第178号 愛知図書館協会会報 特集 多文化共生社会への図書館の取組み 愛知県における外国人登録者数は、法務省入国管理 の利用案内と、利用カード申込書を作成した。利用案 局統計(平成17年末現在)によると、東京、大阪に 内の裏面は図書案内になっており、広報資料として、 ついで全国3位であり、外国籍の方々が多く居住して 主な国際交流施設、 いる。そのため、様々な言語で広範な情報を提供する 留学生センター、 ことが必要となっている。他方、多文化共生社会づく 日本語学校、ブラ りが求められ、お互いの文化や考え方を理解できる環 ジル人学校などに 境を整えるための活動が各地で進められている。これ 配布し利用促進を らの動きの中で図書館が果たしている役割は大きい。 図った。 今回の特集は、図書館で行われている多文化サービス 開設してまだ日は浅いが、コーナーの資料は満遍な や外国語教育に関する取組みについて紹介する。 く利用されており、潜在的利用者も多いと考えられ 愛知県図書館における多文化サービスコーナー の開設 愛知県図書館 主事 石黒 真由美 る。広報の強化もさることながら、利用者の定着化も 必要であり、そのためにはコーナーの資料数がまだま だ少なく、とりあえずの課題は、資料の充実やコー 愛知県では「愛知県国際化推進プラン」策定(平成 ナーの拡大といえる。本年度は、特別枠で100万円の 15年3月)、「多文化共生社会づくり推進共同宣言」 資料購入費を充て、図書数の少ないポルトガル語図書 (平成16年11月)など、 「外国籍県民とともに生きる を中心に約300冊を収集する予定である。日本の文学 地域社会づくり」にとりくんでおり、愛知県図書館と 作品や日本文化のみならず、日本での生活や仕事に役 しても、これまで中国語を中心に在住外国人向けの図 立つ実用的な資料、各国の最新の文学作品、子どもが 書の収集・提供を行ってきた。 楽しめる読み物を重点的に収集して、コーナーの拡充 平成17年末現在、本県の外国人登録者数は約20万 に努めている。 人と過去最高記録を更新し、国籍別ではブラジル、韓 将来的には、市町村図書館への資料的バックアップ 国・朝鮮、中国の順に上位を占めた。名古屋市には約 ができるようなサービスを目指していきたい。 6万人が登録され 多文化共生に向け、豊橋市図書館における多文 化サービスについて ており、当館の近 辺にはブラジル総 豊橋市中央図書館 主査 中村 祐二 領事館やブラジル 銀行等が点在する 平成2年の入管難民法の改正以来、豊橋市には特に 環境下にもあり、 ブラジルやペルーを母国とするラテンアメリカ系の外 直接来館者への 国籍市民が急増 サービスも視野に し、本市は今や、 入れた在住外国人 市民ほぼ20人に への資料提供サービスを強化するために、平成18年 1人が外国人と 3月下旬に「多文化サービスコーナー」を3階に新設 いう全国でも有 することとなった。 数な外国人集住 4,000 このコーナーでは、登録国籍数が上位国の使用言語 都市の一つに 2,000 資料を扱うこととし、中国語図書約1,500冊、韓国・ なっている。 朝鮮語図書約200冊、ポルトガル語図書約170冊のほ 国際化への対 か、スペイン語図書、アジア言語の絵本、日本語学習 応は、時代が求 の図書を加えて約2,000冊の図書と、中国語とポルト める大きな課題であるが、とりわけ、本市ではそうし ガル語新聞2紙でスタートした。また、上記3か国語 た多くの外国籍市民への施策を含めた具体的な対応が ― ― 2 ラテンアメリカ系の外国籍市民の推移 (人) 12,000 10,000 8,000 6,000 0 平成2年 平成7年 平成12年 平成18年 ポルトガル語圏(ブラジル) スペイン語圏(ペルー、パラグアイ他) 愛知図書館協会会報 第178号 喫緊なものとなっている。そして、図書館運営にもこ 図書コーナー」を設けているが、さらに長期的な展望 うした状況を踏まえた対応が求められている。 でその充実を図っていくことは、今後の課題である。 本市では、かねてより国際交流事業に力を注いでお こうした事業推進に、障害となるのが言葉の壁であ り、経済・文化・教育・スポーツ等多方面で実績を積 る。平成15 ∼16年度に緊急地域雇用創出事業の一環 み重ねてきた。