知の知の知の知 - 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会

い~な
診療所
あまみ
中
中 央
事務局
研究所
しらさぎ
つなぐの
さくら
大阪+知的障害+地域+おもろい=創造
知の知の知の知
社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 社会政策研究所情報誌通算 2131 号 2014.10.1 発行
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和歌山)名物生む手に知事表彰
ソフトクリーム作り熟練
関口佳代子
朝日新聞 2014 年 9 月 30 日
自ら作った商品を手に受賞を喜ぶ西畑智和さん
(左)と岡崎紗織さん(右)=和歌山市出島
和歌山が誇る名物商品の一つ、玉林園(和歌山
市出島)の「グリーンソフト」。同社で日々ソフ
トクリームづくりに励む知的障害のある西畑智
和さん(36)と岡崎紗織さん(34)が、今年
度の県の「優秀勤労障害者」に選ばれて知事表彰
を受けた。同じ会社に勤めて10年以上の従業員
が対象で、上司も「2人はウチの主戦力」と頼り
にする存在だ。
70平方メートルほどの製造室。クリームを絞り出すフリーザーの前で、西畑さんがコ
ーンを手に次々とソフトクリームを巻き、手早くキャップをつけていた。1本につきわず
か5秒の早業だ。岡崎さんはそのキャップが割れないように、クリームの部分を紙で包ん
でテンポよく袋に詰める。
ここで作られるグリーンソフトは1日約4千個にのぼり、スーパーなどで販売されてい
る。全て、10人足らずの担当従業員による手づくり。西畑さん、岡崎さんの2人は午前
8時~午後4時半、週6日間働いている。
立体アート:ようじでオオムラサキ
北杜で展示 /山梨
毎日新聞 2014 年 9 月 30 日
華麗な羽を持つ国蝶(こくちょう)
「オオムラサキ」の姿を約13万
本のつまようじで表現した立体アートが、北杜市の市オオムラサキセ
ンターで展示されている。甲府市の障害者支援施設「麦の家」の入所
者らが制作した。10月中旬まで。
発泡スチロールに青や黄などに塗った色とりどりのつまようじを刺して作った。高さ約
1・8メートル、幅約0・9メートル。
メーテルのWAON発行 福岡
産経新聞 2014 年 9 月 30 日
「元気発進!北九州WAON」
イオンは、北九州市出身の漫画家松本零士さ
んの代表作「銀河鉄道999」のヒロイン・メ
ーテルを描いた電子マネー「元気発進!北九州
WAON(ワオン)
」=写真=の発行を始めた。
主に九州各県のイオンで販売される。利用額の
一部が北九州市に寄付され、高齢者や障害者ら
の支援事業に充てられる。1枚300円。
てんかん発作を見て学ぶ
ビデオ集を作成・配布へ
産経新聞 2014 年 9 月 30 日
プロの役者が患者を演じた「てんかん発作症状ライブラリ
ー」の一場面 (大塚製薬提供)
てんかん発作には多種多様なタイプがある。発
作型が違えば、薬の選択や手術方法、生活指導も
異なる。しかし神経系の専門医でさえ、一部の発
作しか見たことがなく、全身けいれんだけが発作
だと誤解している医療関係者や患者・家族が少な
くないという。こうした現状を打開しようと、さ
まざまなてんかん発作を見て学べるビデオ集「て
んかん発作症状ライブラリー」を、抗てんかん薬
を販売する大塚製薬とユーシービージャパンが作成した。
CD1万1千枚を神経分野の医師を中心に無償で配布するほか、発作への理解が社会に
浸透するよう、インターネット上で閲覧できるような仕組みを今後検討する。CDには「全
般性強直間代発作」や「ミオクロニー発作」など、主要な発作9種類の映像計11分余り
を収録。専門医の指導を受けながらプロの役者が患者を演じた。
監修した東北大の中里信和教授(てんかん学)によると、てんかんの専門施設では入院
中に数日間、脳波とビデオを連続的に同時記録し、発作の瞬間をとらえる「長時間ビデオ
脳波モニタリング検査」を実施して正確な診断につなげている。発作の種類や特徴を知る
には、こうした映像の利用が効果的だが、患者の個人情報保護の問題から、他施設の医師
