②立ち直れないほど落ち込む ③自信を喪失する/開き直る ④怖くなる

ワーク (解説編)ストレス反応への
個別対応
②立ち直れないほど落ち込む
③自信を喪失する/開き直る
④怖くなる/臆病になる
次の事例を読んで,上記②∼④のストレス反応を示す新人・若手スタッフへの対応を練習してみましょう。
【事例】
新人のDさんは,高齢患者の採血で失敗して,患者から「全くへただな。あんた新人? ベテランと代わってくれ」と言
われた。そのことでDさんは,立ち直れないほどに落ち込み,自信をなくしてしまった。その後,「失敗するのが怖い」と
一切採血をしなくなり,先輩たちが練習に付き合うよと言っても断るばかりだった。
その様子を知った看護部長が「Dさん,なかなか立ち直れないわね。一度Dさんと面談してみて」とあなたに指示をした。
練習問題1
立ち直れないほど落ち込んでいるDさんと面談で話す時は,「いつでも相談に乗るからね」などと伝え,「支えられている感
覚」を持ってもらうことが大切です。では,励まし方としては,どのようなことに注意すればよいでしょうか。
解説
「みんな通る道よ」ではなく,「私も経験したわ」「実はね,あの師長も若いころに経験したのよ」などのように誰が経験
したのかを明確にすることがポイントです。そのことで,Dさんは安心感を得られやすくなります。
指導のポイント
新人・若手スタッフのマインドとして,
「顔の見える誰か」の言葉を最も信頼する傾向があることを説明し,なぜ主語が「み
んな」「誰でも」だと良くないのかを説明します。
このワークを行う中で,採血にまつわるあなた自身のエピソードや諸先輩方の新人時代・プリセプター時代の失敗体験を
話すことで,プリセプターの安心感を育むことができます。「こんな立派な先輩方でも私と同じくらいの年のころは,う
まくいかないことがあったんだなぁ」と知ってもらうことが,プリセプターを勇気づけます。
練習問題2
自信をなくしてしまったDさんと面談する際に,自信をつけさせる方法としてどのような質問が効果的だと思いますか。
解説
本文の応用問題です。ポイントは,「できなかったこと」ではなく「できたこと」に焦点を当てるかかわりです。そのこ
とを踏まえてどのような質問になるのかを答えてもらいます。もちろん,Dさんの気持ちを聞いた上で質問するという流れ
です。
回答例は次のとおりです。
「あの高齢の患者さんの採血をする前って,上手にできたこともたくさんあったよね?」
「うまくいった採血の話を聞かせてくれない?」
「高齢の患者さんの採血って難しいのに,できた時もあったよね?」
「採血がうまくいった時って,どんな気持ちだった?」
指導のポイント
質問する前に,Dさんの気持ちを聞く必要があることを伝え,Dさんの気持ちを想像させてください。
その際に,プリセプター自身が自信をなくしたエピソードが出てきたら,上記の回答例のようにあなたからプリセプター
に質問をしてみてください。そのやり取りを経験することによって,プリセプターはこのワークの意味を体感的に理解で
きます。
プリセプターにこのワークを踏まえた対応をしてもらうためには,あなたが日常的にプリセプターに対して「できたこと」
に焦点化してかかわることが求められます。
練習問題3
誰かに話を聞いてもらうことで気持ちが楽になった経験を挙げてください。
解説
プリセプター自身の経験を振り返ることで,誰かに聞いてもらうことの効果について考えさせる問題です。
指導のポイント
プリセプターに話してもらった後に,「話を聞いてもらえると気持ちが楽になるのは新人も同じだ」と伝えます。
その上で,
「でも,自分から話さない新人に対しては,どうすればいいかな?」と考えさせ,
「プリセプターから声をかける」
という回答が引き出せるようにしてください。
必要に応じて,「最近の出来事でプリセプターがまだ話せていないこと」を聞いてください。特に,一人で抱え込みがち
なプリセプターには,誰かに聞いてもらえる効果を実感してもらうことが大切です。ただ,無理に聞き出す必要はありま
せん。話したがらない場合は,
「誰かに聞いてもらえるだけでスッキリするものよ」とあなたからプリセプターにメッセー
ジを送ってください。