目 次 はじめに 1 公共施設のあり方について 2 成熟した区民社会での

目
次
はじめに
1 公共施設のあり方について
2 成熟した区民社会での行政の関与
3 公と私の間のグレーゾーン
4 区民等と行政のパートナーシップの構築
第1章 区民等と行政との協働の必要性
1 地方自治体を取り巻く状況の急激な変化
2 区財政の現況と施設管理経費の増大
第2章 見直しにあたっての基本的な方向・視点
1 区民等と行政との協働のあり方の基本理念
2 区民等と行政との協働の判断基準(物差し)
3 まとめ
はじめに
区は、区民の区に対する要望や予想をはるかに上回る少子高齢社会の進展等の社会経済
状況等の影響を踏まえ、的確に区の「今」を見つめ、区の「将来」を展望し、迅速かつ適切に区
政運営を行っていかなければなりません。
区が保有する453の施設に対する対応も同様だと思われます。
これらの公共施設は、主に昭和 40 年代から昭和 50 年代に建設された施設であり、それ
らの施設が全体の約 75%を占めています。建設時期が集中していたため、一斉に老朽化を
迎えることが想定されます。
したがって、現在の施設数、施設規模をこのまま維持していくとするならば、公共施設
の更新(建替)のための費用が集中的に必要となり、その費用が他の多くの区民サービス
の提供に大きな影響を与えていくことが懸念されています。
公共施設についても、ただ単に老朽化したから更新(建替)をしていくという姿勢ではな
く、常に不断の見直しを行い、公共施設のあり方を抜本的に検討した上で、公共施設を活用
した施策を推進し、区全体として、真に必要な区民サービスを展開していく必要があります。
今般、このような問題認識を踏まえた上で、区の保有する公共施設の見直しの検討を行っ
てまいります。
1 公共施設のあり方について
公共施設とは、基本的には、行政サービスを区民に提供するための拠点として捉える必
要があります。したがって、施設のあり方を見直すためには、まず今後の行政サービスの
方向性について、十分に検討していく必要があります。
そのために、まず所期の目的に対して、サービス提供拠点である施設が、今までどのよ
うな役割を果たし、またどのような効果をもたらしてきたのかを検証していく必要があり
ます。
その上で、区民の様々な要望や社会経済状況の変化を踏まえて、現在の公共施設が抱え
る問題点を洗い出し、加えて、将来必要とされる行政需要をも想定しながら、各分野にお
ける施設のあり方を検討していくことといたします。
2 成熟した区民社会での行政の関与
行政サービスの提供拠点としての公共施設の見直しを行うためには、既述のように、区
民のニーズや様々な社会経済状況等の影響や変化に適切かつ効果的に対応できる行政シス
テムを作り上げていく必要があります。そのためには、まず、区が、何をなすべきか、ど
のようになすべきか等について、区民と区とが現実的な認識を共有しなければなりません。
今後の成熟社会においては、税収増による行政サービスの絶えざる拡大は期待できず、
現状の維持、最悪の場合は、その縮小さえ想定しなければならない可能性もあります。
反面、景気の低迷等による厳しい社会経済状況を反映して、区民生活へのセーフティネッ
トを担う区への期待はますます膨らみ、区の役割が一層増大することが予想されます。
成熟社会における行財政資源等を踏まえるならば、これまでのように行政がその大部分
を担い、関与していくことは極めて困難になりつつあります。
そのためには、区は、何を重視していくのか、重点課題は何かを適切に選択し、区民に明
示したうえで施策を展開していく必要があり、同時に、対応できない課題は何か、その理由
は何か、何が不足するのか等を明示していかなければなりません。
このように、限りある行財政資源を効果的に配分し、施策の選択と重点化を図っていく
結果として、行政サービスの手が届きにくい、手薄な、いわば隙間が生じることが想定さ
れます。このことは、公共施設経営においても同様です。
しかし、住民の福祉の維持向上は区政に課せられた責務であり、できないことをそのま
ま放置することは許されません。
そこで、地方自治の基本的な理念に今一度立ち返り、住民自治、区と区民等との協働等を
再検討し、この隙間を埋めていかなければなりません。
3 公と私の間のグレーゾーン
未だ、行政が「公」として何を行うべきであるかについては、時々の社会経済情勢や時代
背景により異なり、区民との間での十分な合意形成を図っていくことは非常に難しいと考
