粗飼料完全自給で 良質牛生産とコストダウンを図る長崎県諌早市赤崎町

特 集●稲わら・麦わらの活用で自給率を上げる
場を借り、近隣の畑作農家と協同すること
余剰粗飼料を販売
でイタリアンライグラス、
ソルゴーの栽培
を行って、稲わら以外の粗飼料について
稲わら
乾草
も自給率向上を図っています。
ソルゴーは
粗飼料の100%自給を果たしている徳
すべてロールに成形した後ラッピングし
永さんは、
自給分を上回る余剰について、
てサイレージとし、イタリアンは大部分を
希望者があれば販売もしています。その
サイレージに調製しつつ、一部は乾草と
販売に当たっては、飼料用に麦わらの引
しても活用しています。実際の作業に当
き合いもあるのだとか。「私のところでは、
たっては、パートナーである畑作農家と作
稲わらの自給ができていますから、麦わら
業を分担して、刈取り・反転作業はそれぞ
は専ら敷きわら用。しかし、稲わらが足り
れ自家のモア・テッダを使用して各自で行
ないという農家さんの中には、稲わらの
う一方、梱包・ラッピングについては、
パー
補助として一部麦わらを使用していると
水に対して徹底した対応を行わなければ、
トナーの方がロールベーラを操作するの
ころもあるんですよ」という徳永さん。麦
大型機械の導入、大幅な作業の効率化を
サイレージ
粗飼料完全自給で
良質牛生産とコストダウンを図る
わらは牛の嗜好性も悪くなく、昨年度は
進めることはままなりません。麦の栽培は
約6ha分、400個を越えるロールを販売
もとより、牧草・ソルゴーといった飼料作
したそうで、徳永さんの粗飼料生産は自
においても、排水性は非常に重要な課題
給自足にとどまらない広がりを見せてい
であるとあって、徳永さんは、秋にバイブ
ます。
ロ式のサブソイラをかける等、圃場の排
水改良に心を配り、さらなる飛躍に向け
長崎県諌早市赤崎町
て新たな方策を模索しています。その方
規模拡大も視野に
さらなる飛躍を目指す
徳永 正剛さん
▲サイレージも自家製のものを与えている
干拓地で取り組む畜産経営
▲堆肥はマニアスプレッダで散布している
策の一つとして考えているのが、大型トラ
クタとコンビネーションベーラの 導 入 。
畜産経営に粗飼料の生産・販売、米麦
「作業工程を短縮することで一層の効率
牛舎設備の移転を機に多頭化を決断。そ
よそ800㎏の稲わらが給餌されるといい
に合わせて、
できたロールのラッピングを
の栽培と、それぞれに力を振り向け、幅広
化を進め、
また同時に栽培面積も拡大す
れまでは会社に勤めながら家業を手伝っ
ます。「繁殖農家の仕事は増体の良い子
徳永さんが担当し、効率的に作業を進め
い取組みを継続していくためには、「作業
ることで、少頭数の農家に安定的に粗飼
ていたという徳永さんも、農繁期にはど
牛を作ること。食い込みの良い牛に育て
ています。こうした取組みによって、徳永
の効率化とコストダウンが肝要」という徳
料の供給ができるようにしたいですね」と
永さん。使用する機械のさらなる大型化
いう徳永さん。
これについては、すでに事
長崎県中央部、諌早市の東側にあたる
うしても農作業の方に手が回らなくなっ
るためには、第一胃をいかに早く発達さ
さんのところではサイレージ・乾草につい
諫早湾は、古くから干拓が進められるこ
てきたことから、
「思い切って牛にはまろう」
せてやるかが鍵となります。胃の発達を促
ても自給率が100%を上回っており、粗飼
にも大いに意欲を持っています。しかし、
業の申請を行っているところだといいます。
とで農用地として拡大・発展を遂げてきま
と思い立ち、
就農を果たしたのだといいます。
すには乾草、それと良質の稲わらが欠か
料全体としても完全自給を果たしています。
干拓地を基盤とする農業においては、排
「諫早干拓では今後、反当たりのリースが
した。諫早平野から連なる広大な干拓地
以来、お父さんや仲間から熱心に畜産技
せません」という徳永さんは、粗飼料に占
できるようになります。2年後には、
リース
では、主に水稲、大麦・小麦が栽培され、
術を学んだという徳永さんは、平成16年
める稲わらの重要性を認識し、その自給
料等の枠組みが決まりますので、その値
一帯は現在も、県下最大規模の穀倉地帯
3月の牛舎の新築も経て、現在の規模に
に努めています。
自家栽培のヒノヒカリ、
ヒ
段に見合うだけの作業、売り先が確保で
として長崎県の農業を支えています。
まで経営の拡大を図ってきました。
ヨクモチのワラを回収する一方、近隣の
きる目処が立てば、現在のパートナーと2
稲作農家と耕畜連携を図り、4ha規模の
人で6haずつくらい牧草の栽培面積を増
3頭を飼養する徳永さんの周囲も、米麦
団地で栽培されている飼料用の稲わらに
して、粗飼料の増産、販売量を増やして
を栽培する耕種農家がほとんど。地区の
ついても、収穫・回収を担当。これによっ
いければと思っています」と、地域単位で
て不足分をまかない、現在では稲わらの
の粗飼料増産を目指すべく、将来を見据
えている徳永さんです。
この干拓地内で、繁殖牛28頭、育成牛
粗飼料完全自給を達成
農家約400戸の内、畜産農家は徳永さん
を含めて2戸のみであるといいます。それ
8∼9ヶ月間飼養されて出荷される徳
100%自給を達成しています。
ら近隣農家の平均耕作面積が2ha程とい
永さんの牛は、出荷までに、1頭につきお
また徳永さんは、干拓地内に16haの圃
う中で、畜産経営の一方、もち米を含む
水稲を5.2ha、大麦・小麦を合わせて7ha
栽培している徳永さんは、耕畜両面で幅
広く、
また精力的に仕事をこなしている農
家です。
徳永さんの畜産経営は、今から20年近
く前の昭和63年、徳永さんのお父さんが
育成牛2頭を導入したことから始められ
ました。その後しばらくは5頭ほどの規模
を維持していましたが、河川工事に伴う
▲稲わらは牛の食いつきも良い
▲倉庫内にストックされた稲わらのロール
▲ネット結束で素早く形崩れしないロールが作れるというロールベーラ
▲区画の広い圃場では麦が栽培されている