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多様性優位のマーケティング革新
この論文は、消費不況の本質は、社会的欲望の対象喪失、中流の生活様式の成熟という
歴史的構造に起因するとし、欲望の精神分析とその対象である生活様式のシステムの進化
を前半部で検証し、理論化しています。後半部は、こうした歴史的分析をもとに、現在の
局面を分裂市場と定義し、市場多様性への新しい戦略的対応の必要性を説いています。そ
の成功の鍵は、表層トレンドを見抜く進化的な市場認識、進化的マーケティングへの戦略
革新、それを推進していく突然変異を生み出せる組織革新にあるとしています。
1.消費回復の鍵は何か
日本経済が危機的状況にあり、その主因が不良債権、金融システムにあることは多くの
人々の注目するところとなった。同時に、実体経済の面では、消費の回復、その背後にあ
る人々の長期的な不安感の払拭を誰もが認めはじめている。しかし、金融システムが安定
を取り戻し、人々の不安が様々な諸施策によって払拭されたとして、消費は回復するだろ
うか。その答えは楽観的なものとは言えない。三つの理由がある。
1. 政府による恒久減税、税制改革、福祉政策などは、長期の収入―支出構造は改善
させることができる。従って、消費の「前提条件」は改善されるが、消費そのも
のには結びつくとは考え難い。
2. 支出の中心が必需支出よりも選択支出に移行している現在の消費で、少々の収入
変動が平均消費性向を上昇させると思えない。
3. 不安のなかった時代はない。戦後にも、高度成長時代にも、バブル時代にも不安
はあった。しかし、消費は旺盛であった。不安と消費は直接に結びついているわ
けではない。
消費低迷の原因は、分析的には長期の予想収入―支出構造の悲観性、将来への不安にあ
るが、消費の回復の鍵は、それを解消することだけではない。
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2.消費不況の本質−中流生活の成熟
長期の予想収入−支出構造を改善するだけで、消費が回復しそうもないのは、経済のマ
クロ統計が示しているとおりである(1998 年8月現在)。
実質成長率
▲ 0.7% 戦後最大のマイナス
内需寄与度
▲ 2.2% 戦後最大のマイナス
住宅建設
▲ 22.1% 戦後最大の減少幅
個人消費
▲
1.2%
24 年ぶりの減少幅
「戦後最大」という形容詞が目に付く。他にも、失業率、自殺率などは「統計開始以来
初めて」あるいは「最大」という形容詞が並ぶ。経済危機の主因である消費低迷は、短期
的な循環などでは説明できない歴史的、構造的要因であることは明らかである。
その歴史的、構造的要因は、消費を生み出す社会的欲望にある。欲望対象であった生活
様式の成熟にあると分析する。その理由は、後述するとして、消費を回復させるには、新
たな社会的欲望を創造していく必要がある。社会的欲望が消費を生み出すからである。車
や家電製品が購入されるのは、商品へのニーズがあるからである。ニーズが具体的な商品
やサービスへの欲求を創り出す。しかし、そのニーズが生まれる背景には、生き方や暮ら
し方という生活様式がある。生き方や暮らし方を志向する意識が社会的欲望である。社会
的欲望とは、人々が憧れ、模倣したいという生活様式への志向性である(図表1)。生活様
式とは、生活に必要な商品やサービスの選好と保有のパターン、行動様式のことである。
つまり、文化ということでもある。
図表1.ニーズ、欲求、欲望の整理図
概念
英語
対象
特徴
説明
ニーズ
needs
商品の便益、
機能、属性
顕在意識、
個人的
合理的な必要意識
欲求
wants
商品サービス
無意識的、
個人的
対象の欠如意識
欲望
desire
生活様式
無意識的、
社会的
生活様式への模倣、
志向性
明治の近代化以降、多くの人々が欲望したものは、イギリスに起源をもち、戦後のアメ
リカで開花した「中流の生活様式」である。西洋やアメリカに憧れていた内実は、そこで
の人々の豊かな暮らしぶり、すなわち、生活様式である。
消費低迷の歴史的次元での要因は、社会的欲望の構造が変わってしまっているところに
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ある。日本人が無意識下に欲望してきたものはこうしたモデルである。中流生活への共同
幻想を共有していたのである。
現在では当たり前の中流の生活様式は、明治から大正にかけてイギリスをモデルに成立
し、戦争期に頓挫し、戦後、新たにアメリカの中流生活をモデルに発展したものである。
明治以降約 130 年かけて 90%の人々が中流と自覚するまでに達成された。約四世代以上を
要した。フランスでは、数パーセントの富裕層しかもたぬオートクチュールブランドを中
高生が手にするまでに、中流生活は成熟した。消費不況の本質は、社会的欲望の対象であ
った中流生活がもはやその牽引力を失ったことにある。個人心理に喩えるなら、消費は失
恋状態にある。恋の対象を失い、嘆き、悲しみ、楽しかった過去を追憶している状態であ
る。不安とは、新しい対象が出現するまでの自我の無力感である。心を癒す時間と新しい
対象の出現を待つほかない。
中流意識が 90%を超えだす 1975 年頃に、この中流生活は成熟していた。しかし、その後
の約 20 年もこの中流生活への欲望が消費を牽引してきた。
80 年代、人々が憧れに向かつて、模倣し、隣との横並びを気にする消費は変わり始めた。
模倣、同質化欲望に代わって、中流のなかの差異化を求める消費へと変質した。
「大衆から
少衆、分衆へ」と言われる時代があった。差異化の基準は自分の趣味であった。ブランド
に拘る趣味もあれば、ブランドに拘らない趣味もあった。
それが、バブルによって、過剰な上方への差異化(高級化)消費を生み、90 年代初めの
バブル崩壊後は反転して下方への差異化(低価格化)を生むことになった。80 年代以降の
生活史を振り返ってみると、社会的欲望の対象であった中流生活の成熟に表層的な消費ト
レンドが加味されただけで、企業はなんら本質的変化への対応をしてこなかった事に気づ
く。新人類や団塊ジュニアといった世代交代が生み出す表層のトレンドに追随したマーケ
ティングが展開されただけである。
中流生活というひとつの生活様式は成熟した。ひとつは、それが達成されたということ
において、もうひとつは、もはや、中流生活は多くの人々にとっての欲望の対象ではなく
なった、ということにおいてである。同時に、保守することも、規制緩和による経済構造
改革、グローバル競争のなかにある企業のリストラによって、困難になってきた(図表2)。
3.中流生活の成立と消費システム
消費低迷は、新しい社会的欲望の対象、中流生活に代わる新しい生活様式が生まれてい
ないことにある。しかし、問題の解決策として、新しい生活様式を提案すればよい、とい
うような表層なトレンド対応ですむものではない。生活様式は、消費システムそのもので
あり、社会の構造であり、行動やスタイルといった文化であり、「時熟」を必要とする制度
だからである。
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この中流の生活様式の特徴は四つある。
1. 中流の生活様式の前提条件となっているのは三つである。すなわち、社会的分業
による安定した給与、性別分業による家族制度、職住分離の制度である。
2. 価値の中心は家族とその生活にあり、ライフステージ(ライフサイクル)という
人生の節目(就職、結婚、出産など)に従って、副次的な価値意識が変わる。
3.
