、人間の生活機能と障害に関して、アルファベットと数字を組み合わせた方式で 分 類 す る も の で あ り 、 人 間 の 生 活 機 能 と 障 害 に つ い て 「 心 身 機 能 ・ 身 体 構 造 」「 活 動 」「 参 加 」 の 3 つ の 次 元 及 び 「 環 境 因 子 」 等 の 影 響 を 及 ぼ す 因 子 で 構 成 さ れ て お り 、 約 1500 項 目 に分類されている。 これまでの「ICIDH」が身体機能の障害による生活機能の障害(社会的不利を分類す るという考え方が中心であったのに対し、ICFはこれらの環境因子という観点を加え、例 えば、バリアフリー等の環境を評価できるように構成されている。このような考え方は、今 後、障害者はもとより、全国民の保健・医療・福祉サービス、社会システムや技術のあり方 の方向性を示唆しているものと考えられる。 2 ICFの目的 ICFは多くの目的に用いられうる分類であり、さまざまな専門分野や異なった領域で役 立 つ こ と を 目 指 し て い る 。 ICF の 目 的 を 個 別 に み る と 、 以 下 の と お り で あ る 。 ・ 健 康 状 況 と 健 康 関 連 状 況 、結 果 、決 定 因 子 を 理 解 し 、研 究 す る た め の 科 学 的 基 盤 の 提 供 。 ・ 健康状況と健康関連状況とを表現するための共通言語を確立し、それによって、障害の ある人々を含む、保健医療従事者、研究者、政策立案者、一般市民などのさまざまな利用者 間のコミュニケーションを改善すること。 ・ 各国、各種の専門保健分野、各種サービス、時期の違いを超えたデータの比較。 ・ 健康情報システムに用いられる体系的コード化用分類リストの提供。 このICFの考え方は、特別支援学校の学習指導要領改訂にも大きな影響を与え、特に自 立活動の領域においては色濃く反映されている。 本研究では、発達障害のある児童生徒の環境や個人特性を考えた実態把握をICFにより 分 析 し 指 導 に 役 立 て る も の で あ る 。 特 に 、「 子 ど も 」 に か か わ る 複 数 の 教 師 が デ ィ ス カ ッ シ ョンを行いながら分析を行うことにより情報を共有していくことが重要である。 健康 状態 (変 調 ま た は 病 気 ) 心身 機能 活 動 参 加 身体 構造 背景因子 環境因子 図2 個人因子 ICF の 構 成 要 素 間 の 相 互 作 用 用語の説明 心 身 機 能 ( body functions) と は 、 身 体 系 の 生 理 的 機 能 ( 心 理 的 機 能 を 含 む ) で あ る 。 身 体 構 造 ( body structures) と は 、 器 官 ・ 肢 体 と そ の 構 成 部 分 な ど の 、 身 体 の 解 剖 学 的部分である。 機 能 障 害 ( 構 造 障 害 を 含 む )( impairments) と は 、 著 し い 変 異 や 喪 失 な ど と い っ た 、 心 身 機能または身体構造上の問題である。 活 動 ( activity) と は 、 課 題 や 行 為 の 個 人 に よ る 遂 行 の こ と で あ る 。 参 加 ( participation) と は 、 生 活 ・ 人 生 場 面 ( life situation) へ の 関 わ り の こ と で あ る 。 活 動 制 限( activity limitations)と は 、個 人 が 活 動 を 行 う と き に 生 じ る 難 し さ の こ と で あ る 。 参 加 制 約 ( participation restrictions) と は 、 個 人 が 何 ら か の 生 活 ・ 人 生 場 面 に 関 わ る と き に 経験する難しさのことである。 環 境 因 子 ( environmental factors) と は 、 人 々 が 生 活 し 、 人 生 を 送 っ て い る 物 的 な 環 境 や 社 会的環境、人々の社会的な態度による環境を構成する因子のことである。 *個人因子 Ianes1 ) は 、 情 緒 と 行 動 の 個 人 因 子 と し て 、 帰 属 ス タ イ ル 、 自 己 効 力 感 、 自 尊 心 (セ ル フ ・ エ ス テ ィ ー ム )、 動 機 、 情 緒 等 を あ げ て い る 。 こ れ ら の 内 容 は 、 武 田 の 大 学 院 等 の授業の中で解説しているが、本紙では省略する。 1)Ianes, D., Celi, S., & Cramerotti, S(2003)Il Piano educativo individualizzato progetto di vita. Erickson. Ⅲ.学級集団の中での問題発生や悪化の予防 問題の発生を予防することを一次予防、問題の悪化を防ぐことを二次予防、問題による二 次 的 な 社 会 的 不 利 益 を 防 ぐ こ と を 三 次 予 防 と い う ( 図 1 )。 一 次 予 防 は 、 一 般 的 な 予 防 ( universal prevention) と 選 択 的 予 防 ( selective prevention) に 分 け られる。一般的な予防は児童生徒全員を対象に行うものである。例えば、発達障害など特別 な教育的ニーズのある児童生徒が在籍する学級において、普段の学級経営において発言の仕 方、仲良くするマナーなど学級生活にかかわるルールを決めておくことが大切である。いわ ゆる全員を対象としたメンタルヘルスケアである。 次に多動であったり、対人関係に問題を抱えているようなリスクの高い子どもたちを選ん で 指 導 ・ 支 援 を 行 う こ と は 選 択 的 予 防 ( selective prevention) と い う 。 また、すでに教室を飛び出す、対処に暴力をふるうなどの問題を出している子どもに対し て は 適 用 根 拠 の あ る 必 要 な 予 防 ( indicated prevention) と い う 。 適 切 な 対 処 が 必 要 で あ り 、 保 護者や専門機関等との連携を図りながら指導・支援が必要な段階である。 三次予防は、不登校等の非社会的行動や非行等の反社会的行動、また、心身症等の身体症 状に対して、カウンセリングや治療を行うことにより問題による二次的な社会的不利益を防 ぐことである。そして、具体的に各レベルごとに予防策をまとめる。 臨 床 ・治 療 ( clin ica l / tr e a t m e n t ) 三次予防 適 応 根 拠 の ある 必 要 な予 防 (in d ic a te d p r e ve n t io n ) 二次予防 選 択 的 予 防 ( se le c tiv e p r e ve n tio n ) 一 般 的 な 予 防 ( u n ive r s a l p r e v e n tio n ) 一次予防 図1 問題発生の予防 Ⅳ.子ども用の情緒や行動の包括的な質問紙の活用 幼児期から思春期にいたる子どもの情緒や行動を包括的に評価する質問紙として、米国 Vernmont 大 学 の Achenbach が 開 発 し た 一 連 の 調 査 票 が あ る 。 保 護 者 が 記 入 す る Child Behavior Checklist (CBCL)、 ほ ぼ 同 じ 内 容 で 本 人 が 回 答 す る Youth Self Report (YSF)、 な ら び に 教 師 が 回 答 す る Teacher’ s Report Form (TRF)で す 。 CBCL は 2-3 歳 の 幼 児 版 ( CBCL/2-3) と 年 長 児 版 ( CBCL/4-18) と に 分 か れ る 。 CBCL な ど 一 連 の 評 価 用 紙 の 構 成 の 特 徴 は 、 子 ど も の 情 緒 と 行 動 を 多 面 的 に 評 価 す る こ と で あ り 、 そ れ ぞ れ 男 女 別 に 標 準 化 さ れ て い る 。 CBCL / 4-18 は 社 会 的 能 力 尺 度 と 問 題 行 動 尺 度から構成されている。社会的能力尺度は、子どもの趣味や友達関係、家族関係など生活状 況 を 調 べ る も の で あ る 。 問 題 行 動 尺 度 は 118 の 質 問 項 目 と 書 き こ み 可 能 な 1 項 目 か ら 構 成 さ れ て い る 。こ れ ら の 質 問 に よ り 評 価 さ れ る 症 状 群 尺 度 は 、 「 ひ き こ も り 」、 「 身 体 的 訴 え 」、 「不 安 / 抑 う つ 」、「 社 会 性 の 問 題 」、「 思 考 の 問 題 」、「 注 意 の 問 題 」、「 非 行 的 行 動 」、「 攻 撃 的 行 動 」 の 8 つ の 軸 か ら な り 、 さ ら に 「 ひ き こ も り 」、「 身 体 的 訴 え 」、「 不 安 / 抑 う つ 」 か ら な る 内 向 尺 度 、「 非 行 的 行 動 」 と 「 攻 撃 的 行 動 」 か ら な る 外 的 尺 度 と 総 得 点 が あ る 。 こ れ ら の 得点は標準化されたプロフィール表にプロットすると T 得点に換算される。このプロフィ ール表には 2 つの点線が記入されており、2 つの点線にはさまれた領域は境界域、その下は 正 常 域 、 そ の 上 は 臨 床 域 と 評 価 さ れ る (図 2 )。 こ れ ら の 結 果 か ら 、 子 ど も の 情 緒 面 及 び 行 動 面の発達や問題の特徴を一目で包括的につかむことができる。さらに対象年齢がひろいこと から追跡調査によるその子どもの変化を観察することが可能である。 図2 発 達 障 害 の あ る 児 童 の Teacher’ s Report Form (TRF)の 結 果 Ⅴ.個別の指導計画の作成と指導や支援に対する評価 WISC Ⅲ や DN-CAS 等 の 知 能 検 査 や 認 知 検 査 を 実 施 し 、 各 教 科 等 の 実 態 や 情 緒 及 び 行 動 の 実態を把握し、個別の指導計画を作成する。児童生徒本人に対しての評価、そして、個別の 指導計画に関する形成的評価を経て、指導や支援に対する評価を行う。 武田 鉄郎 教材名(領域) 1 日の予定表 対象 めあて 小学校低学年(1 日の見通しを持つことが困難な児童) ・ 1 日の見通しを持つことができる。 ・ 見通しを持つことを習慣づけることができる。 教材の説明 ・ 教室内に限らず、もち運 びできるため、場所を選 ばず見通しを持つことが できる。 【準備物】 ・ 下敷き・画用紙・ラミネ ート・マジックテープ 【作り方】 ・ 下敷きに1~6の数字をマジックなどで書き込む。 ・ 数字の横にマジックテープをつける。(予定を貼り替えやすくす るため) ・ 算数、国語などの時間割を画用紙に書き、それをラミネートする。 その裏にマジックテープを貼り付ける。 指 導 の ポ イ ン 【指導方法】 ① 終わりの会で、次の日の予定表を貼る。 ト その他 ② 朝の会で 1 日の予定を確認する。 ③ 予定(時間割)が終わるごとに、その予定の紙をはがしていく。 【補足】 ・ 持ち運びができるという点で、個人で扱う下敷きにしたが、低学 年であれば、対象の児童を「予定係り」とし、クラス全体で扱う 教材にもできる。 ・ 終わるたびにはがしていくので、達成感が味わえると同時に、 「あ とどれだけ残っているか」が視覚的に判断しやすく見通しを持ち やすい。 ・ 最初は絵カード付きの簡単なものから始め、段階的にレベルを上 げていき、最終的には黒板に書いているだけのもので、自分で見 通しを持つことができるようにすると効果的。 教材名(領域) イベントカレンダー 対象 小学生 めあて 自分たちで 1 ヶ月の予定を確認しながら、その月のカレンダーを作成 し、そのカレンダーを掲示することによって見通しをもって生活するこ とができる。 教材の説明 【準備物】 ・透明ウォールポケット(ポケットの数は縦 6×横 4) ・ミシン ・厚紙 ・透明の板 【作り方】 ・透明のウォールポケットをミシンで縦に 2 等分する。なければ接着剤 で代用する。 (このときポケットの数を縦 6×横 8 にする。 ) ・厚紙をポケットの縦の長さの半分の大きさに切り、それに学校行事や クラスメイトの誕生日などを表す絵を描き、イベントカードを作る。 ・透明の板をポケットと同じ大きさに切り、1∼31 の数字と曜日を書 く。 ・透明の板をポケットの大きさよりも少し大きめに切ったものを3つ作 る。ポケットからはみ出るところに「きのう」 「きょう」 「あした」と書 く。 【使用方法】 月ごとにカレンダーを作成し、教室に掲示する。 一日ごとに「きのう」 「きょう」 「あした」の3つのカードを移動させる。 その月が終わったら、次の月の予定を確認しながら、イベントカレンダ ーを作成する。 日付がカードになっているため何度も使いまわすことができる。 指導のポイント 教室の目立つところに掲示する。 教材名(領域) 「いま&もくひょう時計」 (算数、自立活動) 対 象 めあて 小学校低学年(時刻をよむことが困難な子) ・時刻をよむことができる。 ・時間の感覚を養い、見通しを持つことができる。 教材の説明 ・取り外しができ、 「いま」時計と「もくひょう」時計を分けて提示す ることができる。 ・持ち運びができ、さまざまな指導場面で用いることができる。 【準備物】 ・ホワイトボード・板・金具・既製時計・算数セットの時計 【作り方】 ・板とホワイトボードに既製時計が入る穴を糸のこで開ける。 (いま) ・既製時計の針に油性マジックで色(赤・青)をぬり、時間と分も色 分けをしてかき入れる。 ・算数セットの時計が掛かるよう金具を設置する。 (もくひょう) ・壁掛金具と台を付けて完成。 指導のポイント 【指導方法】 その他 ① 「いま」の時刻(短針→長針)を読む。 ② 水性ペンで数字を書き込む。 ③ 「もくひょう」の時刻を操作する。 ④ 水性ペンで「もくひょう」を書き込む。 【補足】 ・既製時計には全く興味を示さなかった児童が、自作時計をみるよう になった。時刻を書き込むことができるようになってきた。 ・ 「短針と長針の色」は「算数セットの時計の色」と合わせて塗り 分けた方がわかりやすい。 ・なるべく学校にあるもの(算数セットなど)を用いて工夫する。 ・ 「いま」時計は KUMON(スタディ・クロック)製を参考にし、コメリ 量販店の製品(リズム 4KG671)を使用した。 ・ 「いま」時計は複数作り、家でも使ってもらえると効果があがる。 教材名(領域) 対象 めあて 教材の説明 「予定変わったよ、ボード」 全学年 ・予定の変更を自分で確認し、見通しを持つことができる。 ・正規の時間割とその横に変更後の表示と変更ありの印を提示すること ができる。 ・言葉のみでは理解しにくい児童に視覚的に知らせることができ、その 都度自分で確認することができる。 【準備物】 ・ホワイトボード・教科名入りマグネット・変更を知らせるマグネット 【作り方】 ・ホワイトボードに日付や時間割の枠などを油性ペンで書き込んでおく ・教科名入りのマグネット、変更知らせマグネットを作る。 ・教室内の掲示板に貼り、完成。 指導のポイント その他 ・聞き取りの苦手な子や、見通しを持つことが苦手な子が掲示を意識す るようにする。 ・朝の会など、変更を伝える場面で確認教材として使用する。 【補足】 ・係の一つとして、クラス経営に取り入れ子どもたちが活用していける ようにする。 教材名(領域) 対象 めあて 「忘れ物なしケース」 全学年 ・1 人で翌日の時間割ができる。 ・授業準備がスムーズにできる。 教材の説明 ・各教科で必要な準備物をセットにしてまとめておくことができる。 ・机の中の整理整頓をすることができる。 【準備物】 ・ファスナー付きケース(各教科分)、中身確認チェックシート 【作り方】 ・各教科、通常の学習に必ず必要なものをシートに書き出す。 ・各教科を色分けし、教科書等学習に必要なものをファスナー付きケー スに入れる。 ・中身チェックシートをラミネートしてケースに入れる。 ・ケースに教科名を書き入れる。 指導のポイント その他 【指導方法】 ・登校したら鞄の中身を全て机の中に移す。 ・時間割通りにケースを重ねる。 ・学習が終わったものは一番下にする。 ・下校時は机の中身を全て鞄に移す。 【補足】 ・授業で使用するものを学校-家庭間で持ち運びできるように家庭に協 力を求める。 ・慣習となってきたら徐々にケース使用をやめ、準備物チェックカード のみにしていくなどステップアップしていく。 ・1週間単位等で評価カードを作り、一人で準備できたか、忘れ物はな かったか、など振り返る。 名前 お金読み取りシート 対象 複数の硬貨が混合する課題に対して、100 円玉と 10 円玉と 1 円玉を区別して数字 に変えられない児童 (例)硬貨は 120 円なのに、「102 円」という数字に変えてしまう児童 ただし、「120 円」=「ヒャクニジュウエン」と発音できることが条件 目的 混合する複数の硬貨を数字に換算する方略を、できるだけ失敗の少ないやり方で 学習する 使 用 【準備物】 法 ・硬貨 ・お金読み取りシート 【手続き】 ① 硬貨をそれぞれの欄に配置する。 ② 硬貨欄の下に、それぞれの硬貨の数を書き込む。 ③ 書き込まれた数字を読む。 ただし、このシートに用意された様々な手がかりは、児童の課題達成度が上がっ ていくに従って少しずつフェイディングする必要がある。 ←①ここに硬貨を置く ひゃく じゅう いち ←②ここに数字を書く 教材名(領域) カラフル定規(算数) 対象 小学生(ミリメートルの目盛りが読み取りにくい児童) めあて ミリメートル単位まで正確に読み取る。 教材の説明 【準備物】 ・市販の定規 ・マジック 5 色 【作り方】 市販の定規に 1 ミリメートルごとの目盛りにマジックで色を付ける。 【使用方法】 市販のものと同じように使用する。 指導のポイント 今回は長さを測るときに定規が動かないようにマグネット付きの定規 その他 を使った。 読み取れるようになったら、市販の定規で目盛りが読み取れるかを確認 する。 ・目盛りが見やすいよう工夫されている市販の定規の例 KOKUYO GY-GBA100B 2・3・7・8mm の目盛りを 1・4・6・9mm の目盛りよりも長くするこ とで、見やすくなっている。 教材名(領域) 対象 めあて 「体積」 (算数) 小学 6 年生 ・ いろいろな体積の求め方を視覚的に捉えて理解することが できる。 教材の説明 ・ 取り外しができることにより、もとの体積や欠けた部分を 目で見ながら捉えることができる。 【準備物】 ・ 2㎝角の立方体(木製 市販のもの) 木工用ボンド 絵の具 指導のポイント ・ 実際の立体一つ分は、2㎝角であるが、1㎝角として考え させる。 (1㎝角だと小さすぎるため) ・ もとの部分と欠けている部分を色分けしているため、○色 から△色を取り除くというように考えやすい。 教材名(領域) 人体パズル(理科) 対 象 中学生(通常学級、特別支援学級 全般) めあて ヒトの体の各臓器の形や名称、人体のどこにあるかなどを知る 教材の説明 ・人体のシルエットを描いたシートと、心臓、肺、食道と胃、小腸 大腸、すい臓、肝臓、腎臓、ぼうこう、脳の各臓器のモデル(着色してラミネ ート加工したもの) 指導のポイント その他 発達段階に合わせて色々な使い方ができる。 (例) パズル全体を使って‥ ・単元の導入で、各臓器をばらばらに出して、その名称を当てる 人体のどこにあるか考える ・単元の終わりに、臓器を正しく置いて、人体を完成させる(立体的な位置関 係も表せる) 一部を使って‥ ・人体の器官とはたらきについて学習するとき、形や大きさ、場所についてイ メージしやすい ・モデルを使って各臓器の形と名称、おおまかな位置をおぼえる ・ワークシートを併用し、各臓器のくわしいつくりやはたらきについて学習す る ・カードに書いたキーワード(尿素の合成、栄養分の吸収、水分の吸収、4つ のへや、塩酸、など・・)が、どの臓器と関連するか、ゲーム形式で考える 教材名(領域) 対象 めあて 「単位変換マーク」(算数・かず) 6年生 ・時間の単位変換方法をマークで知ることができる。 ・単位変換のイメージを持つことができる。 教材の説明 ・単位変換の際、60 倍なのか 60 分の 1 倍なのか視覚的に訴えることが できる。 ・カラーチョークよりも目立つため、より強く意識することができる。 【準備物】 ・画用紙(2 色)、マグネットシート 【作り方】 ・画用紙に変換方法を色分けして書き込む。 ・マグネットシートをその裏に貼りつける。 ・学習の説明時に使用する。 指導のポイント その他 ・子どもたちが慣れてくるまで何度も使用し、イメージ化させていく。 ・徐々にマークの使用回数を減らし長期記憶にさせていく。 ・変換方法だけではなく、矢印の方向にも注目させる。 【補足】 ・ 「速さ」の単元のみだけでなく、重さや体積など単位変換の学習時に使 えるよう様々なパターンを作り使用する。 教材名(領域) 単位早見表(算数) 対象 小学生(中学年∼) めあて 単位の変換を正確に行う。 教材の説明 【準備物】 紙・厚紙 【作り方】 ・ 単位の早見表を作り、厚紙に貼り付ける。 【使用方法】 例:2000mをkmに直す。 ①早見表に合わせて数字と単位を書き込む。 ②直したい単位を早見表に従って上にかく。 指導のポイント 早見表を使う際、0 の数を確認しながら単位の変換を行う。 その他 教材名(領域) 動物カード (理科) 対 象 中学生(通常学級、特別支援学級 全般) めあて 動物の写真から、動物の体のつくりや分類について興味をもつ 動物同士の共通点や相違点について理解する 教材の説明 ・表は動物の写真、裏は分類表になっていて、動物名や分類を書き込むこと ができる(ラミネート加工しているため水性ペンで書いたり 消したりできる) ・脊椎動物、無脊椎動物あわせて100種類程度、動物名を正確に 答えられるように、同属の動物の写真も何種類か入れておく。 身近な動物だけでなく、珍しい動物の写真もある。 指導のポイント その他 発達段階に合わせて色々な使い方ができる。 (例) ・1人何枚かカードを持ち、動物名を調べる 「卵を産む動物は?」「海の中に住む動物は?」など質問をして、当てはまる カードを出す(黒板にはって仲間分け) ・仲間分けをして裏の表に書き込む ・仲間分けをもとに写真で動物の特徴を確認する ・机上に表向きにカードを広げ、カルタのように、分類(は虫類は?)や特徴 (冬眠する動物は?)に当てはまるカードを取る ※人数や発達段階に合わせて使うカードの種類や数を変える ※食物連鎖や環境学習にも使える。 (同じ環境に生息する動物は?)(この動物は何を食べる?) 教材名(領域) 対象 めあて 「分数のかけ算・わり算」(算数) 小学 6 年生(分数が苦手で公式にあてはめられない子) ・ 文章題を解こうとする。 ・ 公式にあてはめるのではなく、視覚を使って理解すること ができる。 教材の説明 ・ 文章題の話の筋に合わせて、教材を動かせることができる。 【準備物】 ・ホワイトボード・OHP シート・マジック 指導のポイント 【指導方法】 ① 文章を読み、何を問われているのかを知る。 ② 文脈に沿ってシートを折ったり広げたりする。 ③ ①で問われていることを目で捉えるようにする。 【補足】 ・ 紙で提示しても可能であるが、長期に保存したり、掲示す る際、ホワイトボードの方が丈夫である。 ・ ホワイトボードなら書き換えが簡単である。 教材名(理科) てこ 対 象 小学5年生(1対1対応) めあて 生活の中に てこを利用すると便利であることが分かる。 てこの仕組みを理解する 教材説明 ・ りんごを持ちあげるときの手ごたえをもとに、てこの仕組みに 興味を持つ ・ 支点・力点・作用点について、操作を通して理解することができ る。 ・ 支点からの距離に注目して考えることができる ・ (準備物) 長さ90cmから1m、直径1.5cmぐらいの棒 りんご、ナイロン袋、輪ゴム数本、 (作り方) 棒の端にハンカチに包んだりんごをくくる。ずれないよう に輪ゴムで固定する 指導のポイント ① いすに座った状態で、りんごをくくりつけた棒の反対側を持っ て、りんごを持ち上げる。 ② 持った場所を力点、りんごが上がった場所を作用点ということ を知る。 ③ 手ごたえを話し合い、もっと少ない力で持ち上がる方法がない か考える。 ④ 今までの経験から重いものを持ち上げるときにどんなことを したか思い出す。 (経験が少ないと思われるときは、ヒントを) ⑤ 真ん中に積み木置いて再び持ち上げる。 ⑥ 軽くなったことを感じた後、積み木の場所を支点ということを 知る。 ⑦ 積み木の場所を移動することで、手ごたえに違いがあることを 見つける。手ごたえが支点と力点との距離に関係していること に気づく。 ⑧ わかったことをプリントでまとめる。 教材名(領域) みる きく ふれる 対 象 肢体不自由 小学部 めあて 教材の説明 季節の自然(秋の木の実)をみて、ふれ、季節を感じる。 ・ 「どんぐりころころ」の歌をうたう。 ・ 自分がドングリになり、滑り台をすべり、池(青色シート)に はまる ・どじょうが登場 ・どんぐりを実際にさわる ペットボトルにいれる 入れる時の音に注目 入った後ふって音を出す 段ボールの中 にドングリをい れてみんなで 協力して音を出 す。その振動を 感じたりドング リの動きをみたり、音を感じる。 指導のポイント ・秋の季節を感じさせる「どんぐり」を題材として、いろいろな感覚 その他 を使って感じとる。 ・児童ひとりひとりが主役になる場面や集団での活動など、様々な要 素を取り入れることにより、児童の興味をひきつけることができる。 教材名(領域) オリジナルすごろく(全教科) 対象 学習に苦手意識のある子 コミュニケーションが苦手な子 めあて ① ゲーム内に漢字や算数などの課題を取り入れ、学習に苦手意識のある 子どもが楽しみながら学習に親しむことができる。 ② ゲーム内に教師や友達に協力してもらう課題を取り入れ、楽しみなが ら他者とコミュニケーションをとる機会を設ける。 又、決められたルールにそってゲームを行うことで、社会性を育てる。 教材の説明 ① 紙に、すごろくのマスを書く。 ② すごろくのマスに課題を書く。 ・すごろくのマスの課題は、学習に関することや友達教師に協力して 行うこと等を書く。 ・マス目の数を変えたり、色やフォントを変えたり、付箋で貼り直し ができるようにする等、児童生徒の実態に合わせて作る。 指導のポイント その他 ① ルールの確認をしっかり行う。 ② 様々な課題を設定し、繰り返し使用する。 (指導例) 教材名(領域) パッチンボウリング 対 象 知的障害(重度)肢体不自由 めあて ・ 友達と一緒にゲームを楽しむ。 ・ゲームのルールを理解する。 ・自分が倒したピンの様子を見たり、友達の活動を見る。 教材の説明 (準備物) ・ペットボトル5本∼10本(児童の実態に応じて) ・輪ゴムをつなげて約2メートル程度にする。 ・輪ゴムの一端にタオルを丸めて持ち手にする。もう一端はガムテープ 等で壁に固定する。 (使用法) ・ペットボトルをボウリングのピンのように壁際に並べる。 ・タオルの持ち手を充分引っ張ったところで離し、ペットボトルを倒す。 ・倒れたペットボトルの数を数える。 指導のポイント ・通常のボウリングのボウルが投げることが難しい児童・生徒がゲーム その他 を楽しむことができる。 ・ペットボトルは色づけをしたり、カラーの水をいれたり、音の鳴る鈴 等をいれたりして、注目できるように工夫するとよい。 ・児童の姿勢や実態にあわせて、ペットボトルを置く台の高さを調節す ることができる。 ・交流学習にも活用できる。 (例) 教材名(領域) 対 象 めあて 国語 小学校低学年程度 ことばをおぼえる 単語のはじめの語、終わりの語を意識する。 教材の説明 ・ 折り紙や色画用紙を短冊に切り、しりとり をして、その言葉を書く。 ・しりとりでわからない語がでてきたら辞書で 引いてもよい。 指導のポイント ・廊下などに掲示することにより、他の人に成果を見てもらえて、自 その他 分たちの達成感も生まれる。 ・ 同様にして漢字しりとりをしてもおもしろい。 教材名(領域) オリジナルすごろく(全教科) 対象 学習に苦手意識のある子 コミュニケーションが苦手な子 めあて ① ゲーム内に漢字や算数などの課題を取り入れ、学習に苦手意識のある 子どもが楽しみながら学習に親しむことができる。 ② ゲーム内に教師や友達に協力してもらう課題を取り入れ、楽しみなが ら他者とコミュニケーションをとる機会を設ける。 又、決められたルールにそってゲームを行うことで、社会性を育てる。 教材の説明 ① 紙に、すごろくのマスを書く。 ② すごろくのマスに課題を書く。 ・すごろくのマスの課題は、学習に関することや友達教師に協力して 行うこと等を書く。 ・マス目の数を変えたり、色やフォントを変えたり、付箋で貼り直し ができるようにする等、児童生徒の実態に合わせて作る。 指導のポイント その他 ① ルールの確認をしっかり行う。 ② 様々な課題を設定し、繰り返し使用する。 (指導例) 教材名(領域) パッチンボウリング 対 象 知的障害(重度)肢体不自由 めあて ・ 友達と一緒にゲームを楽しむ。 ・ゲームのルールを理解する。 ・自分が倒したピンの様子を見たり、友達の活動を見る。 教材の説明 (準備物) ・ペットボトル5本∼10本(児童の実態に応じて) ・輪ゴムをつなげて約2メートル程度にする。 ・輪ゴムの一端にタオルを丸めて持ち手にする。もう一端はガムテープ 等で壁に固定する。 (使用法) ・ペットボトルをボウリングのピンのように壁際に並べる。 ・タオルの持ち手を充分引っ張ったところで離し、ペットボトルを倒す。 ・倒れたペットボトルの数を数える。 指導のポイント ・通常のボウリングのボウルが投げることが難しい児童・生徒がゲーム その他 を楽しむことができる。 ・ペットボトルは色づけをしたり、カラーの水をいれたり、音の鳴る鈴 等をいれたりして、注目できるように工夫するとよい。 ・児童の姿勢や実態にあわせて、ペットボトルを置く台の高さを調節す ることができる。 ・交流学習にも活用できる。 (例) 教材名(領域) 対 象 めあて 国語 小学校低学年程度 ことばをおぼえる 単語のはじめの語、終わりの語を意識する。 教材の説明 ・ 折り紙や色画用紙を短冊に切り、しりとり をして、その言葉を書く。 ・しりとりでわからない語がでてきたら辞書で 引いてもよい。 指導のポイント ・廊下などに掲示することにより、他の人に成果を見てもらえて、自 その他 分たちの達成感も生まれる。 ・ 同様にして漢字しりとりをしてもおもしろい。 ICFを使った教育指導計画の作成 小学校低学年の広汎性発達障害の児童を対象として 作成の目的 現在教育現場ではたくさんのアセスメントや教育の手法などたくさんの方法は提示されて いる。しかし、日常業務の多忙や、指導計画を作成するも何を書いて良いかわからないなど から、それらの方法を十分に活用されていないケースが多いのではないかと感じた。 今回私たちはICFを活用した教育指導計画の作成を行う中で、特別支援教育に関わる全 ての先生方が直感的な操作から、児童・生徒の実態を把握できるよう考案した。 教育指導計画ではP-D-C-Aの観点から段階を踏んで計画を立てられる事を重点に置き 重要となる実態や目標はICF支援シートから記入できるよう関連性を持たせた。 また、広汎性発達障害の子ども達は対人関係の困難さからいじめに発展したり、居場所を 見つけられなかったりすることなどから、自己肯定感の低下、二次障害へと発展する可能性 がある。ソシオグラムを用いて当該児の周囲の人的環境を視覚的に把握することで、クラス 全体を活用した支援が可能になるのではと考えた。 私たちが考察した方法はほんの一例ではあるが、これをベースにさらによい方法へと発展 していくことを望んでいる。 1,実態及び主訴 A君は4学期の途中から人との関わりが少なくなり、自分の好きなことを一人で行う時間が増えてきている。