知の知の知の知 - 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会

い~な
あまみ
中 央
しらさぎ
さくら
大阪+知的障害+地域+おもろい=創造
知の知の知の知
社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 社会政策研究所情報誌通算 2031 号 2014.7.31 発行
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てんかん発作、異変を事前検知
京大グループが研究
京都新聞 2014 年 07 月 30 日
てんかん発作の事前検知を目指して開発された機器。
手前の装置で心拍を計測
し、奥のスマートフォンにデータを転送して解析する(京都市左京区・京都大)
てんかん発作を心拍データから事前に検知する装置の開発を京
都大などのグループが進めている。心拍を読み取る機器を患者が装
着し、専用ソフトを組み込んだスマートフォンでデータを解析し警
告する仕組み。身体的な負担が少ないのが特徴で、発作による事故
が社会問題となる中、回避する手段として期待される。
京都大情報学研究科の藤原幸一助教や東京医科歯科大の宮島美
穂医師、熊本大のグループ。てんかんの原因となる脳内の異常な信
号は、心拍などを制御する自律神経にも影響を及ぼすことが分かっ
ている。心拍データの異変の検出で、けいれんなどの発作を数十秒
から数分前に知ることができる可能性もあるという。
グループは、患者の体に張り付けた三つのセンサーから心拍デー
タを計測する装置と無線転送されたデータを解析するソフトを開
発した。今後、通常時のデータを積み重ねて発作の前兆かどうかの
判断基準を定める作業をする。現状は、運動などによる心拍データの変動を発作の前兆と
捉えることもある。
東京医科歯科大などで患者に装着してもらってデータを集める臨床研究も始める。20
12年に京都市東山区・祇園で19人が死傷した事故では、京都府警が原因をてんかん発
作と判断している。ソフトの開発を担当する藤原助教は「10秒前でもいいからアラーム
を鳴らせれば事故が防げる。10年以内に実用化したい」と話している。
遺伝子入れて脳の大きさ回復 小頭症マウスの実験
共同通信 2014 年 7 月 29 日
頭が通常より小さく知的障害を伴うこともある「小頭症」のうち、PQBP1という遺
伝子の異常が原因となる種類を再現したマウスの胎児に遺伝子を入れ、脳の大きさを回復
させる実験に成功したと、東京医科歯科大の岡沢均教授らのチームが29日、米専門誌に
発表した。
マウスの胎児の脳では、神経幹細胞が自らを増やしながら神経細胞に変化して脳を作り
上げるが、PQBP1が働かないと幹細胞の増殖回数が減り、出生までに必要な大きさの
脳ができないことが分かった。
次に、こうした子を妊娠した母マウスの腹にPQBP1を組み込んだウイルスを注射し
た。
釧路の食材、栄養学んで
市が園児用に食育教材製作
北海道新聞
2014 年 7 月 29 日
【釧路】保育園児に釧路産の食材や栄養を学んでもらおうと、釧路市は食べ物を模した
教材「食育キット」を製作した。食育教材を自治体が製作するのは珍しいといい、市は食
育指導を行う際に活用する方針。
市の「未来のお食事博士育成プロジェクト」事業の一環で、釧路
管内の障害者支援施設でつくる「釧路圏障がい者自立支援施設協
議会」
(波間良隆会長)に依頼。市内の3障害者支援施設が製作
した。
サケやキャベツなどを模したフェルト製の食育教材「食育キット」
食育キットは、じゃがいもや豚肉など29種の身近な食材が入
った「ままごとキット」と、切り身や筋子に分解できる全長40
センチのサケの模型など、釧路の特産食材14種を詰め合わせた