また、平成17年には英語教育推進特 として、「ブラジル系市民の図書館利用促進事業」で 区の指定を受けるなど、英語を通して外国人との共生 ポルトガル語を解する者を配置したところ、その効果 を推し進める施策が始まっている。 は大きなものがあった。極めて難しい問題であるが、 本市図書館の「司文庫」は、蔵書の大部分を洋書が 継続的な予算を配分することで、こうした人員配置の 占め、その蔵書の質と量で他に誇れるものである。こ 実現に向け、今後とも努力したいと考える。 れは、篤志家の寄贈による個人文庫で、昭和61年以 また、利用の拡大を図るうえで、小中学校や幼稚 降は寄附基金の利息をもとに継続収集している。80 園・保育園、それに市内ブラジル人学校との連携は不 か国余の教科書約1万冊を含め、合計3万2千冊に及 可避の課題である。特に、小中学校における司書教諭 ぶ蔵書の活用については、毎年開催の「司文庫絵本展」 や、特別に配置された学校図書館司書、これにポルト や、外国語ボランティアによる「司文庫絵本おはなし ガル語の言語相談員が加わり、公共図書館としての協 の会」といった企画展やイベントの開催、あるいは折 力の在り方を協議することは極めて意義のあることで りにふれ、ミニ展示コーナーで図書を紹介するなど、 ある。 いろいろな形で利用をPRしているところである。ま 国籍を問わず、人々が本に親しみ、読書を通して た、司文庫の絵本を使用した「民話と英語の絵本展」 様々な文化を理解し、より充実した生活を目指すよう を企画開催した高等学校もあり、うれしい広がりを感 になるために、公共図書館として何ができるのか、本 じている。今後は、特に英語教育に取り組む小学校と 市図書館は、その大きな目標に向かって、ささやかな の連携のもとに、子どもたちに適切な図書が提供でき 歩みを今、始めたところである。 るようにしたいと考えている。 「司文庫」は、図鑑や絵本といったビジュアルなも のが多いとはいえ、洋書の内容を把握し、PRしなが 小牧市立図書館の多言語図書と英語多読図書に ついて 小牧市立図書館 館長 玉置 寛 ら利用の拡大を図る業務は、かなり特殊なものであ 1 英語図書の提供 る。現在、地元大学の英語教師グループのボランティ 継続的な洋書受入は「小牧英語教育センター」が開 アによる絵本の読み聞かせや演奏会などのイベントを 講した平成3年からである。外国人講師による英語講 開催しているが、こうした人的なつながりは大きな財 座に参加する市民が身近で英語図書を手にできるよ 産となっている。図書館とボランティア、さらに市民 う、資料費の中に洋書枠を設けたのが始まりである。 とをつなぐ人の輪を拡大し、一人でも多くの人材を確 現在、英語は多読用図書1,200冊余りを含め一般書 保していく必要がある。 が約4,200冊で、15年にわたる英米語圏のベストセ ところで、 「司文庫」の蔵書の大半は英語によるもの ラーが多い。英語教育センターや中学校の外国人講師 で、ポルトガル語やスペイン語圏の外国人が多い本市 等によく利用されたが、全体的にみれば日本人の利用 の需要に十分応えて の方が多いように見受けられる。児童書は約900冊で いるとはいえない。 殆どが絵本である。 現 在、 図 書 館 で は 2 南米系言語図書と日本語学習図書の提供 「司文庫」の外国語 平成2年度より増えてきたブラジルやペルー国籍の 図書に、計画的に新 外国人が翌年には千人を超え、増加傾向にあることか 規購入した図書や寄 らポルトガル語やスペイン語図書の提供を図ったが、 贈本などを加え、館 語学力に欠けることから選書が捗らず、蔵書はあまり 内の一角に約千冊規 増えていない。最近、国際交流関係機関のHPで分類 模の「ポルトガル語 付きの図書リストを知り、今後の選書に活用したいと ― ― 3 第178号 愛知図書館協会会報 考えている。児童書は英語と共にスペイン語やポルト ところで、平成15年度から4か月児健診時に実施 ガル語の絵本を受入れてきたが、近年は書架の余裕も しているブックスタートは国籍を問わず、すべての該 無くなり、受入れを減らしている。 当居住者を対象に読み聞かせを行い、絵本を手渡して 現在、スペイン語の一般書は約280冊、ポルトガル いる。絵本を見せながら話しかけることから、日本語 語は約50冊で、児童書はスペイン語約200冊、中国語 を知らない外国人にも喜ばれており、イギリス生まれ 約60冊、ポルトガル語35冊を所蔵している。 のこの活動の原点を垣間見る思いがする。