主には本を読んでいたり、教 材、教具で遊んだり物を作ったりしていることが多い。遊びに誘うも自分の気に入った事でないと腰を上げない状態。授業中も同じで、現在 は全くといっていいほど自らノートをとったり、与えられた課題を行う事はなく、非常に担任の先生も苦労している。活動や行動を伴う授業で は、ペア行動であってもペアの子を意識できなったり、ペアの子を無視して担任の先生に答えを要求したり友達との関わりの中で考えを深 めることはできていない状態。しかし、定期テストでの点数は良好で、どの教科も比較的高い点数をとっている。しかし、算数の文章題や国 語の感情や気持ちを書く問題、文章の目的の部分を抜き出す問題は苦手意識を感じており、回答を後回しにすることが多い。この際、ヒント を与えることでスムーズな回答が行える。家庭の方でも公文に通っており、現在習っているかけ算などはすでにマスターしていて、学校での 全体授業としては非常に暇な時間なのではないかと考える。 友人との関係は、ある友達が自分の興味がある物を持っていたり、作っていたりすると歩み寄る場面はあるが、大勢の人数で遊んでいる ように見えても、ほかの友達とのやりとりはなく単独で目的の人や物に意識を向けていることが多い。また、ほかの友達のからかいや気に 入らない言動から、手を出してしまったり、口で言い返すなどから危害を受けることが多く、場合によっては状況が悪化し、多人数から、言葉 などのいじめ的行為を受けてしまっている。また、本人は戦隊物などに感情移入する事があり、「気をためている」「(パンチ)○○してぶっ飛 ばす」「瞬間移動?する」「空を飛ぶ(階段ジャンプ)」などSF的な考えを持ったり、先のとがった鉛筆を人に向け「刺すぞ」と言ったりすること がある。本児の我慢が限界を超えると原因となった児童の服に落書きしたり、殴り返すという行動をとることがある。 人の間違っていることも嫌なことも平気で口に出して言うことから先生から注意を受けることもある。どうしても納得がいかず、なかなか謝 るということはしない。本児は間違った指摘をしていないように感じているが、その指摘の仕方や場面などを担任の先生から指導されること が多く非常にストレスのある状態にあると考える。 本児に対し、言葉での指示は伝わりにくく、「○○君聞いてね」と注目を促す言葉掛けをしたとしても指示の内容を理解することが難しい。 この際では小さなメモ書きに「折り紙を片付けて国語の教科書を出しましょう」と言うように視覚的な情報で伝えるとスムーズな行動に結びつ くことが多い。またそれに併せ、本日行う予定を順番に書き記し、活動を行う際には丸印を付け今から行うことを確認し、終わると消していく という作業を行うことで時間的な見通しがつきやすく行動につながりやすい。 母親の要望としては、「学校ではもっとA児にあった課題を与えてほしい」「授業に向かわないのは担任のやり方が悪いのでは?」と言う意 見をもらっている。現実的にA児が在籍しているクラスは多動傾向の児童が約4名在籍しており、授業中はその児童の対応を行うことで精 一杯の状態で、本当に必要な支援をA児に行えていない状態。 担任の先生はA児の実態を考え取り出し授業を母親に提案し進めようとしているが、母親は「他のこと同じ事をしてほしい。できるはず」と いう思いを持っており、なかなか折り合いがつかないままでいる。 本児は優しいところもあり友達が教科書を忘れていると「見せて」の問い かけにすぐに応じ教科書を見せてあげたり、算数の問題などで困っていると「○○(答え)」と教えてあげる優しさを持っている。いきなり答え を教えてしまうことに課題はあるが、自分の力を発揮できる、注目の的になりうると感じたときは率先して色々なことに挑戦できる力を持って いる。 2,A児周囲の関係図(ソシオグラム) 個別学習の方が もっと細やかな 配慮が行える。 取り出し授業を 行いたい 担任のやり方に 強い要求あり 個別での取組み (学習)ではなく、 みんな(クラス全 員)と一緒に授業 に参加させてほ しい。 家庭 医療 地域 (塾) 校内委員会 アセスメント 担任 ○○でのアセス メント □□病院 学校との強い結 びつきはない 結果を伝えるだ け A児に合った勉強教 材を提供 コーディ ネーター 行動に困ることも 最近は落ち着いている と認識 B児 担任の先生絶対 の 存在甘える 見てほしい 行動のコントロールが難しい モグラたたき状態 クラス内での関係や学習 面などで気になるところが たくさんある。しかしクラス の現状を考えると細やかな 対応が難しい。もっと関わ れる時間、余裕を求めてい る 存在を意識して いる よく同意を 求めに行く A児 学習上の誇り (塾で習ったからいい) 暴言を吐いたり反抗 的 時には甘えたり B児 B児はちょっかい を出す事が多い 興味を示すことも B児も賛同した際 にはクラスへの 影響力は大きい A児は注意した い その結果、時に は危害を受ける 興味が合えばと ても楽しく遊べる 影響しつ つ、される 関係 友① 友② 行動をよく注意する A児をよくからかう その結果危害を受 ちょっかいを出す A児とのやりとりが ける エスカレートし、い じめ的行動にも 友③ 3,支援シート 会議名; 日時; 健康状態:高機能自閉症(診断) 2次障害の兆候あり 心身機能・身体構造 自分の世界 戦隊物・SF的考え 友達の挑発に乗り口 で言い返す 手を出してしまう 悪いこと、自分が正 しいと思うことは突き 通す。許せない 人の間違っているこ と 嫌なことを平気で口 活動内容への見通し をつける 環境因子 担任(40代女性) 研究熱心で色々取り組むが 深まりを持たせることが困難 担任の口頭指示が 伝わりにくい 見通しの持ちやすい 参加形態や環境作り 「やりたい・やってみ たい」と思う教材・教 具授業の工夫 活動 参加 「タイムリー」な板書 コミュニケーションを もっと多く 授業・遊びへの参加 【ノート記入】 母との約束で書かなければ いけない。だが、ほとんど行 えていない 「おもしろい、やってみたい」と 思うことでないと活動する意 欲がわかない。 多人数でいても自分 の世界。友達との関 わりほとんど無い 【会話・コミュニケーション】 「やりとり」にあまり興味がな い言っていることは解ってい ペアになっても、ペアの 子を意識しない 担任 を意識しながら行動 【コミュニケーション】 自分の興味のある物 しか参加しない 【授業への参加】 違うことを考えている。おもし ろくない。もう塾で習ってい る。 母の「できる」という思いと 担任の「個別の配慮が必 要」の折り合いをつける 参加者; 個人因子 たくさんの友達と関わ ることのできる基盤作 り。興味を広げる 要支援児童B児の存 在 マイペースな性格 自分の世界を持って いる 保護者からのプレッャー 「できるはず」「みんなと同 じように」と要望が強い 人への関心に偏りが ある。興味・趣味が 合えばとても意識す る 本人の気持ち 家庭で塾を習ってい る 学校の内容は学習 願い・現状 目標・支援 目標(優先) 作成者 個 別 の 指 導 計 画 名 A 前 学 年 生年月日 H 学級担任 2 年 X 組 作成年月日 性 12 年 ○ 月 △△ 日 ( 8 歳) 20年 11月 △日 別 男 診断名等 関係する学級 C 高機能自閉症 心理検査・発達検査 WISCーⅢ 2008/11/△△ 検査日 検査者 70 VIQ VC 65 PO 92 FD 97 PS 89 補足 ○動作性優位(VIQ70>PIQ89) 全検査76 ○下位検査の理解、群指数の言語理解に困りあり ○視覚的な情報の提示が優位だと考えられる 2008/11/△△ 検査日 検査者 継次処理 認知処理過程 89 PIQ 86 FIQ K-ABC 98 96 非言語性 同時処理 習得度 95 95 94 補足 ○総合尺度間に有意差なし その他の検査結果 総合所見 ○CBCL 社会性の問題、非行的行動が境界域、外向尺度が臨床域に達している。社会性の問題では、友 人との関わりの難しさや、共感性の難しさが見て取れる。また、非行的行動では、授業に向かうこ との困難さや第3者から認められないような独自の理論を突き通すなどの課題が認められる。外 向的尺度が臨床域にあるということで、まずは、非行的行動にスポットを当て友人間などのトラブ ルに対し折り合いをつけられる力と対処方法を身につけることが望まれる。 ○バウムテスト・DAM バウム:外界との境界線のとげとげしさ(枝か幹か解らない)。粗雑さがある。人間関係のぎこちな さ。根がなく不安定。 DAM:ロボットのような描写。体の動きのなめらかさを表現できておらず、人間としての特性、ボ ディーイメージが未熟。手足も細かくかけていない。→身体表現の細かい動きを本人も十分理解 できていない。または、する意欲がない可能性もある。 WISCの下位検査では極端に言語理解が低い。実際の活動場面でも言語を介したコ ミュニケーションに困難さがみられ、授業時や対話時の場面でとても気になる。したがっ て、言語指示はわかりやすいことばで簡潔に、ゆっくり、はっきり示し、一度で理解できな い時には指示を繰り返すとよい。集団指示の後、個別に言うようにする。例えば手がか りを与え(やさしいことばかけで絵や図、文字やモデルを示して伝える。 ○実際の生活や場面と結びつける。 ○作文を書く際、写真や資料などを手がかりとして与える。 ○文章題を解く際、キーワード(例:「合わせて」「のこりは」)に注目させる。 ○文章題の内容を絵や図で示すというような支援の方策が考えられる。 主 訴 教育的ニーズ ○対人関係の関わりが少なく、自ら関係を築こうとする動きが見られない。また、関わり ○友人や教師との関わりを深める。 を持ったとしてもTPOに応じた行動がとれなかったり、人の嫌がる事を行ってしまうこと が多い。 ○授業に参加できる環境を整え、方法を工夫した上で同じ内容の課題を行える。 ○学習(授業)に向かう事が難しく、自分の好きなこと(小物で遊ぶ、本を読む)を行って いる。とくに黒板の板書が苦手。配布されたプリントやドリル、既知の課題などは意欲的 に参加できている。 実態 目標 ○授業中小物で遊んだり、本を ○45分の授業に見通しを持っ 読んだりしている。授業に参加し て参加することができる。 ていない。 短期目標 手だて ・授業の進行を把握する。 ・授業に参加する時間を増やす (ファンタジーの時間を減らす) ・板書内容を時間内でノートに視 写することができる。 ・本時の内容を順序立てて示 す。 ・板書の内容をあらかじめプリン トに作り、手元で提示する。 学 習 面 ○記憶に頼る問題(かけ算・漢 ○その時間内に行うべき課題の ・自分で本時行う課題の量を決 字の書き取り)などは進んで行 量の見通しを持ち、進んで行え め行うことができる。 えるが、繰り返しでできると感じ るようになる。 ている課題には手をつけなかっ たりする。 ○対人関係に偏りがあり、班活 生活面 動や集団活動などでも友人を意 識しないことが多い。 社 自分の好きなこと、興味のある 会 ことに適う友達がいれば積極的 性 に関わりを持とうとする行動が ・ 見られる。 コ ミ ○視覚優位で、聴覚からの情報 ュ 収集が困難なため、授業や日常 ニ 生活面での聞き逃しが多い。 ケ ー シ ョ ン ○クラスや班の友達などを意識 し一定のやりとりを持ちながら活 動を行う。 ○興味、関心の幅を広げ、たくさ んの友達と関われる基盤を作 る。 ・集団でのソーシャルスキルト レーニングに参加する。(班活動 に参加する) ・個別でのソーシャルスキルト レーニングに参加する。 ・わかったかどうかを相手に伝 ○見通しを持って活動すること える、聞き直しを少なくする。 ができる。 ・わからなかった場合はすぐに ○自分の思いと相手の気持ちを 聞き直しすことができる。 伝え合おうとする。 ・本時行う授業の課題や順番、 量(時間配分)などをメモ書き し、先の見通しを持ちやすくす る。 ・班活動などの共に活動する友 達を写真カードなどにまとめ、役 割分担など見て解るように視覚 的な支援を行う。(モデリング) 様々な活動をK児の興味を引き やすい教材などを提示する。 ・本児が理解しやすい絵カード の準備や本日の予定、授業の 内容などメモ書きし渡すように し、視覚からの情報を取り入れ やすい環境作りを行う。 評価・見直し 5,A児を例とした多層的支援とその例示 第 3 次 予 防 第 2 次 予 防 第 1 次 予 防 ◎医療機関 (投薬などの相談) ◎地域・警察 (反社会的行動時・行方不明などの迅速な対応) 支援の例示 密 な 連 携 ・ 支 援 ◎広い視野 ◎あらゆる可能性の想定 一貫共通した指 導 各機関との連携 可能性として 児童の周辺環境との共通理解 対応の一貫性 ・校内での共通理解(校内委員会) ・医療(アセスメント) ・学校全体、保護者との連携(アプローチ) ・行動特性の把握 ◎アセスメント (WISC K-ABC バウムテスト DAM CBCL等) ◎応用行動分析 ◎個別対応・特別支援学級 (SST・抽出授業・スクールカウンセラー) ◎各関係機関 (医療・障害者センター・ポラリス) 児童の実態の把握 指導の一貫性 ◎発達障害等 チェックリスト ・学年教師間における共通理解(実態・声かけ等) ・学級経営(環境作り) 集団でのSST ・保護者からの聞き取り(気になる面を主に) 児童の状態把握 6,考察 小学校2年生は、休み時間を通して、日常生活における人間関係をたくさん学ぶことができる時期である。したがって、友だちとの関わりや遊びの中から「生き ることを楽しむ力」を育んでいってほしい。しかしながら、本児は授業中のファンタジーやコミュニケーションがうまくとれていないという学習面と生活面の両面に課 題が生じ、二次的な障害も心配される。 WISCからは、視覚優位な特性が考えられるが、現実社会における認知の偏りが大きい可能性があること。下位検査での「理解」が低いことから、現実世界で通 用する臨機応変力を持ち合わせていない可能性もある(知識をつなぐことができない、必要な時に使えないなど)こと。さらに、バウムでも外界との境界線のとげ とげしさ(枝?幹?)、粗雑さがある。根がなく不安定で生活基盤の不安定さや人間関係のぎこちなさをみてとれる。DAMでは、ロボットのような描写、身体の動き のなめらかさを表現しておらず、人間としての特性、ボディイメージが未熟。手足も細かく描けていないので、身体表現の細かい動きを本人も十分できていない、 またはする意欲がない可能性がある。さらに、担任への聞き取り(行動と学習に関する基礎調査票)や週一回の授業介入から、本人の困り感をアセスメントする ことができた。 また、ICFの機能分類で検討した結果、自閉的傾向が強く見られ、活動や参加に課題があることに焦点をしぼっていかなければならないことに気付かされた。 これらの分析結果より、学習面では特に授業中の「ファンタジーからのカムバック」を、生活面では「コミュニケーションの力の向上」を目標にしたいと考えた。で は、これらの仮説を元にした指導面での提案事項を探っていきたい。「自分だけは特別」を気にはするがあまり気にしない性格なので、こだわりがどこに表れるか により対応を変える必要がある。「特別がすごくうれしい(先生を独り占めできる)」時と、「自分だけみんなと違うのはイヤ」というアンバランスさが日々あることに 注視していく。担任として、これらへの対応は「応用行動分析の視点」を持ち、メモをとることからみえてくる行動特徴があると考えられる。直前の状況や周囲の反 応、対処行動などを書き留めていくことにする。具体的な手だてとしては、「彼の中での起承転結経験を遊びを通して増やすこと」を授業の中で取り入れていく。 それは、「短時間でストーリー性のある教材」の方がよい。授業の進度を視覚的に捉えられるよう、個別にすることを書いて提示する。その他例えば、「にらめっこ 遊び」(おもしろい顔をするー笑うー笑わせる)「じゃんけん列車」(じゃんけんに勝つー後ろへつながっていくー全体が一つに長くなる)「砂の上で棒倒し」(砂を順 番にとるーバランスが崩れて倒れる)この際に、誰が笑わせたか、勝ったか棒を倒したかなどの作用を見届ける。