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中南米
2016年2月9日
アルゼンチン、マクリ政権への期待
世界的にリスク回避姿勢が強まる様相の中、アルゼンチン市場は相対的に底堅い動きです。国際的な金融市場と取
引が途絶えていることが不幸中の幸いなのかもしれませんが、アルゼンチンの変化には政治の貢献も見られます。
アルゼンチン政府:デフォルト問題解決に向
け、一部債権者と暫定合意へ
アルゼンチン政府は2001年の債務不履行(デフォルト)問題
をめぐり、主要な債権者6社のうち2社と暫定合意に達したと
2016年2月5日に声明を発表しました。同国政府を相手取っ
て訴訟を起こした債権者グループの中心的ファンド会社は、
政府との交渉で合意に至っていない模様です。2015年11月
の大統領選挙で勝利(12月に就任)した中道右派のマクリ大
統領は債務問題の早期の解決に意欲を示しています。
どこに注目すべきか:
通貨規制撤廃、マクリ政権、インフレ目標
ピクテ投信投資顧問株式会社
図表1:アルゼンチンとブラジルの債券指数の推移
(日次、期間:2015年2月9日~2016年2月8日)
260
債券指数
債券指数
250
240
230
220
アルゼンチン債券指数(左軸)
210
ブラジル債券指数(右軸)
200
15年2月
15年5月
15年8月
15年11月
1100
1000
900
800
700
※債券指数:JPモルガンEMBIグローバル・ディバーシファイド国別指数
図表2:アルゼンチンペソ(対ドル)と外貨準備高の推移
(日次、期間:2015年2月9日~2016年2月8日、外貨準備高は週次)
安 ペソ 高
世界的にリスク回避姿勢が強まる様相の中、アルゼンチン市
場は相対的に底堅い動きです(図表1参照)。国際的な金融
市場へのアクセスが閉ざされていることが幸いしている面も
考えられますが、2015年後半からのアルゼンチンの経済環
境の変化には政治の貢献も見られます。
自由市場を標榜するマクリ新政権は疲弊したアルゼンチン経
済の建て直しに積極的に着手しています。例えば、2015年12
月には低水準の外貨準備高を回復するため通貨規制(実質
的なドル固定制や資本規制)を撤廃しました。無理な為替介
入が減少したことで、外貨準備高に底打ち感が見られます
(図表2参照)。
次に、2001年のデフォルト以来、国際資本市場からの調達が
途絶え、不安定となっている財政状況の改革に向け、前政権
が交渉(妥協)を拒んでいた債権者と合意に向けた動きが見
られます。ただし、2社との合意は暫定的に過ぎず、他の債権
者(4社)との交渉は紆余曲折も想定されます。また、合意事
項は議会での承認も必要です。しかしながら、マクリ政権に
追い風も吹いています。大統領決選投票では僅差で勝利し
たマクリ大統領ですが、下院議会では他の政党と組んで(カ
ンビエモス)も少数与党でした。キルチネリズムと称される大
衆迎合的な前政権(フェルナンデス前大統領)が率いる政党
(FPV)は下院(定数257)で半数程度の議席を占め、与党連
合と拮抗していましたが、足元FPVを離脱する議員が増え、
与党連合の過半数確保が視野に入ってきました。報道による
とマクリ氏の支持率は7割程度と、決選投票時の得票率(約
51%)から大幅に支持を増やしており、世論の後押しを受けて
議会でも与党勢力の拡大が期待されます。
ただし、時間がかかりそうな問題もあります。例えば、インフ
レ率の抑制です。アルゼンチン中銀は2015年末に2016年金
融プログラムを公表し、その中で物価安定を優先事項とはし
ましたが、インフレ目標の設定を見送ったことに市場は失望し
ています(図表1参照)。また信頼度が低いとされた前政権の
消費者物価指数の抜本的改定はこれからの課題です。
アルゼンチンは特殊な例とはいえ、政府と中央銀行が経済
改革に向け協力関係にあるようにも見られます。少なくとも中
央銀行の金融政策だけに頼るよりは健全かもしれません。
15
14 ペソ
13
12
11
10
9
8
15年2月
アルゼンチンペソ(対ドル、左軸)
外貨準備高(右軸)
億ドル 400
360
320
280
240
15年5月
15年8月
15年11月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
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