えられます。
「公(パブリック)」 領域とは何か、それに対する「私( プライベート)」 領域とは何か
について、区民との合意形成がなければ行政の責任放棄と誤解されかねません。
しかし,
「公」と「私」の間には広大なグレーゾーン、明確に二分できない領域の存在が
あり、このことが区民との合意形成を困難にしていると思われますが、このグレーゾーン
の領域こそが、区が区民等と協働を目指すべき領域であると考えられます。そして、まさ
に、区と区民との合意によって、その領域は確定されなければなりません。
公共施設においても、例えば、その運営を全て「公」=行政が担うという考え方だけではな
く、「私」=民間事業者や区民の方々の活動領域において担うことの可能性についても検討
していく必要があると考えられます。
4 区民等と区のパートナーシップの構築
公共施設の見直しを検討するにあたっては、その基本的な姿勢として、国における構造改
革や地方分権の一層の推進、民間活力の導入や規制緩和による地域活力の再生等を目的と
した「構造改革特区制度」や「地域再生プログラム」等、今後の地方自治体経営に大きな影
響を及ぼす要因を踏まえて考えなければなりません。
公共施設を行政サービスを区民に提供するための拠点として捉えるならば、その見直し
を行うにあたっては、まず、今後の行政サービスの方向性について、十分に検討していく必
要があるからです。
そのためには、基礎的自治体として、区民等と区がお互いにどのような協働者(パート
ナー)であることができるのかについて、長期的な視点から検討を加える必要があります。
第1章 区民等と行政との協働の必要性
国における構造改革の進捗状況を見ると、地方分権の一層の推進、民間活力の導入や規制
緩和による地域活力の再生等を目的とした「構造改革特区制度」、
「地域再生プログラム」や
財政面における「三位一体改革」等、今後の地方自治体経営に大きな影響を及ぼす改革が
行われています。また、地方自治法の改正により、公の施設の管理運営に株式会社等の民間
事業者の参入を可能とする指定管理者制度の導入等、従来の地方自治体の制度や役割その
ものの大きな転換期を迎えています。このような地方自治体を取り巻く大きな変化の潮流
に対して、現行の区の財政がどのような状況にあるのかについての基本的な認識が必要と
なります。
公共施設の見直しに際しても、このことを十分に認識したうえで対応していく必要があ
ると考えます。
1 地方自治体を取り巻く状況の急激な変化
社会的経済的な状況は急速に変化する一つの要因として「超高齢化」があげられます。
国立社会保障・人口問題研究所が公表した人口の将来推計によると、65 歳以上の人口割合
は、2001 年から 2010 年にかけて4.5%程度(中位数)増加すると見込まれ、しかも 2050
年まで増加すると予想されています。平成 26 年には4人に1人が 65 歳以上となるなど超
高齢社会を迎えるスピードは、これまで世界各国で経験したことがないほどの早さとなっ
ています。本区における 65 歳以上人口の割合は、2000 年(10 月 1 日)から 2004 年(4 月
1 日)までの約4年間で 2.5%増加( 16.6% → 19.1% )しており、全国( 17.3% → 19.3% :
2.0%増加 )をやや上回った水準で推移しています(各年 1 月 1 日現在人口)。こうした超高
齢社会の到来は、区全体はもとより行政サービスの提供そのものにも大きな影響を与える
ことが予想されます。
次に、高度情報化社会の到来があげられます。インターネットの普及人口は、1999 年 12
月末の 21.4%から 2002 年 12 月末の 54.5%へと総人口の半数以上が利用するにいたってお
り、一部の自治体ではワンストップサービスや電子申請が実現するなど、IT活用による
質の高いサービスの提供が可能となっています。さらに、平成 23 年より地上アナログ放送
から地上デジタル放送に完全移行することに伴い、地上デジタルテレビが全家庭に普及す
し、このようなデジタル化の全家庭への普及は、双方向通信システムの全家庭への配備と
同様の効果をもたらし、インターネットの普及以上に地方自治体の電子化やサービス提供
体制のあり様を大きく変えていくものと想定されます。
公共施設の見直しにおいて、このような社会状況等の急速な変化や潮流を的確に認識・把
握し、対応していく必要があります。
2 葛飾区財政の現況と施設管理経費の増大