しかしながら、勝負や一番にこだわってしまう場 合は、ソーシャルスキルトレーニングを用いて支援に幅を持たせたり、工夫改善していくことにする。 WISCの結果から得られたように本児は視覚からの情報収集が優れている点から、メモ書きによる指示が有効だと考え現在取り組んでいる。メモを渡すと同時に 注視し考えるように読んでいる姿が見られる。メモの内容で「これから○○をします」といった内容では納得し行動に移せることが多いが「○○(遊び道具)を片付 けて△△の準備をしましょう」などの内容では今続けている遊びを止められた、つまり禁止の要素が含まれているためその場でメモを破り捨ててしまう事がある。 こういった行動も観られるがこちらが伝えようとした事を解った上での行動であるため、有効なコミュニケーション手段だと考える。担任の先生が日常的に同じ頻 度でメモを渡すとなると授業の進行などに影響が出てしまう。なのであらかじめA児の行動を予想しメモを準備しておくことや、指導上これは是非とも伝えたい事 柄をメモやコミック会話など文字を介してコミュニケーションを図るよう提案している。 また、2学期後半より学習補助教員(T-T)の先生が配置された。当初は担任との役割分担がうまく行かず子ども達から見ても遊んでくれる先生という認識が強 いように思えた。しかしT-Tの先生の役割や児童の実態の把握、対応の方法が身につくことでうまく機能しその結果クラス全体を落ち着かせる結果となった。本 児も気に入っており、いたずらをすることもあるようだが、授業中などのクラスの雰囲気から推測すると良好な関係を築けているのではないかと感じた。 最後に、以上のような取り組みを継続して行いつつ、評価や反省を積み重ねることを通して、教育指導計画をフレキシブルに使っていくことに意義があると考え ている。この事例では、実際の教育現場で使えるよう、また直接の指導・支援に結びつけやすいよう工夫を施したつもりである。したがって、子ども、教師、保護 者の困り感を少しでも軽減できることを確信しつつ少しでも広めていくことができれば幸いである。 ○ソシオグラム作成例 ○CBCL(TRF)プロフィール ○ICF作成の手順 ○ICF支援シート ○ICF支援ボード作成例 ICFを使った指導計画の作成 ∼小学校中学年の高機能広汎性発達障害の児童を対象として∼ ALICE 作 目 1.はじめに 2.児童の実態 3.ICFの分類 4.問題の発生や悪化の予防 5.個別の指導計画 6.考察 次 1.はじめに 今回、小学校中学年のひとりの児童を事例とし、高機能広汎性発達障害の児童の支援に ついて考える。事例対象の児童(以下本児)は現在、小学校6年生であり、担任は試行錯 誤の中、本児と関係を築きながら、指導に当たってきた。我々は、当時から現在に至るま で本児の支援に当たってきた担任や学生ボランティアから情報を収集し、4年生当時を想 定して、個別の指導計画等の作成を行うこととした。 はじめに、これまでの指導成果や指導を通してわかってきたことについて、担任や学生 ボランティアの話を紹介する。 指導を通して 事前に指導方針をたてて臨み、試行錯誤の中で、方針を変えたり改善を加えたり、接し 方や指導のポイントを掴み、当児童(本児)への理解を深めてきた経過がある。 勝手なことをしている児童に対しては厳しく接するという学年全体の指導方針を当児童 (本児)にも同じ態度で臨んだ時期があった。しかし結局は、力と力のぶつかり合いが生 じ、事態が悪化したということがあった。その経験から力で押さえ込んで指導する非を学 んだ。活動・参加をしないということがあっても、声はかけるものの、まずはある程度受 容し、無理矢理させることをしない方が落ち着いてその場所で居ることができ、時間がか かりながらも活動・参加につながっていきやすいことがわかった。本人が選択でき、決定 できる安心感や自分で納得がいくということが次の活動・参加につながるものと考えられ る。 集団からはみ出してしまうことが多く、マイナス面がどうしても目立ってしまい、指導 者としては、その問題行動に焦点を当てて改善しようとしてしまいがちである。上記のよ うに表面的なことのみで対処指導しようとすると結果はおもわしくない方向に進む。大切 なことは、その背景にある個人が抱えている困り感に寄り添うという姿勢である。感覚異 常からくるたくさんの刺激により、あらゆるストレスと闘いながら生きていることや、人 とうまく付き合いたいのにそれができない複雑な思いをたくさん抱えながら生きていると いうことへの共感的な理解やかかわり方が始まりであると考えられる。相手に変わっても らいたいならば、まず自分が変わるというスタンスが必要である。 人間関係については、1対1の関係をしっかり築くことが大切であるということも分か った。その子の興味の世界を一緒に見てみようというスタンスで関わると、会話も一方的 だったものが一緒に楽しめることにもつながった。そういう関係の延長線上に、事の是非 についての指導や、苦手なことに向かわせる交渉的な指導を受け入れられる関係が築かれ るものであると学んだ。 新年度については、クラス編成で友人関係や学級の位置等で余計なストレスや摩擦が生 じないように配慮・工夫することも大切なことである。 本児の担任は、個別の指導計画を作成し、指導方針を立て支援・指導を行ってきた。そ の 結 果 、本 児 の 成 長 も う か が わ れ る が 、こ こ で 、別 の 指 標 を も と に 、実 態 把 握 を し 、支 援 ・ 指導について考えることで、本児の困り感に寄り添い、よりよい支援・指導のあり方を探 ることを目的とし、我々は3名のチームを組み、一連の指導計画等の作成にあたった。 2.児童の実態(4年生当時) 高機能自閉症という診断を受けており、ウィングの3つ組(社会的相互交渉の障害、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 障 害 、想 像 力 の 障 害 )を 顕 著 に 示 し て い る 。ま た 、感 覚 異 常 の 障 害( 感 覚過敏)もあり、軽く触れられただけで「いたい!!」と言って怒り、トラブルになるこ ともある。光刺激や大きな音にも敏感で、夜の方が落ち着けるそうだ。そのため、夜更か しをすることもあり、朝から元気がないこともある。 授業中はほとんどみんなと同じことをしていることはなく、アニメの絵を描いているか 本を読んでいることが多い。絵はとてもうまく、想像力に富んでおり、クラスの友だちか らも認められている。絵などを描いているときは、集中しているため教師の指示を聞いて い な い こ と が 多 い 。ま た 、聞 い て い て も 従 う こ と は ご く 稀 で あ る 。授 業 の 内 容 に つ い て は 、 「簡単すぎるからいいもん!」と言い、課題に取り組もうとはしないことも少なくない。 一方、授業を聞いていないと思われるときでも、突然発言して答えを言い当てる場面も見 られる。授業中であっても突然「手を洗いにいく!」と言って教室を出て行くこともある が、自分の興味のある授業、例えば理科の実験などでは集中して参加することもある。担 任に対しては、指示を聞き入れないこともあるが、付き合いが長く信頼関係が築けている ため何か困ったときには相談している。支援に入っている教師に対しては、反抗的で時に は殴る蹴るなどの暴力も見られる。 休憩時間は一人で席に着いたまま、絵を描いたり本を読んだりしていることが多い。一 緒にみんなと遊ぶこともあるが、全くルールを守ろうとしない。すぐに「あきたー」と言 って違う場所に行こうとする。ある友だちのことを「あんなダサい子と仲良くしやんほう がいい」と言ったり、給食中にはある男の子に「口を開けて食べるな!気分悪い!」と叫 んだり、自分が思ったことを相手の気持ちに関係なく発してしまう。しかし、そういう発 言をしても学級の児童はいちいち反応しない様子である。また、時には気に入らない友だ ちに対して暴力をふるうこともある。特定の友だちとは一緒に登下校したり、放課後に一 緒に遊んだりしている。 家 庭 で は 、自 分 の 好 き な 遊 び( 絵 を 描 く こ と 、ゲ ー ム な ど )を し て 過 ご し て い る 。時 々 、 突然大声で文句を言ったり、母親と口論になることもあるが、学校よりも落ち着いて過ご せているようである。大学生の家庭教師に来てもらい、週に1回1時間の学習の時間を設 けている。1時間の中で集中して課題に取り組めるのはわずかであるが、学習以外に学校 での出来事や自分の興味のある話(主にゲームの話)をしながら、比較的落ち着いて過ご すことができている。他の学校に仲の良い友だちが一人おり、お互いの家を行き来して一 緒に遊んでいる。 3.ICFの分類 健康状態(変調または病気) 高機能広汎性発達障害 心身機能・身体構造 ・ 相手の気持ちを察することができない。 ・他人との距離がうまくつかめない。 ・場の空気が読めない。 ・暗黙のルールが守れない。 ・自分の思い通りにしたがる。 ・ 相手が関心を示していないにもかかわら ず、自分の興味のある内容の話を続ける。 ・興味や活動の幅が狭い。 ・読書や絵を描くことに没頭する。 ・独自の空想に浸ることが多い。 ・フラッシュバックがある。 ・ 感覚過敏(光、臭い、音、身体的接触) ・運動機能の不器用さがある。 ・注意機能 活動 参加 ・ 学 年 以 上 の 漢 字 の読 み は で き る が、書 く こ と を 嫌が り 、 筆 順 の 誤 り も 多 い 。 ・ 計 算 は 指 を 使 う な ど し て 、時 間 が か かる。九九が不完全である。 ☆ 本 を た く さ ん 読 ん で お り 、語 彙 は 豊 富である。 ・ 机 や か ば ん の 中 が 乱 雑 で あ る 。整 理 整頓が苦手である。 ・ 課 題 を 最 後 ま で で き ず 、途 中 で や め てしまう。 ☆アニメの絵を描くことが好きで、上 手である。自分でキャラクターを考えて描く。 ・ 興 味 の あ る こ と 以 外 は 、み ん な と 同 じ行動ができない。 学 級 の 係 活 動 や 当 番 活 動( 掃 除 な ど )、 全 校 集 会 、 行 事 ☆授業中は興味のあるときは手を挙 げ、発言したり課題をしたりする。 ・ 相手の気持ちを考えた言動ができない。 嫌いな子に対して、人の欠点を言う。 気に入らないことがあると、相手(級友、 教師、親)に暴言を吐く、暴力をふるう。 ・学 級 の 友 だ ち と 一 緒 に 遊 ぶ こ と が 苦 手である。 背景因子 環境因子 個人因子 ☆受容してくれる人とは関係性がとりやすい。 ・ 注意の仕方や注意を与える相手によって対応が異なる。 ・指示されることが嫌いである。 ・納得のいかない賞賛が嫌いである。 心から褒めていない。当たり前のことを褒められた。 ・一般学級に在籍(支援する教師がいる)している。 ・学校には仲のよい友だちがいない。 ・同じ学年に複数の発達障害の児童が在籍している。 ・教室以外の落ち着ける場所がない。 ・リタリンを服用している。 ・A園の小児神経科受診し、OTとSTを受けている。 ☆母親は本児に一生懸命関わっている。 ・WISC−Ⅲ FIQ 126 VIQ 123 PIQ 125 ・CBCL 臨床域 社会性の問題 注意の問題 非行的行動 攻撃的行動 ・ 自 己 評 価 が 高 い 。( 自 己 理 解 が と も な っ て い な い 可 能性がある) ・ 気 が 強 い 。( 自 分 の 意 見 を 譲 ら な い ) ☆発想が豊かである。 【個別の指導計画1・小学校用】 作成日 平成 年 月 日 児童名 生年月日 平成 K 子 年 月 日 満 (第 4 学年 男・女) 歳 1.教育的ニーズ ・相手の気持ちを考えた適切な言い方や行動ができる。 (相手を傷つけるようなことを言ったり暴言を吐いたりしない。相手をたたいたり蹴ったりしない。暴力をふ るわない。 ) ・落ち着いて集団行動をすることができる。 (学級のみんなと一緒に行動する。一人違った行動をしない。 ) 1)通常学級教員 2)特殊学級教員 / 通級指導教室教員 ・自分の気持ちを言葉で伝えることができるようになってほしい。 ・相手の気持ちを考えてほしい。 ・学級の仲間として行動できるようになってほしい。 ・ (教師の指導に対して)できないことも多いが、無理に強制しないで、少しずつでも、できるように手を貸して あげてほしい。 3)保護者・児童 2.心理検査の結果 検査名 実施日 WISC-Ⅲ H H K-ABC PRS H 田中・ビネー式 H 学力 NRT H 検査 上越市スクリーニング H によるチェック H その他 CBCL CA : 8 歳 ヶ月 CA : 歳 ヶ月 言語性 : CA : 国語SS : FIQ : 126 継次 : 処理 結果 VIQ : 123 PIQ : 125 同時 : 処理 非言語性 : MA : 算数SS : L 聞 : 5 話 : 4 読 : 0 書 :12 計 :10 推 : 5 D く す む く 算 論 臨床域:社会性の問題、注意の問題、非行的行動、攻撃的行動 VC : PO : 認知 : 処理 総合 : IQ : AD/ 不注 HD 意 :13 FD : PS : 習熟度 : HF 対人関係、 PDD こだわり等 :39 所見 3.他機関とのかかわり及び情報 A園小児神経科 A園 OT ST 4.授業・生活場面での実態(チェックリスト項目を学習・行動の場面別に分類) 授業名 実態把握 ・読みにくい字を書く。 ・マス(枠)の中に、字を入れて書くことが難しい。 学 国語(書写) ・独特の筆順で書く。 ・漢字の細かい部分を書き間違える。 ・漢字を書くことが苦手である。 ・簡単な計算が暗算できない。指を使って計算する。九九が不完全である。 習 ・計算するのにとても時間がかかる。 算数 ・答えを得るのにいくつかの手続きを要する問題を解くのが難しい(四則混合の計算) 。 ・計算することが苦手である。 ・目的に沿って行動を計画し、必要に応じてそれを修正することが難しい。 面 ・みんなと一緒に歌う(合奏)ことを嫌がる。 ・大きな音を嫌がる。 音楽 優先度 学 図工 ・ドッジボールなど球技に参加しない。 (人の動きやボールの動きの予測が難しい。自分のパーソナルスペース に人が入ることを嫌がる。 ) 習 体育 面 その他 場面 実態把握 授業、行事、遊 ・課題を最後までできず、途中でやめてしまう。 び等 考えられる要因 優先度 ・不注意、想像力の欠如(終わりがわからない) 授業、行事、遊 ・気持ちが向かないと、課題をやろうとしない。 び等 ・興味関心が狭い 授業、行事等 ・課題が簡単すぎる、ファンタジーの世界に入 る ・授業中、教師の話を聞いていないことが多い。 授業、行事等 ・計画を立てたり、必要に応じてそれを修正したりすること が難しい。 ・プランニング、想像力の欠如(決まった方法 への固執) 学校生活全般 ・机やかばんの中が乱雑である。整理整頓が苦手である。 ・不注意 動 学級の係活動や ・興味のあること以外は、みんなと同じ行動ができない。 当番活動、全校 ・対人関係(みんなと一緒にしたいと思ってい 集会、行事 ない) 行 面 学校生活全般 ○ ・相手の気持ちを考えた言動ができない。 ・対人関係・コミュニケーション(相手の気持 ちが想像できない) 遊び ・学級の友だちと一緒に遊ぶことが苦手である。 学校生活全般 ・不満な場面で感情を抑えて行動できない。 学校生活全般 ・自己主張を我慢して抑えることができない。 学校生活全般 ・パニックを起こさず感情を抑えることができない。 学校生活全般 ・まわりの雰囲気や状況の判断ができない。 ◎ ・対人関係(友だちにあわせた言動ができない) ・感情の自己コントロールが難しい ◎ ・まわりの雰囲気や状況の判断ができない ◎ ・感情の自己コントロールが難しい ◎ ・想像力の欠如 5.