や一般市民に見せることは難しかった。
中里教授は「てんかんには外から見て分からない発作もある。医師が発作の多様性を知
らないために、専門医への紹介が遅れて治療が不完全になることもある。ビデオ集を活用
し、こうした不幸なケースをなくしたい」と話している。
保育士の待遇改善急務
児童預かり環境に格差
大阪日日新聞 2014 年 9 月 30 日
天空のもりの事業で作文に取り組む小学生(天空のもり提供)
安倍晋三首相は 29 日の所信表明演説で「女性が輝く社
会」を目指す方針をあらためて示し、共働きのために不可
欠な保育所入所の待機児童ゼロに向けた成果をアピール
した。待機児童の減少傾向は大都市の大阪でも見られるが、
一方で、施設の安全面や事業の質をめぐって懸念が生じて
いるのも事実。小学校入学を機に預け先がなくなる「小1の壁」の打破を強調した首相の
決意に対しても、実のある取り組みを求める声が上がった。
大阪府の保育所入所待機児童数(4月1日時点)は2年連続で減少し、前年比266人
減の1124人だった。府によると、保育所整備のほか、アパートの一室などで子どもを
預かる保育ママ制度や認可外保育所の活用が進んだことが背景にある。
安全面に不安
しかし、保育ママ制度をめぐっては保育士資格がない人も担い手となれるため、大阪保
育運動連絡会(大阪市)の芳村慶子事務局長(51)は「受け皿が拡大しても安心して預け
られるかが問題」と指摘。乳児には「突然死症候群」の懸念があるためだ。
安倍首相は、保育の担い手を増やす策として子育て経験のある専業主婦らが一定期間の
研修を受ければ「子育て支援員」になれる制度を打ち出しているが、安全面を問題視する
芳村事務局長は「保育士の待遇を改善し、なりたいと思える職業にするのが大事」と訴え
ている。
「小1の壁」
小学校入学後は、放課後に子どもを預かる事業があるものの、保育所ほど長くないため、
保護者が働き方を考え直さなければならない「小1の壁」が横たわっている。
放課後の小学生を預かる事業「天空のもり」を大阪市大正区の南恩加島公園集会所で実
施中の多喜博子さん(41)は、その小1の壁を保育サポートの「格差」と捉えている。
実際、大阪市の各小学校には利用無料の「児童いきいき放課後事業」や父母会による学
童保育所があるが、指導員はいても「遊ばせているだけ」との声は多い。このため、多喜
さんは天空のもりを通してそろばん、習字、英会話、文章塾といったプログラムを実践し、
結果的に働く母親の支援につなげている。
天空のもりでは日常的に使用されていない地域の“眠った”集会所を使用しており、多喜さ
んは「こういった場所を開放したり、条例などの仕組みを変えてほしい」と支援環境の整
備を訴えている。
田村に「大熊の障害者通所支援施設」が1日開所、再開へ
福島民友 2014 年 9 月 30 日
田村市に建設された「おおくま共生園」の新施設
双葉郡の障害者らが利用し、東京電力福島第
1原発事故により休止していた大熊町の障害者
通所支援施設「おおくま共生園」は29日、田
村市船引町北鹿又字沼ノ下の現地で開所式を行
い、関係者が新施設の完成を祝った。10月1
日に事業を再開する。
新施設は鉄骨平屋建て、建築面積704平方
メートル。県の補助を受け建設した。18歳以
上の知的障害者を対象とし、クリーニング事業
を通して就労継続支援を行う。利用者は双葉郡
を中心に、震災前と同規模の38人が作業を行う見通し。式では、施設を運営する社会福
祉法人県福祉事業協会の山田荘一郎理事長が「震災から3年半がたち、ようやく再開する
ことができた。復興に向けた大きな一歩になる」とあいさつ、施工した中里工務店と設計・
監理の清水公夫研究所に感謝状を贈った。
向精神薬でリスク増
共同通信 2014 年 9 月 30 日
向精神薬の一種、ベンゾジアゼピンはアルツハイマー病になるリスクを高めるという研
究結果をフランスとカナダの共同チームが英医学誌BMJに発表した。
カナダ・ケベック州の高齢者で、アルツハイマー病と診断された約1800人と健康な
約7200人について過去6~10年のベンゾジアゼピンの服薬歴を調査した。
