「平成26年度摂食・嚥下リハビリテーション初級研修」の質問・回答集 埼玉県社会福祉事業団 嵐山郷 ○はじめに この質問・回答集は平成26年7月15日(火)に実施された、「平成26年度摂食・嚥下リハビリテ ーション初級研修」の受講者から各講義の質問票に対して回答したものです。なお、次の要領で作成して おります。 1. 同じ趣旨の質問は全て回答していません。 2. 講義を理解する上でポイントとなる質問に対する回答です。 3. 講習に直接関係ないと思われる質問は回答していません。 4. ご質問いただいた利用者等の状況は個々により状況が違いますので、回答はあくまで文章から読み 取った範囲でのご回答とさせていただきます。 ○講義 1《摂食・嚥下機能のメカニズム》の質問及び回答 Q:〈VF 検査等は知的障害の方には向かないということだったのでどこでどのようなテストを受けることが 適切か?〉 A: 現場での実際の食事場面の観察が必要です。いつ、どの食形態でむせているのか?その時の姿勢、一回 量、食事のペースなどで判断するのが適切な評価だと思います。支援員さんのみでは難しい場合は日本摂 食嚥下リハビリテーション学会+埼玉県摂食嚥下リハビリテーション研究会に相談してみてください。 Q:〈水飲みテスト等は誰が行ってもいいのか?〉 A: 簡単なスクリーニングテストなので OK です。 Q:〈口の渇き、細菌予防の意味で夜間口をあけて休む方にマスクは有効か?〉 A: マスクの場合鼻呼吸できるか確認してください。鼻呼吸できなければ不可能です。そして、マスクも有 効ですが、やはり口腔ケアが重要ですので歯ブラシとブクブクうがいを併用するか、できないならば歯ブ ラシの後に舌ブラシも行い、吸引器があれば口の中を水分で洗い流しながら吸引させるようにしてくだ さい。口腔ケアによって剥がされたバイオフィルムに含まれる細菌の唾液誤嚥が肺炎につながることが 多いとの報告もありますので物理的に細菌を取り除くことが重要です。 Q:〈入れ歯を入れても自分ではずしてしまいます、食事介助の時に気を付けることはあるか?〉 A: 入れ歯があっているか医療機関に相談してください。食事介助の時は食事に集中させるための工夫が 必要です。ゼリーで水分補給することは良いと思われます。 Q:〈排痰能力が落ちないように又は咳き込みがしづらくなっていくような場合どのように対応する方法が あるか?〉 A: 排痰の訓練として意識的に強く咳払いをさせる訓練を食事以外の時に行ってみてください。またはブ ローイングの訓練(ストローを使ったりロウソク消し etc)もいいと思います。 Q:〈食事以外の時も痰絡みがあり痰を吐きだしている方がいます。円背や逆流を引き起こしている状態だ からか?〉 A: 高齢になってくると解剖学的に喉頭の位置が下がるのでむせやすくなります。逆流との関連性は少な いと思われますが、発熱、体重減少等を記録して誤嚥性肺炎のサインが出ていないか確認しいてみてくだ さい。 Q:〈食事時カニの泡のように唾液を出すのは咀嚼と嚥下のどちらの機能低下と考えられるか?それともほ かの原因もあるのか?〉 A: 唾液の分泌が少ない場合、口角に泡がたまることがあります。唾液の分泌が少ないと食塊形成が上手に できにくいので咀嚼と嚥下両方に問題が出ていると考えられます。 Q:〈無歯顎、義歯不使用の利用者で自らスプーンを持ち、口に運ぶがほぼ飲み込まない、口にたまってい く状態の場合、職員がスプーンを使い軟口蓋あたりを刺激すると時々飲み込む状態です。ゼリーも飲み 込まず溜めます。このような場合の訓練方法は?〉 A: 溜まっていく状態にあると飲み込みもタイミングが計れない人がいます。溜まってしまったものを一 度ださせてしまうのもよいでしょう。その後に食事を再スタートさせるような工夫も必要です。また、刺 激するポイントは軟口蓋よりも K ポイントを刺激するほうが安全と思われます。 Q:〈よだれの多い人への対応で何か気を付けることはありますか?〉 A: よだれが多い人は唾液嚥下がうまくできていないケースが多いです。