2013 年度 早稲田大学 商学部(世界史) 解答解説

2013 年度 早稲田大学 商学部(世界史) 解答解説
Ⅰ
中国王朝の対外政策
解答
問A.3
問B.4
問C.1
問D.1
問E.2
問H.4
問I.3
問J.1
問K.3
問L.2
問F.4
問G.3
解説
今年度で唯一の純粋な東洋史の大問だが、国際交易の観点から中国史を扱っている点が、近年の入試問題の
傾向をよく表している。また、全体的に難易度がやや易化した中で、この大問では判断が困難な正誤判定問題
が一部配合されている。以下、注意を要する問題についてのみ解説する。
問A
渤海は初期の段階から唐に服属して文化・制度を導入したので、3が正文であることは推測しやすい。
一方、南越は始皇帝の死後に自立→1は誤文。足利義満による日明貿易開始は永楽帝時代→4も誤文。また、
劉邦は冒頓単于に敗れた後、屈辱的な和親策をとったのだから2はかなり疑わしい。全体を比較すると、3が
正文と判断できるだろう。
問B
日本が唐代に冊封を受けたかどうかという点は、世界史の入試問題としては非常に細かいポイントなの
で、1の判断は難しい。2・3の内容は、当時を推測すると想像できる内容。しかし香木に関する4の内容を、
受験生が誤文と判断するのは非常に困難だろう。厳しい難問である。
問C
正誤の判断が容易な正誤判定問題。1は標準的内容の正文であり、ソグド人は陸上の交易に従事→2は
誤文、琉球王国の中継貿易は明代の出来事→3は誤文、インド商人の中国来航はあまりにも疑わしい→4も誤
文、と判断できる。「蕃坊」や「唐から朝貢船を支給」という細かいポイントに惑わされてはいけない。
問E
遊牧民に貨幣経済が浸透しているとは考えられないので、選択肢を比較すると結論を出すことは容易。
問F
一般的な入試世界史の理解では、上海はアヘン戦争による開港以後に列国の開発で急発展するというの
が重要ポイントなので、4の上海を正解とするのが作問者の意図と思われる。しかし厳密には、南宋の時代に
上海には市舶司の分所が置かれていたので、正解なしと見ることもできる。もっとも、このような些末な事項
を受験生が学習する必要はない。
問G
非常に細かいポイントに惑わされず、確実に誤文を見抜けばよい。「朱元璋に敵対した海上勢力」は判
断しようがないので1は棚上げにしておく。2は「日本に倭寇鎮圧を求める」という点がやや細かいが、全体
としては標準的な内容の正文。海禁策は私貿易禁止のため洪武帝が開始したもので、銀の流入制限とは無関係
なため3は誤文だと判断できる。なお4は「後期倭寇の鎮圧→海禁策の緩和」という非常に細かい時系列が厄
介。一般的には「後期倭寇の隆盛→明がやむなく海禁を緩和」というのが重要ポイントなので、疑いを持った
受験生が多かったのではないだろうか。だが、3と4を比較すると明確な誤文は3であろう。
問I ヴァスコ=ダ=ガマのカリカット来航(1498)は鄭和の来航(1407)のずっと後のことなので、3が明らか
に誤文。1・2の、鄭和が明軍の捕虜だった・宝船が世界最大の木造帆船だったという些末な事項に惑わされ
ず、誤りのポイントを見抜けばよい。
問L 東インド会社の中国貿易独占権廃止(1833)は、マカートニーの派遣のかなり後のことなので、2は明ら
かに誤文。1・3・4は標準的な内容の正文であり、正誤の判断が容易な問題である。
Ⅱ
中世~近代初期のヨーロッパの交易
解答
問A.3
問B.1
問C.2
問D.4
問E.3
問H.4
問I.3
問J.1
問K.3
問L.1
問F.4
問G.1
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解説
7題ある正誤判定問題が、すべて正誤の判断の容易な問題であり、今年度の易化傾向を象徴する大問。ただ