生活に必要な財やサービスは市場に依存する。
4.
ライフステージによって、選好、所有する財やサービスのパターンが異なる。
現在の男性をモデルにとれば、地方で生まれ、都市で高等教育を受け、サラリーマンと
して働き、結婚をし、家族を形成し、職住分離によって郊外に家やマンションを持ち、住
居は便利な家電製品を揃え、休みには車で家族とでかける。主婦は、性別分業によって、
家事と子育てに専念する。もちろん、大正、戦前の時代には、家父長的な要素が強かった
り、選好、所有する財が異なることは明白である。また、戦前でこうした生活様式をもつ
ということはいかに先進的な価値意識、生活様式であったかも考慮すべきである。しかし、
基本的な四つの特徴は変わっていない。
この中流の生活様式はどのようなプロセスを経て成立し、成熟したのであろうか。中流
生活の成立と発展のプロセスの歴史から今後の可能性を導き出したい。日本の中流生活の
起源と歴史的過程を、東京を中心に研究してみるといくつかのことが確認できる(松田
(1998))。
1.
中流のモデルの起源は、大正時代にその原型が成立する。約5%と推定される。
2. この原型的な中流生活のモデルを形成している前提条件(安定した給与、性別分
業による家族制度、職住分離)は明治後期までに成立している。
中流生活に必要な三つの前提条件は、いずれも明治政府の政策と江戸時代の歴史的遺産
によって生み出されている。安定した給与生活は、政府の統治機構の整備(官僚制度)と
殖産興業化政策、工業化の結果である。職住分離は、政府の殖産興業化による都心部への
人口集積と鉄道の敷設及び私鉄の発達に起源をもつ。性別分業は、中流層の基盤となった
地方出身の武士層のもっていた家規範と西洋家族のモデルに起源をもったものである。
この三つが前提条件として成立したことによって、中流生活の財とサービスの選好、所
有パターン、行動様式が形成されてくる。どのように形成されていったのであろうか、い
くつかのポイントをあげてみる。
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1. 中流生活の所有財でもっとも大きなものは持ち家である。これは、安定した給与
生活によってローン制度が成立し、都市部が工業化によって過密化したことによ
る。偶然にも、この傾向に拍車をかけたのは、関東大震災であり、私鉄資本が「郊
外」を作り出し、「持ち家」という商品を開発したことによる。
2. 安定した給与生活、近代的な家族制度(法体系)によって、男女の自然的絆を核
とする家族が形成され、家事、子育てと買い物を専業とする主婦が誕生した。戦
後、この家事を軽減化、合理化するために多くの家電製品が普及した。
3. 鉄道の発達が、その乗り換え場所である新宿や渋谷というようなターミナルを作
り出し、不特定多数が集まる繁華街を作り出した。この繁華街で、不特定多数を
顧客とする路面型の近代小売業を生み出した。そのことによって、生活に必要な
商品を買い物するという行動様式が生まれた。
4. 大正期の銀座では、百貨店の成立と近代小売業が競合することによって、ショー
ウィンドーなどの売り方革新による顧客吸引競争が生まれ、多くの不特定多数の
人々を吸引した。そのことによって、「文化的な生活」までが提案された。同時に
次々と新しいものに飛びつく、消費のイノベーター(新しもの好き)が生まれ、
模倣欲望が創造されていった。
5. 衣の変化(洋風化)は、政府による合理的活動を目的とする学童の洋装化が模範
となり、道路が舗装され靴がはけるようになったこと、盛り場が誕生したことに
よる洋装機会の誕生によって促進された。
6. 食の変化(洋風化)は、外国の調理方法(焼く、揚げるなど)が導入され、燃料
革命が生まれたこと、外食メニューが内食メニューに取り入れられたこと、また、
輸出入の拡大によって、食材料が多様化したことによって波及的に進んだ。
これらの要素のひとつひとつが累積して、総合として、中流生活の商品・サービスの選
好、所有パターンが形成された。
外生的要因と商品・サービスのイノベーション、商品・サービスのイノベーションによ
る新しい行動様式の誕生、その行動様式の生み出す新しい売り方のイノベーション、新し
い売り方が新しい欲望を生み出す、というように、外生的要因と供給者の商品や売り方の
イノベーション、生活者の欲望が複雑に、累積的、波状的に組み合わされて、ひとつの中
流の安定的な生活様式が生み出された。
中流の生活様式は、明治後期から大正、昭和初期にかけて形成、確立されたものである。
同時に、これは長期的で安定的な「消費システム」の確立でもあった。生活様式の前提
条件である安定した給与、性別分業による家族、職住分離による持ち家が外生的条件のも
とで確立し、その前提条件が財の選好パターンを生み出す生活様式を作り出し、生活様式
への社会的欲望が再びその前提条件(職業選択、結婚、耐久消費財購入のパターン)を再
生していくという循環的なシステムが確立したのである。
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戦前は、この欲望は押し込められ、戦後は、アメリカの中流生活を模倣しながら、東京
から地方へ、少数(5%)から多数へ、手工業的商品から大量生産商品へと高度にシステ
ム化された。中流生活は、消費のパターンを変えながらも、社会的欲望の対象とされ、長
期的に安定した消費システムの構造を支え続けてきた。
図表2.中流生活の成熟プロセス
中流生活の基盤形成期
相対的安定期
昭和恐慌
断続期
復活期
人並み・模倣欲望期
水平差異期
戦争期間
戦後復興
高度経済成長
安定成長
上方差異期 下方差異期
バブル経済
平成不況
中流化の程度
中流意識80%
第1回経済白書
「もはや戦後
ではない」
日中戦争開始
昭和金融恐慌
オイルショック
終戦
1937年
1920
(大正9年)
1930
(昭和5年)
1945年
1940
(昭和15年)
株価最高値
プラザ合意
1956年
1950
(昭和25年)
1960
(昭和35年)
1973年
1970
(昭和45年)
1985年
1980
(昭和55年)
1991年
1990
(平成2年)
注) 中流化の程度:全就業者における中流階級構成比(人数ベース:推計)
推計方法:
中流階級を大学卒業、短大・高専卒業、高校卒業した労働者と仮に定義する
1950∼1990年までは大学卒業、短大・高専卒業、高校卒業者の合計と就労者数(労働力人口)で算出 昭和25年においては、旧学制と現在の学制を照らしあわせて算出
1920∼1940年までは上記と同様の指標がないため、雇用主数から第1産業(農業と水産業)を引き、官吏・軍人の数値を加えた数字と
全集業者数で算出
出所:総務庁統計局 「国勢調査」 より算出
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現在
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4.生活様式の進化
現代の中流生活が、歴史 図表3.生活様式の変化プロセス
的様式として、どのように
商品売り方
イノベーション
成立していったかを概観
してみた。ここから、生活
生活様式
様式の変化プロセスをみ
てとることができる(図表
3)。
外生的条件
・歴史経路
・自然条件
・政府施策
基本条件
・安定給与
・性別分業
・職住分離
商品・サービスの選考、
所有パターン
新しい商品・売り方
への欲求
1. 鉄道など政府の制度補完的政策や法体系が、偶然的な契機になって、歴史的条件
とともに中流生活の前提条件を形成している。
2.