支援の場と支援体制 支援の場 担当者 1) 2) 通常学級 特殊学級/ 通級指導教室 担任・TT担当・介護員・教育補助員・学級の協力的な児童 特殊学級担任・通級指導教室担当・介護員・ 3) 4) 学校全体 専門機関等 生徒(生活)指導担当・養護教諭・スクールカウンセラー・ 病院・児童相談所・適応指導教室・保健所・ 医者・相談員・カウンセラー・心理士・OT・ST 5) 家庭 母親・父親・家庭教師・スポーツコーチ・ 6) その他 支援体制等 学年会、校内支援委員会 【個別の指導計画2・小学校用】 作成日 平成 年 月 児童生徒名 日 K № 子 6.目標・指導の内容・手立て・評価 目標 指導の内容 相手の気持ちを考えた適切な言 い方や行動ができる。 (相手を傷つけるようなことを 言ったり暴言を吐いたりしな い。相手をたたいたり蹴ったり しない。暴力をふるわない。 ) 相手にとって嬉しい言葉と傷つ く言葉を知る。 落ち着いて集団行動をすること ができる。 (学級のみんなと一緒に行動す る。一人違った行動をしない。 ) 自己主張ばかりせず、友だちや 教師の意見を受け容れることが できる。 社会的に不適切な言動をしない よう、自分の気持ちや感情を自 己コントロールができる。 手立て 「ふわふわ言葉」 (やさしい言葉、嬉 しい言葉) 「チクチク言葉」 (いやな言 葉、傷つく言葉)を書き出して教室の 見えるところに貼っておき、事あるご とに学級みんなで振り返る。 トラブルがあったときに、好ま 本児の言い分をしっかりと聞き、気持 しい対処行動やトラブル回避行 ちを受け止める。その後、してはいけ 動を知り、身につける。 ない行動と好ましい対処行動を文字 や絵を用いながら、話をする。一方的 な注意でなく、本児が自分の行動に気 づき、省みることができるようにする (約束ノートを作成し、活用する) 。 みんなで一緒にやってよかった 本児に声かけをするが、無理強いをし と思える経験を増やす。 ない。 本時が興味関心を示す活動を準備す る。 1対1の関係をつくる(本児に合わし てくれる友だちでグループをつく る) 。 自分の意見や言い分がいつも通 本児の意見を充分に聞くが、その意見 るとは限らないことを知る。 が通る場面と通らない場面があるこ 相手の意見を受け容れる。 とを説明する(提案と交渉) 。 学級のルールに従うことを知 本児を含め、学級でルールをつくる る。 (本児が納得してルールをつくるよ うにする) 。 自分の気持ちや感情がわかり、 さまざまな場面を想定して、そのとき (自分を客観的に見る) 、自己コ の自分の気持ちや感情を言葉にする。 ントロールが難しいときには、 自己コントロールが難しいときには、 より好ましい行動がとれるよう 誰もいない体育館で叫ぶ、マットに気 持ちをぶつける、文章に書くなどの対 対処行動を身につける。 処行動をする。 不適切な言動を抑えられたときは、よ い評価をする(ほめる) 。 指導場面 学校生活全般 担当者 期間 学級担任、 開始日 H 年 月 日 学級の児 ∼H 年 月 日 童たち (1年間) 具体的な進歩や 改善すべき点 評価 評価日 年 月 日 日 取り出し指導 学級担任 学校生活全般 特別活動 学級担任、 開始日 学級の児 H 年 月 日 ∼H 年 月 日 童たち (1年間) 評価日 年 学校生活全般 学級担任、 H 年 月 日 年 月 日 学 級 の 児 ∼H (1年間) 童たち 評価日 年 月 日 学級担任 評価日 年 月 日 取り出し指導 H 年 月 日 ∼H 年 月 日 (1年間) 月 4.問題の発生と悪化の予防 一般的な予防 一 次 予 防 選択的な予防 二 次 予 防 三 次 予 防 適用根拠のあ る必要な予防 問題による二 次的な社会的 不利益の予防 学 級 ・意見は手を挙げて言うなど、クラスでのルールを作り、教室の見えるところに 貼っておく。 ・ 「ふわふわ言葉」 (やさしい言葉、嬉しい言葉) 「チクチク言葉」 (いやな言葉、 傷つく言葉)を書き出して教室の見えるところに貼っておき、事あるごとにみ んなで振り返る。 ・声の大きさを表した絵(図)を教室の見えるところに貼っておき、事あるごと にみんなで振り返る。 ・学級の友だち一人一人の気持ちや思いがわかりあえる関係を育てる。 ・自分のことや友だちのことについて、考えたり、話し合ったりする機会をつく る。 ・児童たちの行動に対して、いろいろな側面から捉えるように心がける。 ・学習の遅れのある児童に対して、個別に対応する機会を設ける。 ・視覚的な提示など、わかりやすい提示を行う。 ・スケジュール(1日、1週間、1か月)を時間割表(板書)やプリントなどで 知らせる。 ・座席の位置やグループ活動のメンバーに配慮する。 ・指示を個別に(その子がわかりやすい方法で)伝達する。 ・本児が活躍できる場をつくる。 ・本児のことを学級全体で理解するようにする。 学 校 家 庭 ・支援体制(TTや支援員等の人的支援など) ・学校便りなどで、学校での取り組み を伝える。 を充実する。 ・学校職員全員で、学級や児童の様子を伝え ・学級便り、学級懇談などで、学級の 様子や取り組みを伝える。 合い、情報共有する。 ・トラブルを起こしがちな児童同士は別の学 ・保護者からの願いを聞き、ニーズを 把握する。 級にするなど、学級編成を考える。 ・リソースルーム(気持ちを落ち着かせるこ ・学校や家庭での出来事について、電 話や連絡帳を通じてやりとりするな とができる場所)を確保する。 ど、担任と保護者との連携を密にす ・個別対応ができる支援体制(担当者が本児 る。 の支援を行う)を整えておく。 ・個別の指導計画を作成する。 ・関係機関との連携を図る。 ・学校(担任、特別支援コーディネー ・リソースルームを確保する。 ター、学校長等)と保護者と懇談を ・個別対応ができる支援体制(担当者が本児 行い、方針を決める。 の支援を行う)を整えておく。 ・校内支援委員会を開き、支援体制の確認と 新たな支援について検討する。 ・関係機関(専門機関)に相談をする。 ・本児と話をして、本児の納得の上でルール作り(約束ノートに記入)をする。 ・友だちや教師に危害を加える行動はすぐに止め、場所を移動して落ち着かせる。 本児の言い分をしっかりと聞き、気持ちを受け止める。その後、してはいけな い行動と好ましい対処行動を文字や絵を用いながら、話をする。一方的な注意 でなく、本児が自分の行動に気づき、省みることができるようにする。 ・授業中に、立ち歩いたり本を読んだり、他の児童に迷惑をかけることが少ない 行動については、 「座ろうか。 」などと声をかけるが、無理に行動を静止しない。 ・本児と関係が充分にとれている教師が中心となり、本児の困り感をしっかりと ・リソースルームを確保する。 聞くなど、本児のサポートを行う。 ・個別対応ができる支援体制(担当者が本児 ・学級で本児のことについて、話し合う。 の支援を行う)を整えておく。 ・校内支援委員会を開き、支援体制の確認と 新たな支援について検討する。 ・関係機関(専門機関)に相談をする。 ・学校(担任、特別支援コーディネー ター、学校長等)と保護者と懇談を 行い、方針を決める。 6.考察 今回、3名でのチームを組み、一連の指導計画等の作成にあたった。情報提供に関して は、事例対象の児童(以下本児)のことをよく知る関係性のある教師からの情報はとても 詳しく、大きな情報源である。しかし、主観的に本児を捉えている部分もあり、チームで の話し合いを通し、客観的に本児のことを理解することができると思われる。また、話し 合いを行うことで、情報の共有だけでなく、指導にあたっての役割分担ができ、学級担任 の抱え込みを防ぐことにもなるであろう。 ICFの分類、問題の発生や悪化の予防、個別の指導計画と複数の視点で本児について 見ていく中で、本児の課題が明確となり、一貫した指導を考えることが可能となった。そ して、本児のつまずきの根がいろいろなところに関連していることがわかり、末端の行動 ばかりに目を向けるのではなく、根っこ部分へのアプローチが必要であることが共通理解 された。 また、これらを作成する前は、本児の実態から「指導の難しい子ども」というように見 られたが、これらの指導計画等を作成する段階では、本児に対するイメージがつかめ、本 児を含む学級の運営がイメージできるようになりつつあった。そして、文章化していくこ と で 、「 こ ん な こ と が で き る な 」「 こ ん な 手 だ て が で き る な 」 と 前 向 き に 考 え る こ と が で き るようになった。さらに、これを応用すれば、他の児童にも活用できると汎用性も広がり つつある。 このように、特別支援教育の必要な児童を支援する上では、チームでの話し合いは欠か すことができない。また、支援するにあたっては、アセスメントから指導計画づくりへと 手続きが必要であり、その一つの例が示せたと思われる。最後に、小・中学校において、 支援が必要な児童を学校全体で考えていくことができる体制作りが大切で、個々の児童・ 生徒についての理解を深める上で、発達障害についての専門的知識も身につけていくこと が望まれる。 ICF を使った指導計画の作成 ∼小学校高学年のアスペルガー症候群の児童を対象として∼ 対象児 小学校の通常学級に在籍する 6 年生男児 主訴 本児は、4 年生の 2 学期に大阪から転校。 (両親の離婚による)すでにアスペルガー症候 群と診断されていた。話す言葉は流暢で、興味のあることに関しては知識が豊富である。 しかし、落ち着いて学習に向かう態度が育成されていないため、学力低下が著しい。また、 関心領域に偏りがあり、唐突な行動をとることがある。教師や級友の話を聞くこともでき ず、話し出すと独りで話し続け、聞き返してもその質問には全く答えずに自分の話を続け ようとする。級友からは「変な奴」というレッテルを貼られ、5 年生のときは A 児が独りだ けクラスから孤立し、その影響で担任までがクラスの大半から無視され、学級崩壊状態に まで陥った。 概要 本児は、学力低下が著しく教室内での問題行動も増えてきているが、5 年生 3 学期から取 り出し授業を受け、少し落ち着きを見せてきた、という 5 年生担任からの引き継ぎがあっ た。主訴によれば、行動面においては二次障害の懸念もあり、教育現場における適切な支 援のもとに先ず学習面での改善をしながら行動面を見守っていく方法をとった。6 年生にな ってからも引き続き取り出し授業を行い(週当たり 8 時間)、学習の向上と問題行動の軽減 の経過を見ることにした。 家庭環境 父・祖父母・本児の 4 人家族。父親は数年前に母親と離婚。当初は母親が本児を養育し ていたが、養育不能と認めた祖父母が引き取り、現在に至っている。本児は母親と暮らす ことを望んでいるようだが、父親も母親の養育についての不満があり、自分が引き取るこ とを選んだようである。祖父は厳格な人で、しつけには随分厳しい。本児が学校のことを 話し出すと「うるさい、黙れ」と言って聞き入れてもらえない。祖母は身の回りの世話を よくやってくれている。ただ、年配なので身体面において無理がきかないようである。父 親は、鉄道会社に勤務。大阪に通勤しているので、夜勤を含め週当たり 3,4 日くらいしか 家に帰ってこない。本児の世話はほとんど祖母一人がやっている。父親は本児に対して無 関心であり、懇談会や家庭訪問などで児童の話どころか自分の昔話ばかりを話そうとする 傾向が強かった。休日は自分の趣味を優先しがちで本児の世話をあまりしていないようだ った。本児は幼少のころから虐待されていたのも事実で(父親・時には祖父から)6 年生の 6 月頃、顔や身体にあざを作って登校してきたことがある。父親からの虐待であることが判 明。児童相談センターに連絡をとり、早速入所、一時保護という事態になったこともある。 ところが、父親は引き取りに行かず、小学校の教頭が代理で引き取りに行った。長期の休 みには、母親と本児が会う約束をしている。夏休みに 1 週間ほど母親の家へ泊まりに行っ たが、男性の姿を見てすぐ帰ってきたらしい。家では、祖母は優しいが、祖父や父親の機 嫌をとる関係上、本児にとっては心のよりどころがない状態である。 問題の経過 4 年生の転校当初はおとなしく、担任の先生によくなついて楽しい学校生活を送っていた。 5 年生になってからは、担任の先生を信用せず、クラスの大半の子どもとともに担任を追放 するなかに入っていた。担任が休みはじめ新しい担任に代わったころから、クラスから孤 立し始め、嫌なことがあると独りで職員室へ来て大声で叫んだり、暴れたりした。 学力低下だけでなく、自尊感情の低下も見られ、二次障害が心配されてきている。 学習面での実態把握 (1) 「聞く」点では、聞こえは問題なく、一対一ならスムーズに理解できる。だが、集団 のなかに入ると、妄想などをして自分の世界に入ってしまい他のことを考えているため、 人の話を理解できていないことが多い。 (2) 「話す」点では、自分の意見をみんなの前で話せないし話そうとしない。ただ、興味 の引く事柄については、一対一なら非常に積極的に話すことができる。 (3) 「読む」点では、4 年生程度の漢字なら読める。ゲームの攻略本を熟読するので文章 を読むことに関しては、抵抗が少ない。テストなどの文章も理解できる。 (4) 「書く」点では、黒板を見てノートに写すことは嫌がるが、聞いて書き取ることはほ ぼ正確にできる。漢字を書くことは嫌がるが、なぞり書きは喜んで取り組もうとする。 (5) 「計算する・推論する」点では、九九は覚えており計算問題はほぼできる。分数が特 に得意である。ただ、文章問題は公式を導き出すことができないため、立式を間違えるこ とが多い。計算が好きなので、立式が間違えていても最後まであきらめずに問こうとする。 行動面での実態把握 個別の指導計画参照 個別の指導計画 対象児 6年 A 男 H○年○月○日生 作成日 平成20年12月1日 授業・生活場面での実態 国語 算数 ・ 文章の理解はできる。 ・ 3,4年生程度の漢字の読みはできるが、書くことは定着していない。 ・ 自分の意見をみんなの前で発表しようとしない。 ・ 難しい問題でもあきらめないで解こうとする。 ・ 計算問題はできている。 ・ 問題文の内容を理解できていない。 社会 ・歴史には興味を示さない。 理科 ・簡単な実験なら友達とトラブルを起こさずに取り組める。(観察など) 総合 ・ グループ活動は苦手で、話し合いに参加することは難しい。 ・ パソコンには興味を持ち、調べ学習にもうまく使いこなせることができ る。 音楽 ・一対一ではリコーダーも恥ずかしがらずに吹くことができる。 図工 ・教材の内容によっては、集中して取り組める。(イメージ画の創作など) 体育 ・ 運動能力は低いが、真面目に取り組もうとする。 ・ バランス感覚などもよくない。 家庭 ・調理は興味があるが、裁縫は取り組もうとしない。 その他 ・ 掃除はさぼらず、真面目に取り組む。さぼっている子が気になって仕方 ない。 ・ 給食の好き嫌いは多いが、残さずに食べようとする。 ・ 決められた仕事はきちんとする。(係り活動・委員会) 行動 ・ ・ ・ ・ 集団行動は手を抜かず、真面目に取り組む。 融通がきかない。また、それを自分だけでなく周囲にも求めようとする。 自分の持ち物の管理は完全でないと気が済まない。 (こだわり) 急に昔の出来事を思い出して、その対象者に感情を抑えきらず、暴力を ふるうことがある。(フラッシュバック) ・ ・ ・ ・ ・ パニックを起こしたときは、暴言・暴力が数時間おさまらない。 状況や相手の気持ちを理解することができない。 友達と協力した班行動がとれない。 特定の子としか遊べない。 (年下の子) 授業に対する意欲が低い。 教育的ニーズ ①通常学級教員 ・ 授業に参加できる。 ・ 友達と仲良く過ごす。 ・ 自分の気持ちを言葉で伝えることができる。 ②特別支援教室教員 ・ 自分の気持ちを素直に伝えることができる。 ・ 友達と仲良く過ごす。 ③保護者・児童 ・ 友達と仲良く遊ぶ。 ・ 基本的な学習内容を理解する。 長期目標 短期目標 手だて ①グループ活動の場で話し 自分の気持ちを言葉で伝える 自分の気持ちを言葉で紙に 合いに参加することができ ことができる。 書かせる。 る。 ②知っている漢字を使って 知っている漢字を使って連絡 手元に漢字カードを示す。書 文を書くことができる。 