「釧路食材キット」で構成。何度でも使えるように洗えるフェル
ト生地を使用したほか、針金などを一切使わず、子供に危険がな
いよう配慮した。
市は公立保育園や子育て支援拠点センターに配布、本年度から市の管理栄養士が保育園
を回り、キットを活用した指導を行う予定。
市こども保健部は「食育指導の際に限らず、ままごとなど普段の遊びを通じて、食や栄
養に興味を持ってもらえれば」としている。(敦沢政俊)
酸味と香り、伝統の黒茶
西条で製造最盛期
愛媛新聞 2014 年 07 月 29 日
発酵を終えた黒茶の葉を天日干しするために、ござの上に広げる
ピースの利用者ら
愛媛県西条市石鎚地区に伝わる製法を基に手作りして
いる発酵茶「天狗(てんぐ)黒茶」の製造が最盛期を迎
え、県内唯一の産地西条市で農家や障害者らが作業に汗
を流している。市内の道の駅小松オアシス(小松町新屋
敷)や障害者事業所ピース(氷見)などで、近く売り出
す予定。
黒茶は中世ごろから作られているとされ、独特の酸味と香りが特徴。製造量の減少を知
った地元女性グループ「さつき会」が1997年に生産者から製法を学び、商品化した。
近年はピースの利用者らと共同で作っていたが、今年からは分かれて製造している。
ピースの利用者や農家ら約20人でつくるグループは6月下旬から、さつき会前代表の
近藤真子さん(80)の指導を受けながら作業。7月25日は、14人がJA東予園芸あ
んぽ柿加工施設(丹原町田野上方)で、発酵を終えた茶葉をござの上に広げて天日干しし
た。
雑貨や菓子販売「第1回笑顔deマルシェ」5日、県民ホール
佐賀新聞
2014 年 07 月 30 日
佐賀市のNPO法人「オレンジ」は天然素材で作ったマルセイユ
石けんを販売する=佐賀市木原2丁目
県内の障害福祉サービス事業所が5日正午から、県庁
1階県民ホールでクッキーやパン、雑貨などを販売する
「第1回笑顔deマルシェ」を開く。
昨年4月に工賃アップのために、障害者が働く施設か
ら優先的に商品を買うように地方自治体に求める「障害
者優先調達推進法」が定められた。さまざまな商品をよ
り多くの人に購入してもらおうと県の障害福祉課就労支援室が主催する。
20施設が出品。午後1時まで、減農薬や無農薬の野菜、弁当、シュークリーム、アロ
マキャンドル、ごきぶりだんごなどさまざまな商品を販売する。
60日間かけて熟成させた石けんを作る障害福祉サービス事業所を運営するNPO法人
「オレンジ」は「植物性のオリーブオイルを使った無添加の石けん。ぜひ手にとって」と
話す。
新潟)ローソンも参入
新潟市6次産業化に3事業者発表 三木一哉
朝日新聞 2014 年 7 月 30 日
フジタファームの農産品直売所。野菜、チーズやみそなどを売っている=
新潟市西蒲区
新潟市が指定を受けた農業の国家戦略特区を巡り、規制緩和
を活用して農業と加工、販売とを結びつけた「6次産業化」の
事業などを検討する国家戦略特別区域会議の初会合が18日、
同市中央区の朱鷺(とき)メッセであった。市は、コンビニ大
手のローソンの米作り参入など、3事業者による事業計画を発
表。また、国に対し、農業生産法人への企業の出資比率引き上
げ、保税地域設置といった規制緩和策を追加で要望した。
ローソンは、サラダ用の野菜などを栽培する「ローソンファ
ーム」を全国19カ所に設立し、すでに農業に進出している。
新潟市内の農家と共同出資し、農業生産法人を設立して米作り
に取り組み、おにぎりや弁当用の食材、米そのものの店頭販売
などを目指す。
同市西蒲区で酪農や農産品直売所などを営むフジタファームは、農家レストランを立ち
上げる。乳製品を活用したカフェ、新たに取得した農地にイタリアンレストランをつくる。
障害者就労支援事業のアイエスエフネットライフ新潟は、農業生産法人を設立し、すでに
経営しているカフェ用の農産物を生産する。
