2013 年度 慶應義塾大学 法学部(世界史) 解答解説

2013 年度 慶應義塾大学 法学部(世界史) 解答解説
Ⅰ
中国の少数民族地域の歴史
解答
(1)(2)-07
(3)(4)-32
(5)(6)-11
(7)(8)-08
(9)(10)-21
(13)(14)-16
(15)(16)-12
(17)(18)-09
(19)(20)-03
(21)(22)-02
(11)(12)-38
解説
数十個の語群から選ばせる従来通りの語句選択問題を主体に、正誤判定問題2題と地図問題を加えた、昨年
度からの新傾向を継承した大問。非常に些末な用語を求める問題も少数あるが、正誤判定問題と地図問題は暗
記力ではなく思考力を試される。なお、標準的内容の知識型問題の解説は省略する。
(1)(2) 突厥が柔然を倒して何と称したか、という意表を突いた問題だが、語群を見ていくことで、君主の
称号のことだとわかる。「可汗」の称号はそれまでの「単于」に代えて柔然が初めて使用し、以後に受け継が
れるものなので、当然突厥も使用するはず。
(11)(12) これは、法学部らしい非常に些末な語句の問題。受験生にとって、ヤクブ=ベクとカシュガル=ハ
ン国は学習すべき範囲とは考えられない。が、選択問題なので関係なさそうな選択肢を除外してみよう。地域
と民族を考え、人名として可能性を持つものに限定すると、01のアルプ=アルスラーン・38のヤクブ=ベクの
2つにまで絞ることができる。そこまで努力して正解の確率を上げることは重要であろう。
(15)(16) 事実上、2000年の時点で中華人民共和国の最高指導者が誰であったか、を問う問題だが、実質的に
は胡錦濤政権が何年度に発足したかがポイントになるので、非常に細かい年代の知識を要求している些末な知
識問題である。中国の国家主席は2003年に江沢民から胡錦濤へと交代したので、正解は12の江沢民。受験生に
とっては、13の胡錦濤と紛らわしく、厄介な問題であろう。
(17)(18) 選択肢から見ると、実質的には6文から誤文2つを選ぶ正誤判定問題である。その中で、正文の中
に些末な内容が入っているのが目立つ。(a)の「ロロ人」・(b)の「サキャ派」・(c)の「ゲルク派」・(f)
の「ノーベル平和賞」は、受験生には正誤の判断が困難な部分だろう。だがこれらを無理に判定せず、清はチ
ベットを藩部としてダライ=ラマの統治に任せていたこと・辛亥革命で独立を宣言し、のちに社会主義国とな
ったのは外モンゴル、というポイントから(d)・(e)は明らかな誤文である。このように、些末すぎる内容を
含む文の判断は棚上げにしておき、誤りのポイントをしっかり捉えれば正答できる形式の誤文選択問題は、他
大学では頻出のものなので、しっかり対応力をつけておきたい。
(19)(20) これも(17)(18)と同様の正誤判定問題。正文では、(う)の日露和親条約の内容・(え)の保護国と併
合の区別が些末で判断が難しいが、トゥルゲーネフの『父と子』は農奴制批判が主題ではないことから(あ)は
誤文と疑うべきで、(お)はブルガリアがベルリン条約によりトルコの保護下となったことから明らかに誤文で
ある。(あ)でわかるように、文化史については作品の内容もしっかりと理解する学習が必要である。
(21)(22) 各宗教の伝播ルートと時代を示すユニークな地図問題であるが、手順よく絞り込むと正解を選ぶこ
とができる。まず、Bは5世紀にスリランカからビルマに向かうところから、上座部仏教と判断できる。する
と、01・02・03しか正答の可能性はない。またEは14世紀にジャワに向かうので、明らかにイスラーム教であ
る。これで03が脱落する。するとC・Dがネストリウス派かゾロアスター教かで迷うが、Cに注目するとよい。
エフェソス公会議(431)以後に東方へ伝わるネストリウス派が、4世紀にモンゴル高原に存在するはずがないの
でCはゾロアスター教である。こうして、合理的に判断を重ねると、意外とスムーズに02が正解とわかる。
Ⅱ