外的な偶然が契機になって、商品、売り方などのイノベーションが生まれている。
3. ひとつの商品や売り方のイノベーションが、別の新しい商品、売り方などのイノ
ベーションに連鎖している。
4. 新しい商品、売り方などのイノベーションが新しい商品やサービスへのニーズや
欲求を生み出している。
5. 新しい商品やサービスの採用が次々と重なって生活全般に波及し、商品・サービ
スの選好、所有パターンを形成している。
補足して強調すべきはふたつある。ひとつは、生活様式が成立するうえで政府などの施
策が、外生的条件となって、前提として取り込まれ、生活様式というシステムの中にうま
く取り込まれている。この意味で、政府の補完的政策の重要性が指摘できる。生糸輸出を
目的とした鉄道の敷設が、その目的とは異なる人々の「移動革命」を生んだのである。そ
のことが、職住分離を可能とし、郊外を成立させ、家族制度を生んだ大きな起因になって
いる。同時に、関東大震災という自然的条件も大きく作用している。外生的条件とは、政
府の制度補完的政策と自然的要因である。もうひとつは、生活様式の普及スピードの早さ、
連続性、波及性である。衣の洋装化は徐々に生まれたものではない。下駄、草履から靴へ
と転換するのには、道路の舗装が必要であった。この瞬間に、一挙に洋装化が進み、季節
によってトレンドが生まれるという現在の消費の淵源が生まれる。これは、「変わるべくし
て変わる」(今西錦司)という表現にふさわしく、一挙に変化している。ひとつのトリガー
(引き金)があれば「生活革命」が起こるのである。中流生活の成立のトリガーをひとつ
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あげるとすれば、それは「鉄道敷設」である。これは計画者が予想もしなかった人々の移
動革命を起こした。その移動革命が生活革命に繋がったといっても過言ではない。
生活様式の進化プロセスを時間のスケールでみれば次のようなものになる(図表4)。
図表4.生活様式の転換サイクル
準備期
準備期
モデル
モデル
競合期
競合期
淘汰
淘汰
波及
波及
中流生活の
過渡期
過渡期
モデル
モデル
競合期
競合期
準備期
準備期
転換プロセス
次世代の転換
プロセス(予測)
淘汰
淘汰
波及
波及
約80年
約40年
約20年
約40年
約20年
中流生活
1940年
約40年
1980年
次世代生活様式
2000年
2020年
2060年
1. 中流生活の基本条件が成立する準備期間に約 40 年を要している。
2. 生活様式のいくつかの典型モデルが生まれるのに 20 年を要している。
3. 典型モデルが淘汰され、収斂し、拡張され普及していくのに 20 年を要している。
江戸時代には、丁稚奉公や「棒手振り」(物売り)、丁髷と着物、長屋住まいに代表され
る町人的なものと武士的なものが江戸的生活様式を形成していた。その生活様式が、明治
維新によって成立した政府の近代化政策によって、新たな外生的条件を与えられ、これま
でとは異なる生活様式が生み出される。江戸的な遺産の上で、選択肢として複数の可能性
があった。いくつかの分岐があった。現に、大正期には、イギリス型の労働者―資本家(ブ
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ルジョア)モデルも有力であった。しかし、社会的欲望が淘汰圧力となって、中流の生活
様式へと選択肢を収斂させたことは歴史が証明するところである。生活様式をこのような
転換プロセスとみると、生活様式はひとつの進化として分析できるのである(図表5)。
図表5.生活様式の転換サイクル
進化説
進化の主要因
進化の単位
環境の影響
ダーウィン進化説
・自然淘汰と変異
・個体
−
ネオダーウィズム
(総合説)
・突然変異と自然淘汰
・地理的・生理的隔離
・個体
・重視する
今西進化説
・棲み分けによる分岐
・種(種社会)
・重視しない
・社会的欲望による淘汰
・提供システムのイノベーション
・商品・サービス
・政府の制度補完的政策
・歴史的経路・自然災害など
生活様式の進化
5.次世代の生活様式
この仮説的な整理と中流生活は 80 年代から成熟が始まっているというふたつのことを前
提にするならば、これからの生活様式について三つのことが推理できる。
ひとつは、中流生活に代わる新しい生活様式は、2000 年頃まで幾つかのモデルが提示さ
れ、その後の 2020 年頃までに、淘汰、収斂されていくと予測されることである。これはも
ちろん単純な当てはめに過ぎない。現代社会の変化のスピードは過去とは比較にならない。
しかし、生活様式という比較的安定的な構造をもった「長期波動」には当てはまるかもし
れない。それは中流生活の基軸となっている家族制度が、家族の崩壊と指摘されながらも、
家族数や心理的絆といった側面では不変的な構造をもっていることからも窺い知ることが
できる。だとすれば、現代は、大正時代と極めて似た環境にあると考えることができる。
ふたつめは、90 年代は、成熟した中流生活と新しい生活スタイルの「過渡期」にあると
いうことである。いわば、成熟した中流生活と新しい生活スタイルの芽が混成している状
況にある。大正時代と類比させるなら、銀座に洋装の「モガ」、「モボ」と呼ばれた現代の
中流生活に繋がるスタイルが生まれ、同時に、地方では江戸時代と変わらぬ農業を中心と
した生活様式があり、東京の一部特権層ではイギリスのブルジョワ層に似た生活様式と新
しく登場した労働者の生活様式があった。一方で、過去のモデルがあり、他方で、階級モ
デルがあり、中流生活モデルがあった。当時、中流生活を享受できたのは、わずか5%と
推定される。これらが混成し、競合していたのである。
三つめは、トリガー(引き金)が見つかれば一挙に変わる可能性をもっているというこ
とである。生活様式の進化は、偶然性を契機にもつ複雑な相互作用をもつ過程である。ま
た、もはや、欧米、特に、階級社会化が進行するアメリカの生活スタイルが模倣対象にな
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るとは考えられない。このことを前提とするならば、新しい生活様式がどのようなものに
なるかは「予測不可能」である。しかしトリガーが引かれれば一挙に変わる、ということ
である。情報通信技術の発展が、新しいイノベーションになることは間違いないが、それ
が新たな社会的欲望として、どんな生活様式を生み出し、何に収斂していくかは予測でき
ない時期にいる、ということである。このことは、現代が「過渡的な時代」だという認識
をもつことの重要性を示唆している。新しい生活様式が予測不能な「時代拘束状況」にい
るということである。消費、欲望は、見えないという認識と、見極めようとするが見えな
いという認識の差が、現代の戦略を変えるからである。同じように見えなくても、打つ手
が異なってくる。
これら三つのことを総合して、これまでの中流生活がどう変化し、新しい生活様式がど
のように形成されてくるかについて三つの説が考えられる。
1. 中流生活が進化のメインストリームでありながら、基本構造を変えずに消費パタ
ーンだけが変化していく。(中流主流説)
2. 中流生活の基本構造が変化し、異なる生活様式に分化し、淘汰されながらいくつ
かに収斂する。(分化説)
3.
