The Murata Science Foundation ロボットの物体操作における振動触覚フィードバックの効果検証 音声認識による生活動作支援ロボットの制御 1. Effect of Vibrotactile Feedback on Robotic Object Manipulation 2. Continuous Vocalization Control of a Full-Scale Assistive Robot H24海自03 派遣先 International Conference on Biomedical Robotics and Biomechatronics (BioRob2012)(イタリア・ローマ) 期 間 平成24年6月19日~平成24年6月30日(11日間) 申請者 東京大学 大学院 後期課程1年生 安 琪 ドバックに関するものであった。通常義手で 海外における研究活動状況 物体を操作する際には物体に及ぼす力を明示 研究目的 的に知覚することは出来ない。そのため義手 1.義手の機能向上のためには、義手の指が の使用者の生活の質は著しく低下している。 物体に作用する力を知覚することが必要 本研究では、触覚振動刺激を用いて、物体に 不可欠である。本研究では触覚振動フィー 及ぼす垂直抗力に応じて線形に振動の振幅を ドバックを用い、指の力の大きさをフィー 制御し、義手に対して力フィードバックを付 ドバックする手法の有効性を検証する。 与した。実験では6名の被験者に対して、物 2.身体麻痺者や寝たきりの高齢者の日常動 体を押して、目標位置まで引きずってもらっ 作支援のために、音声によるマニュピレー た。結果として実際の物体操作のパフォーマ ターの制御を開発した。異なる制御方法 ンス(移動距離や速度)が有意に向上すること を試行し、最も有効な制御方法を求める。 を示した。 前述の通り、本学会はロボット系の研究者 海外における研究活動報告 のみならず医学系の研究者も多く訪れ、非常 本海外派遣では、I E E E I n t e r n a t i o n a l に有意義な討論を行うことができた。特に実 Conference on Biomedical Robotics and 用面の観点からの質問は多く、皮膚が刺激に Biomechatronicsにて2件のポスター発表を 慣れてしまい、刺激を知覚することの閾値が 行った。本学会はIEEEのRAS(Robotics and 上がってしまうのではないか、また被験者は Automation Society)とEMB(Engineering in 繊細な力の差異を知覚できているのか等の申 Medicine & Biology Society)という2部門の共 請者が認識していなかった問題点を確認する 催で行われた。以下に本学会での発表の概要 ことができた。申請者が以前行った研究では と参加者との議論によって得られた知見につ 複数の日程(8日間)での振動フィードバック いて述べる。 の使用は有効であると示せたが、真に触覚振 2件の発表のうちの1件は、義手の力フィー 動刺激による力フィードバックの有効性を示 ─ 851 ─ Annual Report No.26 2012 すには、同じ日に長時間つけることによる効 よってテストした。特に複数関節の同時制御 果を測定する必要があることを確認すること では、生体の動作解析で行われているシナジー ができた。 解析を実際のマニピュレーターに適用した初 後者の問題に関しては、今回の研究では、 めての例である。 物体に及ぼす垂直抗力が閾値を超えると物 本研究でも、参加者との議論の中心はその 体を動かすことをできた。それに対して、振 実用性であった。今回は母音を連続的に発す 動触覚刺激を有効に活用できたかどうかを異 ることでマニピュレーターを細かに制御した なるタスクにて検証する必要があり、必ずし が、これでは長時間の使用に耐えられないか も刺激に対する応答がTask-Specificでないこ 疲れてしまうのではないかという指摘がされ とを示すべきである。力の制御が重要である た。本研究では制御方法の検討ばかりを主眼 複数のタスクを用いた実験(もしくはPractice にしていたが、今後はより実用化するために と Te s t i n g を分離する)か、また物体を同一 階層型の制御法(例:言葉による大まかな移 平面上で引きずるだけでなく、坂道を設けた 動指示と母音による細やかな制御の組み合わ り、摩擦係数の異なる面を設けたりすること せ)を検討することとする。加えてマニピュ で、同一タスク内でも力の使い分けを必要と レーターの動作計画を行う際には、生体学よ する実験系が望まれることが参加者との議論 り得られた実際の人の動きに近い方が高い操 によって分かった。 作性を得られるのではないかという指摘も得 これらの指摘や議論は主に医学系・認知科 られ、今後の検討課題とすることとなった。 学系の研究者によって行われた点からも、本 本学会では以上の2件の発表を行い、ロボ 学会がRoboticsとMedicalの融合した学会で ティクス分野の研究者と様々な議論が出来た あり、申 請者が本来所属している機械・ロ のみならず、医学や認知科学の分野の科学者 ボット学会のみからでは得ることができなかっ とも交流をすることができ、特に開発したシ た様々な重要な知見を得ることができた。 ステムや技術の医療現場への適用可能性とそ 2件の発表のうちのもう1つは、音声制御に のために必要な今後の追加実験に関して有意 よるロボットマニピュレーターの操作方法の 義な知見を得ることができた。 検討に関するものであった。本研究では母音 この派遣の研究成果等を発表した と撥音によって、マニピュレーターを操作す るシステムを開発し、関節の制御に関して複 数の方法(単関節についてそれぞれの自由度を 個別に制御、マニピュレーターの終端のみを 著書、論文、報告書の書名・講演題目 1) Effect of Vibrotactile Feedback on Robotic Object Manipulation 2) Continuous Vocalization Control of a Full-Scale 制御、複数関節の同時制御)を被験者実験に ─ 852 ─ Assistive Robot
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