分析の結果、3カ月以上服用すると服用しない場合に比べアルツハイマー病のリスクが
1・5倍になることが分かった。6カ月以上の服用では約2倍だった。
チームは「ベンゾジアゼピンは不安障害などに有効な薬だが、使用は短期間にとどめ、
3カ月を超えないようにすべきだ」としている。
介護される側に立つ
動画「毎日がアルツハイマー2 関口監督、イギリスへ行く編」
監督 関口祐加
大阪日日新聞 2014 年 9 月 28 日
「介護はする側
の問題」と話す
関口監督=大
阪・十三の第七
藝術劇場関口宏
子さん(左)と
関口監督=(C)
2014 NY
GALS FI
LMS
人生豊かになっていく
映画監督の関口祐加が実の母親、関口宏子さんを撮った
長編動画続編「毎日がアルツハイマー2 関口監督、イギ
リスへ行く編」
(シグロ配給)が 10 月4日から、大阪・
十三の第七藝術劇場で公開される。認知症のセカンドステ
ージに入った母に寄り添い、
「介護される立場に立つこと
が大事」という関口監督に撮影裏話を聞いた。
■「毎アル」の続編
-「毎アル」が大ヒットして2年ぶり第2弾になる。
何本か映画を撮っているが続編というのは初めての経験で、どうしようかと思ったが、
前作を見てくれた人から「宏子さんのその後は?」とか、「イケメン介護士と宏子さんのそ
の後は?」といった問い合わせが多く、こんなに早く「2」を作るなんて自分でも驚いて
いる。
-1作目はこれまでの認知症のイメージの型を破った。
母は2010年にアルツハイマー型認知症と診断された。最初、数日前に誕生日を祝っ
たことを忘れたり、トイレットペーパーを隠したり、貯金通帳をなくしてしまったりし、
家を出ずに閉じこもっていた。それでも認知症発症後、以前とは違って「喜怒哀楽」がは
っきりし、明るく、あけすけな性格に豹変(ひょうへん)。その辺は前作でもお伝えした。
-セカンドステージでも、宏子さんはあまり変わっていない。
もっと明るく、行動的になっている。時々、外出するようになって「楽しかった」と笑
顔を見せるようになり、デイサービスにも通うようになった。イケメン介護士ともさらに
親しくなり、信頼関係も生まれたようで、あれほど嫌がっていた風呂に3年ぶりに入った。
「どうだった?」と聞くと「気持ちよかった」と笑った。介護する人がされる人の立場に
なって考えることが大事だと分かった。
■「徘徊」の理由
-本人が嫌がることを決して強要してはいけない。
その人の過去の人生などに思いをはせ、それを理解すること。例えば、
「徘徊(はいかい)」
というのは、認知症の人にとってそこに過去の何かがあることが多い。ちゃんと理由があ
る。認知症という病気は本人が一番つらい。そこから逃げようと閉じこもったり、徘徊が
ある。本人の好きなことをやらせること。それで解放される。私も若いころ、好きなこと
をやってきた。
-介護する人に問題がある。
介護する人が介護される人の「個人」を知ること。それでプランを立てることが大事。
これは私が認知症介護において唯一無二と思っている「パーソン・センタード・ケア=認
知症の人を尊重するケア=」
(P・C・C)のやり方。作品の副題になっているように、私
自身がパーソン・センタード・ケアの発祥地、イギリスに行って取材した。
-P・C・Cの方法を関口監督も取り入れている。
ヒューゴ・デ・ウァール博士は、認知症という病気だけが同じで、一人一人はそれぞれ
違うことや、その人の個人史や性格をしっかり見ることが大切とおっしゃっている。例え
ば、母がある時、終戦記念日について「あれは敗戦記念日だ」と怒ったことがある。昭和
20 年、母は 15 歳でその日を迎え、それが強く印象に残っていたように思う。
-介護にはそのためのプロが必要では。
私は介護のプロではないが、家族だから母のことはよく知っているし、彼女の言う言葉
もよく理解できるが、なかなか普通は難しいと思う。しかし、介護で一番つらいのは介護
される人であり、つらいから閉じこもってしまう。
「認知症」という病気だから閉じこもる
のではない。例えば団塊の世代の認知症の人がいたら、ゲバ棒を見せるといいのかもしれ
ない。
■親子W主演
-その人の人生を振り返る。
介護は人生の応援歌であるべき。人間の「脳」は100%使われていないが、
