3308 通信 2012 年 5 月 8 日号 佐々木冠(札幌学院大学経営学部)が担当する講義・ゼミに関する情報を伝えることを主な目的とした通信 です。大学でも学級通信みたいなものがあると面白いかなと思って作ってみました。定期刊行を目指していま す。意見、質問、要望がある学生は気軽にメールで連絡してください。 [email protected] http://ext-web.edu.sgu.ac.jp/ksasaki/ フェースブックにも出没中。 連休は雨がちでしたね。せっかく桜が咲いてきた のに外出できなかった学生も多いのではないでしょ うか。2 週間ぶりの『3308 通信』です。先週は論述・ 作文以外の講義がなかったので、お休みさせてもら いました。今週からまた週 1 回の発行に戻ります。 今週の講義 論述・作文 A (3), (5), (11) 先週の第 3 回講義で読解問題の答え合わせを行い ました。宿題をやって来なかった学生あるいは欠席 で答え合わせに参加できなかった学生は、遅れて僕 の研究室のポストに読解問題を提出したわけですが、 ちょっと注意したいことがあります。 まず、僕に宿題(読解問題)を採点してもらった 学生の中で 100 点でなかった学生は、自分の間違っ た箇所の模範解答を学習支援室で確認してください。 そして、模範解答を書き写してください。模範解答 は、学習支援室にいる TA にお願いすれば見せても らえるようにしてあります。 次に、今日講評を行うメール課題について。僕が 君たちに言いたいことを一言で言えば「メール課題 を書くときだけでなく、これからもまともな(社会 人として恥ずかしくない)メールを書き続けること」 です。どんなメールが「まともなメール」か、今回 のメール課題を通して理解できたと思います。 件名がないメール、欠席事情説明の内容なのに「論 述・作文メール課題」と件名に書いてあるメール、 アポイントメントを取るわけでもないのに「ご多忙 中恐縮ですが」と書いているメール、こういったメ ールを書いてはいけないということです。これから もメールを書く際には以下の 3 点に注意してくださ い。 (1) メールの内容を反映した件名を書いているか。 (2) メール本体に宛名と差出人(発信者)名を書いて いるか。 (3) メールの内容を反映した相手に対する気遣いの 言葉を書いているか。 教養ゼミナール A(7) 前回のゼミでは、行間に一杯書き込みをしたテキ ストを見て、 「おー! がんばってるじゃん」と思い ました。ま、当然と言えば当然ですが。どの作家で も使う語彙には偏りがあります。そのうち、レヴィ ツカの使う語彙に慣れて、辞書を引く機会も減って くることと思います。 徐々に読むスピードをアップさせて楽しみましょ う。 人間の言語のしくみ 前回は音素の概念について話しました。多くの学 生から「わかりにくい」というコメントをもらいま した。できるだけわかりやすい講義になるようにし たいと思いますが、そのために協力してほしいこと があります。 それは、 「何がわかりにくいか」明確に書いてほし いということです。例えば、 「音素の認定基準がわか りにくい」といった具合に。そうすれば、次の回に その部分について前回とは異なる説明を行うことも 可能です。 「何が」の部分を省略して「わかりにくい」 と書かれると、対応のしようがありません。 それから、わかりにくいと感じるところがあった ら、できるだけその場で質問してください。もちろ ん、小テストをやっているうちに自分がわかってい なかったことに気づくこともあると思います。その ときは小テストに「何がわかりにくかったのか」を 書いてください。 「何が」を省略しないよう、くれぐ れもお願いします。 今週からやっと座席表を配れます。遅くなって済 みません。今のところ私語も少ないし、今年度の学 生はとても講義に協力的だと思います。皆さんと一 緒によりよい講義にしていきたいと思います。 全学共通特別演習 A(2) 最近研究室をひっくり返してカウンセリングにお ける方言について扱った発表の資料を探しています。 日本方言研究会の発表原稿集に収録されているもの なので、きっと見つかると思います。見つかったら、 紹介しますね。 ルーマニア貧乏旅行ゼミ総括 (2) 前回の記事でルーマニア貧乏旅行をする企画を思 いついたいきさつについて次のように書きました。 自分の意志で自分を高めようとするきっかけを 与えるにはどうしたらいいのか、考えました。 学ぶことが「やらされるもの」である限り、自 分を高めようとするきっかけにはなりません。 自分が楽しむために何かを身につける努力をす る企画がよいのではないかと思いました。そこ で、思いついたのがルーマニア貧乏旅行です。 「自分の意志で自分を高めようとするきっかけを 与える」という目的を達成する上で何故ルーマニア 貧乏旅行がよいと思ったのか、これから 2 回に分け て説明したいと思います。今回は、 「貧乏旅行」がよ いと思った理由を書きます。ルーマニアがよいと思 った理由については次回書こうと思います。 何故貧乏旅行が「自分の意志で自分を高めようと するきっかけを与える」機会になるか。旅行会社が 企画するツアーとバックパッカーの旅の対比するこ とによって、この問いに答えることができると思い ます。