海外におけるインフラ資産管理の動向 ~ 戦略的・効率的なインフラ資産管理に向けて ~ パシフィックコンサルタンツ株式会社 社会基盤マネジメント部 次長 横山正樹 主任 重松勝司 1. はじめに これまでに蓄積してきたインフラ資産は膨大な量となっており、更にこれら施設の老朽化が進行 する中で、今後の維持管理負担の増大(費用や管理業務の増大、事故の増加やサービス低下など) が懸念されている。また、なお不足するインフラの整備やニーズの多様化への対応なども抱えてい る状況で、限られた財源により効率的で適切なインフラ資産の管理をしてゆくことが求められてい る。一方、NPM(New Public Management)理論を用いた行政の改革が進められていることや、近 年の急速な情報処理技術の発達など、インフラ資産管理を取り巻く環境は大きく変化してきた。 このような背景から、経済性・効率性・有効性を追求する新しいマネジメント手法である「アセ ットマネジメント」の導入や、マネジメントの高度化を実現するためのツールとなる各種システム の開発が国内外で進められてきている。 本稿では、これらに積極的な取組みを進めている海外諸国や国際機関、特に北米・欧州・オセア ニアの事例を紹介し、これからのインフラ資産管理のあり方や方向性についての調査の結果を報告 するものである。調査の手法は、海外調査・文献等資料収集・インターネットや E-mail 等による情 報収集を中心に行った。また、インフラ資産は道路(舗装、橋梁、トンネル他) ・鉄道・空港・港湾・ 水道・建築など多岐にわたり実践されているが、最も高度化しており情報が多く収集できた道路施 設を中心に報告する。 2. アセットマネジメントとは 米国連邦道路庁(FHWA)、ニューヨーク州交通局、英国環境・運輸・国土省(DETR)、豪 州及びニュージーランドのオーストロード、経済協力開発機構(OECD) 、世界道路会議(PIA RC)などでアセットマネジメントの定義がなされている(表 1 参照)。これらを要約すると、ア セットマネジメントとは以下のように捉えることができる。 「工学的原理と経済学や最善の実践手法とを結びつけた、物理的な資産を費用効率的に運 営、維持管理、修繕及び更新するための、体系的なプロセスにより、意思決定の理論的アプ ローチを支援するツール」 また、これら各国/機関の取組みを概観すると、アセットマネジメントには以下の要素が含まれる。 ・ 対象は物的資産・人材・資金 ・ 体系的プロセス(手続きの明確化、PDCAサイクル) ・ 目標設定とフィードバック ・ 情報処理技術を活用した分析システム(LCCA、リスク分析、優先順位分析など) ・ 短期及び長期的な観点から現実的な管理計画を策定 表 1 機 関 米国連邦道路庁 (FHWA) ニューヨーク州交通局 英国環境・運輸・国土省 (DETR) オーストロード (オーストラリア各州とニュージーラ ンドの道路庁から構成) 経済協力開発機構 (OECD) 世界道路会議 (PIARC) 各国・各機関のアセットマネジメントの定義 定 義 物理的な資産を費用効率的に維持管理、改修および運営す るための体系的なプロセスである。また工学的な原理と最 善の実践手法、および経済学の理論を組み合わせたもので あり、意思決定のための体系的で理論的なアプローチを容 易にする道具を提供するものである。したがってアセット マネジメントにより、短期的および長期的な計画の両方を 取り扱う枠組みが提供される。 交通分野では、アセットマネジメントとは交通資産を費用 効率的な方法で運営、保守、グレードアップする体系的プ ロセスであると定義される。これは、工学的・数学的分析 を、最善の実践手法や経済理論と結びつけたものである。 総合的なアセットマネジメントの概念は、人的要素、交通 輸送体系及び物的施設(道路、交通システム、空港など) を加味することで、従来の社会基盤の管理システムの範囲 を拡大する。アセットマネジメントシステムは目標指向型 で、そこにはデータ収集、戦略評価、計画立案、フィード バックなど従来のプロセスも組み込まれている。アセット マネジメントモデルは、すべての計画分野でなされる決定 を統合することに重点が置かれる。その目的は簡単で、適 切に定義された目標と利用可能な資源に基づき、交通計画 による最大限の便益を顧客や利用者に提供することであ る。 アセットマネジメントとは、土地および建物の戦略的なマ ネジメントであり、サービス提供に伴う便益や金銭的な収 益のために、資産利用を最適化することである。 