(1) 葛飾区の財政状況
2002 年度(平成 14 年度) 決算のデータから,葛飾区財政状況を以下に示します。
ア 歳入状況
一般財源
特定財源
総額
138,189,127千円
構成比
特別区全体での構成比
66.9%
66.2%
特別区税
財政調整交付金
33.1%
33.8%
国・都支出金
地方債
構成比
18.3%
42.5%
17.5%
0.1%
特別区全体での構成比
29.4%
28.3%
15.8%
2.2%
構成比
27.0%
22.2%
7.4%
特別区全体での構成比
27.7%
17.6%
7.3%
12.1%
15.1%
イ 歳出状況
総額
135,533,269千円
構成比
特別区全体での構成比
義務的経費
56.6%
52.6% 人件費
扶助費
公債費
投資的経費
9.7%
11.4%
その他経費
33.7%
36.0% 物件費
※ 義務的経費の占める割合は、23区中17位。
ウ 財政指標
財政指標
経常収支比率
実質収支比率
公債費比率
エ 基金の状況
基金
財政調整基金残高
減債基金残高
その他特定目的基金残高
飾区
84.5%
2.8%
9.6%
特別区全体
85.2%
3.5%
9.5%
順位
10位
8位
13位
飾区
11.6億円
86.6億円
206.3億円
特別区全体
81億円
43億円
166億円
順位
22位
3位
9位
オ 特別区における経常収支比率
14年度団体別経常収支比率の内訳
%
120
100
人件費
扶助費
公債費
物件費
その他
80
60
40
20
江戸川区
足立区
練馬区
荒川区
板橋区
北区
豊島区
杉並区
中野区
渋谷区
世田谷区
大田区
目黒区
品川区
江東区
墨田区
台東区
文京区
新宿区
港区
中央区
千代田区
区平均
葛飾区
0
(2)膨れ上がる施設関係経費
区の建築物は、主に昭和 40 年代から昭和 50 年代に建設された施設であり、全体の
約 75%を占めています。建設時期が集中していたため、一斉に老朽化を迎えます。
したがって、現在の施設数、施設規模をこのまま維持していくためには、区有建築
物の更新(建替)のための費用が集中的に必要となります。
◎建替経費の将来予測(あくまでも下記条件による推計値)
公共施設の10年毎の建替え経費
建替え経費
1,600億円
1,428億円
1,400億円
1,200億円
1,000億円
800億円
543億円
600億円
400億円
397億円
278億円
127億円
200億円
億円
50 年平均
2006∼2015
約 55 億円/年
2016∼2025
2026∼2035
2036∼2045
2046∼2055
建替え年
※区有建築物の建替費の推計方法について
現在設定可能な次の条件で一律に推計したものであり、個々の施設の建替条件につ
いて、詳細な検討を加えたものではありません。
1
2
3
4
推
計
の
条
件
現有建築物の耐用年限は一律50年としました。
建替面積については、現有面積と同じとしました。
建替費の単価については、14年度版建設単価表により算出したもの
であり、単価改正の際は、見直す必要があります。また、建物の用途
に合わせた考慮はしていません。
建替費に建設費、取り壊し、設計等委託費は含んでいますが、建替え
のための一時利用を目的とする仮設物、一時移転の事務経費等は含ん
でいません。
(3)今後の投資的経費の予測
本区の平成 14 年度決算によると、普通会計ベースの投資的経費は、約 130 億円となって
おり、このことを勘案すると、更新(建替)に要する経費を平準化したとしても、毎年度、投資的
経費の 3 分の1以上を区有建築物の建替え経費に充てなければならない計算になります。
また、本区では、京成押上線の連続立体交差事業や金町駅南口の再開発事業などの大規
模事業が進んでおり、施設の更新に当てられる経費は、今後、非常に厳しくなることが予
想されます。
(4)まとめ
本区においては、第一次 飾区経営改革宣言に基づく、区政改革の取組の結果、平成 10
年 11 月からの 3 年間で 104 億円の経費削減を実現しました。平成 14 年 2 月には、第二次
飾区経営改革宣言を発し、更なる事務事業の見直しや職員定数の削減などに取り組んで
います。
しかし、こうした経費削減は、事務事業の見直しや職員人件費の削減により実現されて
きたものであり、今後もこれだけの経費削減が実施できるかは、従来の経費削減方法を継
続していくことを前提として考えると、極めて難しい状況にあります。また、既述したと