バックパッカーとは、大型のリュックに荷物 を入れて安宿を渡り歩く旅行者です。交通機関も、 自転車を使ったり、地元の人が使う公共交通機関を 使います。つまり、貧乏旅行です。 現在旅行会社が様々なパッケージツアーを提供し ています。ルーマニアに行くパッケージツアーもあ ります。値段はだいたい 35 万円から 40 万円の間で す。現地で使うお金を考えるとプラス 5 万円ぐらい かかるでしょうか。パッケージツアーには添乗員が おり、観光地で日本語で解説をしてくれます。また、 泊まる場所もパッケージに含まれていますから、旅 行者が自分でホテルを予約する必要はありません。 一日の食事のうち 2 食あるいは 3 食が含まれている こともあります。添乗員が通訳を兼ねるケースが多 いので、外国語の心配もありません。集団で決まっ た日程で行動するので、自由に行動できる範囲が狭 くなる点は窮屈かもしれません。 バックパッカーの旅は、基本的に自分で企画する ものなので、値段を安く抑えられるだけでなく、自 由に行動できる範囲が広がります。僕が学生と企画 したルーマニア貧乏旅行は、最もお金がかかったと きでも一人あたり 20 万円前後でしたから、パッケー ジツアーに比べると 15 万円から 20 万円は安くつき ました。 バックパッカーの旅が安いのは、安い交通機関を 使ったり安い宿に泊まったりするからだけではあり ません。ガイドや通訳を雇わないから安いのです。 したがって、旅をする地域について自分自身で調べ る必要があるだけでなく、現地でコミュニケーショ ンをとるために外国語の訓練をする必要があります。 旅はそれ自体勉強になるものです。 「かわいい子に は旅をさせろ」と言うではありませんか。これは、 「子 供がかわいいと思うなら若いうちに苦労させておい た方がいいよ」ということですが、同時に若いうち に見識を広げておいた方がよいということでもあり ます。自分の日常とは異なる文化を持つ土地を知識 として知るだけでなく自分自身で体験することは視 野を広げてくれます。 パッケージツアーでもある程度はこうした効果を 期待できるかもしれません。しかし、貧乏旅行ほど ではないと思います。貧乏旅行では、自由に安く旅 をするために、自分の知識を増やし、スキルアップ を行わなければなりません。事前に旅先の情報を集 めます。もちろん、日本語で行う情報収集には限界 がありますから、辞書を引きながら英語や現地の言 葉で情報を集める必要があります。自由に行動する ためには、外国語を使って行動しなければなりませ ん。そうしないと、バスに乗ることもできなければ、 ホステルにチェックインすることもできません。 安く自由に旅行を楽しむためには、自分を高めな ければならないのです。知識の面でも、スキルの面 でも。貧乏旅行は、地元の人達とのコミュニケーシ ョンなしには成立しませんから、強烈な異文化体験 にもなります。視野を広げ、コミュニケーションス キルを磨き、自分を高めるのに最適だと思いません か。 近年旅行会社が学生向けに企画している海外旅行 の中には、貧乏旅行で期待できるような効果がほと んど期待できないものがあります。クリスマスが近 くなったら、生協に行ってみてください。日本人学 生だけを乗せてヨーロッパをバスで走る卒業旅行の パッケージツアーの広告を見つけることができるで しょう。バスの中では楽しいゲームもあるそうです。 でも、これって窓の外の風景が外国なだけで高校ま での修学旅行と同じではありませんか。日本の日常 を海外に持ち出したのでは異文化体験はできません。 こうしたパッケージツアーは楽かもしれません。安 心できるかもしれません。しかし、学べるもの、身 につけられるものは貧乏旅行より少ないと思うので す。 学生達に多くのものを身につけてもらう上で貧乏 旅行が期待できることが上の文章でわかっていただ けたのではないかと思います。中には、 「でも、それ って、結構ハードルが高いよね」と思った人もいる でしょう。でも、実はそうでもないんですよ。次回 は、何故貧乏旅行の目的地としてルーマニアを選ん だのかについて書きたいと思います。 お薦め図書 バックパッカーの旅に興味のある学生には以下の 本を読むことを薦めます。 沢木耕太郎(1994)『深夜特急』1-6. 新潮社(新潮文 庫) 作家の沢木耕太郎が 1970 年代に体験した貧乏旅 行を綴った旅行記。バスを主な交通手段として日本 からユーラシア大陸の西端まで移動した記録です。 この本に刺激されてバックパッカーとして旅立った 若者も多いとのこと。本学の図書館には部分的にし か入っていませんが、たいていの書店で購入できま す。 高城剛(2009)『サバイバル時代の海外旅行術』光文 社(光文社新書) こちらは貧乏旅行の参考になるノウハウが書いて ある本です。本学の図書館にも入っています。 山口誠(2010)『ニッポンの海外旅行:若者と観光メ ディアの 50 年史』ちくま書房(ちくま新書) 日本人はいつでも自由に個人的な海外旅行を楽し んできたわけではありません。それができるように なったのは、せいぜいここ 40 年ぐらいのことです。 日本人の海外旅行のあり方を歴史的にとらえたのが この本です。本学の図書館にも入っています。
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