列国のアジア・アフリカ進出と現代の同地域
解答
(23)(24)-01
(25)(26)-09
(27)(28)-20
(29)(30)-33
(31)(32)-14
(35)(36)-43
(37)(38)-44
(39)(40)-45
(41)(42)-04
(43)(44)-01
(33)(34)-16
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解説
数十個の語群を用いる語句選択問題に、年代整序問題を2題加えた、やはり昨年の新傾向を継承した大問で
あるが、年代整序問題は年号の細かい知識よりも事件の流れから考えると確実に解ける。その一方で、細かい
知識を求める語句選択問題が多く出題された。なお、標準的内容の知識型問題の解説は省略する。
(23)(24)
ガーナがエンクルマの指導の下で第二次世界大戦後にイギリスから独立したことは重要だが、イギ
リスが征服したアシャンティ王国は細かい用語であり、難問。知識にない場合、13のズールーや18のダホメと
ともに3つにまでは絞れるが、それ以上は無理だろう。
(25)(26)・(31)(32)
サモリ=トゥーレのサモリ帝国~戦後のセク=トゥーレ大統領という、ギニアに関する
流れは、やはり現在の入試問題としてはかなり細かい内容だが、アフリカの近現代史のように受験生の手が回
りにくい範囲でも、この学部は容赦なく出題することが多いので、要注意である。
(33)(34)
これのみ文化史の問題であるが、内燃機関の発明者ダイムラーは、近年頻出の人名となっている。
特に慶應の場合、産業の発達に関係する文化史の出題頻度が高いので、ファラデーやマイヤー・ヘルムホルツ
などとともに、完全に整理しておくことが必須である。
(37)(38)
ラクシュミー=バーイの人名は非常に細かい知識であり、難問。だが選択肢の中で女性らしい人名
を探すと、42のムムターズ=マハルと44のラクシュミー=バーイのみであり、タージ=マハルに関連してムム
ターズ=マハルを除外できると正答は不可能ではない。判断力と努力で解ける問題である。
(41)(42) 5つの選択肢の事項はすべて共通なので、ケープ植民地領有がもっとも早い→マフディーの反乱(ゴ
ードン戦死)の後にファショダ事件、と流れから判断すればよい。年号の知識が不要な整序問題である。
(43)(44) これも、ポーツマス条約→第2次日韓協約(韓国統監府設置)、伊藤博文暗殺→韓国併合(朝鮮総督府
設置)、また第1次日韓協約は日露戦争中、と流れを考えるとすぐ解ける。
Ⅲ
建国~発展期のアメリカ合衆国とメキシコ
解答
(45)(46)-19
(47)(48)-29
(49)(50)-13
(51)(52)-01
(53)(54)-05
(57)(58)-24
(59)(60)-30
(61)(62)-44
(63)(64)-08
(65)(66)-51
(55)(56)-06
解説
従来の傾向そのままの、数十個の語群から選ばせる語句選択問題(空欄補充と小問)のみで構成された大問。
しかし、リード文の文脈から考えても判断できない、非常に些末な語句を求める問題が非常に多く、受験生を
悩ませる内容であった。なお、標準的内容の問題についての解説は省略する。
(45)(46)
ジョン=アダムズ大統領の人名は、かなり細かい知識である。しかしアメリカ合衆国の範囲は慶應
では頻出なので、法学部の出題傾向も合わせて考えると、こうした細かい大統領の人名については、一定の注
意が必要だろう。
(55)(56)
カルデナス大統領の人名は、非常に些末な用語であり、当惑した受験生が多かったと思われる。選
択肢の中で些末な人名からラテン系らしいものを候補として絞っても、02のヴァルガス・42のミランダととも
に、3つの候補が残り、これ以上の絞り込みは困難である。
(57)(58)
現代のメキシコの政党名を問うという、ユニークと言うよりも悪問と言うべき問題である。選択肢