“介護用ロボ”実証評価へ…現場で改良点など検証
読売新聞 2014 年 7 月 30 日
安川電機が開発した移乗アシスト装置
安川電機(北九州市)は、寝たきりのお年寄り向けなどを想
定し、
“介護用ロボ”として開発中の「移乗アシスト装置」につ
いて、経済産業省の補助を受けて介護施設での実証評価に乗り
出す。現場で実際に使いながら改良点などを検証し、2016
年の製品化につなげたい考えだ。
同装置は、体を自由に動かせない人の介護を念頭に、ベッドと車いす間の移動を楽に行
えるよう設計している。完成済みの1号機(幅1・1メートル、奥行き1メートル、重さ
160キロ)では、要介護者の下に敷いた専用シートを左右のアームに固定し、アームの
センサーに触れるだけで簡単に抱え上げることができる。
装置を体験した同市の介護福祉士の女性(72)は「既存の製品より揺れが少なく、安
心して体を任せられた」と話した。
安川電機は、産業用ロボット開発で培った制御技術などを同装置に応用し、体に負担を
かけにくい姿勢を保ったり、激しい揺れを感知すると停止したりする機能を導入。更なる
改良を加えた2号機を9月にも完成させて実証評価に臨む。
実証評価は11~12月、北九州市などと連携して、11か所の介護施設で行う予定。
約1億円の事業費の半分を経産省が補助する。
「既製品(40万~50万円)に付加価値を
つけた程度」
(安川電機)の価格設定を見据え、製品化の課題などを探りたい考えだ。
自閉症の青年と友人の交流が絵本に 絵本作家・田島征彦さん「ふしぎなともだち」
産経新聞 2014 年 7 月 30 日
『じごくのそうべえ』などで知られる絵本作家の田島征彦(ゆきひこ)さん(74)が、
メール便の配達をする自閉症の青年と幼なじみの友情を描いた絵本『ふしぎなともだち』
(くもん出版)を出版した。障害のある子供が地域の学校の普通学級に通い、友達との触
れ合いの中で成長し、やがて地域で働く。そんな兵庫県淡路市での実話に心を動かされ、
4年の歳月をかけて完成させた。
「違い」を問題にしない子供の力を躍動感あふれる絵で伝
える。
(服部素子)
◆地域に溶け込む
制作のきっかけは、淡路市に住む田島さんと同市の元小学校長、小南廣之(こみなみ・
ひろゆき)さん(69)との出会いだった。小南さんは30年以上前から、障害児と健常
児が普通学校・学級で共に学ぶ教育に取り組み、退職後も障害のある子供や保護者との交
流を続けている。
4年前、田島さんは小南さんから「自閉症などの障害のある青年たちが、この町でメー
ル便の配達をし、地域に溶け込んで暮らしている」という話を聞き、「絵本にしたい」と思
った。自閉症について勉強を始め、小南さんから聞いた青年たちが通う「ひまわり作業所」
を訪ねた。同作業所では、ヤマト福祉財団(東京都中央区)が障害者の自立のために行っ
ているメール便の配達事業を請け負い、障害のある16人が歩きながら、または電動車椅
子や自転車を使って、ダイレクトメールなどを直接手渡したり、郵便受けに投函(とうか
ん)したりしている。
その一人、みんなから「かあくん」と呼ばれる治井(はるい)一馬さん(30)。2歳で
自閉症と診断され、3歳で淡路島に引っ越し、地元の保育園、小学校、中学校に通った。
治井さんを絵本の主人公「やっくん」のモデルに決め、母、節子さんと小学1、2年生時
の担任教諭が交わした膨大な交換日記も借りて読んだ。
しかし、子供向けの絵本で、メール便の配達など青年の活動を描く難しさに手が止まっ
てしまった。
◆垣根はない
そんな田島さんに転機をもたらしたのが、治井さんと保育園、小学校、中学校を一緒に
過ごし、現在は郵便局勤務の小田陽介さん(29)の存在だった。「『ぼくは、かあくんを
障害児だとは思っていなかった』と言ったんです」
(田島さん)
「喜怒哀楽を正直に表現するかあくんといると、落ち着く」