帳を書くことができる。 き取れない部分は声かけす る。 (聴写させる) ③数学的な概念やプロセス 文章題の意味を理解すること 図や絵で示す。 を理解する。 ができる。 ④興味の幅を広げる。 取り出し授業担当の教師との 取り出し授業担当の教師は、 関係を支えに、学級の様々な学 本児の気持ちを受容しなが 習活動に取り組む。 らスモールステップで取り 組む。 他機関とのかかわり及び情報 今まで同様、相談を進めていく。 (子ども・障害者センター) 支援の場と支援体制 (マップ参照) <支援の場と支援体制(マップ) > A 児が問題行動を起こした際、不必 A 児をよく見てか 要に関わらなくて良いと思う らかうが、パニック 学級や担任に任 ノートで A 児に関する連絡 せている 家庭 になった際は止め るよう手助けする 担任 リソースルーム担当教員 をいつでも受 (特別支援教室) け入れられる しょっちゅう話しかけにくる 教材の工夫 学級集団 自分の居場 所のような 事ある時のみ 存在 連絡し合う あまり関わらない 母のところへ行きたい ようにしている 父は嫌い A児 虐待された際 の一時預り 孤立している A 児とは違い B 児 存在を認めてほしいため 子ども障害者 センター B児 甘える(休憩時間) 同じ学年の先生方 いつでも受け入れる < ICF の分類> 環境因子 <学校> 校内委員会 ・対象児として名前が挙がってい る ・個別のプロフィール、個別の指 担任 ・本児と一対一の話をよくする ・休憩時間はほとんど本児とかか わっている 学級 友達 ・本児に対して取り出し授業の理 ・本児のことを「変なやつ」と思 解は示すが、本学級内において っている はグループ学習の際、協力して ・1、2 学期は親しくしていた Y 導計画これから作成する予定 ・授業中は本児だけの特別メニュ くれないという理由でどうし くんからは急に疎遠になって ・「障害者子ども相談センター」 ーで学習内容を工夫している ても仲間はずれにする傾向が しまった からの支援を受けている ・(転入前)3 年生のときは大阪の ある ・他児(ADHD)に対する特別なル 施設に一時入所していたこと ールも理解はできている(離席、 がある 違う内容のことをするなど) ・取り出し授業(週当たり 8 時間) を行っている(5 年生 3 学期か ら) <家庭> 父親 ・本児が言うことをきかないとすぐにきれて 怒る(虐待数回) ・子育てというよりも、自分のこと本意にな っている(本児に対して関心がない) 祖父母(父方) <祖父> ・父親よりは少しましだが、同じように(口で) 虐待している ・本児の話を十分に聞こうとしない <祖母> ・父親や祖父が本児に対してきれるのを抑え る役目をしている ・普段、本児の世話をしている ・父親や祖父を怒らせないように配慮してい る 母親(別居) ・夏休みには本児と会う約束をしているが、 少し会うくらいで自分の生活を優先してい る ・本児を養育できずに父方に預けた経緯があ る アスペルガー障害 活動 心身機能・身体構造 ・人の話、周囲の状況がつかみにくい ・授業中はほとんど寝ている ・興味のないことには集中して取り組 ・妄想にふけることが多い ・競馬の世界に浸り、誰にでもその話を めない ・コミュニケーションが苦手 ・平らなところでもよく転ぶ 参加 ・同じ年の子より年下の子と好んで遊ぶ ・学校の行事(集会・奉仕活動など)には 参加できる ・グループの活動には何もしないでいる しにいく ことが多い ・自分のものは大切にする(なくすと見 つかるまで探そうとする) 個人因子 環境因子 ・よくしゃべる 別紙参照 ・ゲームが大好き ・競馬の馬の名前をたくさん覚えている ・関心事以外は興味を示さない ・夜型なので朝は機嫌が悪い ・学習理解はできるがこつこつと努力をしないため定着しない ・聴覚優位の傾向がある ・自尊感情が低下している ☆問題の発生や悪化の予防(A児に対する今後の支援体制) 支援の場 学 級 支援レベル 一般的な予防 ・学級でのルールづくり(きまりを明確にする) ・指示の仕方を簡潔にする ・提示の仕方を工夫する(分かりやすい視覚支援等) 一 次 予 防 選択的な予防 ・座席の工夫(前列に座り、集中しやすい環境をつくる) ・全体指示の後の声かけを丁寧に行なう(個人的な指導) ・3分間スピーチ等の取り組みを通してお互いの理解をはかる →学級づくり、友達づくり 適用根拠のあ ・自己肯定感を高めるような取り組みを行なう(A児が責任を 二 る必要な予防 持って活動している飼育係等の委員会活動を通して) 次 →成功体験を積み重ね、自尊心を高める 予 ・友達作り 防 →人間関係を改善するためにソーシャルスキルトレーニング 等を授業に取り入れる ・A児に対する特別な授業(リソースルームでの取り出し授業) についての他の児童への説明を行なう(A児への理解) 学 校 ・職員の障害理解 ・実態把握 ・校内委員会を設置する 家 庭 ・学級での様子や大切にし ていることなどをこまめに 伝える(学級通信等を通し て) ・保護者との関係づくり ・校内委員会でA児への対 ・連絡帳でこまめにやりと 応に関する意思統一を行なう りを行なう ・学校での対応の理解を促 し、家庭でのルールづくり を提案する →父親への対応に配慮する ・A児の居場所づくり →リソースルーム ・休憩時間を含めてA児が 甘えられる環境づくり →校内で連携をとっていく ・取り出し授業の意義や体 制について保護者に説明し 理解と協力してもらう ・他の保護者に対する対応 →場合により、A児への特 別な対応(取り出し授業) についての理解を促す 問題による二 ・パニック時の配慮 ・保護者の承諾を得た上でC ・関係機関と連携していく 三 次的な社会的 →A児が落ち着ける環境をつくるために他の教師とも連携する BCL等を使って支援法を考 ことを承諾・理解してもら 次 不利益を防ぐ (タイムアウト等) えていく い協力してもらう 予 →他の児童への配慮 ・医療、子ども障害者センタ 防 ー、福祉、医大小児生育医療 相談室と連携 ・パニック時の体制づくり (周りがどんな支援をしてい くか) 考察 対象児 A の実態把握とアセスメントからみえてきたこと 学級内で困り感のある A 児の特別支援教育をコーディネートするという視点で、支援の 方法を考えた。 まず、A 児の主訴をもとに、担任一人の見方だけでなく、複数の目で(現担任・前担任・ 専科・同じ学年の先生など)実態把握するために校内委員会では、現時点での問題やこれま での経過(生育歴も含めて)を整理する必要がある。その際、職員間で共通理解を深める ために ICF モデルにあてはめた。 ICF モデルでは、3つの問題点が見えてきた。一つ目は、本人の「甘えたいが、自分の気 持ちが出せない」「認めてもらいたい」「やる気がない」といった個人因子と自己肯定感の 低下が気になった。二つ目は、周りの子どもたちの A 児に対する偏った見方(環境因子)。 三つ目は、虐待を含めた家庭の対応(環境因子)である。学校での対応を考えていくうえ で、A 児の実態を客観的に分析することが必要で、アセスメント(WISC‐Ⅲ・TRF)を行っ た。 WISC‐Ⅲでは、知的発達の遅れはないが、個人内差が大きく自閉症の特徴もよく出てい るということがわかった。言語性 IQ の方が動作性 IQ よりも優位で算数が特化しており、 聴覚記憶が優位であることもわかった。また、流暢によくしゃべるが、単語の力が弱いこ とから、周りの言動(指示)や物事の意味がよくわかっていないこともわかった。つまり、 他の人が話している内容には興味がないため理解できていなかったということが推測され る。幼少の頃から言語の発達の遅れが見られないため、他の子と同じことができないよう な場合、叱られたりするなど、自己肯定感が年齢の高くなるにつれて低下してきたものと 思われる。 TRF では、社会性・思考・注意の問題が臨床域に達している。これらのアセスメントから、 二次障害的なひきこもりや身体の訴えはあらわれていないものの早急に学校で今できるこ とを検討してみた。 A 児に対する今後の支援体制として、問題の発生や悪化の予防(武田モデル)を作成してみ た。A 児の場合、支援レベルは二次予防の段階にあり、A 児の居場所作りとしてリソースル ームを確保し、取り出し授業を行った。これは週当たり 8 時間の取り組みであったが、本 児にとって非常に居心地のよい癒される場所となったのである。リソースルームでは、自 分の気持ちや思いを素直に出し(時にはわがままも)伸び伸びと過ごしたようである。ま た、他の教職員にも共通理解をしてもらい、A 児が甘えられる環境作りにも配慮した結果、 クラスのなかでも落ち着きがみられるようになった。ここで課題になるのは、武田モデル のなかでの家庭への支援である。父親が子どもに無関心であるため、学校での取り組みを 理解してもらいにくい。また虐待の問題もある。ここで、子どものアスペルガー障害のよ うな症状は、家庭環境による愛着形成の不足からくる可能性があることも踏まえておかな くてはならない。子どもへの支援を考えていく際、一つの側面からでなく多角的に子ども の実態や環境を捉え、支援を考えていかなくてはならない。このケースでも、担任や学校 だけでは家庭支援が困難で、今後、関係機関(子ども障害者センター・医大小児生育医療 相談室・福祉)と連携していかなければならないと考える。 関係機関と連携を進めていく際、家庭に任せるだけでなく、コーディネーターは家庭支 援という視点も配慮しなければならないということがみえてきた。 ICF を使った指導計画の作成 広汎性発達障害の疑いのある中学 1 年生男子生徒の事例 〈実態〉 1) 対象生徒 B 中学校通常の学級に在籍する中学校1年男子生徒 2) きっかけ 入学後 1 か月余りたった頃、中学 1 年の生徒 A 君と同じクラスの生徒との間にトラブル が起きる。それを指導した担任に対し、A 君は拒否的な態度をとると共に、トラブル相手の 生徒に対しての攻撃もエスカレートさせていく、それ以降、授業中の離席や暴言が増え、 担任が指導すると余計に反抗し、手がつけられなくなるなど、担任との関係も悪化してい った。担任は A 君の行動上の問題について特別支援教育コーディネーターに相談、それ以 降特別支援教育コーディネーターが中心となり、保護者との面談、A 君への対応について学 年会での話し合いを行い。専門機関(ポラリス)の訪問指導を受ける等の取り組みを行っ ているが、A 君の行動は依然不安定で、周りの生徒へも深刻な影響を与えている。 今回、T 君についての支援を大学で検討し、現場に提案できるよう、B 中学校校長の許可 を得たうえで、実践課題研究での情報をもとに ICF での支援シートを作成、個別の指導計 画を作成することになった。 3) 主訴 人とのコミュニケーションが上手にできず、些細なことからけんかになることが多い。 感情のコントロールが難しく、イライラすると授業中に教室から飛び出したり物にあたっ たりする。授業妨害や教師への暴言もある。イライラを弱い子にぶつけることが多く、タ ーゲットを見つけて執拗に攻撃したり、突発的な暴力行為に及ぶこともある。授業に入っ ているときも、寝ていたり他のことをしていることが多く、学習面での遅れが目立つ。本 人は成績へのこだわりがあるため、授業が理解できないこともイライラの原因になってい ると考えられる。 4)概要 小学校からの引継ぎでは、思うようにならないと授業中飛び出したりといった行動があ り、精神的に不安定。小学校6年生のときに自律神経失調症という診断を受け、服薬して いたという情報があった。 中学校入学直後は特に目立つことはなかったが、5 月のトラブルをきっかけに授業中の飛 び出し暴言や始まった。また、トラブルの際の担任の指導に不満をもち、事あるごとに担 任に反抗するようになる。トラブル相手の生徒にも執拗な攻撃や嫌がらせを続け、それに ついての指導が入らないため、相手の生徒が我慢するしかない状態が続いている。また、 テスト中に大声を出したり机をたたいたりといった行動があり周りの生徒が落ち着いてテ ストを受けられない事態になったこともある。 授業中の問題行動については基本的に教科担任が対応するが、手がつけられないときは、 空き時間の1年担当教員が対応し、特別支援コーディネーターの助言の元、話しかける、 保健室など落ち着ける場所へ行くように促す、見守ると行ったクールダウンさせるための 指導を行っている。クールダウンの場所については特に限定せず、本人が落ち着ける場所 を見つけられることが必要だと考えられる。また、保護者に対しては特別支援コーディネ ーターが中心になって対応し、家での様子等聞くと共に、学校で手がつけられない時は家 から迎えにきてもらうようお願いし、医大のカウンセリングの受診を勧めた。母親は当初 は理解を示し、受診についても同意したが、だんだん学校からの連絡を迷惑がり拒否的な 態度をとるようになり、受診の予約もキャンセルしてしまった。 本生徒への対応については何度も学年会で話し合うと共に、ポラリスの先生の訪問を受 けての話し合いも行われた。その中で、まず本生徒の心の安定をはかるための働きかけ、 (パ ニックを起こしているときは別室でクールダウンさせる、ささいなことでもほめて自信を もたせる、本生徒と会話できる教員が働きかける)そして、他の生徒を守るための対応(テ ストは別室で受けさせる)が必要だと判断された。また、本生徒の行動については授業担 当者からの情報を特別支援コーディネーター集約して毎日記録し、支援に生かすように取 り組んでいる。 現在、授業での A 君の様子は、その時の調子により1時間座っていられる時があるが、 依然として立ち歩きや教室からの飛び出し、気に入らないことがあると、あるいはよく分 からない理由で突然怒りだし、机をける、プリントや教科書を破ったり捨てる、友達を攻 撃するといった行動が続いている。教師との関係についても、甘えるそぶりをみせるが、 気に入らないときは反抗して手がつけられなくなるなど、不安定な状態である。 5) 家庭環境 本人、母親、弟であったが、小学校高学年時に母親が再婚した。母親の話では本人は新 しい父親に懐いているというが、父親の態度には威圧的な様子も見られる。 本人の様子について母親と話し合った当初は、母親も本人の特性を分かっている。不安 定なときは放っておくのが一番という返事だった。その後、トラブルが続出する中で、母 親自身も「しんどい」と訴えることもあり、パニック時に迎えにくること、カウンセリン グの受診についても同意した。しかし、その後学校から連絡しても自分もしんどいなど理 由をつけて迎えにくることを拒否、カウンセリングの予約も一方的にキャンセルした。同 級生への暴力で苦情が出ていることを伝えても、謝罪の言葉は一切なく、逆に学校を攻撃 するような態度をとる。 (自分を防御するため、また、弟には暴力をふるうことがあっても 母親には何もしないので、このままでいいという考えもみられる)このように、今母親に 連絡をしても反感を持たれる方が大きく、協力が得られないため、しばらくは連絡を控え、 見守っていくことにしている。 支援の手順 トラブル発生 担任・コーディネーター話し合い 学年会 保護者との話し合い 校内委員会・関係機関との話し合い 行動記録 CBCL ICF作成 関連図作成 問題発生や悪化の予防シート作成 個別の指導計画作成 実際の支援 授業参観時の様子、ケース会議での情報をもとに TRFプロフィールを作成 (養護教諭、学力補充教員にも記入をお願いする) 思考の偏り、 攻撃性が 顕著である 注意力、社会性の 不足が見られる 不安・イライラ ↓ 攻撃的行動 ケース会議で 相談機関 助言 医療 CBCL実施 観察記録 相談 助言 相談 指導 言って帰る→クールダウン の指導に不満 甘えたい 好意 懐いている クラブ顧問 うまく 医療機関紹介 弟、母の 再婚相手 学校への攻撃 望した) 数学の教師 クラブには 分からない 積極的 A君 (A君の母親) 親しみ C君の親に謝罪の言葉なし 暴れてもほっと けば落ち着く 好意 ケンカ Aが執拗 しい 最初のトラブル ボス 精神的におか Y君 友達に 嫉妬 に攻撃 俺とは違う なりたい 攻撃 同じ小学 校出身 遊び友達 クラスで遠巻き B君 の友達 に見ている子 友達 S君 C君 不登校ぎみに 変わった子 おかしい クラブ なってしまった M君、N君 T君、I君 相手にしたくない おとなしい 適当に 受け流す テストを受けさせる、勉強 を教える(休日、本人が希 話ができる 関わり方が 暴力はふるわない 家庭 新しい担任 かわす 反抗的だが しんどい、ともらすことも CBCL実施 学力補充教員 B君とのトラブルで 対応 学校に拒否感 顔つきがちがう) 養護教諭 反抗 ン時の対応 面倒を見る かつく」など文句を言う。 