出 展 Asset Management Primer, (1999) Blueprint for Developing and Implementing an Asset Management System(1998) Asset Management of Local Authority Land and Buildings- Good Practice Guidelines(2000) 効率的かつ効果的な便益を社会にもたらす道具として、長 Strategy for Improving 期的な資産管理を行うための包括的、かつ体系的な取組み。 Asset Management Practice (1997) 工学的原理と模範となる実践事例及び経済性を組み合わ ASSET MANAGEMENT FOR THE せ、また社会の期待に応えるために必要な意思決定をより ROAD SECTOR(2000) 系統的かつ柔軟に行うための手段を与える、資産の統計的 な維持管理、刷新、および運用のプロセス。 適切に定義された目標に基づき、道路ネットワークや道路 PIARC C11 Working Group1. 資産(舗装、橋梁、トンネル、道路設備など)の運営、維 Questionnaire (2001) 持管理、修繕及び更新を、工事による交通障害の影響をも 踏まえて長期的に最も費用効率化する方法により計画し、 最適化することを支援するもの。 3. 米国における事例 (1) 維持管理の改善に向けた取組み状況 米国では、47 人が死亡したシルバー橋の落橋事故に象徴されるように、1970 年前後には、各所で 供用上問題となる状態が散見されるようになった。このような問題に対処するため、点検・資格制 度の構築、データベース構築、維持管理や予算管理に関する各種分析システムの開発などの様々な 維持管理上の改善に関する取組みが段階的に行われてきた。FHWAではこれまでに、NBI(全 国橋梁目録データベース) 、PONTIS(橋梁マネジメントシステム)、LCCA(ライフサイク ルコスト分析システム) 、HERS(幹線道路経済的必要条件システム)など様々な汎用ソフトを開 発推進して各州・自治体に提供している。また近年では、FHWAとAASHTO(全米州道路交 通担当官協会) 、州政府、研究機関などが中心に、アセットマネジメントに関する研究を推進してい る。 FHWAでは 1999 年 2 月にアセットマネジメント室を設置して、連邦政府での先導役として積極 的に啓蒙運動を行ってきており、同年 12 月には、 「Asset Management Primer(アセットマネジメン トの手引き) 」を発行している。FHWAが連携している組織としてAASHTOがある。AASH TOでは、各州政府の意見と連邦政府の意見が相互に伝達される機能があることから、非常に重要 な非営利組織といえる。AASHTOは 1999 年に、各州政府代表者、FHWAアセットマネジメン ト室職員、大学研究者及び民間企業により構成される「Task Force on Transportation Asset Management」を立ち上げ、翌年には「Strategic Plan 2000-2010(アセットマネジメント導入に向 けた戦略プラン 2000-2010) 」を策定している。また、NCHRP(National Cooperative Highway Research Program)ではAASHTOからの研究開発委託を受けて、以下の研究等を行っている。 以上に示した各組織の連携体制を図 1 に示す。 ・ GASB34の要求に対応する方法の研究 ・ アセットマネジメントガイドと研究計画に関する研究 ・ アセットマネジメントの意思決定プロセス改善に関する研究 ・ アセットマネジメントにおける性能指標と性能目標に関する研究 ・ PONTISの機能向上に関する研究 ・ トンネルマネジメントに関する研究 ・ 事業優先度評価に関する研究 ・ リスク分析に関する研究 など タスクフォース ・AASHTO戦略計画(2000-2010)の策定 -アセットマネジメントの基本構成検討中 参加 FHWA ・啓発・普及活動 ・ソフトウェア開発 ・各州道路局の支援 参加 設 置 協働 AASHTO ・研究・開発 ・ソフトウェア開発 ・各州DOTの支援 協働 研究・開発 委託 資金提供 各州道路局 ・導入・アレンジ ・会計制度(GASB34)へ の対応 資金提供 NCHRP (連邦の研究開発プログラム) 図 1 米国における各組織の連携体制 米国ではアセットマネジメントを義務付ける法律はないものの、1999 年に「州政府と地方自治体 の基本的な財務報告;GASB34(Governmental Accounting Standards Boards Statement No.34)」 が策定されたことにより、州政府や地方自治体はアセットマネジメントへの関心を高めている。こ のGASB34とは、財務報告に道路など公共財の資産価値を反映させる会計制度を示したもので ある。