おり、今後は、施設の更新(建替)に伴う建設経費が膨れ上がることも明らかな状況とな
っています。
そうした中でマクロ的視点に立って長期の収支均衡を図っていくためには、大幅な収支
構造の改善、区政の体質を抜本的に見直していくことが必要です。
第2章 見直しにあたっての基本的な方向・視点
1 区民等と行政との協働のあり方の基本理念
(1)
基本理念
公共施設の見直しについては、「区民等と行政との協働のあり方」を考えていく必要があ
りますが、その際には、「補完性の原理」を基本理念としていくべきであると考えます。
「補完性の原理」とは、自立した区民を基本に、区民の自助・共助で解決できる問題は
区民の自主的・自発的活動で解決し、それが不可能な場合に民間非営利団体(NPO)や
民間企業等が行い、それでも困難な場合のみ公助として自治体、国が順に補完・支援を行
っていくという考え方です。
これは、分権型社会に相応しい自治と分権を拡充していくための基本原理といえます。
しかし、この「補完性の原理」が現実の区政運営を考えると、そのまま適用できるもので
はないことも考えていかなければなりません。
増大する区民ニーズと限りある行財政資源を勘案すれば、極力、この原理に従って、民間
に委ねられるものは委ね、民間活力を最大限に活用するという観点を取り入れるなど、す
べての行政分野のすべての施策につき、思い切った見直しを加えるとともに、区民の区政
参画を促し、市民セクターの活性化を促進していくことが必要となります。
2 区民等と行政との協働の判断基準(物差し)
具体的に区民等と行政との協働を検討するためには、行政の責任領域を点検しなければな
りません。そのために、どのような基準で、「公」と「民」、あるいは「私」の領域を考え
ていくのかを整理する必要があります。
(1) 行政体が固有としてなすべき領域(コア領域)の3つの論点
区民等と行政との協働という観点は、基本的には区民と区で確定していくものとなります。
そのためには、次のことが必要となります。
①
区民の区政に対する「公」と「私」の領域についての合意形成に努めること。その
ためには、 区政情報のディスクロージャー(公開)が必要となります。
何を重点課題としているか、そのための財源はどのようであるか、あるいは、施策
の実施とそれから得た成果はどのようであるかを、区民に明示して、
「公」として、行
政として効果を挙げる領域、そうでない領域を明らかにしなければなりません。
② その自治体が自治体間競争を戦っていくために何を重点施策とするかを的確に判断
していかなければなりません。何をコア領域とするかは、その自治体のいわばフィロ
ソフィ(哲学)となります。このことが自治体間競争に打ち勝つ要因ともなるし、アイ
デンティティイに繋がるはずです。
③ ②とは矛盾するようですが、類似団体(例えば 23 区や政令指定都市等)を比較する
ことで、どのような領域を固有の行政サービスの分野とするかの大まかな指針を得る
ことができます。都市間の相違を配慮すれば、23 区や大都市行政はその点においてほ
ぼ類似の政策課題をもっているからです。
(2) 区民等と行政との協働のための具体的な基準
ア 協働の考え方
① 民間セクターで行われている事業は民間セクターに委ねていく。
② 共同消費性と基礎性という2つの軸で区民等と行政との協働領域を検討する。
③ 行政効果測定(できれば単位事務事業に関する実績評価)を行い、その結果を基に協
働領域を検討する。
④ 区民の意向を十分に踏まえて判断する。
第一に、すでに民間が私的に事業として展開し、かつ、相応の実績のある分野について
は、たとえ公的であるとされても、行政は民間にサービス提供を委ねていくべきであると
考えます。仮に、いわゆる民業圧迫という事態に至れば、公共性の概念を歪めることにも
なります。
第二に,公共セクターで提供すべき区民に対するサービスでは、公共性を識別すべき2
つの軸が重要となります。そのサービスがどれくらい多くの区民の日常生活に関わること
になるのかと、そのサービスがどの程度基礎的で、他のサービスでは代替できないものか
の2つの軸を基に、どの象限に該当するかにより協働領域を決める必要があります。これ
については、改めて詳細に記述します。
第三に、行政サービスを実施するということは、当然、行財政資源の配分を伴います。
したがって、行政はその成果が問われなければなりません。しかし、行政が行うことによ
