IT ヘルスケア 第 5 巻 1 号,May 23, 2010: 38 頁-39 頁 8 高齢者専用賃貸住宅における 勤務シフト作成のアルゴリズム 大原 康博 ゴールドトラスト株式会社 要約 高齢者専用賃貸住宅の内、要介護者を受け入れている建物は訪問介護サービスとイ ンフォーマルなサービスである生活支援サービスが提供される。介護施設とは違い利用者 に対するスタッフの人員配置基準が無い。その為、高齢者専用賃貸住宅の運営者は経費の 多くを占める人件費をいかに抑え、介護施設より低い介護報酬で事業運営を成り立たせる かが課題となっている。介護保険サービス・生活支援サービスの質を担保しながら最適な 勤務シフトを立てるかを提案する。 高齢者専用賃貸住宅(以下、高専賃)の中で出勤 要がある。パートスタッフに関しては個々に条件が異 するスタッフは提供するサービスの計画を基に配置 なり、出勤可能時間帯の設定の必要性や扶養の範囲内 される。スタッフのほとんどが訪問介護事業所の介護 に抑える時間的、金額的制約を受ける要素がある。 職員(ヘルパー) 。その他、介護保険以外に民間のサ ービスとして生活支援サービス(家政婦の様なイメー 2.必要人数の算出 ジ)を行う生活支援員と管理者となる。生活支援員を 居宅介護支援事業所から計画される、ケアプラン 専任で従事させる事業者もあれば、介護職員と生活支 (図1)により、高専賃の利用者の介護保険サービス 援員を兼務して運用する事業者もある。前者の場合、 及び生活支援サービスの週間予定が決まる。これによ 生活支援員を常に建物内に常駐させる必要がある。後 り、一日の必要出勤人数を判定する。 者の場合、介護保険請求上、厳密に介護保険サービス の時間なのか生活支援サービスの時間なのか明確な 記録が必要となる。 高専賃の性質上、建物の中で介護保険を実施する為。 介護保険サービスを実施しない時間をいかに少なく し、少ないスタッフで多くのサービス提供を行い、売 上を効率よく上げるかが経営の鍵になる。その効率を 上げる為、シフト作成は最大のポイントとなる。今回 は生活支援員を兼務して運用する場合の最適なシフ ト作成のアルゴリズムについて提案します。 (図1)ケアプラン 3 表イメージ 1.スタッフの希望 介護保険サービスのタスクは利用者名、内容(介護 スタッフの出勤可能(不可能)の日程をヒヤリング 保険サービスの内容)、曜日、開始時間、終了時間。 行う。正社員に関しては月の必要出勤日数を満たす必 生活支援サービスは介護保険以外のサービスで予 38 IT ヘルスケア 第 5 巻 1 号,May 23, 2010: 38 頁-39 頁 8 定できるもの。タスクは介護保険サービスと同様。 勤務形態は 1 勤、2 勤のような呼称で日勤や夜勤な 高専賃の利用者のサービスを集計し、週と時間のス ど予め事業者が決めた時間帯とパートの様に不足部 ケジュールに落としサービスの重複数から必要人員 分にスポットで応援を入れる、大きく 2 種類の勤務形 を曜日、時間帯により算出される。 態がある。時間帯のパターンに関しては、事業者によ ケアプラン上は週間でしか計画できないのに対し、 り様々な設定を行っているケースがある。 隔週ではいるサービスや月に 1 度のサービスなど毎週 夜勤勤務の場合は翌朝までの勤務となり、日付を超 実施されないイレギュラーのサービスに対してどの えて出勤する場合は 2 日の出勤となる。0 時から明朝 様に扱うかが課題として残る。現状紙ベース(図2) までの勤務の場合、明けと呼びその日の勤務が朝 9 時 では手書きで注釈を書き込み対応している。 に終わったとしても、その日 19 時から夜勤に入ると いう 1 日に複数回開始時間が入る事はない。 4.サービスの担当割当 ケアプランで計画された介護保険サービスと生活 支援サービスに対して、誰がサービス提供を行うか割 当を行う。 利用者とスタッフの相性を勘案して行う。優先順位 としては利用者に対して相性の悪いスタッフを避け る。他は均等に割り当てるケースが多いが、1 人の利 用者に対して何人もスタッフが入れ替わる事を避け る。逆に言えば過去入った回数の多い順に割当を行い。 (図2)週間サービス計画表 (図2)の週間サービス計画表はサービスの重複を 各スタッフのサービスに入る回数、時間数を平均にす 確認するとともに、効率の悪い重複の多い箇所のサー る必要がある。 ビスを受け取った事業者が居宅介護支援事業所の方 へ変更を依頼しサービスの平準化にも利用される。 このように、高専賃では居宅介護支援事業所から介 新規利用者がある場合、サービスの重複を勘案し新 護保険サービスのケアプランに加え、生活支援サービ 規のサービスが現在の人員体制で受入可能かどうか スがプランされる。それを受けて訪問介護事業所のサ の判断にも利用される。 ービス提供責任者と高専賃を運営する館長が介護職 員と生活支援社員を調整する事となる。1から4の流 3.スタッフの出勤確定 れをケアマネージャーとサービス提供責任者、館長の 1.2.の条件を考慮して、日々の出勤予定(図3) を確定する。 カンと経験だけで運用されているのが現状である。 この一連の流れを統一した運営ソフトにより効率 化を図る。1の居宅介護支援入力では基本的に介護保 険サービスのプランしか計画できなかったものを生 活支援サービスも反映できるものとする。2では、計 画されたプランを訪問介護でデータ取込みを行い。高 専賃単位で週間サービス計画書のマトリックスに配 置。サービスの偏りを可視化し平準化を図る為、ケア マネージャーとサービス提供者側が調整を図る。その サービスを元にスタッフの勤務体制が確定し、シフト 表が作成される。最後に過去サービス提供した提供数 を優先順位にして出勤時間内のスタッフの最適なサ ービス割当を実現する。 (図3)職員勤務表 39
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