さんざん と誘う クールダウ 祖母 とおだやか(教室とは 「家へ上がって」 ンセル 幼い頃A君の 絵を描く、 友達のことを「あいつむ 担任 特別支援教育 コーディネーター 面接をキャ 正面から 病欠 静かな環境ではわり Aくんにいじめられて いると教師に訴える C君の親 学校にクレーム 問題の発生やその他の予防 支援の場 支援レベル 一 一般的な予防 次 予 防 二 次 予 防 三 次 予 防 学 級 学 校 家庭 地域や医療等関係機関 ・教育環境を整備する ・ 学校全体や学年でクラスの生 ・ 学 校 通 信 ・ 学 年 だ よ ・地域の回覧板などで ・整理整頓された教室 徒の様子を複数の目で伝え合い情 り、学級だよりなどで学 中学校便りを載せ、近 ・教室の掲示をわかりやすく 報を共有する。 校 の の 取 り 組 み を 伝 え 況を報告する ・クラスのルールを明確化する ・発達障害について研修する。 る。 ・特別な支援の必要な生徒につい ・ ・一人ひとりの思いを大切にし、個性を て、理解を深める。 ・各の相談機関の紹介を 認めあえる関係を育てる。・出来ること する。 は認めてほめ、出来ないことや困ったこ ・学校生活でのルールを明確化 とがあった時は話をしっかり聞く。 し、教師の共通理解をする。 ・問題行動に対して一方的なとらえ方を しない。 ・学習の遅れに対して個別に対応する。 選択的な予防 ・座席の位置・クループ活動の構成メンバ ・校内支援体制を整える。 ・該当生徒の保護者と教 ーを考慮する。 ・スクールカウンセラーと連携す 育相談の機会を持つ。 ・個別対応の機会を持つ。 る (落ち着ける場所を用意する) ・関係機関との連携を図る クールダウンできる所 ・興味のあることに取り組めるようにし むける。 ・ほめたり、認めたりする機会を増やす。 適 用根拠の あ ・学力保持(個別指導を行う) ・個別の指導計画を作成する ・保護者の心の安定を図 ・医療関係や関係機関 る ・安心できる大人が対応し話を聞く ・校内委員会を開く る。サポート感を高める。と連携する 必要な予防 問題による ・生徒の心身状態の把握に努める 二 次的な社 会 的不利益を防ぐ ・暴力行為かあった時すぐに対応 ・保護者との連携を密に ・医療関係や関係機関 しまず落ち着かせる。 して生徒の現状を把握す と連携する る。 <支援シート> ICF の分類 健康状態(A 児の実態) 心身機能 ・ 不安、抑うつが強い ・ 強迫観念が強い 活動 参加 ・ 行動が年齢より幼い ・ 衝動性がある(泣く・暴れ ・ 支持に従うのが難しい 教卓に落書き ・ 他の生徒の邪魔をする いすをギコギコ ・ 些細なことからけんか 教室封鎖 る) になる ・ じっと座っていられない ・ 怖いと連呼 ・ 奇声を上げて走る ・ 反抗的 ・ 集中力がない ・ 爆発的で予測できない行動 ・ 一つの事にこだわる ・ 途中で投げ出す ・ コミュニケーションが上手 しゃべりをする ・ 学習が困難 ・ クラスの規律を乱す ・ ロッカー内に隠れる ・ イライラを弱い子にぶ ・ 教室から飛び出す つける ・ プリントや通知表をグチ ャグチャにする ・ 気持ちが言語化できない ・ 静かな環境では穏やか ・ 時や場をわきまえずお ・ ターゲットを見つけて 執拗に攻撃する ・ 物に当たる ・ 脅す・暴力を振るう ・ 授業中寝ていたり、他の ・ からかう 事をしていることが多い に取れない 環境因子 ・ クラブ活動は好き 個人因子 (学校) ・ 自慢する ・ 小学校からの引継ぎの不足 ・ トラブルが起こったとき(学年集団で対 ・ うそをついたり、だましたりする 応) ・ 自尊感情が低く自信がない ・ 言い訳や責任転嫁が多い ・ クールダウンは保健室(養護教諭が対応) ・ 被害者意識が強い ・ 本人が話しやすい教職員がいる ・ やることが雑である ・ 周りの生徒は関わりたがらない ・ 成績へのこだわりから、学習が遅れてい ・ 学校全体の雰囲気が騒がしい ・ 生徒は自分のことで精一杯 (家庭) ・ 母親は精神的に不安定である 子育てで悩んでいる気持ちを表面に ることを気にしている ・ 好きな友達が他の子と遊んでいると嫉妬 する ・ 同級生と話したいが関わり方がわからな い 出したがらない ・ 教師に甘えたい気持ちがある 子どものトラブルを他人の精にする ・ 熱帯魚に興味がある 学校と関わりたくない、攻撃的 ・ 自律神経失調症の診断で服薬したことが ・ 保護者との連携が難しい ・ 本人が妹に暴力をふるう ・ 父親は威圧的で暴力を振るう ある 生 活 面 学 習 態 度 社 会 性 実態 目標 支援 不安・抑うつが強い。 ・ 自 尊 感 情 を 高 め る( 長 期 )・ ス モ ー ル ス テ ッ プ で 課 題 の 達 強迫観念が強い。 成感味あわせ、ほめる機会を多 些細なことでトラブルを起こす くする。 好きな友達がほかの友達と遊んでいる ・自分の思いを話せるよう と嫉妬する。 にする(長期) 行動の記録をとる。 いらいらを弱い子にぶつける。爆発的 落ち着いた場所でクールダウン で予測できない行動をとる。 をさせる。 いらいらした時に対処する方法 を一緒に考え、行動に移せるよ うにする。 学習態度が身についていない。 ・授業に参加する 教室から飛び出す。 プリントや通知票をぐちゃぐちゃにす る授業中寝ていたり他のことをする。 ・学力をつける ・プリント等を用意して達成 感を味あわせる。 達成可能な課題を決め、できた ときはほめる。 ・個別の指導に参加するよう働 きかける。 教師に反抗的な態度をとる。 コミュニケーションの取りや すい教師から関わりを持ってい く。 教師間でB君についての理解を 深める。 教師に甘えられる 評価 と課題 実態 目標 支援 ( 国 語 )・ 学 年 相 当 の 漢 字 が 身 に つ い ・ 漢 字 の 学 習 に 取 り 組 む 。 ・ 個 別 の プ リ ン ト を 用 意 し て ス ていない。 モールステップで取り組む。 ・抽象的理解が難しい。 ・文章の理解をする ・文章内容の読みとりが難しい。 (数学)計算など基礎的な課題はでき 教 る 。( 四 則 ・ 正 負 の 計 算 ) 正負の計算 文字式ができる。 ・個別のプリントを用意してス モールステップで取り組む。 (理科)実験には興味が示すが内容理 ・実験に参加して結果がわ ・ 予 め 実 験 に お ける 役 割 を 与 解は不十分である。 かる。 える。 生き物に興味がある。 (社会)資料集などをパラパラみる 板書をのノートに写す 科 (英語)単語が覚えられない。 基本的な単語を覚える アルファベットは書ける。 (音楽)音楽活動に意欲を示さない。 音楽活動に参加する ( 技術 ・家 庭) 基本的 生活 技術は 身 作業に参加する。 についている。 (美術)描画活動に意欲的である。 作品を仕上げる (保・体)個人種目は参加する 身体を動かすことが好きである。 ゲームに参加する。 板書事項を予めプリンして渡 す。 絵カードやワークシートなどを 使って単語を覚える。 興味ある課題を用いて活動する 興味のある課題を用いる。 作業途中で賞賛の声かけをす る。 ゲーム内での役割を与える。 評価と課題 考察 本事例について 学校での毎日の行動記録や複数の教師からの情報をもとに、行動やその背景を分析し、 表にまとめた。A生徒について複数の視点による客観的でより詳しい実態把握ができた。 それをもとに関連図をつくることにより、周囲との関係性がわかり、希薄である部分が分 かった。そこから、不安が高くストレスが強いという彼の心理状況がパニックや他人との トラブルを引き起こしている要因であると認識できた。 本生徒の実態把握をもとに本人の自尊感情を高めることが重要であることがわかった。 具体的な支援計画を立てることにより、成功体験を増やし、ほめることが必要である。そ のための課題設定は、本人が取り組みやすく、「がんばった」という意識がもて、達成感を 持たせるためのものにしなければならない。 本生徒は感情をコントロールするのが難しい、他人とのコミュニケーションが苦手とい う特性をもつと考えられるため、かっとしたときに落ち着く方法や友達との関わり方を日 頃から具体的に教えていく必要がある。その方法は本生徒のプライドを尊重した上で教師 から一方的に言うのではなく、一緒に考え、生徒自身に選択させるという方法が望ましい と考えられる。 また本生徒とって甘えられる教職員の存在や居場所が重要であり、その環境設定により、 安心して学校生活が送れるようにしなければならない。 一方、生徒間の人間関係が希薄な実態をうけて、本生徒を取り巻く周囲の理解を深める ために、学級集団づくりを柱とした話し合いの機会をもつことが必要であろう。学校生活 においては、文化活動や部活動などを通して生徒の仲間づくりに取り組み、一人ひとりが 主人公になった経験を積む必要がある。 まだまだ不十分の部分もある。保護者との連携や本人とのコミュニケーションがうまく いかないので、発達検査や医療機関の受診ができない。 保護者との話し合いの中で、 「発達検査は、障害のレッテル張りではなくて、子どもの生 きづらさを軽減させる手立てになる」という説明を行い、理解を求めていく必要がある。 ICF による実態分析 ◎→良い行動 健康状態 ・→課題となる行動、その他 ADHD傾向がある。 心身機能・身体構造 活動 参加 ・ADHD傾向はあるが、検 ◎積極的に発表できる。 ・学童保育に入所している。 ◎休憩時間は友達と遊ぶ。 ◎学校には元気に登校している。 査はまだ行っていない。 ・集中力が続かず、手遊び、離籍をする。 ◎日直の司会は積極的にできる。 ・指名される前に答えてしまう。 ・朝の会・終りの会での指示や友達の話を聞くのは苦手で ・机の上、中の整理ができず、物を粗末に扱う。 ある。 ・忘れ物が多い。 ・給食当番を忘れて遊んでしまうことがある。 ・友達の話の途中で急に話し出す。 ・全校集会等、全体の活動に参加しにくい。 ・友達の気持ちを考えずに「こんなんも分かれへんの」と言ったりする。 ・順番を守ったり、整列したりするのが苦手である。 ・掃除をしようとせず、遊んでしまう。 ・挙手をした際は、指名されないと気がすまない。 ・勝負事で負けるとすぐ泣いたり怒ったりする。 環境因子 個人因子 家庭 学級の様子 担任 ・言うことを聞かずに叱られ ・授業中に雑談をするため、先 ・行動面で気になる部分がある。 ・担任以外に、行動面が気にな ◎友達に対して関心がある。 ・ADHDの障害のある児童に っている先生がいる。 ◎目立ちたがり屋で前に出て、発表するのが好きである。 対応した経験がないため、対 ・就学前に保育所から、友達関 ・ゲームが好きである。 応が分からない。 係でのトラブルが多いと申し送 ・字を書くことが苦手である。 ることが多い。 ・両親が共働きのため、家族 全員で過ごす時間があま りない。 ・保育所に通う三歳の妹と、 よく喧嘩をする。 ・父は帰宅が遅く、育児は母 に任せている。 生の指導が伝わりにくい。 ・彼を苦手としている児童がい る。 ・教室が散らかっている。 ・授業終りに近づくと、ざわつ いてくる。 ・最近、注意する時が増えてき ている。 その他 ◎人懐こい。 りがあった。 ・大げさな反応をすることがある。 ・周りの保護者から、違うクラ ・一つの言葉、物事に急に反応することがある。 スにしてほしいという声がある ・怒りやすい。 ・学童保育からも、友達とのト ラブルが多いと、担任に連絡が あった。 集団の中での問題発生や悪化の予防 三次予防 (問題による二次的な社会的不利を防ぐ) 二次予防 ・座席を左右の列の前の方にする。 ・学校での様子を伝え、発達相談を進める。 ・発達検査や診断を (適応根拠 ・座席の周りに頼りになり親しい児童を配置する。 ・学校で頑張ったことや、できるようになっ のある必 ・大きなマスのノートを使ったり書き込みプリントを使用したりする。 たことを伝え家庭でもほめる機会を増や 要な予防) ・担任や TT、コーディネーターが連携する。 してもらう。 ・校内支援会議で支援内容や個別の指導計画などを話し合う。 一次予防 ・しかる回数を減らし、ほめる回数を多くする。 (選択的な予防)) ・TTと支援方法や内容の方向を統一させておく。 依頼し、情報交換 する。 ・関係機関と連携す ・連絡を取り合い、関係を作る。 る。 ・座席や班のメンバーを工夫する。 一次予防 学習 (一般的な予防) ・保護者と連絡帳や電話などで連絡を取り ・机上は必要な物だけ出す。 合い児童の様子を伝え家庭でほめる機会 ・授業の始めに学習内容を明示する。 を多くする。 ・黙って手を挙げるようにする。 ・学校(担任や職員)と協力し合える関係を ・挙手をして当てられた児童が発表するというルールを徹底する。 作る。 ・話を聞く態度を徹底する。 ・視覚教材を使うなどわかりやすい板書をする。 ・チャイムで始まりチャイムで終わる。(始めと終わりの挨拶をする) ・発問や指示は短く明確にする。 ・読む・聞く・書くなどの活動を入れどの児童にもわかる授業を組み立てる。 ・ほめる機会を増やす。 ・算数・国語にTTが入りどの児童にも目が行き届くようにする。 ・忘れ物をしてもすぐ貸し借りをせず忘れない方法を考えさせる。 学習環境 ・教室の前の掲示物や板書は必要な物だけにし、掲示物は横又は後ろにする。 ・生き物や作品の展示は横又は後ろにする。 ・先生の机の上も整理する。(何もない方がよい) 行動 ・掃除や当番活動の仕事や手順を視覚的に示す。 ・担任も一緒にみんなで遊ぶ機会を作る。(みんな遊び) ・友達のよいところを見つけたり、困っているのを助けてあげたりした児童をほめる。 支援の段階 支援の場 学 校 家 庭 関係機関 ICFの分類 健康状態 ・ADHD 心身機能・身体構造 ・注意機能に問題あり ・注意を向けて話が聞けない。 ☆興味があることは聞ける。 ・運動機能に不器用さあり。 注1 ☆印は肯定的な要因 ・印は気になる要因 活動 ☆授業中話を聞いていないようで聞いている。 ☆遅刻せずに徒歩で登校できる。 ☆危険なことはしない。 ・連絡帳を書かない。 ・宿題をしない。 ・提出物を出さない。 ☆2年生までの漢字は書ける。 ・3年生の漢字は難しい。 ・給食当番や掃除をしない。 ☆けんかは少ない。 ☆ゲーム係の活動はできる。 ・授業中気分が乗らないと絵を描いて遊ぶ。 ☆国語の読みとりができる。 ☆放課後友達の家に遊びに行くこともある。 環境因子 ・ADHDの診断あり。医師との連携可。 ・リタリンを服用している。 ・小学校3年生。周囲の友達との差が開く。 ・両親は学歴志向が高い。 ・両親共働き ・姉(中学生)1人、不登校気味 ・父は子どもへの関わりが薄い。 ・母は帰りが遅い時がある。 ☆友達関係は良好である。 参加 ・教室の床に寝ころぶ。 ・授業中、隣の子にちょっかいを出す。 ・授業中、声を出したり机をガタガタさせる。 ☆教室から出ることはない。 ・運動会の練習をしない。 ☆運動会の本番は参加する。 ☆休憩時間は友達と遊ぶことができる。 ☆朝の会では着席することもある。 ☆理科の実験が好きで参加する。 ・集団行動が苦手である。 ・教室の中では離席が多い。 個人因子 ☆友達にやさしい。 ・自己肯定感が低い。 ☆算数は理解力がある。 ・書字が苦手である。 ・ひとりぼっちでいることが多い。 ・運動が苦手である。 ・太り気味である。 問題の発生や悪化の予防 ・興味関心を呼び起こす授業の工夫をする。 