「自分たちの間に垣根はなく、
大人になってもそれが続いている」と語る言葉に心が動いた。大人になった治井さんがメ
ール便を配達し、小田さんが郵便局員という不思議な符合にも後押しされ、昨年12月、
田島さんの手が再び動き出した。
みんなは、やっくんが いけない ことを したら、やさしく おしえている。大声を
だしている ときは、おちつくまで まつ。やっくんを みんなの 中へ つつみこんで
いるようだ。 あそぶ ときも、べんきょうする ときも いっしょだ。
絵本は、治井さんと小田さんの幼い日から現在までの絆を軸に、フィクションも交えな
がら展開。
「やっくん」が偏見に直面する場面もある。しかし、淡路島の豊かな自然の中で、
障害という垣根を飛び越えていく子供たちを描く田島さんのまなざしは力強く、優しい。
「同じ学校に通い、同じ教室で学び、地域で共に過ごす日々が『同じではないけれど、
一緒』という心を育んだことを伝えたい」と田島さんは話している。
「お泊まりデイ」届け出制とガイドライン
質の向上図る
朝日新聞 2014 年 7 月 30 日
デイサービス施設が昼間の利用者を宿泊させる「お泊まりデイ」について、厚生労働省
は利用定員などを定めたガイドラインをつくる方針を明らかにした。来年4月に都道府県
などに通知し、サービスの質の向上を図っていく。同時に届け出制の導入も促す。
28日に市町村の介護保険担当課長を対象に開いた会議で表明した。
お泊まりデイは、介護保険のデイサービスを提供する通所介護事業所が、介護保険の枠
外で利用者を宿泊させるサービス。入所施設ではなく、国の基準もないため宿泊環境が不
十分で、一部では狭い部屋に高齢者が詰め込まれているといった指摘がある。
このため、厚労省は利用定員や1人当たりの床面積、職員配置の基準を示したガイドラ
インを作成。通所介護事業所を管轄する都道府県と指定市、中核市に通知する。施設の実
態把握とチェック機能の強化のため、お泊まりデイの届け出制の導入も求めていく。
社説:介護職の待遇
改善努力する法人評価を
京都新聞 2014 年 07 月 27 日
先月、京都市内で開かれた福祉職場就職フェア。府内の介護事業者がブースを設け、学
生らに仕事のやりがいを懸命に訴えた。参加した社会福祉法人の担当者は「新しい力が1
0人でも20人でもほしいのだが、介護職は賃金が低く、しんどいとのイメージが先行し
ている。就職の『入り口』にさえ立ってもらいにくいのが実情」と話す。
この法人は特別養護老人ホームなどを複数の介護事業を運営するが、人手が足りず、訪
問介護の利用を断らざるを得ない例も出ている。人手不足→現場がきつくなる→ストレス
がたまる→離職する-という「悪循環になっている」と打ち明ける。
公共事業が大幅削減され、土木作業員らの介護転職を促す施策もあったが、最近の公共
事業増発で「介護より賃金の高い土木現場に、多くの人が戻っていった」と語る事業者も
いる。
介護職の平均給与は常勤で月27万円。若手が多いとはいえ、全産業平均(月32万円)
を下回り、離職率は10%台後半に高止まりする。
「団塊の世代」が75歳以上になる20
25年度までに、あと100万人増やす必要があるが、展望は見えない。
危機感が高まる中、先の国会では議員立法により、介護職員らの賃金引き上げを目指す
「介護・障害福祉従業者処遇改善法」が成立した。ただ、来年4月までに「財源の確保も
含め検討を加え、必要があると認めるときは必要な措置を講ずる」と中身は物足りない。
当初の野党案では1470億円の国費を投入し、介護職らの給与を月1万円上げるとし
たが、与党が難色を示し、修正協議で賃上げ額や財源を明示しない理念法になった。政治
の主導力で具現化してもらいたい。
京都府や滋賀県の介護現場では、職員の意欲を引き出すよう給与体系を工夫したり、職