し、ハンブルクの細かい位置の知識を求める問Eは難問だった。以下、注意を要する問題に関して解説する。
問B 軍管区制(テマ制)を施行したのはヘラクレイオス1世なので1が誤文。2・3・4は標準的内容の正文
なので、正解を容易に割り出せる。
問D
空欄Dがマムルーク朝ということはすぐに推測できるが、サラディンはアイユーブ朝の創始者なので4
が誤文。1・2・3は標準的内容の正文なので、これも判断が楽な問題である。
問E
この大問の中では難問。ハンブルクがエルベ川の河口に位置するという、非常に細かい地理的な知識を
求めている。実質的には地図問題に相当する問題。
問F
オルレアンはフランドル地方ではなくフランスの都市なので、4が明らかに誤文。1・2・3は、中世
の経済関係としても重要な、標準的内容の正文。正解を見抜くことは容易である。
問G
空欄Gがオスマン帝国ということは文脈からすぐわかるが、16世紀の第一次ウィーン包囲は失敗したの
だから、1が明らかに誤文。2・3・4は標準的内容の正文である。
問I
ラテンアメリカ産の銀の大量流入でフッガー家が没落したことは重要ポイントであり、3は単独でも正
文と判断できる。他は、銀の大量流入により物価は高騰(価格革命)→1は誤文、銀山の開発にスラヴ人は何の
関係もない→2は荒唐無稽な内容の誤文、インディオの扱いに抗議したのはラス=カサス→4も誤文、と容易
に判断できる。
問J
空欄Jはフェリペ2世と判断できるが、彼の時代のポルトガル併合によりスペインは地球規模の植民地
帝国となったので、1は明らかに正文である。他は、神聖ローマ皇帝を兼任しドイツの宗教改革に直面したの
はカルロス1世→2は誤文、グラナダ陥落はフェルナンド5世とイサベル女王の時代→3は誤文、スペイン継
承戦争は18世紀初頭の事件(1701)であり、彼の時代のずっと後→4も誤文、と判断できる。
問K
オランダの正式名称を述べた3は、単独でも判断できる非常に平易な正文。他は、オランダの新教徒は
カルヴァン派→1は誤文、独立したのは北部7州→2は誤文、イギリス海軍はアルマダ海戦で無敵艦隊に勝利
→4も誤文、と楽に判断できる。
Ⅲ
アメリカ独立革命とラテンアメリカ諸国の独立
解答
問A.4
問B.2
問C.1
問D.3
問E.2
問H.1
問I.3
問J.4
問K.4
問L.1
問F.3
問G.2
解説
Ⅱと同様に正誤判定問題を7題含むが、難解な内容の文を配合してあるため、解く上での難易度はⅡよりも
かなり高い。例年の早稲田-商らしさがよく現れている大問と見るべきだろう。以下、注意を必要とする問題
に関してのみ解説する。
問A
この大問の中では、正誤の判断が容易な正誤判定問題。1・2・3は標準的内容の正文。4については、
植民地議会の成立順序という細かい知識ではなく、ジョージアは13植民地の中で最後に建設→最初の植民地議
会というのは非常に疑わしい、と判断できればよい。
問E
1・4は標準的な内容の正文なので除外できる。3は福沢諭吉の『西洋事情』という、世界史では些末
すぎる内容を述べているので判断が困難だが、2の内容には疑いを持つべき。当時の市民的権利をうたう各種
文書で「私有財産の神聖不可侵」がうたわれていたことから考えると、不自然な内容である。実際には2の内
容はフランス人権宣言の一部だが、それがわかる必要はない。2と3の疑わしさを比較して合理的に2を選ぶ
べきである。
問F
早稲田志望者ならば、独立戦争中のアメリカ連合規約に関して、「アメリカ合衆国」の国名を初めて採
用・この時点では各州の権限が強い、という2点のポイントは押さえておきたい。それにより1・2を正文と
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判断できるが、「常設の連合裁判所」という3の非常に細かい誤りのポイントは、受験生が見抜くことはほぼ