今後、日本 なお、同時期から日本語に不慣れな外国人向けに日 で生まれた2世、3世の成長に合わせ、母語に触れら 本語学習書、日本文化や習慣の紹介本、小説の翻訳本 れる機会として、英語以外の多読用図書が多く出版さ なども提供してきた。ちょうど昨年度に日本語学習テ れるよう期待したい。早い時期に、より多くの言語で キストを一括更新したところである。 多読図書が親しまれ、多文化社会の理解に繋げられる 3 英語多読図書の提供 図書館サービスとして拡がることを望みたい。 平成16年度に所蔵する英語図書の利用者層を拡げ 最後に、「100万語英語多読講演会」を英語多読提 ようと「英語多読図書」の受入れを始めた。まず店頭 唱者の酒井邦秀先生を講師に迎え、11月25日に小牧 選書を行ったが、いままでの選書とは異なる視点の必 で開催する計画をすすめている。関心を持たれたら 要性と難しさに戸惑った。提供に際しては英語多読図 「英語学習法研究会(SSS)」又は小牧市立図書館の 書が目に触れやすいよう洋書書架に隣接させ、約260 冊で「英語多読コーナー」を設けた。秋には、最初の 選書経験から、英語多読の実践者がレベル毎に面白さ などを評価した図書リストを参考にして、約240冊を HPをご覧いただきたい。 碧南市民図書館での外国語資料の収集・提供に ついて 碧南市民図書館 主査 大橋 幹広 受入れた。その時予約の参考にと作成した「多読図書 1 外国語資料受入の経緯 所蔵リスト」のコピー希望が出たことから、リストの ○新図書館オープンの平成5年度から13年度まで 利用法の便宜を考え、HPにファイルを掲載した。 碧南市民図書館では、外国人利用者のためのサービ 平成17年度は、それまで受入数の少なかった初歩・ スとして外国語資料の収集、貸出を実施している。最 初心者向けを重点に英語多読図書カタログから選書を 初にその経緯について振り返ってみることにする。 行い、新たに複本を含めて約800冊増やした。この英 平成5年に碧南市民図書館本館が移転し新館として 語多読図書は関心の高い利用者を増やしており、今後 開館した。その際に作成した図書館計画書の中に「本 ハードカバー利用へ移行していくことをも期待させら 市の国際化に向けて」という項目があり、「市民が外 れる。なお、この9月下旬には英語多読ボランティア 国を理解し、外国人が本市や日本を理解できるように の手によって、所蔵する多読図書に読み易さのレベル 内外の資料を収集すること」と明記されている。また、 「収書の方針」の項には、「外国の資料については本市 表示が行われた。 4 今後の多言語・多文化サービスに向けて と関りの深い地域のものを中心に収集する」とあり、 今年7月末、小牧市に4,500人を超えるブラジル人 外国語資料の収集・提供の必要性が謳われている。こ や約900人まで急増した中国人を含め、46か国8,500 の計画に従い、オープン準備段階からオープン後しば 人近くが外国人登録をしている。平成4年度には外国 らくは、外国語として一般的な英語で書かれた資料を 人の図書館利用をスムーズにと、7カ国語会話集を作 中心に選書し収集した。その結果、平成13年度末で 成してカウンターに用意した。最近、英語とポルトガ 約1,700冊の蔵書となった。 ル語、スペイン語の利用案内をHPに掲載したところ 言語別の内訳は、英語1,448冊、スペイン語182冊、 である。当館で洋書を受入れ始めた時期に出版された ポルトガル語5冊、その他の言語が69冊となってい 『多文化社会の図書館サービス』 (深井耀子著)には、 る。外国語資料といっても、ほとんどが英語の資料と 多くの実例紹介と示唆をいただいたが、未だ“迷宮” いう状態であり、英語以外の言語を使う外国人への を解き明かす「ユニバーサルサービス」の実現には程 サービスができていない状況であった。 遠き感がある。 なお、当時の市内在住の外国人人口は以下のとおり ― ― 4 愛知図書館協会会報 である。当時の当市人口が 約7万人、うち外国人人口 が約2,100人と外国人在住 者 の 割 合 が 高 か っ た。 ま た、ブラジルやアルゼンチ この3つの配架場所へそれぞれ集中して配架するこ 13年度末の 外国人登録数上位(人) ブラジル とで、散在することを防ぎ、利用しやすい環境を提供 1,523 アルゼンチン 188 ペルー 102 韓国・朝鮮 第178号 している。 ○所蔵冊数(18年8月現在) 当館の所蔵冊数及び内訳は、一般書2,221冊(英語 96 ン、ペルーなどポルトガル・スペイン語圏内の在住者 943,ポルトガル907,スペイン語336,その他35) 、 がその中の8割以上を占めていた。このため、ポルト 児童書1,160冊(英語669,ポルトガル語23,スペイ ガル語、スペイン語の資料の充実が望まれた。 ン語82,その他386)、雑誌8タイトル(英語5,ポ そこで平成13年度作成の実施計画に『外国語図書 ルトガル語2,スペイン語1)となっている。 資料充実事業』を盛り込み、翌14年度から16年度ま ○利用状況 での3年計画で外国語資料の充実、特に英語以外の外 最近4年間の貸出状況は、1,538冊(14年度)、2,399 国語資料の充実を図るこことした。その結果、財政部 冊(15年度)、2,624冊(16年度)、2,365冊(17年度) 局からも在住外国人のためのサービス向上として必要 と推移している。図書館貸出冊数の全体と比較すると 性が認められ同事業を実施することとなった。 多い数字ではないが、平成15年度からは毎日7∼8冊 ○平成14年度より現在まで 貸出されている計算になる。利用者は外国人だけでな 『外国語図書資料充実事業』により、平成16年度ま く、日本人利用者も多い。 でに以下のように資料を充実させた。 3 サービスを行う上での課題・要望 事業費(千円) 購入冊数(冊) 言語別購入内訳 ポルトガル語(冊) スペイン語(冊) 英語(冊) 14年度 1,225 321 15年度 1,225 465 16年度 1,050 281 計 3,500 1,067 273 27 21 166 174 125 252 0 29 691 201 175 ・窓口での対応。日本語が話せない利用者への窓口対 応が不完全。 ・英語以外の資料は流通取扱が少なく入手が難しい。 ・新刊情報も少なく資料の内容の判断も難しい。 ・中国語の資料の割合が少ない。 さらに、平成16年度中、ロータリークラブよりポ ・当市が姉妹都市提携予定先の公用語クロアチア語の ルトガル語の資料約150冊の寄贈もあった。 資料の入手。 同時に、一階の一般開架部分の外国語資料について 4 今後にむけて は言語別に配架し、利用しやすくした。また、請求記 現在、今後の図書館運営の目標となる図書館計画を 号、背ラベルに言語区分を追加し、言語の違いを識別 策定中である。その計画の中へ外国人のためのサービ しやすくした。 スを盛り込み、本市在住の外国人人口に対応した資料 平成17年度以後、外国語資料を購入するための特 の収集、様々な要望を取り入れたサービスを提供して 別に予算は設けてはいないが、国内外のベストセラー いく計画書を策定していく。 (Harry Potterなど)を中心に随時購入をしている。 2 現在の状況 英語多読と図書館の役割、可能性 豊田工業高等専門学校 教授 西澤 一 ○配架 当館の外国語資料は利用対象者、形態ごとに定めら (英語多読、豊田高専では) れた棚へ配架してある。その配架場所、方法は以下の 「専門には強いが、英語は苦手」と言われてきた高 とおりである。 専生の英語運用能力は、英語多読授業で改善されまし 棚(コーナー)名 FOREIGN BOOKS 外国語の本 PICTURE BOOKS ・外国語で書かれた絵本。 がいこくごのえほん ・2階、子どものフロアに設置 外国語雑誌 た。平成16年度以降、本校電気・電子システム工学 対象となる資料等 ・一般(大人)対象の資料。 ・1階、一般フロアに設置。 ・スペイン語、ポルトガル語、英語について は言語別に分けた上で請求記号順に配架。 ・逐次刊行物 科3年生のTOEIC平均点(H18年度の年間自己ベス ト平均は408点。英語圏への留学経験者および留学中 の学生8名を除く)は、同年代の高校3年全国平均を 上回り、学生の苦手意識は消えつつあります。2年間 で35万語の英文を読んだ平均的な学生は、高校1年 ― ― 5 第178号 愛知図書館協会会報 のリーダー程度の(初見)英文、例えば6,000語くら の核として地域社会に認知され始めていることが分り いの英文を1時間以内で読み、200 ∼300万語を読ん ます。 だ意欲的な学生は、Harry Potter1∼6巻を数ヶ月で (外国語教育における英語多読の意義) あっさり読んでしまいます。 