介助で上唇、下唇を閉鎖させるよ うにして口唇閉鎖させるようにしてみてください。食事以外の時に行い鼻呼吸も訓練も良いでしょう。 Q:〈早食い、飲み込んでいる、噛んでいない障害者への食事を見直す必要があるとのことですがどうした ら改善できるか?〉 A: 食事は本人の機能にあった食形態を提供するようにしてください。体重減少に関しては高カロリー剤 の提供も考えるとよいでしょう。食形態の訓練としては赤ちゃんせんべいやかっぱえびせん等の噛むと 音の出るスナック菓子を試行してみてください。 Q:〈前後に舌を動かしている人がいて食塊形成の難しい方の食事形態は何が良いか?〉 A: 基本的にはペースト食が中心になりますが、発達期にあるかたでしたら舌でつぶせる硬さや指でつぶ せる形のものを段階を追って提供できるかもしれません。 Q:〈60 代後半の女性です。50 代で軽度の左片側麻痺があります。安静時や寝ているとき唾液でむせるた め病院からは人口スプレーが処方されているが何か訓練することがあるか?〉 A: 脳梗塞による片麻痺があるようですが VF 検査で咽頭の麻痺側があるか確認したほうが良いと思います。 もし麻痺側があれば就寝時に麻痺側を上にして健側が下になるような姿勢をとるとむせが少なくなるか もしれません。また、人口唾液スプレーを使って唾液嚥下の訓練(その時も麻痺側の梨状窩に唾液が溜ま らないように首を回旋して健側に通るようにする)が有効だと思われます。 Q:〈経管栄養(胃瘻)の方の口から食べる訓練はどのようなステップを踏んで取り組んでいけばよいか?〉 A: 胃瘻をして口から物をとらなくなると口腔機能はかなり落ちてくる方がいます。いわゆる「廃用症候 群」 です。口腔ケアを食べなくても毎回行い、唾液分泌を促してください。その際、むせについては吸引して もらっても結構ですが姿勢を少しリクライニングにするなど工夫して唾液の送り込みをスムーズにする ポジションを考えてみてください。指示の通るようでしたら息ごらえしてからゴックンする息ごらえ嚥下 も訓練としては有効だと思います。口から取り込みをスタートする際はスプーン一杯程度のゼラチンゼリ ーからスタートするとよいと思いますが送り込みがなかなかできないで口腔内でゼリーが水になりむせ が出てしまうことがありますのでその場合はリクライニング姿勢をとる工夫が必要です。 Q:〈歯磨きの際、口を開けてくれない方への対処方法は?〉 A: 人それぞれですが、下顎をぐっと下げて一番奥の後ろ側の歯肉を押し下げながら歯ブラシを動かして みる方法や、言葉かけをしながら前歯の方から歯ブラシを滑り込ませ当ててみてください。どの方法も先 を急がず徐々に行っていきましょう。 Q:〈ペースメーカーを使用されている方で、むせ込が多い方がいらっしゃいます。その際のタッピングは どのように行ったらよいのでしょうか?〉 A: 患者を診ていないので解りませんが、むせたりしている時は普通にタッピングして下さい。 Q:〈歯科医師の指示というと、口腔外科でないとだめなのでしょうか?〉 A: どなたでも良いということです。 〇講義2《食事介助技術について》質問及び回答 Q:〈むせ込まずに水分を摂取する方法は。〉 A: 顎が上がっているなど、姿勢が悪くなっていないでしょうか。また、少しとろみをつけることでむせず に摂取できる場合もあります。 Q:〈口の中にため込んでしまいなかなか飲み込みが出来ない場合の良い方法は。〉 A: どうしてため込んでいるのかを検証する必要があります。飲み込みの機能が落ちている、もしくは喉に 違和感があって飲み込むのに時間がかかるなどあるかもしれません。空嚥下や少量の水分で飲み込んで もらうことも一つです。円背の方は胸も開いておらず、顎も引きすぎになってしまい飲み込みづらいとい うことも考えられます。食物を喉に落としていくことで嚥下反射が起きるため、車いすのティルト機能を 使用し、倒して角度をつけ、送り込みを助ける工夫をすることもあります。 また、嚥下を促す方法として唾液の分泌を促すのも一つです。