って成果を得る領域と、得られない領域という区分が必ずしも明確ではありませんでした。
今後は,成果が得られる領域には積極的に行政は関与すべきですが、そうでなければ、
区民等との協働を模索していくべきであると考えます。
第四に、行政全般とのバランスを考える必要があります。その際の基本的な問題設定は、
何を区におけるコア・コンピテンス(中核的な機能)とするかによります。
すなわち、何を行政サービスのコアに据え、それをどのように具体的な施策として展開
できるかを考えていくべきであります。行政がサービスに活用できる資源には限界があり、
最小の経費で最大の効果を挙げる行政の効率化は当然のこととして、区民の自助・共助と
どの程度協働できるかが課題であり、それを区民の意向を十分に踏まえて判断すべきと考
えます。
イ 具体的な基準
以上のように考えたうえで、具体的に検討する基準について記述します。
共同消費性と基礎性の2つの軸、これは公共サービスを概念的に分類することにより、
公共性の強弱を検討し、それをもとに検討しようとするものです。
つまり、この2つの軸は公共性を規定する要因でもあり、公共サービスの概念は、
① 共同消費性・公益か、個人消費性・私益か
② 基礎的・必需的か、非基礎的・選択的か
として考えられ、これらの組み合わせにより、フレームを構築します。
共同消費性とは、共同消費的であるか個人消費的であるかの次元で表現され、公益と私
益とも考えられます。個人的に利益を得るのか、それとも利益を得る人が多数になるのか、
つまり、集合的な利益になるのか、より公共の利益に関わるのかという次元となります。
利益を得る人の多さが即公共と同義にはなりませんが、多くの人たちの利益になるほど公
的なところでの責任が伴うサービスにならざるを得ません。
次の次元は、基礎性となります。必需と選択とを極とする次元で表現することができま
すが、要は、それが是非とも必要なものか、それとも無くて済まされるか、代替的な資源
があり得るのかの次元であり、そのサービスが区民の生活に基礎的であるかどうかの程度
と考えます。
以上を図示すると,次のように4つの領域に区分できます。
必需
A 必需・共同消費性
B 必需・個人消費性
○区民全体に提供されるサービス
○社会的・経済的弱者を対象としたサービス
○区民生活の安定のためのサービス
○区民生活上必要であり、個人に提供されるサ
ービス
個
人
消 C 選択・個人消費性
費 ○個人の趣味・娯楽に属するサービス
性 ○特定個人の原因に係わるサービス
区民との協働に関して
地縁的コミュニティの想定活動領域
共
同
消
D 選択・共同消費性
費
○個人が享受するが、その範囲が広いサービス
性
○必要性を双方で考えるサービス
選択
テーマ別コミュニティの想定活動領域
(ボランティア団体や NPO 等)
・Aの領域は、共同消費性が高く必需のエリアとなります。より多くの人たちが利益を
受け、しかも基礎的、日常欠かせられないサービスを含んでいます。典型としては、
保健衛生、清掃事業などが含まれます。
・Bの領域は、個人消費性が高くかつ必需のエリアとなります。個人的な利益を受け、
しかも、基礎的な、日常欠くことができないサービスが該当します。典型としては、
生活保護などがあります。
・Cの領域は、個人消費性が高くかつ選択サービスのエリアとなります。個人的な利益
に関わりますが、格別欠かせられないということではないサービスが該当します。そ
れぞれの個人のキャリア育成に寄与するような例えば、社会人教育、趣味娯楽の個人
的な関心などに関連したサービスが含まれます。社会教育活動などは、その活動の目
的などで区分されますが、多くは、このエリアに属します。
・Dの領域は、共同消費性が高くかつ選択的なサービスのエリアとなります。より多く
の人たちが利益を受けますが、欠かせられないかどうかはサービスを提供する人、さ
れる人の間で考えることができるようなサービスが含まれます。たとえば、美術館や
博物館、音楽ホールなどのような公的な施設で不特定多数の人たちに便益を供するよ
うな場合です。
以上の領域について、そのサービスの行政との関わりをいえば、行政コアについては、 最
小限度のサービスは、Bのエリアのなかに想定されます。社会的な弱者をつくらないとい
う公的な立場は、この象限において端的に提示されます。
その対極に、Dが位置します。つまり、必要と考える人たちだけが必要なサービスを選
択的に受ければよいものです。行政がサービスを提供することは、 一般論としては,少な
