2A3. 常圧内部循環型流動床ボイラ(ICFBC)

Clean Coal Technologies in Japan
2A3. 常圧内部循環型流動床ボイラ(ICFBC)
研究開発者
(財)石炭利用総合センター、
(株)荏原製作所、出光興産(株)
事業の種類
開発期間
石炭生産・利用技術振興補助事業
1987〜1993年
技術概要
1.特徴
③低公害性
ICFBCは、以下に示す基本的機能を有している。
Ⅰ.砂の旋回流により流動層温度が均一。
NOx、SOxといった環境汚染物質の排出量を、特別な環境
Ⅱ.砂の動きが活発なため不燃物の排出が容易。
設備を付加することなく、大幅に減らすことができる。流動床
Ⅲ.流動床からの回収熱量を調節して流動床温度を制御する
ボイラの場合、脱硫は主に炉内脱硫であるが、ICFBCの場合、
流動部分に伝熱管が設置されていないため、層内伝熱管の
ことが可能。
このようなことから以下に示す特徴を有している。
摩耗の問題がないことから、流動媒体には柔らかな石灰石を
①多種燃料への対応
使用する必要がなく、硅砂を使用することができる。そのため
前述のCFBC同様に、高品位炭や油・ガス等の化石燃料だ
炉内脱硫剤としての石灰石は、必要最低限の量を投入する
けでなく、低品位炭やバイオマス、
スラッジ、廃プラスティック、
だけでよい。そして、炭種、使用石灰石、
そして流動床温度に
廃タイヤなどをも燃料として使用できる。
より差はあるが、Ca/sモル比が2程度で、90%近い脱硫率が
②層温制御
得られる。脱硝は、流動床部での還元燃焼、
フリーボード部で
熱回収室の空気流量の変化により総括熱伝達係数がほぼリ
の酸化燃焼による二段燃焼により行われる。さらに、ボイラか
ニアに変化するため、空気流量のコントロールによって熱回
らの未燃カーボンをボイラ出口に設置された高温サイクロンに
収量を容易にコントロールすることができる。また、熱回収量を
より捕捉し、
ボイラに戻す循環により、脱硝効率を高めている。
制御することにより流動床温度を制御することもでき、
しかもそ
④省スペース・高メンテナンス性
れが空気流量の変化だけで行えることから、負荷制御が非常
前述のCFBC同様、独立した脱硫・脱硝・燃料微粉砕設備を
に簡便であることが大きな特徴である。
必要としないため省スペース設置であり、
メンテナンスも容易
である。
2.技術概要
ICFBCの概略図を図-1に示す。流動層内は主燃焼室と熱回
フリーボード部
収室とに傾斜仕切壁で区分し、主燃焼室内の旋回流と主燃
流動床部
焼室と熱回収室の間の循環流を形成している。さらに、ボイラ
出口のサイクロンからの未燃チャーや未反応石灰石をボイラ
に戻す循環流が形成されている。流動媒体は珪砂である。
①主燃焼室内の旋回流については、主燃焼室におけるウィン
熱回収室
ドボックスを3分割し、中央部には少ない風量を入れて弱い流
動床(移動層)
を形成し、両端部からは多量の空気を投入し
て激しい流動床を形成するように構成したものであり、
その結果、
主燃焼室の中央部は緩やかな下降移動層となり、両端から
激しく吹きあげられた流動媒体が中央部で沈降し、再び両端
部で上昇するという旋回流が生じる。
図-1
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ICFBC概略図
第2編 技術概要
石炭火力発電技術〈燃料技術〉
②主燃焼室と熱回収室の間の循環流については、以下に示
3.実施場所・利用分野
す動きにより形成される。主燃焼室内の両端部にて激しく吹
石炭焚きのICFBCとしては、青島荏原(10t/h)、中国江山(35
きあげてきた流動媒体が傾斜仕切壁の上で一部は熱回収室
t/h)、
日本製紙勿来(104t/h)等がある。産業廃棄物を燃料
側へ反転する。熱回収室は下方から吹きこまれる循環層空気
としたICFBCでは、
トヨタ自動車元町(70t/h)、
ブリジストン栃
によって緩やかな流動床(下降移動層)
を形成しており、結果
木(27t/h)、大昭和製紙富士(62t/h)、
ブリジストン甘木(7.2
として流動媒体は主燃焼室から熱回収室、
そして熱回収室下
t/h)、東北製紙秋田(61.6t/h)等があり、RDFを燃料としたも
部から再び主燃焼室へと循環する。熱回収室内部には伝熱
のでは中外製薬静岡(3.7t/h)がある。ICFBCの概観写真を
管が設けてあることから、
この循環流により主燃焼室内の熱
写真-1に示す。
エネルギーを回収する。
③ボイラ出口のサイクロンからの循環流については、未燃チャ
ーや飛散した流動媒体、
そして未反応石灰石をサイクロン等
で捕集したあとスクリューコンベヤや空気輸送等により主燃焼
室、
あるいは熱回収室に戻すものであり、燃焼効率の向上、
4.実施期間
この内部循環流動床ボイラ(ICFBC)は、1987年に開発に
着手し、1988年から1993年の6ヶ年にわたる通産省石炭利
用技術振興補助事業の「流動床燃焼技術に関する研究」
により多品種石炭用低公害小型高効率流動床ボイラとして
NOxの低減及び脱硫率の向上に極めて効果的である。
開発、実証されたものである。
5.これまでの経過と今後の課題
当初は発熱量の高い産業廃棄物燃焼用として開発されたが、
石炭焚きボイラとしても建設されてきた。石炭資源の多い中
国での生産拠点として、青島にボイラ工場の建設も行われた。
最近では、
日本国内において木質系バイオマスを燃料として
使用する場合も出てきているが、東南アジア等バイオマス資
源及び低品位炭が豊富な地域に普及を図れるように更なる
設備コストの低減を行う必要がある。
写真-1
ICFBCの外観写真
蒸気
ボイラドラム
乾燥石炭
煙突
乾式供給
システム
熱ガス
エア
フィルター ヒーター
石炭バンカー
PICFB
クラシャー
減圧
装置
微粉炭
排気ファン
蒸気
バグ
フィルター
CWP混合装置
石灰石
ガスクーラー
スラリー
供給システム
CWPポンプ
エアーコンプレッサー
CWP:石炭水ペレット
灰
灰冷却パイプ
加圧容器
脱灰装置
ボイラ水
循環ポンプ
空気式灰輸送システム
熱風発生器
図-2
PICFBCシステムフロー図
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