中流生活の生活様式からまったく別の生活様式へと一挙に進化する。
(非連続説)
「中流主流説」は、もっとも穏当な生活様式の進化の考え方であって、80 年代以降、中
流生活が成熟しながらも継続してきたことの延長に未来もあるという考え方である。
「分化
説」は、性別分業、家族、働き方、職住分離などの中流生活の基本構造に変化が及び、中
流生活がいくつかの生活様式に分化し、社会的欲望の進化圧力を受けながら収斂、淘汰さ
れていくという説である。「非連続説」は、何らかの変化が一挙にトリガーになって、中流
生活とはまったく非連続な生活様式に変わるという考え方である。恐竜絶滅ならぬ中流生
活絶滅説である。
江戸的な生活様式から中流生活への転換は、非連続説に近い分化説に従って転換したよ
うに考えられる。これからの生活様式がどうなるか、予測不可能な時代拘束状況のなかで、
三つの幅で捉えておくことだけは可能である。
6.社会的欲望の現在
社会的欲望は大正期に生まれた。鉄道がターミナルを作り、不特定多数の人々が集積す
る場として繁華街ができ、不特定多数を相手に商売をする近代小売業が生まれ、商業集積
が誕生した。近代小売業は、不特定多数の人々の足を止め、店内に吸引する仕組みとして、
ショーウィンドーという売り方のイノベーションを行った。その起源は、大正期の銀座で
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あった。この銀座で、社会的欲望は生まれた。新しいファッション、新しいスタイルが、
欧米から取り入れられ、銀座で、不特定多数の人が不特定多数に「見せびらかす」欲望、
「顕
示消費」が生まれた。個々の商品、個々のスタイルが欲求の対象となり、無意識下に、全
体的な生活様式を志向する社会的欲望が誕生した。消費は、個々の商品へのニーズと欲求
だけでなく、生活全体としての生活様式への欲望を包摂するようになった。表層的なファ
ッショントレンドが欲求されている背後に、生き方や暮らし方を求める社会的欲望が組み
込まれたのである。明治以降の日本が、無意識下にもっていたものは中流生活への社会的
欲望であった。
現在の社会的欲望は対象喪失の状態にある。対象を失った社会的欲望はどのような結果
をもたらすのだろうか。消費低迷が結果であることは言うまでもない。
仮説的に、現在の社会的欲望について三つのことが指摘できる。全体への欲望エネルギ
ーが断片的な対象に過剰に供給される(欲望の断片化)。ふたつめは、欲望水準の低下であ
る。具体的な商品やサービスへの欲求が低下し、「止むに止まれぬ」、
「何が何でも」という
水準には到達しないということである。購入を見送ったり、待機になる現象である。三つ
めは、欲望の浮動化、移ろい易さ、変化のし易さである。欲望の対象がコロコロ変わる(図
表6)。
図表6.社会的欲望の変化の市場へのインパクト
社会的欲望次元の変化
欲望の断片化
欲望の断片化
市場へのインパクト
ニーズの複峰化
多数化
セグメント内同質化
欲望の浮動化
欲望の浮動化
欲望水準低下
欲望水準低下
多様性
セグメント間対立化
対象喪失
対象喪失
アクセスニーズ
ニーズの拡張
総合化・組み合せ
発見探索ニーズ
(1)欲望の断片化
欲望は、個人の生きがい、生に関わる全体的な性格をもったものである。欲望の全体性
は、フロイト理論を引用するまでもなく、父親の全体像から形成され、現実認識とともに
次々と別の対象に転移していく。欲望の対象には反発であっても共鳴であってもかまわな
い。その対象が、自分の欲望形成に大きな影響を与えているという点では同じである。欲
望の全体性とはこの具体的な対象の存在によって保証される。かつては、テレビドラマ、
映画で活躍するスター、身近なところでは、自分の所属する学校や会社などの集団での具
体的人物がそうであった。且つ、その対象が多くの社会的共感を得ていたことが模倣対象
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としての証拠であった。
欲望の対象が全体性を持ち得ないということは、欲望の対象が部分になるということで
ある。生き方、暮らし方、生活様式という生全体への欲望ではなく、アニメ、フィギュア
などの対象に倒錯的に、過剰に没入してしまう。80 年代から始まった「オタク」化現象は
その象徴として捉えることができる。
(2)欲望水準の低下
欲望は精神のエネルギーでもある。このエネルギーを不変だと考えるならば、断片化さ
れた部分に供給されたエネルギーの残りの部分はどこに供給されるのだろうか。ひとつは、
ある部分には過剰に提供されるということ。もうひとつは、ある部分には過小に提供され
るというように考えられる。過小に提供された対象が、欲望水準の低下である。
食べることにまったく無頓着な人がいる。逆に、異常に拘る人もいる。無頓着な人は別
の対象(例えば、アニメ)に異常に拘っている。食べることに対する欲望水準が低いので
ある。欲望水準が低いので、個々の商品・サービスへの具体的な欲求が、購入アクション
を起こすまでに至らない。「生活にはそこそこ満足しているけど何かが欲しい」というのが
現在の欲望の水準である(図表7)
。
図表7.欲望水準の低下がもたらすオタク化とニーズの拡張
特定領域に過剰な欲
望が注がれ、専門化、
マニア化、オタク化が
進む。
欲望のエネルギーは、個々の商品
への欲求とその水準の乗法(面積)
によって表現され、その全体は生活
様式への欲望となると仮定する。
欲望対象ではあるが、
購入意欲が生まれな
い。ニーズの拡張が
生まれる。
生活様式全般への欲望
欲望の水準
購入水準
購入水準
過剰対象
個々の商品サービスへの欲求
欠落対象
個々の商品サービスへの欲求
過剰対象
水準未満
個々の商品サービスへの欲求
(3)欲望の浮動化
どんなネクタイを買ってもいつも同じ様な物になる。こういう経験は多くの人が体験す
る。スーツ、靴、たくさんのなかから選択してもいつもそうなる。しかし、また、欲しく
なる。その結果が、似たような対象の山、羅列でいつまでも充足されない。こうした購買
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行動は無意識下で、ネクタイやスーツに象徴される失われた何かを求めている。その失わ
れたものとは幼年期の母親像であったりする。その欲望を別の対象に転移させて代理的満
足を得ようとしていると解釈できる。しかし、本当に求めている対象は別のものだから次々
と対象を変えていく。これと同じ現象が欲望の浮動化である。
社会的欲望の対象は、生活様式であり、生きるという全体への欲望である。その対象が
魅力なく、もはや、喪失されている。失われた対象をさまよい求めていかざるを得ない。
次々と模倣対象を変えていく。なんの脈絡もなく次々と転職を重ねていく人々の群れが象
徴することである。
7.市場の分裂化―多様性の高度化
社会的欲望が、生活様式という全体的な対象を喪失することによって、欲望の断片化、
欲望水準の低下、欲望の浮動化が生まれている。これが、無意識下の社会的欲望に起こっ
ている変化である。社会的欲望の変化が、商品・サービス市場にどのようなインパクトを
与え、どのような市場特性を生み出しているのだろうか。それは市場の分裂化であるとし
て捉えられる。
中流生活を物質及びサービス面から支えている消費財商品は約 20 万と言われている。生