顎の下を押し上げ、舌を動かすようにする、 もしくは耳の下(耳下腺)をマッサージ方法があります。 Q:〈リクライニングでは、できるだけ角度を上げたほうが良いと思うが、説明では 45~60°とのことであ った。座位直角に少しでも近づけなくて良いのか。あるいは枕を入れて前傾に保つのはどうか。〉 A: 座位を取ることが難しく、リクライニング機能を利用して食事介助をする場合は 45~60°程度が良い ということです。90°に近い角度でも座位や頭部の保持が維持できる方についてはその限りではありま せん。枕を入れて前傾に保つことで、頭部が不安定になったり、食事の送り込みが難しくなったりするこ とがあるため、その人の状況に合わせる必要があります。 Q:〈傾眠傾向の方で、ホットタオル等でもしっかりと起きない時は食事を食べさせてはいけないのでしょ うか。 (食事開始時に起きていても、途中で眠くなってしまい、口に入れれば咀嚼して飲み込みはできて いるのですが。)〉 A: 寝てしまうと危険です。起きている間に食べられるよう食事量を少なくして食事回数を増やしたり、補 食などを間食に召し上がっていただいても良いのではないでしょうか。 また、人によっては傾眠の理由が無いか再確認も行う必要があります。薬を飲んでいる方であれば、薬が 効きすぎていることや副作用も考えられます。体調の悪い方も眠くなります。思い当たることがあれば、 主治医に相談してみてください。 Q:〈ゼリーを体温で溶けないタイプで作成しているのですが、ゼラチンのほうが良いのでしょうか。〉 A: 体温で溶けない寒天などは咀嚼するとばらばらになり誤嚥しやすく、塊のまま飲み込むと窒息の危険 があります。体温で溶けるゼラチンのほうが安心です。(ただし、咀嚼をたくさんされる方の場合、ゼラ チンが溶けすぎて危険になる場合もあります。) Q:〈むせ込み時のタッピングは良くないといわれたことがあるのですが、大丈夫なのでしょうか。〉 A: 緊急性を考えると、まずは喀出です。しっかりとムセて喀出しているのであれば、落ち着くまで待つこ とも可能だと考えます。 Q:〈高齢の方でむせたりし、喉がゼーゼーしています。咳払い等をしても詰まったもの(または痰)を出 すことが出来ません。どうしたら出せるのでしょうか。また、出さないままで大丈夫なのでしょうか。〉 A: むせ込みがあり、誤嚥している可能性が高い為、緊急性があると思われます。肺に異物が入ることで痰 も増えますので、食前・後の必要時に喀痰吸引を行うことを考えた方が良いでしょう。高齢の方ですので、 全身的な筋力の衰えがあり、喀出出来ないのだと思います。全身的な筋トレが行うことが出来れば、少し は改善されるかもしれません。また、食事の変更を考えた方が良いと思われます。 Q:〈嚥下状態が非常に悪く、眠気が強いと覚醒できず、食事に時間がかかってしまいます。やはり、30~ 40 分ほどで終了したほうが良いでしょうか。〉 A: ご本人の負担になってしまうため、しっかりと目覚めて食事を始め、1回の食事は 30~40 分程度で終 了し、必要量の食事が摂取できないようでしたら、食事回数を増やす、食間に補食を行う等を行ってはい かがでしょうか。 Q:〈拒否がある方の食事介助の方法を教えてほしいです。〉 A: どうして拒否をするのかを検証する必要があります。食べにくいようであれば食形態を見直す必要が あります。好き嫌いが多いようであれば、ご本人の好みの味や食材を一つでも取り入れて、食べるきっか け作りも良いかと思います。 Q:〈自力摂取できる方で、ほとんど噛まずに丸のみをしてしまう方に、ゆっくりと噛んで食べ物を飲みこ むようにする方法(訓練法)などありますか。 (現在は小分けにしてゆっくり食べるようにしていますが、 あっという間に食べ終えてしまいます。 )〉 A: 高齢者なので、ほとんど噛まないのはとても危険です。ゆっくり食べられるように、介助にさせていた だいてみても良いかもしれません。介助しながら声掛けで噛んでいただき、ペースを作ってあげてくださ い。また、あまり噛まなくても安心して食べられる食事の提供を考えるのも1つです。 