い行政資源のなかでは避けるべきであり、仮に提供しなければならないとすれば、 一定の
論拠を明示しなければならないし、その実際の関与も最低限にとどめるべきであり、公益
ではあるが受益者負担を当然に考えるべき領域となります。
Aは、より多くの人たちが、それがないと日々の生活における質が維持できない、それ
を最低限保障しなければならないエリアです。しかし、他方、多数の人たちに大量の資源
が動員され、しかも、その設備投資などにも経費が多く費やされるので、コストに関する
議論が欠かせられないエリアでもあります。したがって、スケール・メリットが可能とさ
れる領域でもあり、その経済性や効率性の観点から、民間委託の可能性が議論される領域
となります。
Cについては、基本的に行政の責任を重視しなくても良い領域といえますが、そのサー
ビス供給のシステムが立ち遅れているようなところは、地域的に、時間的に,あるいは、
世代的に、公平・平等に利得を享受できないようなこともあります。その場合は、普及や
育成などのために行政が過渡的に責任を持つこともあり得ます。また、市民社会の一層の
成熟のために限定的に、この領域が行政の責任領域ともなり、公平・平等を欠くことが大
きいとされれば、行政が積極的に対応していくことも考えられます。
(3) 公共サービスと行政の関与
これまでは、区民等と行政との協働のための具体的な基準について述べましたが、これに関
連して公共サービスに対する行政の関与についての一定の考え方が必要となります。公共
サービスに対する行政の関与は、公共サービスの費用負担と公共サービスの供給という側
面から検討しますが、このことは行政が直接的に公共サービス供給を実施すべきかどうか
の判断基準になると考えます。
行政の公共サービスへの関与を費用負担とサービス提供でみれば、次の表のような組み
合わせが考えられます。
公共サービスの費用負担
行
行
政
公共サ
ービス
の供給
民
間
政
民
間
1)行政が直接,無償で 3)行政がサービスを提供する
提供している。
が、費用は利用者が負担する。
2)行政が費用負担する 4)民間がサービスを提供し,
が、サービスは民間が 費用は利用者が負担する。
提供している。
これらの中で 4)は、市場原理に委ねられるものであり、民間で採算がとれるものと考え
られます。主に行政の責任領域や区民等との協働領域と考えられるものについては、1)∼
3)がその対象となりますが、この時にサービスの供給主体と費用負担の問題を混同しては
なりません。つまり、行政が供給するのだから費用も行政というものではなく、また費用
は行政が負担するのだから供給も行政が行うということではありません。
前者は受益者負担、後者は民間(外部)委託の問題として考えるべきであり、つまり、 2)
は民間(外部)委託であり、3)は受益者負担となります。なお、4)に該当するものを行政
が行っているならば、その事務事業は廃止、民間への移管等を行っていくことが原則とな
ります。
また、
「イ 具体的な基準」で示した行政の守備範囲とこの表を関連させるならば、次の
ように対応させることができます。
A必需・共同消費性
B必需・個人消費性
1)行政(費用)・行政(提供)
↓
・原則無料
・無料限界の設定
2)行政(費用)・民間(提供)
↓
・民間委託
C選択・個人消費性
D選択・共同消費性
4) 民間(費用)・民間(提供) 3) 民間(費用)・行政(提供)
↓
↓
・廃止
・受益者負担
・民間等への移管
これは原則として考えられることであり、例えば、2)が直ちに民間委託されるものでは
ありませんが、民間委託等を進めるための一つの基準としてとらえるべきと考えます。
3 まとめ
以上、区民等と行政との協働のあり方について、基本理念を示し、それをもとに公共サ
ービス分野での行政と協働を考える一定の方向性を示しました。
その判断基準については、敢えて抽象的な内容にとどめています。なぜなら、繰り返し
になりますが、それは、時々の社会的経済的状況によって変化するものであり、また区民
と行政とが個々の事務事業について、丹念に議論して確定していくものであるからです。
ここで示した方向性をもとに、施設サービスの提供を受ける側、即ち一般区民や直接の
施設利用者の意見を、検討に際して把握したうえで、公共施設の運営主体、施設配置、コミ
ュニティ形成機能等の見直しについて具体的な検討を進め、公共施設の抜本的な見直しに繋
げていきたいと考えています。