「心」は残
っている。それが解放されると元気になれる。母の病気はセカンドステージになったけど、
決して「不幸せ」になったわけではない。逆に彼女の人生が豊かになっているような気が
する。
「今のおばあちゃんが一番いい」とめいは言っている。
-今回は関口監督も出演し、親子W主演。
母は「えっ、主役を譲ったつもりはないよ!」と言っている(笑)。母は 84 歳。また元
気な姿を「毎アル3」でお見せしたいと思っています。
せきぐち・ゆか 1957年生まれ。日本で大学卒業後、オーストラリアに渡り在豪 29
年。
「戦場の女たち」
(89 年)で監督デビューしメルボルン国際映画祭グランプリ受賞。
「ダ
イエット」
(2007年)でアン・リー監督にコメディーセンスを絶賛される。「重喜劇」
を目指す作家性は長編動画にも生かされている。
遺伝医学の成果を社会の幸福に ~「あかりのらせん」開設について~
田村建二 (たむら・けんじ)
朝日新聞 2014 年 9 月 30 日
医療をめぐる技術が大きく進み、病気の患者だけでなく一般の人たちが先端的な医療情
報に接する機会が増えてきました。
遺伝子検査はかつて、医療機関で患者の病気の診断などに用いられることが中心でした
が、いまでは民間の企業が健康な人向けにビジネスとして実施する遺伝子検査の話題が増
えています。妊娠している女性の血液を調べるだけで、おなかの赤ちゃんに病気や障害が
あるかどうかを予測できる技術も開発され、遺伝子を調べる技術は一般市民にとってどん
どん身近になってきています。
遺伝子を調べる技術は、医学の進歩に貢献してきました。一方で、技術の普及とともに
「遺伝子検査の結果を知ることで、将来への不安ばかりが募ってしまうことはないか」「究
極の個人情報ともいわれる遺伝情報が第三者に漏れてしまうことはないのか」といった心
配の声も聞かれるようになりました。
遺伝子検査の結果をもとに、就職や保険への加入といった場面で不利な扱いを受けるこ
とはないのかという懸念もあります。こうした課題についてどう考えていけばいいのか、
議論はまだ十分とはいえません。
朝日新聞社が慶応義塾大学に開設した「先端医療情報イノベーション寄付講座」では、
遺伝情報を代表とした先端的な医療情報をめぐる医学的、社会的な課題について、慶応大
の専門家と朝日新聞の記者がともに考えることを目的にしています。遺伝情報や遺伝医学
をめぐる研究成果を社会全体の幸福につなげていくためにどうしていくべきなのか、20
15年度までの活動を通して検討していきます。
遺伝情報の本体といわれるDNAは、二重のらせん形をしています。その中身は人によ
って違い、だからこそ尊いといわれます。みんなが持っているそれぞれのらせん(=DN
A)があかりとなってお互いを照らすように、遺伝子の違いを認めて支え合える社会にな
れば、という願いをこめて、コーナーのタイトルを「あかりのらせん」としました。
遺伝情報をめぐる話題や問題点などについて、この欄などを活用してできるだけわかりや
すくお伝えしていきたいと考えています。
(朝日新聞編集委員・慶応義塾大学共同研究員)
田村建二 (たむら・けんじ)
1993年朝日新聞入社。東京本社科学部記者、大阪本社科学医療部次長な
どを経て2013年から医療分野担当の編集委員。2014年6月から「ア
ピタル」編集長を兼務。
遺伝子検査、限界も知って ~寄付講座担当・小崎健次郎 慶応義塾大教授(臨床遺伝学)
のメッセージ~
朝日新聞 2014 年 9 月 30 日
小崎健次郎 (こさき・けんじろう)
慶應義塾大学医学部・病院 臨床遺伝学センター 教授
1989年慶大医学部卒、1993年米国カリフォルニア大学(UCSD)留学。
米国臨床遺伝専門医資格を取得。慶大小児科准教授を経て2011年より現職。
専門は遺伝性疾患の診療・研究と遺伝子診断の臨床応用。日本小児遺伝学会理事
長
遺伝子で自分自身の未来を予測する。多くの人たちにとってかつて
は絵空事だったそんなことが、ここ数年の技術の急速な進歩によって
現実的になってきました。遺伝子情報の特徴や限界を正しく知ったう
えで利用すれば、個人の健康づくりにも役立つはずです。