Q:〈認知症の方に対して、おいしく召し上がっていただくために、介護士として何に気をつければ良いで しょうか。〉 A: 認知症に限りませんが、講義の最後のほうで話をした『食事をおいしく食べる』5つのポイントです。 また、メニューを説明するときの言葉遣いや介助をする時に相手を不快にさせない態度も大切と思いま す。 認知症の方は、見えている様子が私たちとは違うことがあります。その方と話をして、食事ということを 上手に伝えて、楽しんでいただいてください。幸せな思い出が出てくるかもしれませんよ。 Q:〈食べる気がない(食べ物で遊んでしまう)方に対しての食事の進め方は。〉 A: 理由をうかがってみてください。何か理由があるかもしれません。 Q:〈食事中に体を揺らしてしまい、食事がこぼれ、うまく介助が出来ない方への良い介助方法は。〉 A: なぜ体を揺らしているのでしょうか。疾病によるものでしょうか。それとも周りが気になって落ち着か ないのでしょうか。周りの状況が気になるようでしたら、落ち着ける環境を作ってください。介助をする からこぼれてはいけないということは無いでしょう。こぼれて食事量が摂取できないのであれば、こぼれ る量を考えて食事を多めに提供するなどの対応はいかがでしょうか。 Q:〈むせ込みがあった時のタッピングの説明がありましたが、タッピングとカッピングの使い分けを教え てください。〉 A: タッピングとカッピング、同じものとのことです。タッピングをカッピングと言ったりするようです。 Q:〈知的障害で心臓の持病があります。体重減少が気になるため、エンシュアの引用も考えていますが、 水分をあまり摂取したがらないため、摂取にはとても時間がかかります。単純に高カロリーの食物を取 り入れる方法(例えば、マヨネーズを多く使う、お茶ではなくコーラを飲んでもらう等)を考えています。 ご本人の好みもあるかと思いますが、体重減少の対策として、単に高カロリーにすれば良いというわけ ではないのでしょうか。〉 A: 摂取カロリーを増やすことで体重増加が期待できますが、必要以上に脂質や糖質、塩分等を摂取するこ とで生活習慣病などのリスクも上がってきます。介護食の中には少量でもカロリーのある副食やゼリー、 飲み物などがあり、栄養素も調整されています。そちらを試してみてはどうでしょうか。また、医師と栄 養士に相談してみると良いのではないでしょうか。心臓の持病がある方ですと、注意しないといけないこ とも多いと思われます。 Q:〈食事の際になかなか口を開けてくれないため、話をしている間にしか食事をあげることが出来ず、む せ込むことがあります。どのように食事を介助したら良いのでしょうか。〉 A: その方の口に合ったスプーンの形状、大きさを選びましょう。口が開かないのは、随意的か不随意的な のか、何が原因なのか、観察してみてください。好き嫌いや、飲み込みが苦しくて食欲の低下などあるか もしれません。 Q:〈職場での食事介助の知識や技術の向上を図りたいのですが、どの職種が中心となるのが良いでしょう か。〉 A: 嵐山郷では医師、歯科衛生士、PT、栄養士、薬剤師、レントゲン技師、看護師、支援員などのメンバ ーが集まり、摂食リハ委員を作っています。職場の中にどのような職種の方がいらっしゃるのかが分かり ませんが、様々な職種の方の意見を聞きながら技術の向上が出来ると良いのではないでしょうか。また、 まとめ役として、代表の方を置かれるのも良いかと思います。 Q:〈重症心身障害者の方で、寝たまま食べる不適切な摂食嚥下方法を獲得してしまった場合でも、ベッド のギャッジアップは行ったほうが良いのでしょうか。〉 A: 一般的にはベッドで食事をする際は、ギャッジアップを行い、食事介助を行うことが良いとされていま す。しかし、すでに寝たまま食べる方法での食事摂取を獲得しているとのことですので、姿勢を変えてゆ く場合には注意が必要かと思います。確実に安全な位置(誤嚥していない)までギャッジアップし慣れる ことから始めてみてください。