産財を加えるとたいへんな数である。江戸時代が数十という物資しか商品化されていなか
ったことと比べると膨大な数である。最大では、この数だけ市場が形成されていることに
なる。生活者は、この市場に買い手として参加したときに消費者になり、売り手として参
加したときに働き手となる。生活者は常に、買い手と売り手へと常に分裂させられている
のが、現代社会の特徴でもある。
市場は、代替可能な商品・サービスによって形成されている。参加者は、その商品・サ
ービスにニーズをもつ消費者とそれを供給する流通業者、メーカーによって構成される。
生活者が社会的欲望をもち、生活様式を選択し、生活様式への欲望を背景に、その商品・
サービスへの欲求とニーズを形成する。現代社会の消費システムはこのように形成されて
きた。しかし、社会的欲望がその対象である生活様式を失い、断片化、水準低下、浮動化
されることによって、現代の商品・サービスの市場はその性格を異にしてくる。市場の分
裂化である。分裂化とは、顧客のニーズがいくつかのセグメントに分かれる傾向を示すこ
と(複峰化)
、商品・サービスへのニーズだけでなく、購入地域や購入先などへのニーズへ
と拡張されること(拡張化)、そして、変化スピードが激しくなることである。
(1)ニーズの複峰化
市場を商品・サービスへのニーズの束として捉えると、ひとりひとりのニーズは幾つか
の因子に集約され、幾何学的な空間にプロットできることが知られている。このように市
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場を捉えると、市場は大きくふたつのタイプに分けることができる。ひとつは、ニーズが
富士山のように峰(セグメント)がひとつで大きな裾野をもっているような「単峰型」市
場である。製品の機能や属性が、顧客に選別することが困難な市場が、通常こうした形状
をもつ。典型的な市場は、ブラインドテストではブランド識別率が極めて低いビール市場
である。
もうひとつは、ニーズが八ヶ岳のようにいくつも峰(セグメント)があって、その峰ご
とに裾野が広がっているような「複峰型」市場である。はっきりニーズが異なっている市
場である。ソフトドリンク市場が典型である。これには、人によってニーズが異なる側面
と、ひとりの人のなかに、状況によって異なるニーズがあるということを含むものである。
欲望の断片化は、市場に対して、複峰化への圧力として作用する。その結果として、市
場を構成するセグメントの複数化をもたらす。同時に、セグメント内の性格とセグメント
間の性格を変質させる。
セグメント内では、極めて高い同質化、専門化が生まれる。欲望の断片化は、価値意識
をゆるがさざるを得ない。生活全体への志向性が喪失されているのだから、現在の価値意
識の選択は困難であり、仮の価値意識をもちえたとしても、それに根拠を与えるトータル
な信念を保証するものがないからである。それが、不安となって現れる。不安を解消する
ためには、開かれた社会へとオープン化するのではなく、自閉化していかざるを得ない。
ノイズを遮断することによって、もっとも心理的に安定した環境をつくりだせるからであ
る。市場を構成するセグメントは、
「タコ壷」のように自閉し、そのなかでは極めて同質性
が高く、専門化されたものになる。現在の音楽シーンがその典型である。ミリオンセラー
が数多く出現しているにも関わらず、世代共通のヒットは皆無に等しい。「GLAY」に代表さ
れるビジュアル系バンドのファンはビジュアル系バンドについて圧倒的な情報量をもち、
無名のバンドを追いかける。
一方で、セグメント間では、その異質性が高まる。逆に言うと、セグメント間の同質性
は極めて低くなる。異質性が高いというよりも、むしろセグメント間の対立軸が鮮明にな
る。先に挙げた音楽市場の例では、ビジュアル系セグメントは、非ビジュアル系にまった
く無関心で少々の音楽ファンなら知っていることさえも知らない。欲望の断片化が、市場
にもたらす変化は、複峰化(セグメントの多数化)、セグメント内の同質化、セグメント間
の対立化である。
(2)ニーズの拡張
欲望の水準低下がもたらす市場へのインパクトは、ニーズの拡張である。
購入というアクションを起こすためには、欲望水準がある一定の水準を超すことが前提
として想定できる。欲望のエネルギーが、生活様式全体への欲望と、そこから生まれる商
品・サービスの個々への欲求の積、すなわち「面積」によって表現できるとする。
これを「公準」とすると、ある商品やサービスの領域では、アクションを起こすだけの
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欲望水準まで及ばないことになる。そのための補償としてニーズの拡張が起こる。個々の
商品・サービスへの欲求水準を組み合わせることによって、全体としての欲望水準を上昇
させることである。商品・サービスの組み合わせへのニーズが生まれると同時に、購入そ
のものへとニーズは拡張する。商品・サービスにどのようにしたらもっとも効率的にアク
セスできるか、自分の欲しいものを見つける発見的面白さを期待するということに拡張し
ていく。どんな商品・サービスをどのように入手したいか、ということが「バンドル化(一
束化)された」ニーズとなる。生活に必要な商品を総合的に品揃えする「良品計画」、売場
に商品を「埋め込む」と表現する「マツモトキヨシ」の品揃え、「ジャングル売場」と呼ぶ
「ドンキホーテ」は小売段階においてこうしたニーズの拡張化に対応して成功している。
社会的欲望の変化は、市場にふたつのインパクトを与えている。ニーズの複峰化であり、
同時に拡張である。複峰化は、市場を構成するセグメント数を増やし、セグメント内の同
質化を高め、セグメント間を対立化させている。ニーズの拡張は、商品・サービスへのア
クセスニーズを高め、商品・サービス間の組み合わせや総合化に及び、より発見的なより
探索的なニーズへと広がっている。これらの変化を総合して、市場の分裂化と特徴づける
ことができる。市場の分裂化への総合的な答えは、新たな社会的欲望の対象である生活様
式を提示することである。
しかし、現在が予測不可能な時代拘束状況にあり、新しい生活様式のモデル提示が実験
的にしか可能でないことは、繰り返すまでもない。その実験が繰り返されるなかで、複雑
な分裂市場に対応しなければならない。
分裂市場は、70 年代の大衆市場とも、80 年代から現在までの差異化市場とも異なる。大
衆市場は、中流生活がまだまだ魅力があり、人並みの生活に必要な商品・サービスを欲求
する市場であった。差異化市場は、中流生活に飽きながらも、商品・サービスに少しの差
異化を求め、他者との趣味を競う市場であった。それが、テイストであったり、他者が買
えない高級という基準であったり、他者より安く買えたという自慢であった。分裂市場で
は、中流生活の共同幻想は破れ、いくつかのモデルが模索されながら揺れ、社会的欲望の
対象喪失状態にある。市場は先にみたように極めて分裂化し、多様化している(図表8)。
分裂市場は極めて高度に多様化した市場である。市場多様性を、市場を構成するセグメ
ントの数と欲望の対象となる生活様式の積で定義してみる。社会的欲望の対象である生活
様式と市場のセグメントによって、マーケティングアプローチが異なるとみなすのである。