資産価値の評価は取得原価価額を基本とし、資産の減耗を認識する手法の考え方としては減 価償却法を基本としている。しかし特徴的なのは、維持管理が的確に行われて半永久的にサービス を提供できる程に品質が確保されている場合には減価償却が必要ないものと解釈され、このときイ ンフラの維持管理コストを費用計上するのみで会計報告とする「修正アプローチ」を適用すること ができるとされている点であり、アセットマネジメントによる効果が期待される。また、この会計 対応に伴い、各所でデータベースやこれを活用した分析を行うシステム開発が活発化してきている。 なお、米国では、民間の独占防止や品質の維持などの観点から、政府が責任を持つ活動に関する 部分は政府が管理し、維持管理の効率化が確実にはかれる作業についてのみ民間に委託している。 (2) インフラ資産管理の考え方 アセットマネジメントの手引きでは、システムの要素として図 2 の枠組みが示されている。ここ では、マネジメントの基本サイクルであるPDCA(計画立案・実施・監視・フィードバックによ る改善)サイクルによるプロセスが明示されている。このプロセスは以下のとおりである。 ① ステークホルダーの要求を踏ま 目標と政策 (顧客からの要求を反映) えながら期待される成果目標を 策定する。 ② 資産に関する情報を収集・整理す 資産台帳 る。 ③ 将来の状態をモデル化(予測)し、 資産状態評価/ パフォーマンスのモデル化 資産状態を性能に照らして評価 する。 代替案評価/ プログラム最適化 ④ 配分される予算のもとで適用可 予算/配分 能な維持管理計画の代替案を評 価・最適化する。 短期・長期計画策定 (プロジェクト選択) ⑤ その中から実際に実施しようと する維持管理計画を選択。 プログラムの実施 ⑥ 実施。 ⑦ 絶えずその成果をモニターして、 パフォーマンスの モニタリング この一連のプロセスにフィード バックして再評価する。 図 2 アセットマネジメントシステムの枠組み (3) 米国が開発・運用しているシステム FHWAがHERSやPONTISなどを開発・提供していることは前述のとおりであり、以下 に現在米国で運用されている主なシステムなどを概説する。 1) HERS HERS(Highway Economic Requirements System;道路経済性解析システム)は、ライフ サイクルコストを考慮した費用便益分析から、全国レベルでいつ、どこで、どのような改良事 業を実施すべきかを評価するものである。使用するデータは、後述するHPMS(Highway Performance Monitoring System;道路性能モニターシステム)から取り込む。このデータによ り将来の状況(交通量、舗装の状態、交通容量など)を予測、これをもとに利用者コスト・道 路管理者コスト・社会的コストなどを計算して、ライフサイクルコストを考慮した費用便益分 析から、実施すべきか改良事業を評価するものである(区間ごとの補修や改良方法の具体を決 定するものではない)。HERSでは道路の性能を、その状態を指数化したPSR(Present Serviceability Rating;現在供用性指数) 、舗装構造、路肩幅、路肩形式、車線幅、平面線形、 縦断勾配、交通量/容量から評価しており、この欠陥レベルに応じて 3 段階の改良対策を用意し ている。 なお、FHWAは、HERSにより得られたライフサイクルコストを考慮した費用便益分析 結果に基づく必要投資額の推計を活用して、議会へ報告書を提出している(Condition & Performance Report) 。 2) PONTIS(BMS) BMS(Bridge Management System;橋梁管理システム)は、橋梁の状態データを収集し、 将来の状態を予測することで、最適な補修や架替えなどの維持管理の戦略を立てるとともに事 業の優先順位付けを行うものである。代表的なものとしてFHWAが 1991 年に開発し、 Windows 対応など数度の機能改良を加えてきたPONTISがある。 PONTISは、長期的に費用を最小化する補修工法を選定するとともに、予算制約下で費 用対効果の高い対策を選定するものである。構造要素ごとに劣化状態を点検したデータに対し て、状態の健全性を 5 段階で評価す る。この点検データにはNBI (National Bridge Inventory;全国 点検データ 費用データ 橋梁諸元 点検結果 劣化遷移確率データ 今回費用 過去の補修費用 橋梁目録)に記録されたデータを使 用することができる。また、構成要 素毎の劣化予測モデルにより将来の 遷移確率モデル 構成要素が劣化する確率 補修工法の有効性 費用モデル 構成要素の補修費用 状態を予測して補修工法の有効性を 確認する。