場のコミュニケーションや技術力を高める取り組みを進め、いきいきとした勤務環境作り
に成功している事業者も少なくない。
政府は、そうした現場の工夫を制度に取り込んだり、優秀な事業者を評価するシステム
を考えてはどうか。介護職の待遇向上や要介護度の改善を進めた事業所に、報酬を加算す
ることも検討に値しよう。
一方で、介護事業を行う社会福祉法人の一部には巨額の内部留保をため込んだり、理事
長や親族が私物化している問題も指摘されている。介護報酬をどれだけ人件費に回すかの
決まりがない中、職員の待遇が犠牲になっているとの声もある。
厚労省の調査では、特養ホーム1施設あたりで平均3億円を超える内部留保があるとす
る。施設改修への積み立てなど理由もあろうが、税制優遇や補助金を受けながら、不透明
な運営は許されまい。悪貨が良貨を駆逐せぬよう、財務諸表などの情報公開や、報酬の使
途などを調べる監査を徹底したい。
介護職が若者に魅力ある職場にならねば、豊かな超高齢社会は描けない。社会福祉法人
は本来持つべき公共性に立ち返って組織を点検し、政府や自治体は介護の担い手を支える
環境整備と財源配分に注力してほしい。
社説:子どもの貧困―ひとり親世帯を救おう
朝日新聞 2014 年 7 月 30 日
事態を打開するため、まずは今そこにある貧困の解消に力を注いでほしい。
子どもの貧困率が、過去最悪の16・3%(2012年)に達した。子どもの6人に1
人が、平均的な所得の半分を下回る世帯に暮らしている。
この数字は、先進国の中では最悪クラスだ。しかも、この30年近く、率の悪化に歯止
めがかからずにいる。
政府は「子どもの貧困」対策の大綱づくりを進めている。そこに何を盛り込むか。
有識者による検討会の提言には多岐にわたる対策が並んだ。とくに、教育支援策が充実
している。
教育は子どもに自立できる力をつける。親から子への貧困の連鎖を断つために大切だ。
ただ、今すでに貧困にあえぐ子を救うには、まず保護者の貧困を改善する必要がある。
深刻なのは貧困率が5割に及ぶひとり親世帯、とくに母子家庭だ。
母子世帯の母の8割は働いているが、仕事による年収は平均で180万円にすぎない。
生活保護を受けているのは1割ほどだ。働いても貧しさを抜け出せないところに根深さが
ある。
大きな要因は、不安定な非正規雇用が半数に及ぶことだ。たとえば、収入の低いシング
ルマザーを正規で雇い入れた企業には助成をする、といった思い切った手を打てないか。
根本的には、雇用の構造から生じている問題だ。非正規雇用を正規にかえていく努力を
しなければ、貧困に苦しむ人はなくならない。非正規の待遇改善も必要だ。
検討会では「収入の低いひとり親家庭に支給される児童扶養手当を増額してほしい」と
の声が、当事者や支援者から上がった。優先順位は高いだろう。
貧困の根絶には息の長い取り組みが要る。それは貧困率に長年歯止めがかからなかった
ことからも明らかだ。大綱を作って終わりにしてはならない。
政策の効果を検証できるように、大綱には貧困率や進学率、就職率などを改善する数値
目標を定めておくべきだ。
生活の苦しい家庭の子どもに学習や食事を支援する民間組織は各地にあり、効果をあげ
ている。ただ、どこもメンバーの献身的な努力に支えられているのが実情で、運営は厳し
い。
検討会では、こうした活動の支援にも使える官民基金の創設が提案された。わが子や孫
だけでなく、よその子にも出来る範囲で手をさしのべる。社会で子どもを育てるために、
そういう仕組みがあっていい。
社説:児童虐待 「心の傷」に目を向けたい
西日本新聞 2014 年 07 月 30 日
親が「産まなければ良かった」と暴言を吐く。父親が母親を殴る姿を、目の当たりにす
る-。両親が子どもに直接的な暴力を振るわなくても、幼心に大きな傷を負わせることが
ある。
心理的虐待といわれるものだ。児童虐待防止法にも規定されている。その「心の虐待」