動作化 1時間の授業の活動に変化をつけて細分化する。 一 次 一 ・子どもたちの授業態度への評価・働きかけを欠かさないようにする。 般 ・机の上に不必要なものを置かないようにする。 的 ・具体物でわかりやすい指示をする。 な ・活動の流れを視覚的に示す。 予 ・環境を整える。 防 予 教室前面の掲示物を整理する。 (学級目標や学習活動の支援になるものは前に貼る。) 黒板横にカーテンを付け、授業中はカーテンを閉めて黒板だけに 防 注目させる。 ・授業の導入時にみんなで動作を取り入れた活動をする。 選 ・座席の配置を考慮する。 択 ・声かけを多くする。 的 注意喚起 な 活動に対する励ましや認めの機会を多くする。 予 ・授業中の活躍の場を増やす。 防 適用 ・個別の指導計画を作成する。 二 根拠 ・係活動を魅力あるものにする。 次 のあ ・保護者との連携を図る。 予 る必 ・離席時にプリント配布などの仕事を頼む。 防 要な ・掃除の時に個別の役割を与える。 予防 ・放課後などに個別に宿題をする場面を設ける。 ・子どもの困り感をじっくり聞く。 問題 ・外部機関との連携 によ ・校内支援体制の強化(全職員での対応) 三 る二 ・保護者との連携を密にする。 次 次的 予 な社 防 会的 不利 益の 予防 8)ICF の分類 健康状態 ADHD 傾向 心身機能・身体構造 ・記憶に問題あり。 (短期記憶の障害かは不明→プロフィール分析の必要性) ・気分が混乱している時がある。 ・人の話、周囲の状況がつかみにくい。 ・言葉の一部だけを聞いて自分なりの解釈をする。 ・集中して取り組めない(転導性の問題) 。 ・正しい指示理解と、個の目的設定が困難である。 活動 ・友だちとよく喧嘩する。 ・暴力はいけないことと理解しているが、感情を抑えきれず手を出してしまうことがある。 ・気持ちを発散できず、教室を出る。 ・喧嘩の後、友だちに謝ってもらってもすぐに許してあげることができない。 ・ゲームの世界に浸る。 ・忘れ物が多く、よく物をなくす。 ・教室外での活動ではつい興奮してしまう。 参加 学校の様子 習い事 地域 ・塾でも最後まで学習でき ・地域の祭り(御神輿)に ・教室をしばしば飛び出す。 ない。 参加している。 ・授業に最後まで参加できない。 ・同年代の友だちとあまり遊べな い。 環境因子 <学校> 校内委員会 ・対象児として名前が 挙がっている。 ・個別のプロフィー ル、個別の指導計画 はこれから作成す る予定。 ・校外からの支援はま だ受けていない。現 在は校内で対応を している。 担任 学級 友だち ・本児の特性を理解し ・本児が出し抜けに答 ・助け合うより批判す る。 えてしまうため、き ていない。 つく当たってしま ・本児はすぐ喧嘩をす ・わかりやすい指導が ると思っている。 う。 できていない。 ・聞くよりも「コラッ」 ・助け合う雰囲気はな い。 と怒る。 ・教師主導型の授業に ・ルールが徹底されて いない。(手を挙げ なっている。 て当てられたら発 表等) ・本児と他の子とのトラブルが多い。 <家庭> 父親 ・子育ては母親に任せ切り。 ・ゲームをやめさせたい。 (隣 のお兄さんをよく思ってい ない。 ) ・本児が何かするとすぐに怒 る。 母親 ・父親の非協力に不満を持っ ている。 ・担任に信頼がもてない。 ・本児の教育に悩んでいる。 ・弟が小さいため、母親は弟 にかかりきりになってい る。 その他 <隣のおじいちゃん> ・いつも本児の話し相手にな っている。 <隣のお兄さん> ・本児にゲームを教えてくれ る。 <本児> ・隣のおじいちゃん、隣のお 兄さんが好き。 ・隣のお兄さんだけが遊び友 だち。 個人因子 ・よく気がつく。 ・発想が豊か。 ・よくしゃべる。 ・ゲームの世界が楽しい。 ・本が好き、物知り。 ・関心事以外は興味を示さない。 ・傷つきやすい。 ・嫌なことがあるとずっとふてくされている。 ・落し物が多く片付けられない。 ・成績はよくない。 ・塾に通っている。 ・勉強が嫌い。 ・学習理解はできるものの、学力に反映されていない。 (落ち着いて行動できていないので定 着していない。 ) ・視覚優位の傾向がある。 ・自尊感情が低下している。 ・LD の疑いがある。 (2学年程度の学力の遅れ。 ) 問題の発生や悪化の予防(I児に対する今後の支援体制) 支援の場 支援レベル 一般的な予防 一 次 選択的な予防 予 防 二 適用根拠のあ 次 る必要な予防 予 防 問題による二 三 次的な社会的 次 不利益を防ぐ 予 防 学 高学年 級 学 校 ・学級でのルールを明確に(学級目標をかかげ、担任の一貫性ある指導を行う) ・学年の教員で現時点の対応について Ex:人や友だちを傷つけない。いやなことがあったら、教師に伝える等 話し合い、検討する ・指示は簡潔に(視覚的な内容を取り入れ、わかりやすい指示にする) ・コーディネーターに相談する Ex:係の仕事、清掃場所などわかりやすいよう、視覚化する ・授業終了時間や休憩時間など時間を守る ・成功体験ができる集団遊びを取り入れる ・一日の生活に見通しをもたせる (行事など、日頃と変化の大きいことがある場合は、事前に知らせておくようにする) ・教室の前面はすっきりさせておく (学級の掲示物は教室の後ろにできるだけ集める) ・肯定的な言葉で学級指導を行う ・個を認め合う学級づくりを目指す ・誉める場面を設定する(指示の内容を本児が達成できるものにする) ・学級担任の指導方針に合わせた一貫 →自尊感情を高めていく 性のある指導を行う ・道徳などの授業を利用し、学級全体に個の理解をすすめていく (教室からの飛び出し等) ・座席を工夫し、授業に集中しやすい環境作りを目指す ・校内委員会で対応について検討する Ex:トラブルを起こしやすい友だちと席を離す ・個別の指導計画の作成を行う ・連絡帳や電話などで保護者との連絡を密にする ・専科担当、委員会担当など教師集団による行動観察を行い、共通理解及び一貫性のある支 援を目指す ・日々の記録を行い、指導経過から、課題を検討する ・教材研究を行い、子どもの興味・関心を引きつけられるような授業を目指す ・子どもの出番を設定し、教室での居場所が感じられるようにする ・グループ活動を行う際は、得意な内容を取り入れる(グループで決まった役割が達成でき るように設定し、成功体験につながることを目指す) ・保護者との懇談をすすめていく ・個別の指導計画の見直し ・担任と支援者の共通理解のもと、T・Tによる個別対応を実施する ・校内委員会で現在の支援方法 ・医療・関係機関との連携を求めていく (学校全体の支援体制及び学級での 家 庭 ・誉めることを増やす ・家庭での様子を学校 に知らせる ・医療・関係機関に相 談する 支援)を再検討する ・応用行動分析を行う(SOSの追求) ・本児の心身状態の把握に努める ・保護者との連携を図り、理解を深める ・医療・関係機関・保護者・学校の連携を図っていく ・個別の教育支援計画を作成する ・応用行動分析から指導の方略を導き出し、実施、経過観察を行う ・不登校になった場合、日程を知らせた上で定期的に訪問する ・関係機関との連携を 図る ☆問題の発生や悪化の予防 一次予防 支援の場 支援レベル 一般的な予防 学 級 二次予防 教育環境を整備する 整頓された教室 スケジュールと具体的な内容を 1 週間単位でプリントにして知らせ る 学習環境を整える わかりやすい教示、提示を行う 指示は、短く区切って、フィードバックするようにする。 視覚による指示を効果的に使う。 クラスのルールを明確にする それぞれの居場所があるような学級経営を行う 一人ひとりの思いを大切にし、ちがいを認め合える関係を育てる できないことや困ったことがあった時は、じっくり対応する 問題行動に対して、一方的なとらえ方をしない 全ての生徒を対象に、学習の遅れに対して、個別対応の機会を持つ 座席の位置、グループ活動の構成メンバーを考慮する 選択的な予防 自由時間の過ごし方を支援する 個別対応の機会を持つ 責任のある立場の役割を任せる(本人、学級の子どもたちの意志を重 視する) 周囲の理解を高める(学級で話し合う機会を持つ) 適用根拠のあ 保護者の心の安定を図る(サポート感を高める) 学力保持(個別指導を行う) る必要な予防 安心できる大人とのコミュニケーションをとる機会を持つ 三次予防 問題による二 次的な社会的 不利益を防ぐ 不登校になった場合、日程を知らせた上で定期的に家庭訪問する 生徒の心身状態の把握に努める 保護者との連絡を密にし、生徒の現状を理解する 学 校 家 庭 学校全体で、学級や生徒の様 子を伝え合い、情報を共有す る 学校での取り組 みを伝える 保護者全体の理 解を計る 校内支援体制を整える スクールカウンセラーと連 携する 関係機関との連携を図る(ア セスメント) 該当生徒の保護 者との教育相談 の機会を持つ 個別の指導計画の作成 校内支援体制を再検討する 医療機関や関係 機関と連携する 学校内に登校した時の居場 所を確保する 関係機関との連 携を密に取る 医療 ICFによる実態分析 健 康 状 態 (ICF整理シート<上田、大川 2005>) AD/HD傾向(未診断) 氏名: 性: T・T 男 高校進学への不安、自尊感情が低く、精神的に不安定、学 年齢:14(中3) 業不振、対人関係に不安、思春期 心身機能・構造 活 記入者: 動 参 ・微細運動が困難(手先が不器用) <できる活動(能力)> <している活動(実行状況)> ・衝動性がある(カッとしやすい、 ・自力で登下校 ・ノートを取るのが苦手 ・授業を通常の教室で同級 ・課題の遂行が苦手(提 思いついたらすぐに行動する) X・X 加 ・クラス(同級生)に溶け込め ずにいる ・休み時間は常に一人(孤立・疎外) 生と一緒に受けている 出物が出せない) ・視覚が入りやすく、聴覚が入り ・好きな先生に話しかける ・字を書くことが苦手 ・行事、掃除当番が苦手 にくい ・行事(文化祭や発表会等) ・忘れ物が多い(不注意) ・親子、兄妹関係に支障 ・独り言が多い ・職員室や保健室を時々訪れる ・一方的、唐突に喋り出す ・児童期は多動 の鑑賞を楽しむ ・不注意(集中力にムラがある) ・学業不振・遅刻、欠席が多い ・モチベーションが低い ・掃除当番はサボらない ・掃除当番が苦手 ・クラブはすぐに退部した ・個別指導では理解が良い ・PC操作が得意 ・学校行事が苦手 ・暗黙のルールが解らない ・粗大運動は得意 ・ゲーム、DVDが趣味 ・同級生との会話が苦手 ・時々「死にたい」とつぶやく <機能・構造障害> <活動制限> ・注意機能(維持、移動、配分) ・書くことの学習 ・情動機能(適切性、制御、範囲) ィスカッション <参加制約> ・単一課題の遂行 ・会話、デ ・複雑な人間関係 ・非公式 ・基本的な対人関係 ・学校教育 な社会的関係 ・知覚機能(聴知覚、視知覚) ・家族関係 ・レクリエーションとレジャー 環境因子 (物的・人的・制度的環境) 個人因子 学校 ・トラブルが起こった時だけ対応(担任) 生活歴・ライフスタイル・興味・価値観など ・小学校までは成績は中の上、中学に入り成績が下がる ・特別な支援の必要性は感じていない(担任) ・真面目で正直 ・小学校からの個別の情報提供はない ・小学校時代から友達は少なく、中学では学校でも近所でも友 ・ 「やる気がない、努力不足」と判断(教科担当教諭) ・話し出すと止まらない(お喋り?) 達はいない(孤立感、疎外感) ・両親、祖父母も長男であるT君に厳しく将来を心配 ・トラブルになりやすいので避けている(同級生) ・妹は兄であるT君を馬鹿にしている ・ 「変わっている子」の印象(同級生) ・高校進学を強く希望しているが、成績が振るわず悩んでいる 家庭 ・父親は成績以外無関心、威圧的で身勝手な面も 客観的次元 ・母親は自営のため常に多忙、精神的にも不安定 ・時々「死にたい」と口にする ・保護者は大学までの進学を希望 ・テレビゲームでのバーチャルな世界が本人にとっての癒し ・保護者は現中学校や教師には期待していない ・PC操作が堪能(入力等も) <阻害因子> ・不器用 ・ルールのあるスポーツは難しいが体を動かすことは好き 「支援と関係」 「態度」 ・家族 ・親族 ・権限を持つ立場にある人々および ・人は好きだが、対人関係がとれない(特に同世代) 態度 ・下位の立場にある人々および態度 ・社会的 ・お金が好き(買い物の金額計算は早くて得意) 態度・教育と訓練のサービス、制度、政策 ・自尊感情が低く、自信がない 主観的次元 ・勉強ができないので困っている 主観的体験 ・志望している高校に入れるかどうか不安 ・同級生とは馬鹿にされるので話しかけないようにしているが、時々話しかけて馬鹿にされたりトラブルになったりする ・自分は少し、周りの子とは違っているように感じている <心の悩み、現状への不満など> ・勉強も出来ず、友達もいない自分をダメな奴だと感じている 成績が悪く志望高に行けそうにないし、母親は「将来、おまえが困るんだよ」と言う。父親 は「男だし、長男なんだからしっかりしろ!」と言い、中 3 になってから顔を合わせばすぐに「勉強してるのか!」と言うので ムカつく。時々フワフワしたり、イライラした感じになり、物に当たったり母親を怒鳴ったりしてしまう。つい、禁止させられ ているゲームをしてしまうが、父にすぐ見つかり、やめさせられストレスが溜まる。 おわりに この度、私たちは、和歌山大学内の「自主演習プロジェクト」に 取り組ませていただいたことで、さまざまな教材・教具の開発にチ ャレンジすることができました。また、実際に学校の支援を行うこ とや支援の方策を考える講義(武田教授主催)等により、適応に関 する実態把握と教材・教具の開発を中心に、発達障害の子どものた めの学校支援をスムーズに行うことができました。あわせて、ご協 力いただいた教育関係機関ならびに、編集に助言してくださった方 々に対しまして、ここに深く感謝申し上げます。 今後は、この冊子ならびに CD-ROM 版を配布することから、よ り多くのみなさんに特別支援教育の普及・啓発をはかるよう努めて まいりたいと考えています。 最後になりましたが、貴重な機会と資金を提供してくださった自 主創造科学センターのクリエ様に、厚く御礼申し上げます。自主演 習プロジェクトのさらなる発展を祈念しまして、挨拶にかえさせて いただきます。ありがとうございました。 2009年 2月末日 発達支援プロジェクト 代表 中澤 恭子 副代表 川野 一郎 【作成協力者(アイウエオ順)】 出水 上中 河野 島袋 田辺 中村 向山 山本 加奈子 美和 恭子 杏弥 恭子 泰介 千嘉子 真也 磯部 理一郎 尾崎 志保 久保 恵美子 滝畑 伸康 辻本 憲伸 一ツ田 啓之 森 香月 山本 初美 入江 俊夫 川野 一郎 榊 清史 武田 鉄郎 仲川 克子 藤田 絵理子 藪本 安有美 横畑 絵里奈 井上 典子 木村 優枝 櫻井 茂美 田中 賀陽子 中澤 恭子 松井 知恵 山崎 安里紗 渡辺 明日実 *「デザイン画」について 特別支援教育は、 「環境の調整」がキーワードです。困っている子どもにとっては、 周りからの「ソーシャルサポート」が必要不可欠です。自然界( 「水」)も同じで、環 境が変われば「気体、液体、個体」と変化します。見た目の違いだけで判断しないで、 多面的な視点で物事をとらえられるようにしたいものですね。特に教師は、「環境を 整えるスキル(ICF の考え方)」を持つことが大切だと思います。さらに、教材等の 工夫によって 子ども達の可能性を最大限に伸ばすことを目指しましょう という願 いを込めて描きました。 発達障害の子どものための学校支援 ―適応に関する実態把握と教材・教具の開発を中心に― 監 修 武 田 鉄 郎 編集者 中 川 澤 野 恭 一 子 郎 印刷所 和歌山印刷株式会社 デザイン* 川 野 一 郎 国立大学法人和歌山大学教育学部特別支援教育 武 田 研究室 〒 640-8510 和歌山市栄谷 930 ℡ 073-457-7253 Fax073-457-7402 E-mail:[email protected] 2009年3月
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