時 の 話 題 ~平成25年度 第25号(H25.11.22調査情報課)~ 高齢者の スポーツ振興 スポーツは、健康の維持・増進に有効であるだけでなく、高 齢者にとっては、様々な人との交流や地域コミュニケーション の機会を得ることができ、社会参加の促進につながる。 また、超高齢社会となった今、介護予防という視点からも重 要である。高齢者向けスポーツの振興に関する取組をまとめる。 余暇 暇時 時間 間の 余 の有 効 利 用 有効利用 つくり 子供 供の の体 子 体力 力 つく り 親子や家族の 交流 親 子 や家 族 の 交 流 高齢者の生き 高 齢 者 の生 き が い がいづづ くく りり コュ 地 コミ 地域 域のの ミニュ ニ ティ ィの の形 テ 形成 成・・活 性 活性化 化 1 現状 (1)1年間に行った運動・スポーツの日 図1 1年間に行った運動・スポーツの日数 数と種目 週に3日以上 週に1~2日 月に1~3日 文部科学省が平成 25 年1月に実施した 3か月に1~2日 年に1~3日 わからない 世論調査によると、この1年間に運動やス 総 数 10.0 7.2 1.4 22.6 28.6 30.1 ポーツを行ったことがあるか聞いたとこ 8.0 0.7 17.3 31.3 28.7 14.0 20~29歳 ろ、何らかの運動やスポーツを行ったとす 30~39歳 13.7 0.0 18.3 27.4 28.2 12.4 る者の割合は 80.9%であった。 40~49歳 2.0 10.9 15.7 26.6 27.3 17.4 さらに、運動・スポーツを行った者に、 50~59歳 8.0 7.2 1.6 26.0 26.8 30.4 3.3 3.0 行った日数を聞いたところ、週に3日以上 60~69歳 16.9 32.3 42.4 2.1 2.7 2.3 と答えた者が 30.1%と最も多かった。 70歳以上 12.9 27.0 53.6 1.5 特に、50 歳以上で週3日以上運動・ス 0% 20% 40% 60% 80% 100% ポーツを行ったとするものが多く、50~59 表1 この1年間に行った運動・スポーツの種目 歳で 30.4%、60~69 歳では 42.4%、70 歳 1位 2位 3位 以上では 53.6%となっている(図1)。 ウォーキング 体操 ランニング 50~59歳 (散歩などを含む) (ラジ オ体操など を (ジ ョギング) 同じく、この1年間に行った運動・スポ 49.7% 含む)33.4% 12.4% ーツの種目を聞いたところ、50 歳以上で ウォーキング 体操 60~69歳 (散歩などを含む) (ラジ オ体操など を ゴルフ は、すべて「ウォーキング(散歩などを含 10.5% 含む)31.4% 57.9% む)」が第1位、次いで、 「体操(ラジオ体 ウォーキング 体操 ニュースポーツ オ体操など を (インディ アカな ど) 操などを含む)」であった。70 歳以上では、 70歳以上 (散歩などを含む) (ラジ 含む)22.4% 56.4% 10.2% 第3位に「ニュースポーツ(インディアカ など)」が挙がった(表1)。 図2 地域におけるスポーツ振興の効果 (2)地域におけるスポーツ振興の効果 (上位5位) (%) 50~59歳 60~69歳 70歳以上 また同調査で、地域におけるスポーツ振 53.8 60 48.7 47.9 43.9 興に、どのような効果を期待するか聞いた 36. 3 38.2 40 31.8 29. 9 26.8 29.1 ところ、何らかの効果を期待すると答えた 25.5 24.3 23.8 19.8 17.3 20 者の割合が 88.5%であった。 期待する効果として、50~59 歳では「地 0 域のコミュニティの形成・活性化」を挙げ た者の割合が最も多く、60~69 歳、70 歳 以上では「高齢者の生きがいづくり」を挙 げた者の割合が最も多かった(図2)。 図1、表1、図2 出典:文部科学省 平成 25 年8月「体力・ スポーツに関する世論調査」より作成 - 1 - 2 国の取組 (1)スポーツ基本計画 国は、平成 23 年6月に、50 年ぶりに「スポーツ振興法」を全面改訂し、 「スポーツ基本 法」を制定した。このスポーツ基本法に基づき、今後 10 年間の基本方針と平成 24 年度か らの概ね5年間に実施する施策を示した「スポーツ基本計画」を平成 24 年3月に策定した。 この計画では、 「ライフステージに応じたスポーツ活動の推進」を政策課題の1つに掲げ、 国民の誰もが、それぞれの体力や年齢、技術、興味・目的に応じて、いつでも、どこでも、 いつまでも安全にスポーツに親しむことができる生涯スポーツ社会の実現に向けた整備を 推進するとしている。 <今後5年間に総合的かつ計画的に取り組むべき施策(抜粋)> 若者のスポーツ参加機会の拡充や高齢者の体力つくり支援等のライフステージに応じたスポーツ活動の推進 政策目標 ・成人の週1回以上のスポーツ実施率が3人に2人(65%程度)、週3回以上のスポーツ実施率が3 人に1人(30%程度)となること ・成人のスポーツ未実施者(1年間に1度もスポーツをしない者)の数がゼロに近づくこと ◆ライフステージに応じたスポーツ活動等の推進 ・ライフステージに応じたスポーツ活動の実態を把握する調査研究等の実施 ・年齢、性別ごとに日常的に望まれる運動量の目安となる指針の策定 (2)健康づくりのための身体活動基準 2013 とアクティブガイド 国は、ライフステージに応じた健康づくりのための身体活動(生活活動・運動)を推進 するため、 「健康づくりのための運動基準 2006」を改定し、平成 25 年3月に「健康づくり のための身体活動基準 2013」を取りまとめた。新基準では、高齢者(65 歳以上)に関する 身体活動量の基準が初めて示され、強度を問わず、身体活動を毎日 40 分行うことが望まし いとされている。 あわせて、健康づくりのための身体活動指針が国民向けパンフレット「アクティブガイ ド」として作成された。今より 10 分多くからだを動かすことを勧めている。 *健康づくりのための身体活動基準と身体活動指針(アクティブガイド): http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002xple.html (3)高齢者の体力つくり支援事業 国は、高齢者がそれぞれの適性や健康状態に応じて無理なく継続できる運動・スポーツ プログラムの普及啓発等を行うため、シンポジウムを開催するなどして、高齢者の体力つ くりに係る意識の醸成を図っている。 平成 24 年度からは公益財団法人日本レクリエーション協会に委託して、体力つくり支 援委員会の開催や体力つくり支援策の普及啓発を行うとともに、各都道府県レクリエーシ ョン協会が実施団体となり、次の事業を行っている。 <高齢者の体力つくり支援事業(主な事業)> 〇ニューエルダー元気塾 年齢に関係なく、いつまでも自由に過ごしたいという意識を強く持つ団塊世代前後の高齢者(ニューエルダ ー)を対象に、体力チェックやコミュニケーションを深めるスポーツを行い、継続的な運動へと導く普及事業 〇スポーツ・レクリエーションサポーター養成講座 定年前後の退職者を対象とし、スポーツ・レクリエーションの支援を通じて地域社会に参加し、積極的な役 割を得ることにつなげる支援者養成事業 〇トライアル事業 自然の楽しみ方を学ぶ講座や、女性のためのエクササイズ講座の開催などの試行型事業 - 2 - 3 都の取組 (1)東京都スポーツ推進計画 都は、平成 20 年に策定した「東京都スポーツ振興基本計画」を改定し、2020 年に向け た東京の新たなスポーツ推進指針として、平成 25 年3月に「東京都スポーツ推進計画」を 策定した。新たな計画に基づく様々な取組を推進することで、2020 年には、世界に誇る成 熟都市の模範として、「スポーツ都市東京」の実現を目指している。 <東京都スポーツ推進計画(概要)(抜粋)> 【基本理念】 スポーツの力をすべての人に ~誰もが、いつでも、どこでも、いつまでもスポーツを楽しみ、 スポーツの力で人と都市が活性化する「スポーツ都市東京」を実現~ 【目標】 週1回以上スポーツを実施する成人の割合を 70%に ~スポーツ実施率を世界トップレベルに~ ★戦略3 ライフステージに応じたスポーツ活動の支援 ◆高齢者のスポーツ推進 ・シニアスポーツ振興事業 ・高齢者向けスポーツの普及 ・高齢者の社会参加促進― 元気高齢者地域活動促進事業 ― 老人クラブ健康教室事業 ・高齢者スポーツ大会への参加促進 (2)シニア健康スポーツフェスティバルTOKYO 都は、高齢者に適したスポーツや健康づくりを通して、 多くの高齢者が社会参加や仲間づくり、世代間交流がすす められるよう、シニアのためのスポーツ大会「シニア健康 スポーツフェスティバルTOKYO」を毎年開催している。 平成 25 年は 10 月 14 日から 11 月 24 日まで第 18 回大会 が開催された。 昨年の様子 出典:スポーツ振興局スポーツTOK YOインフォメーションHP 《競技種目》 ラージボール卓球、テニス、ソフトテニス、ソフトボール、 ゲートボール、ペタンク、マラソン、弓道、剣道、サッカー 本大会の上位入賞者は、平成 26 年度開催の「ねんりんピック栃木 2014」の東京都代表 選手の選考対象者となる。 ★ねんりんピック: 高齢者を中心とするスポーツ、文化、健康と福祉の総合的な祭典である全国健康福祉祭の愛称。厚生 省創立 50 周年を記念して昭和 63 年に開始されて以来、毎年開催されている。 平成 25 年は 10 月 26 日から 10 月 29 日まで高知県で開催された。 (3)東京みんなのスポーツ塾 都は、いつでも、どこでも、誰もが気軽に楽しめるニュ ースポーツをやさしく解説し、体験するイベントとして「東 京みんなのスポーツ塾」を開催して、高齢者が取り組みや すいスポーツを紹介している。 平成 25 年度は、11 月 16 日、17 日、23 日に駒沢オリンピ ック公園総合運動場で行われた。 ※東京みんなのスポーツ塾:http://www.spo-juku.jp/ キンボールスポーツ 出典:東京都報道発表資料 - 3 - 〈みんなのスポーツ塾実施種目〉 キンボール スポーツ 直径 122cmという大きなボール を使い3チームで「サーブ」や「レ シーブ」を繰り返して得点を競う。 ターゲット バードゴルフ ゴルフボールにバドミントンの羽 根を付けたようなものをクラブで 打ち、傘を逆さにしたようなホー ルに入れる。 ネオホッケー 2チームがプラスチック製のステ ィックで一個のボールを取り合 い、相手方のゴールに数多くのボ ールを入れた方が勝ちとなる。 パドルテニス バウンド テニス 「限られたスペース」という意味 の「Boundary」の名のとおり、持 ち運び可能な人工芝のコート(3 m×10m)を使う。 ウォークラリー トリム体操 スポーツ 吹矢 体力のない人も、運動を苦手とし ている人も、年齢にかかわらず、 無理なく体を動かし精神的効果も 体得できる体操。 腹式呼吸を使って5~10m先の的 に矢を吹き、得点の多さを競う。 ストレス解消や健康改善に効果が あるとされる。 インディアカ ティーボール 2チームで、 「インディアカボー ル」と呼ばれるバドミントンの 羽根のようなボールをネットを 挟んで素手で打ち合う。 バッティングティーにボールを 乗せ、その静止したボールをバ ットで打つ、野球に似ている競 技。 テニスのミニ版(テニスコート の3分の1の広さ)で、小学生 から 80 代の方でも、手軽に楽し める。 事前に渡されるコース図に従っ て進み、途中で与えられる課題 を解決しながら、設定された一 定の時間で歩き、目的地を目指 す。 ユニカール 取っ手のついたプラスチック製 のストーンを専用カーペットの 上で投げ滑らせて、得点を競う。 オリエンテーリング 地図をたよりに指定された目標 物を探す気軽に楽しめる野外ス ポーツ。 出典:スポーツ振興局HP (4)シニアスポーツ振興事業 都は、高齢者のスポーツ実施率向上を図り、その健康維持・増進に寄与するため、各地 域で実施する高齢者対象のスポーツ事業を支援している。 対象事業は、地区体育協会、地域スポーツクラブ、都レクリエーション協会加盟種目団 体が実施する、高齢者対象のスポーツ競技会、講習会・講演会等である。 平成 24 年度は 44 地区の体育協会、26 の地域スポーツクラブの事業を支援し、延べ 10,980 名の参加者があった。 スポーツクラブ「シニア向け」充実 専用プログラムで筋力強化 高齢化が進む中、スポーツクラブがシニア向けサービスの充実に力を入れている。専用のプログラム をつくり、インストラクターがきめ細かく指導することで、けがをしにくく、筋力強化などの効果が得やすい 内容となっている。 品川区に本社のあるスポーツクラブは 60 歳以上を対象とした「健康づくり教室」を首都圏や大阪、神戸 などの 12 店舗で展開。高齢者専用のスタジオ(新宿区)も持つ。教室の内容はストレッチを中心とした「ら くらく体操」や太極拳などで、バランス能力や足の筋力向上、腰痛や肩凝りの予防・改善を目指す。マネー ジャーは「教室に来ることで生活にメリハリができる。他の参加者と会話するため、精神面の活性化にも つながる」と利点を挙げる。 (平成 25 年9月3日付 産経新聞 より抜粋) 4 今後の課題 超高齢社会に突入し、介護や支援を必要とする高齢者が今後も増加していくことが予想 されている。スポーツを通じた体力つくりは、高齢者にとって、介護や支援を必要としな い生活を送る上でも重要である。 都は、今後とも、高齢者がより多くのスポーツに親しみ、生きがいや社会参加のきっか けを持てるよう様々な施策を行うとともに、区市町村や関係団体とともに、高齢者でも楽 しめるスポーツの魅力を発信していく必要がある。 - 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