営業考査室審査済 7 月の投資環境 ◆7 月は、7~9 日の北海道洞爺湖サミットが最大の関心事になる。1975 年に第 1 次オイル ショックを受けて始まったランブイエサミット(フランス)から 34 回目、日本での開催は 2000 年の沖縄開催に次いで 5 回目となる。昨年ドイツで開かれたハイリゲンダムサミット からは地球温暖化対策を話し合う「環境サミット」の色彩が強まり、温暖化ガス削減義務 の設定がサミットの重要課題の一つになった。 1992 年に気候変動枠組み条約の締結を目指す国連のCOPが制定され、1995 年から毎年、 気候変動に対処する仕組み作りが論議されている。1997 年のCOP3 で、2008 年からの温 暖化ガス削減の京都議定書が採択され、2012 年までの削減枠が決められた。2013 年以降の 枠は 昨年インドネシアのバリ島でCOP13 が開催され、2009 年末を交渉期限とする「バ リ・ロードマップ」が採択された。今年 12 月のポーランドでのCOP14 と、来年デンマー クで開かれるCOP15 で、京都議定書と同様の数値目標を課す方向にある。 ◆株式市場では温暖化ガスの削減が大きなテーマ。6 月相場では、古河電池が 1980 年代の 高値(1420 円)を抜いて上場来高値を更新した。同社は今年 3 月 7 日の紙面(化学工業日 報)で、リチウムイオン電池の開発を海外のパートナーと進めているとしたうえで、新た な事業の柱となり得るか「今年度中に見極めたい」としている。株式市場では、このほか 次世代ハイブリッド車や電気自動車向けのリチウムイオン電池市場が急拡大するとの期待 から 2 次電池メーカーが軒並み買われた。 原発関連では東芝が 6 月 4 日に 953 円で高値を付け、三菱重工も 6 月 6 日に 607 円の高 値を付けている。その後、バッテリー株はGSユアサが 6 月 19 日に 630 円の高値を付け、 古河電池は 6 月 24 日に 1690 円まで物色されている。相場のセオリーとしては、本命株か ら出遅れ株、大型株から小型株という典型的なパターンを辿っている。その点では、洞爺 湖サミット(7/7~9)で環境関連株の物色が一巡する可能性もある。しかし、年末にはポ ーランドでCOP14 があり、その1年後のCOP15 で、温暖化ガス削減の数値目標が決定 する。株式市場では、折に触れて「環境関連株」が話題になると考えられる。 ◆11 月決算の米大手証券が 6 月第 3 週にかけ第 2 四半期(3-5 月期)決算を発表したが、 モルガン・スタンレーの最終利益が前年同期比 60%の減少となり、リーマン・ブラザーズ は上場以来初の赤字決算になった。7 月は、メリルリンチや米大手銀行が第 2 四半期(4-6 月期)決算を発表するが、不動産価格の下落が続いていることなどから、サブプライム問 題の影響が尾を引きそうだ。米シティグループのゲーリー・クリッテンデン最高財務責任 者(CFO)は、すでに 4-6 月期にさらなる損失を計上することを明らかにしているが、 評価損計上額は 1-3 月期に比べれば少ないと見られている。 米企業の決算発表と同時期に、日本企業の 4-6 月期(第 1 四半期)決算も 7 月末頃から スタートするとみられる。ここでは原油高の影響が収益を圧迫する業界が顕著になりそう だ。米国では宅配・航空貨物大手のユナイテッド・パーセル・サービスが、事前に 4-6 月 期見通しの下方修正を発表している。日本国内でも運輸、流通業などの燃料コスト高は大 きな負担増になると予想され、業績への悪影響が懸念される。ただ、日本企業は原油高の 影響とは対照的に円安が進んでいる点が期初の見通しとは異なっている。円ドル相場は 3 月 17 日の 1 ドル=95 円 77 銭から 6 月 12 日にはニューヨーク外国為替市場で 1 ドル=108 円台を付け、以後 108 円中心のレンジで推移している。 ◆日本企業の 2009 年 3 月期は 7 期ぶりの減益が予想されている。円高が業績を直撃するの は、利益の大半を海外市場に依存する自動車が典型例だが、今期の連結営業利益を 31%減 と予想しているホンダの場合、前提為替レートは 1 ドル=100 円で前期比 14 円の円高を想 定している。同社は対ドルで 1 円の円高になると営業利益が約 200 億円減り、円高の為替 だけで 3000 億円規模の減益要因になるとされるが、3 月中旬以降の為替市場は円安傾向に あり、予想された為替差損は差益に変わる可能性もある。4-6 月の為替相場の推移で今年 度の業績を推定するのは困難だが、第 1 四半期に関しては、想定を上振れする可能性があ る。想定為替レートはトヨタ、ソニー、松下電器、京セラなどが 1 ドル=100 円。小糸製作 所やセイコーエプソン、イビデンなど 95 円としている企業もある。 原油価格の高騰などで原燃料費の負担が増えるため、4-6 月期決算は素材産業などを中 心に総じて厳しい決算が予想される。しかし、電機、自動車、精密の3セクターは、円安 が原料高をある程度相殺する可能性がある。 ◆7 月の株式市場は、1 日の日銀短観、7~9 日の北海道洞爺湖サミット、中旬以降の日米の 4-6 月期決算発表などが相場のインパクトになりそうだ。原油高騰の影響は、先進国のみ ならず新興国経済にも深刻な影響を及ぼす可能性もある。日本経済への打撃も大きい。し かし、長期化したデフレ経済からの脱却という点では、日本の経済環境は「他国に比べ優 位」という見方がある。4 月以降の対日外国人投資が約 2 兆 5000 円の買い越しとなってい るが、海外の機関投資家も消去法では日本株投資が有利と判断しているようだ。 2008 年 6 月 27 日 三木証券 投資情報部 このレポートは投資の参考となる情報の提供を目的とし、証券の売買勧誘を目 的としたものではありません。株式は値動きのある商品であるため、元本を保 証するものではありません。投資判断はお客様ご自身でお願いします。
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