市場多様性は、市場にアプローチするのにどれだけの異なるシステムが必要かをしめすも
のである。商品に同じニーズをもっていても異なる生活様式を志向しているのだから、行
動様式が異なり商品の使い方や購入に期待していることが違う、という仮定である。もち
ろん、単純な抽象であることは言うまでもない。これを数式化すると、以下のようになる。
市場多様性(MD)=市場セグメント数(MS)×生活様式(LS)
但し、MS ≧ 1、LS ≧ 1 とする。
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70 年代の大衆市場では、MSは「1」、LSも「1」、従って、市場多様性は「1」とな
る。80 年代から現在までの差異化市場では、MSを仮に「3」、LSを「1」とすると、多
様性は「3」となる。現在の市場は、市場セグメントの数が増えている可能性があるとと
もに、生活様式そのものがゆらいでいる。MSは「3」以上、そして、LSも「2」以上
の数値をとっていると考えられる。仮に、「2」としてみる。これは、ひとつの中流生活へ
の魅力度が半分になったとも、これからふたつに分化するとも解釈することができる。す
ると、市場多様性は、「6」以上ということになる。70 年代との比較で、6倍以上、80 年
代との比較で、2倍以上ということになる。
これに、欲望の浮動化、市場の変化スピードを加えると、市場多様性は極めて高度化し
ていくと考えられる。
この市場多様性が、マスブランドを壊し、大手組織小売業のストアロイヤリティを壊し、
他方で、新しい市場チャンスを創造している。知られない数多くのヒット商品を生み、ス
トリートでブランドが生まれ、ローカルでユニークな企業が躍進し、高収益をあげている。
図表8.分裂市場への転換
70年代大衆市場
70年代大衆市場
生活様式
商品市場
中流生活
80∼96年差異化市場
80∼96年差異化市場
生活様式
商品市場
中流生活
96∼2010年分裂市場
96∼2010年分裂市場
生活様式
中流生活
商品市場
対
立
対
立
中流生活が社会的欲望 の対象であり、人並みの
商品を求める市場
中流生活が社会的欲望 の対象であり、商品に差
異化を求める市場
中流生活が社会的欲望の
対象のひとつであり、商品
に突然変異を求める市場
8.分裂市場への対応の鍵
分裂市場が企業に求めているものは何か。それは多様性である。言い換えれば、提供で
きる異なる選択肢を増やすことが要求されている。
なぜ、選択肢を増やすことが利益に繋がるのだろうか。
顧客から見れば、単純な選択肢の増加によって、選ぶことが可能になる。選ぶというこ
とを通じて、自分によりぴったりあったものを選択できると同時に、その過程を通じて、
自分らしさを発見、学習できるからである。多くのなかから選択すればするほど、選択の
豊かさは高くなる。しかし、ある限度を超えると、選択の負担、苦労という購買コストが
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かかることは言うまでもない。選択という過程を通じて、新しい商品・サービスが淘汰さ
れると同時にその選択過程を通じて、生活様式が収斂されていくのである。
ひとつの選択に新しい生活様式のヒントがあり、それを通じてしか、企業にも、生活者
にも次の生活様式が見えてこないのである。多様性を求めるということは、中流生活に代
わる新しい生活様式への代替欲望である。
企業からみれば、市場が求める多様性に対応することによって、競争優位を多様化でき
ることになる。量産(コスト)優位、技術優位が収益に結びつく基盤的な競争優位である
と思われてきた。ところが、アメリカや日本の高業績企業の分析を通じて、収益に繋がる
競争優位はもっと多様性をもっていることが明らかにされてきた。市場の多様性に対応す
るとは、収益の源泉である競争優位を拡げ、より持続的なものにできる利益があるのであ
る。地球上の様々な環境とその激変に対応できるように生物が 150 万種という多様な生物
を生み出してきたのと同じ利益がある。
市場多様性への対応のもっとも重要な鍵は、どんな多様性を提供できるかということに
ある。ここでは「ひとりよがりの罠」が待ち受けている。品揃え数、扱い小売店数、広告
露出量といった量的な多さでは圧倒的な強さをもつが、顧客からは「ひとつ」にしか見え
ないという罠である。これは企業の思い込みの部分ももちろんあるが、多様性の基準が異
なることにある。
市場の求める多様性とは、これまでとは異なる商品提供のシステムである。多様性の基
準とは、これまでと同じシステムで提供されるのか、どうか、である。同じ提供システム
で、いくら商品の品種数を誇っても、選択肢を拡大したことにはならない。商品提供の川
上から川下まで一連の垂直システムの組み換えが要求されている突然変異的多様性である。
業界再編が活発に志向されている現在、この組み換えが大きな市場機会を生んでいる。
アメリカでは、この組み換えを投資家達が、自分たちの投資利益にかなうように機能させ
ている。極めて、大胆な業界を越えた組み換えが遂行できるようになっている。アメリカ
のソフト系のベンチャー企業では、ひとつの技術を梃子に企業化し、ある程度育成した段
階で、マイクロソフト社に売却し、財産を築くことがひとつの成功のシンボルになってい
る。マイクロソフト社は、これまでとは全く異なる技術を手にし、売り手は財産を形成で
きるのである。この連結役を担っているのが、ベンチャー企業などへの投資家である。市
場多様化への最大の鍵は、システムの異なる多様性をいかに提供できるかである。
政府あるいは、公的セクターができることはふたつある。ひとつは、次代の生活様式に
相応しい制度、仕組みを外生的条件として提示していくことである。かつての、鉄道敷設
が生み出したような市場創造力のある新しい生活様式という制度を補完していく制度を整
備していくことである。現在なら情報通信に関するインフラであろう。もうひとつは、こ
うした新しいインフラを利用して生まれる突然変異的な商品・サービスが生まれ易い環境
なり、支援制度を準備していくことである。短期的には、長期の収入―支出構造の改善で
あることは言うまでもない。
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9.進化的マーケティング
分裂市場に対してどんなマーケティングを展開すべきなのか。多様性の提供、異質な選
択肢の提供システムがその鍵を握ることは言うまでもない。もうひとつの鍵は、市場多様
性に対応する発想の転換である。
進化的な発想を組み入れていく必要がある。なぜなら、現在の生活様式、市場の多様性
は、進化的な発想によってしかみえないからである。逆に言うと、進化的な発想をもたな
いと現在の市場、生活様式はみえないからである。それが、現代生物学が教えるところで
ある。生活様式の歴史的な分析と解釈の集約として、幾つかの教訓を引き出すことができ
る。
(1)時間の多層性の認識
トレンドにはライフサイクル(寿命)がある。プロダクトにもライフサイクルがある。
ブランドにもライフサイクルがある。そして、生活様式にもライフサイクルがある。マー
ケティングが扱う時間は極めて多様で多層である。トレンドは1年ももたない。プロダク
トは5年、ブランドは 10 年、生活様式は片道 40 年。この多層性の区別と認識から発想を