による児童の被害が、急激に増えている。
警察庁によると、昨年までの過去8年間で18歳未満の子どもに対する心理的虐待は1
68件から73・5倍の1万2344件へ桁違いに増加した。身体的虐待の6・4倍、食
事をさせないなどのネグレクトの6・2倍、性的虐待の1・6倍と比べても突出している。
身勝手な親の言動で、精神的にショックを受ける子どもが後を絶たない。中でも目立つ
のが、子どものいる前で配偶者に暴力を振るう「面前ドメスティックバイオレンス(DV)」
である。
2004年の児童虐待防止法改正で心理的虐待に盛り込まれた。警察庁の調査では、面
前DV被害は12年で5431人、13年には8059人に上っている。事態は想像以上
に深刻といえよう。
DV事件は全体としてみても全国の警察が12年に把握しただけで4万件を超えており、
9年連続で過去最多を更新している。
増え続けるDV事件であらためて指摘したいのは、被害を受けた配偶者だけでなく、そ
の子どもにも目を向ける必要がある-ということだ。警察庁も児童相談所との連携を強化
し、被害の早期発見と子どもの早期救出・保護に力を入れる方針という。両者の間で早急
に態勢をつくってもらいたい。
昨年1年間に全国の警察が虐待を理由に児童相談所への通告対象にした子どもは2万1
603人と、初めて2万人を突破した。
社会的な関心が高まり、一般市民などからの通報が増えている事情もあるとはいえ、や
はり座視できない数字である。
警察など関係機関に頼るだけでは問題の解決は難しい。地域ぐるみで子どもを見守る環
境を整えるなど社会全体で取り組みたい。
社説:
【精神科病床】地域で暮らせるように
高知新聞 2014 年 07 月 30 日
経済協力開発機構(OECD)は、日本の精神科病床数が加盟国平均の4倍で、
「脱施設
化」が遅れているとの報告書をまとめた。
先進国の間では入院から地域医療へ移行させるのが主流となっているが、日本ではなか
なか進んでいない。地域に戻り、自立して暮らせるよう支援に力を入れたい。
報告書によると、人口10万人当たりの精神科病床数は、OECD平均が68床なのに
対し、日本は269床と加盟国の中で最も多い。
多くの病床は1年以上の長期間入院している患者で占められている。厚生労働省の推計
では、全国に約32万人いる入院患者のうち長期は約20万人に上る。約6万5千人は1
0年以上だ。高齢化に伴い、認知症による入院も増えている。
厚労省は2004年、医療上の必要性が低い「社会的入院」の7万人を約10年かけて
退院させる方針を掲げた。だが具体策が不十分で、病床数もほとんど減っていない。
退院が進まない理由はさまざまだ。一つには地域での受け皿が少ないことが挙げられる。
例えば、精神科への入院歴があると、福祉施設への入所や一般住宅への入居が拒否される
ケースが多い。
家族に対する支援も十分でない。在宅医療や福祉サービスが不足しているため、家族が
退院に同意しない場合もあるという。
厚労省は再び、精神医療改革を試みようとしている。患者の退院を促し、病床の削減に
取り組む。退院で空いた病棟は、条件付きでグループホームなどへの転換を認める方針も
決めた。
この方針に対しては「単なる看板の掛け替え」「病院が患者を囲い込み、隔離を続けるだ
け」と、障害者団体などから反発も出ている。
というのも、精神障害者は社会の偏見や国の隔離収容政策のため病院に追いやられた歴
史がある。一方、病院も長期入院の患者は安定的な収入をもたらすとして手放さなかった
側面が指摘されている。
大切なのは患者が地域での生活に復帰できることだ。グループホームへの入居は自由で
一定期間に限るなど、条件をきちんと定め、運営状況をチェックする態勢が求められる。
あくまでも地域へ戻る一つのステップだということを忘れてはならない。
来月、大阪でヒューマンドキュメンタリー映画祭