ただ、遺伝の研究を専門とする小児科医として、人間が育っていくことへの影響力は遺
伝子よりも、環境や人とのつながりの方がはるかに大きいことも日々、実感しています。
遺伝子を調べ、利用することへの関心は高まっていますが、一般の人に向けた正確で分
かりやすい情報はまだ不足していると思っています。たとえば、企業が一般向けに手がけ
る遺伝子検査の話題を、遺伝性乳がんの検査を受けて乳房を予防切除した米国の女優さん
の例とあわせて紹介する報道をよく見かけました。
しかし、企業が一般向けに手がける遺伝子検査は、基本的に、ある病気に平均よりも一
定程度、かかる可能性が上がるなどといった傾向を示すにすぎません。一方、米国の女優
さんが受けた検査では、遺伝子の変異を調べることでかなり高い確率で乳がんを発症する
ことが予測されます。同じ遺伝子検査でも、意味合いは大きく違うのです。
大学で接する医学を専攻していない学生からも、
「遺伝子をめぐる問題について真剣に考
えたいのだが、情報が足りない」という感想をよく聞きます。医学の世界でさえ、こうし
た分野に携わっていない人たちの間でこのテーマについて十分には理解されているとはい
えません。ましてや一般の方が、自身の受けた検査結果をどのように生活に取り入れてい
くのか、考えるのは難しいのではないでしょうか。
寄付講座を通して、日々のニュース記事だけでは十分に伝えきれない、遺伝子検査やそ
の利用をめぐる利点や限界、課題などについて、新聞社の人たちと協力してできるだけ正
確かつわかりやすく、社会にお伝えしていきたいと考えています。
遺伝子の変異によって、日々の社会生活に不自由している子どもさんたちがたくさんい
ます。講座の活動をきっかけに、こうした子どもたちにより多くの光があたるようになれ
ば、とも願っています。
高橋源一郎さん:次男の大病で気づいた「弱さ」 強さ至上原理の社会はもろい
毎日新聞 2014 年 09 月 30 日
インタビューに答える作家の高橋源一郎さん。近著に「還暦から
の電脳事始」
(毎日新聞社)=写真は竹内紀臣撮影
作家の高橋源一郎さん(63)は6年前、次男が急性
小脳炎で危篤状態になった経験をきっかけに、
「弱さ」に
ついて考え始めた。この時期、同様に重い病気で入院し
ていた子どもの母親たちの表情がとても明るいのに気づ
いた。
「この経験が私を変えた」
。子どものホスピスや重
度の身体障害者施設などを訪ね、彼らの声なき声に耳を傾ける旅を通して「強さを至上原
理とする社会はもろい」との考えにたどりついたという。
今の日本で生きづらさを感じている人たちの多くは、障害があったり、貧困や差別に直
面していたりと、社会的・身体的に弱い立場の人たちだ。原発事故の被災者や、水俣病な
ど公害の被害者も、国策が生んだ「負の遺産」を引き受けざるを得ず、弱い立場に追い込
まれている。それでも政府は「強い国家」を掲げ、前だけを見て走り続けるように見える。
高橋さんは毎日新聞のインタビューで、「弱さ」を基準にした社会のあり方を提案した。
「互いに弱さを認め合い、弱い人の中でも少し強い人が少し弱い人を助けるような共同体
が必要です」と指摘する。
インタビューの詳細は
(http://mainichi.jp/feature/news/20140930mog00m040014000c.html)。
【平野美紀/デジ
タル報道センター】
バリアフリー基準緩和を
横浜市に障害団体が約2万人分の署名
神奈川新聞 2014 年 9 月 30 日
施設整備がストップしている窮状を訴える横浜市内の障害者
団体の代表=横浜市役所
横浜市福祉のまちづくり条例のバリアフリー基準
を満たす新築や賃貸物件の確保が難しいため、市内の
小規模障害者施設の新設、移転が軒並みストップして
いる問題で、市内の障害者団体5団体は26日、条例
の適用対象の緩和を求める1万8786人分の署名
を林文子市長に提出した。5団体は「条例の基準は現
実離れしている」とし、対象施設を現在の全施設から、
県条例と同じ床面積500平方メートル以上にしてほしいと訴えている。
5団体は市障害者地域作業所連絡会(市作連)、市精神障害者地域生活支援連合会(市精
連)など。署名活動は1日から25日まで実施し、