始める必要がある。多層な時間の切り口から市場を分析していくことが第一歩である。
(2)トレンドを見破る力
生活様式という約 40 年というスパンで変動している波動を分析してみると、消費トレン
ドの表層性がよく見えてくる。大正期、銀座に出現した「モガ・モボ」と言われる行動の
スタイルは表層トレンドであった。同様に、バブル期の「高級化」も、バブル後の「低価
格化」、「清貧の思想」も表層的なトレンドであった。「売り」のためにはトレンドにのせて
いくことは重要である。しかし、生活様式の基軸がどのように変化しようとしているのか、
この分析にもっと軸足が置かれねばならない。
(3)計画の短さ
生活様式が約 40 年というスパンで動いたのに対し、企業のプランニングシステムは1年
で計画される。この落差は大きい。たとえ、中長期計画が作成されようが、せいぜい5か
年計画までである。問題は、長期の構造的変化に対応していくことにある。企業のプラン
ニングシステムでは構造的に対応できない。膨大な時間とコストをかけて、予測と計画を
立てるしかない。長期構造変動の時間の長さと計画の長さの乖離は、プランナーのアジェ
ンダ(構想)と知識によって埋めるしかない。
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(4)近代小売業の揺らぎ
近代小売業の成立は案外歴史の浅いものである。その起源を探ってみると、人々の生活
様式の基軸となっている主婦、移動手段、繁華街等の要因によって成立している。業態が
変動したり、流通が変動するのは当たり前のことである。生活様式が揺らいでいるなかで
その業態が安定するのは、ある程度、生活様式が安定的な構造をみせはじめてからである。
もっと長いスパンで、「激変」に対応していく必要がある。
(5)トリガーをみつける重要性
何が生活様式を変えるトリガーになっていくか。これが見つかれば、芋蔓式に生活様式
が変わる。それはひとつの商品・サービスに違いない。パソコン、情報通信、金融技術商
品などがトリガーの可能性をもっている。これらの商品・サービスの分野では、トリガー
としての可能性を追求すべきである。大正時代には「移動革命」がそうであった。現在の
市場では何がその役割を果たしうるのか。すべての商品・サービスが可能性をもっている
と思われる。新商品開発のシーズがどれだけ生活様式を変えられる可能性があるか、その
可能性の大きさが、突然変異レベルなのか、あるいはマイナーな改良品にすぎないのかを
見極めなければならない。
(6)連鎖、波及の取り込み
業界を越えて生活様式は変わる。この当たり前のことが、商品・サービスが専門化する
と難しくなる。大正時代に道路が舗装されて誰でも土足で入れる店舗ができた。なんと当
たり前で単純な事実である。舗装されて、靴がはけるようになって、洋装化が進んだ。一
商品・サービスからのマーケティングではなく、生活をカバーしたマーケティングが必要
である。東京の昼と夜の移動距離はまったく異なる。昼間の交通渋滞のせいで、夜は昼の
5倍移動できる。小売業からみれば、夜に店を開店すれば商圏は5倍に拡大できることに
なる。
「ドンキホーテ」の発想である。商品・サービス間の連鎖と波及を考えねばならない。
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10.六つの戦略革新
進化的な発想転換のうえで、マーケティングのスキルとして六つの戦略の革新が重要に
なってくる(図表9)。
(1)顧客セグメントの再理解
分裂市場を捉え直していくためには、これまでと異なる顧客理解とスキルが必要になる。
顧客ニーズの複峰化、拡張を踏まえ、顧客が商品・サービスにどうアクセスするかに重点
を置いたセグメンテーションが必要になる。そのうえで、セグメントの再選択を行う必要
がある。
(2)多様な競争優位の再定義
差別化優位とコスト優位がよく知られている競争優位であり、収益の源泉である。しか
し、分裂市場下でももっと多様な収益に繋がる競争優位がある。コストを増やさない多様
な競争優位の選択と再確立が必要になる。
(3)商品戦略の革新
多様性に対応すべきは、まず、商品数を削減することである。そのうえで、顧客に認め
られる商品選択肢を増やす必要がある。しかも、突然変異的な商品を創造し、商品を多様
化させていく戦略が必要である。分裂市場下で成功している商品戦略は何かが定義され明
らかにされる必要がある。
(4)ブランド戦略の革新
分裂市場はブランドを短命にし、破壊する。ブランド破壊が進行するなかでいかにブラ
ンドをロングセラー化するかの戦略である。
(5)流通戦略の革新
激変する流通チャネルに対応して、系列チャネルの再活性化と同時にマルチチャネル化
が進められている。かつて系列チャネルが弱かった企業が売れるチャネルに機動的に対応
して強くなった。流通戦略が再構築される必要がある。
(6)営業戦略の革新
多様な商品と多様なチャネルを結び付け、営業現場で具体的に競争優位を構築していく
必要がある。現場で勝つスキル、仕組みを明確にして営業革新を進める必要がある。その
鍵は、
「リアレンジ(組み換え)機能」にある。現場優位の営業力を再構築する必要がある。
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図表9.分裂市場への転換
経済の
グローバル化
情報金融化
マルチメディア化
情報化
経済構造改革
企業リストラ
知られざるヒット
PLCの短縮化
ひとり勝ち
販売コストの増加
未来への不安
新しい生活様式
への過渡期
差異化市場から
分裂市場へ
多様性の要求
競争優位喪失
売上減少
利益減少
社会的欲望の
対象喪失
欲望の断片化
組織小売シェアアップ
業態の多様化
営業コストの増加
チャネルコンフリクト
ブランド力低下
【顧客の利益】
発見の面白さ
選択の豊かさ
生活提案接近
多様性優位
多様性優位
進化的発想転換
進化的発想転換
マーケティング革新
マーケティング革新
アクセス
セグメント
戦略
・分裂市場分析
・アクセス軸
・有効セグメント
マルチアイテム
ブランドロングセラー
戦略
・選択巾拡大
・突然変異型
・ブランド再生
プロフィット
戦略
・非効率構造
・22収益モデル
・モデル選別
マルチチャネル
戦略
・多元集中販路
・最適ミックス
・推進組織転換
現場優位の
営業戦略
・現場優位性
・優位モデル
・リアレンジ機能
【多様性の豊かさ】
中流生活の成熟
ライフステージ多様化
買い物コスト増加
量的市場支配力
の低下
商品選択肢
チャネル選択肢
情報選択肢
11.突然変異の創造ができる組織革新
マーケティング戦略を革新していく一方で新しい組織コンセプトと設計が必要である。
突然変異を生み出すことができる組織が必要になっている。
企業が提供システムの多様性を生み出すことと効率を追求することは矛盾する。市場の
求める選択肢を増やせば、生産、在庫などのすべてのコストが上昇する。それに対応する
ための従来の考え方はふたつあった。
古典的な考え方では、組織の階層性を増やしたり、戦略事業単位(SBU)にすること
だった。もうひとつの考え方は、企画、生産、販売のそれぞれの垂直的なレベルでの機能
を連結統合させ、現場情報を共有するという「カンバン」方式であった。