他方、構成要素の状態に 補修の最適化 長期的に費用を最小化する補修工法 対応して用意された補修工法の費用 モデルから補修費用を設定する。以 上をもとに、長期の補修費用を最小 政策と費用 予算 機能改良の 基準と費用 機能改良の 基準と費用 化するように維持管理計画の最適化 シミュレーション を行う。また予算制約のもとで機能 結 果 改良を含めて最も費用対効果の高い 対策を計画するためのシミュレーシ ョンを行う(以上、図 3 参照)。な お、PONTISの開発会社のホー ・各年の最適な維持管理計画の作成 ・以下のレポートを作成 -将来の橋梁の必要性はどのくらいか -現在の補修費用は過少あるいは過大でないか -各橋梁で最適な補修工法は何か -その計画に関する費用と便益はいくらか ムページでは、その機能の一部が公 実行 開されている。 図 3 PONTIS のフロー 3) PMS PMS(Pavement Management System;舗装管理システム)は、舗装の状態データを収集し、 将来の状態を予測することで、表面処理か打ち換えかなどの維持管理の戦略を立てるとともに 事業の優先順位付けを行うものである。PMSについては各州が個別に開発・導入を進めてい る。 4) HPMS HPMS(Highway Performance Monitoring System;道路性能モニターシステム)は、道路 区間ごとの状態と性能に関する評価及び交通量予測を行うものである。データは共通データ(州 /地方区分、都市部/地方部区分、道路種別、日交通量、車線数、路面性状測定データ等)とサ ンプルデータ(舗装データ、道路構造データ、交通量/容量データ)から構成される。データ収 集頻度として、日交通量は毎年、路面性状測定データは 2 年毎に計測される。舗装状態は、P SRにより 5 段階で評価している。HPMSの結果は、FHWAによる道路システムの性能評 価や、前述のHERSに使用される。 5) NBIS NBIS(National Bridge Inspection Standards;全国橋梁検査基準)は、全国橋梁検査 の基準を全米各州で標準化したもので、20 フィート以上の橋梁は有資格者により 2 年毎に点検 が行われることとされた。また劣化や耐荷力は橋梁の構造部位別に 10 段階で評価され、NBI (National Bridge Inventory;全国橋梁目録)に記録されるとともに、FHWAに検査結果を報 告することが義務付けられている。 4. 英国における事例 (1) 維持管理の改善に向けた取組み状況 イギリスでは、幹線道路と橋梁のホールライフコストの最小化を目標として優先度を付けて実施 することが、1998 年の道路白書で明確化されている。主要道路の管理責任は英国環境・運輸国土省 (DETR)大臣にあるが、イングランドにおいてはハイウェイ・エージェンシー(HA)が代行 している。主要道路以外は地方自治体が管理している。 HAでは、老朽化した道路構造物に対して、アセットマネジメントの導入に取り組んでいるとこ ろであるが、平成 14 年 3 月現在、システムの確立には至っていないようで、道路管理の効率化に向 けて、以下に取り組んでいる。 ・ 利用者へのサービス水準の決定 ・ 長期にわたる目標を掲げた戦略プランの立案 ・ 目標を実現するための手段や手順を盛り込んだアセットマネジメントプランの作成 (サービス水準を達成するために必要な構造物の状態目標の設定、構造物の状態に関す るデータ収集、劣化による将来の状態の予測にもとづく補修の優先度と対策の選択など を扱う) ・ 財政の裏付けをする財政プランの作成 HAの維持管理については、地域事務所が契約する 24 の民間主体のエージェント(MA: Management Agency)に委託している。地域事務所は点検結果を、毎年、DETRに報告している。 ハートフォードシャー郡(Hertfordsher Country)では、地図情報システム(GIS) ・橋梁管理 システム(BMS)・舗装管理システム(PMS) ・顧客サービス管理システム(C/S)などの個 別システムと、これらを統合するアセットマネジメントシステム(米国の企業から導入)により道 路の管理運営にあたっている。また、経費節減のために民間活力を最大限に利用する考えにあり、 発注者に加えてコンサルタントと工事会社により組織を編成して事業を実践している。PPP (Public Private Partnership)方式と言われるものを取り入れ、官民3者による共同事業として 実施している。 (2) インフラ資産管理の考え方 ハートフォードシャー郡で例示したように、イギリスでは民間の活力を最大限に利用することに より、維持管理の効率化や予算利用の明確化を目指している。 