英語多読が本校学生の英語運用能力を改善できたの 従来、外国人講師による小人数授業や最新のLL教 は、学校の図書室や公共図書館の児童書コーナーが日 室、マルチメディア学習システムによっても改善でき 本の小学校国語教育を支えていることや、近年評価の ず、40年が経過した懸案を、わずか2単位の多読授 高いフィンランドの基礎教育が充実した図書館に支え 業が解決したことに、担当者も驚いています。 られていることと対比できます。即ち、子供達の母国 この変化をもたらした英語多読授業は、電気通信大 語能力育成に果たす読書の役割が、大人の外国語学習 学の酒井邦秀先生が提唱、SSS英語学習法研究会の にも有効だとの考えです。実際、英語多読を始めた人 ホームページ(http://www.seg.co.jp/sss/)や「教室 からは「(英文を読んでいて、)情景が目に浮かぶ。主 で読む英語100万語」等の関連図書で紹介され、社会 人公に感情移入する。」という声をよく聞きます。英 人を中心に全国に広まりつつある100万語多読(以 語多読は、英語に関する知識を獲得するための学習で 下、英語多読と略称)の実践例です。 はなく、読書そのものなのです。学生時代の英語学習 日本語に翻訳せず、英文を直接理解する能力を身に を振り返り「漫画も読めないのに一般小説や新聞、古 付けるために、受講学生は多読三原則(辞書はひかな 典文学を無理して読もうとした結果、暗号解読のよう い/分らないところはとばす/つまらなくなったらや だった」と思われる方には、両者の違いが分ると思い める)に従って、やさしい英文を(進度や好みに従い、 ます。 学生毎に異なる本で)大量に読みます。多様な学生の また、英語多読には、6∼10年間の学校教育で学 好みに対応できるよう、また、導入時には、一冊数十 んだ英語の知識を、活性化する効果もあるようで、や 語の薄い絵本から読み始めるため、大量の英文図書が さしい英文から読み始めた大人は、一般に、子供達よ 必要ですが、本校では図書館に約7,000冊の英語多読 りも短期間で英文一般小説を楽しめるようになること 用図書を集め、授業が重ならないように時間割を工夫 が多いのです。英語多読は大人向きと言えましょう。 し、クラスを丸ごと図書館に移動させることで、複数 (ひとつの提案) クラスの授業を実現しています。電気・電子システム 県下には、英文小説や英語の絵本を豊富に所蔵する 工学科では、2年間の専攻科を含め、多読授業を6年 公共図書館が少なくありませんが、両者には英文の読 間継続できるカリキュラムを組み、国際的に通用する みやすさに大きなギャップがあり、利用を難しくして 技術者の卵として卒業生の英語運用能力を保証する考 います。 えです。 ここに、多読用のやさしい英文図書(Graded Readers: 難易度を段階的に変化させた学習用読本や、ネイティ (英語多読による図書館利用の活性化) 多読授業は、学生の図書館利用も活性化させまし ブの小学校低学年用児童書等)を追加してはどうで た。長期低落傾向にあった図書館の年間館外貸出し件 しょう。ギャップが埋まり、読みやすさが連続して変 数(本校学生)は、平成15年度から反転急増し、平 化する英文図書群が出現します。そこで、日本語に翻 成17年度には14年度の2倍を超えました。また、電 訳しない多読の読み方を紹介すれば、英文図書の潜在 気・電子システム工学科では、多読用以外の図書貸出 的な利用者が発掘されます。英文読書を楽しみたいと 数も減少が止まり、多読授業で来館した学生が、その 思いながら諦めていた多くの市民が、図書館を利用し 他の図書も利用し始めている様子が伺えます。 て英語多読を始めることでしょう。 平成17年度に始めた、一般市民向けの公開講座を 図書館としては、既存の資産を有効活用し、新たな きっかけに、図書館の一般利用者、貸出冊数も増加し 魅力を創出することになります。先進国中では例外的 ました。平成18年度上四半期の入館者数、館外貸出 に英語の通じない国と言われる日本社会を、もしかし し冊数(一般市民)は、前年度同時期の169人264冊 たら、図書館が変えてしまうかもしれないと考えてい から544人1,345冊に増え、本校図書館が、英語多読 ます。 ― ― 6
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