「障害者の家族会などの協力で短期間に
多く署名をいただいた」と市精連の大友勝代表。
署名提出に合わせ市と行った交渉では「緩和はしないとの回答だった」といい、5団体
は「このままでは施設が造れず、特別支援学校卒業生が毎年800人でる時代に対処でき
ない。さらに市、市議会などに働きかけを続ける」とした。
高齢者、障害者らが利用する建築物の新築、増改築、用途変更については、バリアフリ
ー法で廊下幅、階段、エレベーター、車いす用トイレなどに細かい基準が定められている。
ただし対象は床面積2千平方メートル以上。市は条例で、対象を全施設とする上乗せ規制
を行い、昨年から規制を強化している。
直撃を受けたのが、狭い敷地に新築したり、雑居ビルの一室や民家を賃借したりしてい
る地域活動支援センター(平均床面積約140平方メートル)などの小規模障害者施設(市
内約400施設)で、市作連の佐藤文明前会長は「基準を満たす既存の建物はほとんどな
い。街の中での事業所の新設は極めて困難な状況。財力のない障害者団体は基準を満たす
新築も難しい」と危機的な状況を訴えている。
◆林市長、柔軟対応の意向
厳しい基準により、小規模障害者施設の設置が滞っているとして、障害者団体が福祉の
まちづくり条例のバリアフリー基準の緩和を求めていることに対し、横浜市の林文子市長
は「やむを得ない場合は適用除外の手続きを迅速に行う」と述べ、柔軟に対応していく考
えを示した。
26日に行われた市会第3会定例会・決算特別委員会の総合審査で、酒井誠氏(自民党)
の質問に答えた。
林市長は「福祉のまちづくり条例で定めるバリアフリーの推進と小規模な障害者施設の
設置はいずれも市にとって重要な施策」と説明。「条例にはバリアフリー基準の適用除外規
定がある。施設利用者の障害特性や既存建物の構造上、やむを得ない場合は、適用除外と
する手続きを迅速に行い、施設の設置を推進していく」と答えた。
裁判員制度は「合憲」
福島地裁・女性の請求棄却
河北新報 2014 年 9 月 30 日
強盗殺人事件の裁判員裁判で裁判員を務め、殺害現場の写真を見るなどして急性ストレ
ス障害になったとして、郡山市の無職青木日富美さん(64)が国に200万円の損害賠
償を求めた訴訟の判決で、福島地裁(潮見直之裁判長)は30日、請求を棄却した。
青木さんは裁判員制度が違憲だと主張したが、潮見裁判長は「裁判員としての職務は憲
法18条が禁ずる『苦役』に当たらない」と合憲との判断を示した。
判決は、裁判員裁判に参加したことと、急性ストレス障害を発症したことに相当の因果
関係を認めたが「辞任を認めるなど精神的、経済的負担の軽減が図られている」と指摘。
「司
法の国民的基盤の強化を図るものであることに照らせば、裁判員法の立法目的は正当、国
会議員の立法行為を違法とはいえない」と認定した。
訴状によると、青木さんは2013年3月、福島県会津美里町で2人が殺害された強盗
殺人事件の裁判員裁判(福島地裁郡山支部)で、殺害現場のカラー写真や被害者が消防署
に助けを求める録音音声を見聞きし、不眠や吐き気に苦しむようになった。急性ストレス
障害と診断され、現在も治療を続けている。
原告側は「裁判所への出頭を強いられたことは憲法18条が禁じる『意に反する苦役』
に当たる」と制度の違憲性を主張。不十分な審議で裁判員法を成立させた国会議員と、そ
の合憲性を11年11月の判決で認めた最高裁に重大な過失があると訴えていた。
判決後、青木さんは福島市内で記者会見し「ストレス障害が起きても我慢しろという判
決だ。国のやり方はこういうものかと思えば腹も立たない」と話した。
青木さんが加わった裁判員裁判で地裁郡山支部は昨年3月、強盗殺人
罪に問われた無職高橋明彦被告(47)に求刑通り死刑の判決を言い渡
した。
仙台高裁はことし6月、一審判決を支持し、被告の控訴を棄却。被告
は高裁判決を不服として、上告している。
月刊情報誌「太陽の子」、隔月本人新聞「青空新聞」、社内誌「つなぐちゃんベクトル」、ネット情報「たまにブログ」も
大阪市天王寺区生玉前町 5-33 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 社会政策研究所発行