の中の政党名からよく知られているものを除外しても、正解である24の制度的革命党の他に、22の人民革命党
と43の民主革命党も残り、実質3択にしかできない。
(61)(62)
これはヒントに罠があり、誤答に誘導されやすい問題である。合衆国の巨大資本に関し、石油王ロ
ックフェラーや鉄鋼王カーネギーは重要だが、この問題文では「鉄鋼生産の大部分を支配」が目立ち、結果と
して04のカーネギーを選ぶ可能性が高い。現実にはUSスティール社はモルガンがカーネギーの製鉄会社を買
収して設立させたものだが、その些末な知識まで受験生に要求するのは酷であろう。「投資銀行家」と述べて
はいるが、それだけでは正答は難しい。
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(65)(66)
ヒントの著作『沈黙の春』も、レイチェル=カーソンの人名も、入試のレベルを大きく超えた些末
な知識である。これは正答が困難というより不可能な難問。悪問と言った方がよいだろう。
Ⅳ
オスマン帝国に見る多文化の共存
解答
(67)(68)-25
(69)(70)-34
(71)(72)-17
(73)(74)-02
(75)(76)-23
(79)(80)-28
(81)(82)-26
(83)(84)-01
(85)(86)-24
(87)(88)-15
(77)(78)-09
解説
数十個の語群から選ばせる語句選択問題(空欄補充と小問)に加えて、ここでも地図問題が入っている。なお、
Iの中国史に加えてこのⅣをイスラーム史とした関係で、今年度は東洋史の比率が高くなった。内容を見ると、
やはり語句選択問題の中に少数ながら非常に些末な知識を必要とする問題が配合されている。以下、標準的な
知識型問題の解説は省略する。
(71)(72)
ヒントの内容がユニークである。コンスタンツ公会議以前にウィクリフはすでに死去していたが、
異端とされたのはウィクリフとフス→実際に刑死したのはフス→ウィクリフが該当、と考えれば迷うことはな
いだろう。
(75)(76)
オスマン帝国が従来のイスラーム国家よりも踏み込んだ中央集権体制を築いたことは重要ポイント
であり、それに関連して地方官僚的な役割をカーディーが担ったことも重要だが、スレイマン1世が整備した
法令集であるカーヌーンは、非常に細かい知識である。現実的には、該当する可能性のある選択肢を語群から
絞っていくと、カーヌーンの他に28のスィナン・38のバリードの3つが残るだろう。そこまでは努力しておく
べきである。
(79)(80)
スレイマン=モスクの設計者としてのミマーリ=スィナンは、非常に些末な人名であり、単純に解
くことは困難である。これも語群から知識になく該当しそうな選択肢を取り出すと、(75)(76)と重複してしま
うが23のカーヌーン・38のバリードあたりが考えられ、やはり3つにしか絞り込めないと思われる。
(83)(84)
今年度では2個目の地図問題であるが、セーヴル条約によるトルコの分割という、一見すると非常
に細かい内容を扱っている。しかし地図をよく見ると、Bはシリア中心なのでフランスだとすぐ特定でき、隣
接するAはイラクを含むのでイギリスとわかる。この段階で、正解は01か02に絞られる。さらに、わざわざ地
図中にイズミルの地名を記しているので、このDがギリシアだと判明すると、正解は01。なお結果的にCがイ
タリアとなるのだが、セーヴル条約によるトルコ領分割にイタリアも参加していたというポイントは非常に些
末な内容であり、知識として押さえておく必要はないだろう。
(87)(88)
イスラーム協力機構そのものは非常に細かい用語だが、その知識が求められているわけではない。
文中の「1億6000万のムスリム」と「パキスタンが参加を阻止」というヒントから考えれば、インドと見抜くこ
とは難しくない。これは知識型問題ではなく、思考力を活かすべき問題である。
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