1997 年に導入されたスーパーエージェント制度により、これまで 91 の地域ごとに委託契約され ていた維持管理を、24 の地域に統合して維持管理の効率化をはかっている。これによりHAは地域 事務所ごとに、工事やTMC(Term Maintenance Contractor)の管理および監督をMA(Managing Agency)に委託、また清掃などの実務的な維持管理についてはTMCと委託契約を結べるようにし た。また、2001 年にはMAとTMCをあわせたMAC(Managing Agent Contractor)契約制度を 導入し、維持管理に係る一連をひとつの受注者が担当できるようにした。 現在の維持管理計画は、点検結果の評価、ネットワーク戦略、費用便益分析による優先順位など を考慮したシステムにより策定している。 また理論的な耐荷力等についても考慮している。ただし、 優先順位については、例えば橋梁と舗装の比較は考慮されないようで、道路構造物(橋梁やトンネ ルなど)と道路施設の管理は別々のシステムを使用している。 また予算は、ライフサイクルコストをもとに確保している。既存の契約工事など特定の工事や現 在価値の劣るものなどが優先的となっているようである。 5. オセアニアにおける事例 (1) 維持管理の改善に向けた取組み状況 オーストラリアとニュージーランドは、それぞれの運輸、交通関連の行政機関が共同で、インフ ラに関するアセットマネジメントの技術基準やマニュアル開発に取り組んでいる(オーストロード)。 オーストラリアでは 1994 年から、ニュージーランドでは 1996 年からアセットマネジメントを導入、 改良が進められてきた。2002 年には、道路ネットワークの維持管理に対する統合されたアセットマ ネ ジ メ ン ト の 枠 組 み の 開 発 と 実 施 に 関 す る 管 理 者 向 け の ガ イ ド ラ イ ン 「 Integrated Asset Management Guidelines for Road Networks」が策定された。 (2) インフラ資産管理の考え方 オーストロードでは、以下の実現を目指してアセットマネジメントの枠組みが整理されている。 これは図 2 に示した米国の枠組みとほぼ同様と捉えることができる。特徴としては、対外的な広報 とコミュニケーションのプロセスがあわせて示されていることである。 【IAM(Integrated Asset Management)により期待される効果】 ・ 道路ネットワークに対するより透明性のあるサービス水準目標が設定できる。 ・ より一貫したアプローチにより投資の順位付けができる。 ・ 投資の意思決定により透明性を確保できる。 ・ より効率的かつ効果的に道路基金を活用できる。 ・ ステークホルダー(利害関係者)の要求とアセットの性能の関係をよりよく把握できる。 ・ 維持管理、補修、資本的投資(再建や建設)のトレードオフ関係をよりよく把握できる。 ・ 道路投資に対する事業の正当性を示すための情報を提供できる。 ・ 道路管理者と利用者コストを利用することで、需要管理と道路投資の関連性が高まる。 ・ 道路利用者の便益が改善されることで、需要管理と道路投資の関連性が高まる。 6. おわりに 以上のように、これからのインフラ資産管理は、従来の手法にとらわれずに多角的な観点から資 産の最適化に資する分析を行い、短・長期的な観点から現実的な管理計画を策定した上で、戦略的・ 効率的なマネジメントを行っていくことと整理できる。このためには、体系的な業務プロセス構築 や組織・制度の対応、情報を活用した高度な分析を行えるシステム開発を進めることなどが前提と なってくる。また、従来の枠にとらわれない新たな技術や手法の積極的採用や、民間活力の活用に よる効率化なども検討することが必要となる。国内においても各機関で研究や開発の取組みが既に 始まっており、これらも含めた最新動向に注視した上で早期に着手し、継続的な資産運用を実現す ることが重要である。 【参考文献】 1) FHWA,Asset Management Primer,1999 2) AUSTROADS, INTEGRATED ASSET MANAGEMENT GUIDELINES FOR ROAD NETWORKS, 2002 3) 土木学会建設マネジメント委員会アセットマネジメント研究小委員会, アセットマネジメント 導入への挑戦―新たな社会資本マネジメントシステムの構築に向けて―, 平成 14 年度報告書 4) パシフィックコンサルタンツ(株), 米国におけるアセットマネジメントの状況調査 報告書, 2001 年 3 月
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