しかし、古典的な考え方はもちろんカンバン方式で生み出せる多様性にも限界がある。
いくら車種が増えてもやはりトヨタの車はカンバンらしい車でしかない。この領域で、市
場を深掘りしていくことはもっとも重要なことである。しかし、グローバルな競争段階に
突入している市場では、もっと大きな突然変異的な多様性が要求されている。カンバン方
式で対応できる選択肢には限界がある。分裂市場が要求する多様性に対応するためには新
しい考え方が必要になっている。
では、どのようにして突然変異を連続的に生み出すことができる組織づくりを進めるこ
とができるのであろうか。
突然変異には企業の遺伝子の組み換えが必要である。既存の遺伝子を組み合わせて新し
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い遺伝子を再構成する。しかし、新しい遺伝子が完全に自由な「種」を生み出せるもので
はない。現代生物学は、遺伝子の組み換えによってたくさんの「キメラ」や「怪物」が生
まれるものではないことを証明している。組み換えには何らかの制限やルールがあるよう
である。これは企業組織の進化的歴史的経路を無視できないということと同じである。
突然変異的なシステムを生み出した組織事例を整理すると日本の企業システムが採用で
きる組織革新の方向は三つある。
ひとつは、徹底したオープン化、アメリカ企業化を進めていくことである。企業の財務
情報をはじめ、徹底した情報開示によって、グローバルな投資家の注目を集め、新たな組
み換え情報の入手とその可能性を模索する方法である。いわば、ある種の植物が、果実を
結び、それを得ようとする虫や動物を使って、自分の種子を遠方へ移動させたり、受粉さ
せたりして、種の保存を図る戦略をとっているように、虫や動物の代わりに、投資家を活
用しようとする戦略である。かつて、日本では、この機能を銀行や総合商社が果たしてい
た。外部に依存した他力利用の突然変異を生み出す仕組みである。
ふたつは、分社化による分権化と本社の「持ち株会社」化である。事業別、あるいは機
能別に分社化し、企業グループ内の取引を徹底して、市場原理による取引にしてしまうこ
とである。大胆な組み換えは、人事権をもった持ち株会社である本社が行う仕組みにして
しまうのである。遺伝子の組み換えを行える組織に変えてしまう方法である。パソコン市
場における「バイオ」、テレビ市場における「ヴェガ」、保険市場における「ソニー保険」、
ゲーム市場における「プレイステーション」と次々と突然変異的なイノベーションを生み
出しているソニーグループは、内部組織に市場原理を持ち込むことによって成功している
典型事例である。
三つめは、ミドル層の権限の拡大によるリーダーシップの多元化である。もっとも日本
的な組織革新である。90 年代、リストラクチュアリングの嵐のなかでもっとも「冷や飯」
を食ったのは、ミドルであった。トップの指示を聞き流し、ボトムの不満を吸引する「ブ
ラックホール説」まであった。しかし、リストラクチュアリングの成否の鍵を握ったのは
ミドルの変革へのリーダーシップであった。業務を細分化していくことから業務を統合化
していく。その統合された業務にミドルを配置し、権限を拡大し、責任を明確にしていく。
トップは御輿、ミドルが動かす、というリーダーシップの不在、日本的な無責任構造の弱
点を克服し、トップも、ミドルも、リーダーシップを発揮していく構造を作り上げること
である。ミドルの権限を拡大していくのは、ミドルが顧客にもっとも近く、市場との対話
が可能となるからである。突然変異の情報は、市場から取り込むのである。
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12.多様性のもたらすもの
中流生活が成熟し、その魅力が低下し、社会的欲望の対象となり得なくなった。人々は
新しい生活様式への欲望をもちながらも、その方向性が見えない。また、中流生活を保守
しようにも、社会構造の変化はそれを許容することはしない。
不確実性の高まりというよりも予測不能の時代、確実なことは多様性が増加していくこ
とだけのように思われる。しかし、不確実な環境のなかで、市場の多様性、企業の多様性
が高度化するということは、将来の環境への適応能力が拡大していることでもある。もし
も、ひとつの可能性しかもたないならば、そのひとつが環境に適応できなくなったら「歴
史の終わり」である。その意味で、日本におけるあらゆるレベルの多様性の増加は、生物
の適応戦略に倣った極めて賢明な戦略である。
生物種の多様性を説明するのに、ダーウィンは「時間」という概念を持ち込んだ。「神」
が「一瞬」にして生物種の多様性を創造されたのではなく、進化によって多様性を増加さ
せてきたという理論を立てた。現在では、遺伝子レベルの研究を踏まえてより洗練された
「ネオダーウィニズム」として総合化されている。また、今西進化論に代表される懐疑的
な見方が多いことも事実である。しかし、多様性という事実とそれを時間の変数によって
説明するという点については共通の理解になっている。
多様性の高度化は、結局、社会に何をもたらすのであろうか。ひとつの楽観的な答えは、
「パレート最適な均衡」が実現されるであろうというものである。パレート最適とは、「他
のいかなる個人の状態をも悪化させることなく、ある個人の状態を改善することの可能な
状態」である。つまり、多様な選択肢のなかから自分の好きな職業が選択され、社会にと
ってもっとも効率的労働資源の配分が可能となり、多様な選択肢のなかから自分の好きな
生活様式が選択され、社会にとってもっとも効率的な財の配分が可能となる状態である。
この予測があまりにも楽観的であることは言うまでもない。「囚人のジレンマゲーム」のよ
うに、個々にとっては最適の戦略が、ふたりにもたらされる結果の合計は他の戦略の方が
より大きいという均衡もある。
生活様式の進化という観点からみれば、収斂していく方向は複数の可能性(複数均衡)
をもっている。そのなかのひとつの均衡点がパレート最適均衡である。この予定調和的な
均衡に収斂していくか、どうかは、社会的欲望と企業のマーケティングに依存している。
[1998.09 「生活研究所報 Vol.3 No.1」 (株)JMR生活総合研究所]
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【主要参考文献】
松田久一(1998)
,「日本の消費社会の起源と構造」JMR生活総合研究所.
角山栄他(1992)
,「生活の世界歴史10・産業革命と民衆」河出書房新社.
青木昌彦(1995)
,「経済システムの進化と多元性」東洋経済新報社.
青木他編(1996)
,「経済システムの比較制度分析」東京大学出版会.
S.フロイト(1984),
「性欲論、症例研究−フロイト著作集5」人文書院.
S.フロイト(1985),
「自我論、不安本能論−フロイト著作集6」人文書院.
池田清彦(1998)
,「さよならダーウィニズム」講談社.
M.スミス(1982),寺本他訳「進化とゲームの理論−闘争の論理」産業図書.
E.O.ウィルソン(1995),大貫他訳「生命の多様性(Ⅰ)(Ⅱ)」岩波書店.
JMR生活総合研究所編(1997),
「生活研究所報−特別編集号」.
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