不可能と思われる。さらに「発効に3年以上要した」という4の内容も非常に細かい。実際には、3・4まで
絞れるが、正解は困難な難問である。
問G
1・4は平易な内容の正文なので除外できる。しかし、ワシントンは大統領時代に連邦派・反連邦派の
対立に対して中立の姿勢をとったのだから、彼が連邦政府の権限強化を主張したという2の内容は非常に疑わ
しい。一方で、議員の選出に関する些末な内容を述べた3は、正誤どちらとも判断できない。そこで2・3を
比較し、疑わしさの度合いから合理的に2を選ぶべきである。
問I
まず、シモン=ボリバルは故郷ベネズエラの独立を最初に指導したので、3は単独でも正文と判断でき
る内容である。さらに、ボリバルはメキシコとは無関係→1は誤文、ペルー独立を指導したのはサン=マルテ
ィン→4も誤文、と判断できる。一方、パナマ会議で彼の主張が各国から支持されたかという非常に些末な内
容の2は判断が困難だが、2と3の疑わしさを比較すれば、明らかに3を正文とすべきである。なお、パナマ
会議でボリバルがラテンアメリカの連合を主張したという内容は、早稲田志望者ならば押さえておきたい。
問K 猟官制(スポイルズ=システム)というかなり細かいポイントを述べた3は判断が難しいが、1・2は標
準的内容の正文である。これに対し、合衆国の女性参政権実現は第一次世界大戦後(1920)のことであり、4の
誤りが明確なので、3に惑わされずこれを選べばよい。
問L
3・4は標準的内容の正文なので除外できる。2の「インディヘニスモ」は些末すぎる内容なので2は
判断が困難だが、現行の民主的憲法の制定はメキシコ革命末期のカランサ大統領によるものであり、独裁者デ
ィアスではないから、1と2の疑わしさを比較して1を選べばよい。
Ⅳ
運輸・通信の発達とグローバル化の進展
解答
1-海底電信ケーブル
6-東清鉄道
2-インド
7-シティ
3-レセップス
8-オタワ
11-GATT(関税と貿易に関する一般協定)
9-特恵関税
4-スエズ
5-大陸横断鉄道
10-植民地
12-WTO(世界貿易機関)
13-ポンド
14(論述問題) 新興工業地域の略称であり、台湾・シンガポール・韓国などの諸国や地域をさす。先進国か
らの技術・資本の導入と安価な労働力を活用して工業化を推進し、輸出の拡大と経済成長を
図る手法が成功したためである。(97字)
解説
19世紀後半の交通革命(運輸革命)・情報革命、さらに現代の国際経済にも踏み込んだ、早稲田-商らしい大
問。論述問題がNIESの内容説明という、世界史としては少し意表を突くテーマであった。以下、注意を必
要とする問題に関してのみ解説する。
空欄2 近年では出題が急増している情報革命の中で、海底電信ケーブルは重要ポイントの1つ。そのため、
19世紀後半のイギリスに関連する敷設例として、ドーバー海峡(世界初)→大西洋横断→イギリス・インド間、
の順序は押さえておくべきだろう。その知識があれば、難解な問題ではない。
空欄9 ブロック経済の内容は理解していても、「特恵関税制度」を語句として記憶していた受験生は、意外
に少なかったのではないだろうか。その点では、意表を突いたやや難の問題であった。
論述問題 例年通りの100字型論述だが、世界史としてはやや意外なテーマながら、内容としては些末な知識を
求めているわけではない。該当諸国・地域の発展要因は、模範解答に示した通りシンプルな内容である。近年、
こうした現代の世界経済に関する出題は頻出になっているので、APECやNAFTAなど、各地域の経済協
力組織などについても理解を深めておくことが必須である。
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