若い方でしたら、少しずつ学習して摂食嚥下の状態は向上する可能性があ ります。 Q:〈常に舌が出ており、唾液も多い方です。毎食、ブリックゼリーを食べているのですが、舌が邪魔をし てゼリーが入っていきません。水分もとろみで固めているのですが、スプーンで介助しても口から出し てしまうため、チュッパであげています。誤嚥につながるのでしょうか。〉 A: チュッパという方法が分からないので、誤嚥につながるかの判断が出来ません。常に舌が出ている状態 では口唇閉鎖が出来ていないため、舌を引っ込めるようにし、口唇を閉じるような練習もあります。 Q:〈認知症の方で、食べることを忘れてしまいます。氷をなめたり、マッサージをしているが、口を開か ない時があります。どうすれば食事や水分の摂取が出来るでしょうか。〉 A: 1 日摂取できない状況が続くようであれば、最終的な医療的処置を考慮することになると思われます。 1 日の中でも摂れていることがあるのであれば、様子を見ながら、その方の生活リズムで食事をしていた だければいいのではないでしょうか。 Q:〈当施設では水分のとろみを厨房でつけています。夜間の水分補給などに対応できるよう、介護職員で もとろみをつけられたほうが良いと思いますが、とろみのつけ方にも差が出来てしまうのも事実です。 厨房・介護職員のどちらでつけたほうが良いでしょうか。〉 A: 増粘剤の種類によりとろみの付き方が多少異なりますが、とろみをつけること自体は難しい技術では ありません。夜間の対応等が出来るように、介護職員の方もとろみをつけられるようになると良いのでは ないでしょうか。 Q:〈脳性まひで呼吸方法が特殊なため、誤嚥が疑われている方がいます。食事中にむせ込みが多く、食形 態・介助方法も工夫していますが、食後のサチュレーションが下がってしまうことが多々あります。介助 方法の統一でサチュレーションが下がるのを防げる方法があれば教えてください。〉 A: 誤嚥をしている、喉に食べ物が溜まっているなどが考えられます。また、ペース良く介助しても、その 方の機能によっては嚥下に時間がかかり、呼吸が止まる時間が通常より長いことも考えられます。そうな ると無呼吸状態で食事をしていることになるので、一口ずつの間隔を開けましょう。ただ、その方を見て みないと、難しいですね。 Q:〈3歳児で口唇・口腔内にかなりの過敏があります。スプーンが迫ってくると恐怖で拒否をします。家 庭では無理矢理スプーンをのどの奥のほうに入れて、口を開けさせられ、口唇を閉じずに泣いて飲み込 もうとするので、1口ずつ逆嚥下反射をしています。様々な食形態も試してみましたが、すべてに逆嚥下 反射をし、食事自体を拒否するようになっています。どのように打開してゆけば良いでしょうか。〉 A: 過敏があるとのことなので、脱感作を行う必要があります。また、自宅での食事介助の方法がさらに食 事拒否を助長しているようなので、ご家族と食事介助方法についての話し合いが必要と思われます。(3 回に2回は自宅での食事になりますので、ご家族の協力無くしては改善できないでしょう。)摂食嚥下指 導のできる歯科医師を交えての話し合いも良いのではないでしょうか。 Q:〈ペースメーカーを使用している方のタッピングの方法はどのようにしたら良いでしょうか。〉 A: 患者を診ていないので解りませんが、むせたりしている時は普通にタッピングして下さい。 Q:〈手足の拘縮が強く、食事の際に頸部後屈が強い人がいます。クッションを入れたり、頸部マッサージ をしたりしていますがどうしても上を向いてしまいます。姿勢の保ち方についてアドバイスをお願いし ます。〉 A: 無理に姿勢を直そうとすると、更に力が入ってしまったり、のど周辺の筋肉が緊張したりし、誤嚥の可 能性を高めてしまいます。食事を口に入れ飲み込むまでの間、出来るだけ前傾姿勢になるように支えなが ら介助を行うほうが良いと思います。また、PT がいらっしゃるようでしたら、リハビリとして肩周りの リラクゼーションを行っていくのもいいと思います。 Q:〈水分を無理やり飲ますのは良くないでしょうか。