産経新聞 2014 年 7 月 30 日
人間の生き方に焦点を当てた作品を上映する「ヒューマンドキュメンタリー映画祭《阿
倍野》2014」が8月22日から3日間、大阪市阿倍野区の区民センターで開かれる。
今年は10作品を上映する。
映画祭は平成15年、障害者への理解を深めてもらおうと、映画監督の伊勢真一さん(6
5)らが中心になって始めた。社会問題など、さまざまな困難に立ち向かう人を取り上げ
た作品を上映しており、毎年約3千人が来場する。
今回上映する、被爆者のその後の人生を描いた東志津監督の「美しいひと」(116分)
は、日本人被爆者だけでなく、長崎県の捕虜収容所で被爆したオランダ人元兵士らにもス
ポットを当てている。伊勢監督の「妻の病 レビー小体型認知症」(93分)は、認知症の
妻を支える医師の姿を描いている。
主催するヒューマンDFプロジェクト大阪事務局の担当者は「映画祭が社会問題につい
て考えるきっかけになれば」と話している。1日券 2500 円(事前予約すれば2千円)、3
日通し券5千円。問い合わせなどは事務局(電)080・6180・1542。
社説:同級生殺害 心の闇 解明し共有化を
信濃毎日新聞 2014 年 7 月 30 日
「人を殺してみたかった」
。長崎県佐世保市の高1女子殺害事件で逮捕された同級生の1
6歳少女は、こう供述しているという。
同じ理由で殺人を犯した少年事件は過去にもあった。ただ、事件の全体像は明らかにさ
れず、十分な対策にもつながっていないのが現状だ。
今回の事件は、加害少女の心の中にどんな闇が広がっていたのか。解明すると同時に、
その結果を社会で共有化し、再発防止を考えることが必要だ。
少女が1人で暮らしていたマンションで見つかった遺体は、首と左手首が切断されてい
た。腹部も大きく切り開かれていた。
少女は「遺体を解体してみたかった」という供述もしている。反省の言葉は聞かれない。
長野県精神保健福祉センターの小泉典章所長は「生と死の境界が薄くなり、死の痛みが
分からない状態」とみている。
少女は勉強好きで知られていた。一方で、小学6年の時に同級生の給食に洗剤を混入さ
せる問題を起こしている。ネコなどを解剖したこともあったという。これらを今回の事件
の兆候ととらえることができるのだろうか。
2000年5月、愛知県豊川市で当時17歳の男子高校生が、見ず知らずの主婦を金づ
ちと包丁で殺害する事件があった。この時も高校生は「人を殺す経験がしてみたかった」
と供述している。
検察が依頼した精神鑑定では、精神障害はなく、完全な責任能力があると判断された。
その後、家裁が依頼した再鑑定ではアスペルガー障害という発達障害があり、療養が望ま
しいとされた。高校生は刑事裁判に出ることなく、医療少年院に送られた。
精神鑑定の内容も家裁の少年審判も非公開だった。少年法が犯罪少年の保護に重きを置
いているためだが、詳しい背景や動機は社会に知らされないままになった。事件を取材し
て本にまとめたノンフィクションライターの藤井誠二氏は、再発防止策を議論や研究しよ
うにも材料がないと訴えている。
佐世保事件の少女は今後、家裁に送致され、少年審判を受けるとみら
れる。刑事処分相当と判断されれば検察に送致(逆送)され、起訴され
て裁判員裁判に出る可能性がある。そうでなければ少年院送致などの保
護処分となる。
いずれにしても、一連の手続きの中で明らかになったことはプライバ
シーに配慮した上で公表されるべきだ。それが「命を大切にする教育」
の土台になる。
月刊情報誌「太陽の子」、隔月本人新聞「青空新聞」、社内誌「つなぐちゃんベクトル」、ネット情報「たまにブログ」も
大阪市天王寺区生玉前町 5-33 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 社会政策研究所発行