(水分補給時に強く抵抗があるため。)〉 A: よくありません。ゼリーやプリンなどを水分の代用にしてはどうでしょうか。 Q:〈食前のリハビリとなる部分をもう少し知りたい〉 A:どういう方に対してなのかで変ってきますので、今後機会があれば・・・。 Q:〈安全な食事介助について(アイスマッサージ)〉 A: 氷水に浸したスポンジブラシで口腔内(上あごとほほの内側)を刺激することで唾液の分泌を促し、食 事をしやすくします。 〇講義3《安全でおいしい食形態について》質問及び回答 Q:〈肉料理について 酵素を使用されているそうだが、おすすめの商品を教えてください。〉 A: 現在はいろいろなメーカーから肉や魚を柔らかくする商品(添加剤)が出ています。取引先の業者に聞 いたり、ネットなどで検索し、試行をしながら一番その施設の状況に応じた商品を探すことをお勧めし ます。 Q:〈パンのペースト、ミキサー調理について。パンは難しいそうですが、良い方法はありますか。〉 A: 嵐山郷ではパンはペーストにしていません。パン粥を作っています。パン粥の作り方は、嵐山郷のホー ムーページに出ていますので、ご参考にしてください。 Q:〈高齢者デイサービスです。かゆ、キザミは止めた方がよいですか。〉 A: 個人により、摂食機能や障害は様々です。粥やキザミ食が適しておられる方もいます。一概に否定する ものではありません。 Q:〈常食~嚥下食と段階別に提供するうえで、利用者様からの食費の設定に工夫はあるのか?また、個別 対応を行う上でのコストはどうなっているのか。〉 A: 食費の設定については段階的になっておりません。栄養補助食品等を個人で購入をお願いしているも のはあります。 Q:〈肉料理は挽肉を加工し、常軟食を作っているとの事ですが、魚の場合はどうですか。他にも加工して 提供している食事はありますか。〉 A: 魚は種類により食べやすい物、食べにくい物があります。なるべく食べやすい魚を献立に取り入れま す。たとえば、常食Ⅱ・Ⅰは鰆の時は、常軟食は鰈などに変更します。また、常軟食に鰆や鮭などを提供 する場合は、魚を柔らかくする添加剤(肉を柔らかくするものと同様の物)を使用しています。 Q:〈給食の委託業者には、どこまで頼んでいいのでしょうか。〉 A: 施設と給食委託業者では、契約を結んで業務にあたっています。契約書の他、業務に直接関係する仕様 書や特記仕様書があります。その中で特別食や療養食と同じように摂食嚥下障害を加えた内容を仕様書 にして、委託業者と契約を交わしたらいかがでしょうか。 Q:〈ペースト食の筋ジストロフィーの方にソフトクリームを召し上がっていただきたいが、飲み込む前に 口の中で溶けて液状になるので難しいです。何か良い方法はありますか。〉 A: 夏場や外出先で提供できればとの事ですね。今は溶けにくいアイスなどをメーカーが開発しており、療 養食や治療食を取り扱う食品業者で購入が可能です。家庭向けに通販もあるかもしれません。そのような 物を利用されたらいかがでしょうか。また、水分を足して作るムース食やペースト食の素などを冷やし固 めてアイスクリーム風に工夫されても良いかと思います。 Q:〈常軟食や軟食を作るのに特別な機械や器具が必要ですか。〉 A: 特別な物は必要ありません。フードプロセッサーがあると便利です。ミートペーストや魚のすり身など の食材が揃えられれば作れます。野菜などは柔らかく煮てから調理します。 Q:〈ゼラチン粥の作り方を教えてください。〉 A: 軟飯の離水を防ぐために、ゼラチン軟飯を提供しています。 作り方 精白米 1kg 水 8L ゼラチン 65g この割合で炊飯します。 Q:〈食事後半に全粥の水分が出てきてむせてしまいます。〉 上記に同じになります。 Q:〈摂食・嚥下リハ委員会の設立の経緯を教えてください。〉 A: 施設内の摂食嚥下リハビリテーションの取組を充実させるために、組織作りが行われ、委員会の設立と なりました。
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