路上障害物に起因する事故に関し、道路管理瑕疵が否定された事例

路上障害物に蛔圏する事旗に関し
道路管理瑕疵が否定された事例
ー 国道 一八号ダ ンプ 跳ね石事件 (
東京 地裁)i
事 故 に関し道路 の管 理瑕疵 が認 めら れるか否 か に
た事 例 で紹介 したと おり 、路 上障害物 に起因す る
障 害 物 に係 る事 例 を 取 り 上げ る。 「
特 集 」 に掲 げ
車 両 の現 状 に ついて」) の流 れ に沿 う 形 で、路 上
「
本 稿 にお いても 、今 月号 の 「
特集」 (
路 上放 置
はじめに
ダ ブ ルタイ ヤ に挟 み込 んだ 石 (
重 さ七 糖、長 さ 二
三 皿、 幅 一七 m、厚 さ 一四 凹 (
以 下 「本 件 石」
路」 と いう 。) の下り 車 線 を 走行 中 、先 行 車 両 が
の新潟県上越市薄袋付近 (
以下 「
本件事故現場道
分 頃 、大 型貨物自 動車を 運転 し、 一般 国道 一八号
被害者 は、昭和 五五年 二月 二二日午前 一時 一〇
一 事案の概要
の 訴 訟費用 は原告 ら の負 担 とす る。
り 本件 上告 を棄却 す る。
主文
三 判決
敦之
ついて、裁 判所 の考え 方 は 、当該道 路 の構造 、用
と いう 。) を 跳ね 上げ た た め 、 これが被 害 者 の車
故 現 場 道 路 は 、 国道 一人号 のう ち 上 越 市 市
道路局道路交通管理課 千木良
法 、場所的 環境 及び利 用実態等 の総合 勘案 と いう
両 のフ ロント ガ ラスを被 って車内 に進 入 し て頭部
役 所 前 交 差 点 か ら 北 方 約 三 〇 0 mの付 近 に
争点 (
本件 石は放置さ れて いた か) に ついて
ま ず 、 本 件 道 路 の状 況 を み ると 、本 件 事
あ り 、 ア ス フ ァ ル ト に よ って 舗 装 さ れ 、 直
所 、 商 店 等 が 立 ち 並 ん で市 街 地 を 形 成 し て
線 で見 通 し は 良 好 で、 沿 道 には 住 宅 、事 務
の
1
四 理由
管 理 瑕疵 に係 る判 断 基 準 の下、障 害 物 判 例 では 、
を直撃 し即 死した。
先行車両が本件事故現場道路を通過する前に道
二 争点
と り わけ 、当該路 上障害 物 が道 路管 理者 によ る巡
回等 にお いて発 見 さ れ て いたか否 か、仮 に発見 し
て いたとす れば 、 それを 除去 す る こと が 可能 であ
ったか否 か (
時 間的 切迫 性 の有 無● が主と し て問
いる 。 本 件 事 故 当 時 は 、 道 路 両 側 に雪 堤 が
あ り 、 路 面 は 積 雪 も な く 平 坦 で、 自 然 的 要
路 上 に本件 石が放 置さ れ て いた か。
そ の障害物 の道路上 の存在自体 が大きな争点とな っ
因 に よ る落 石等 の危 険 は 全 く な いこと は当
わ れ て いると ころに特徴 が見 られ る。本事例 では、
た事例 であ る。
ス フ ァルト が露 出 し て いるが雪解 け水 が凍結
は街 路灯等 がな いた め夜 間 は暗 く 、路 面 は ア
幅員 は約 九 ・四 mに制 限 さ れ ており、付 近 に
約 一 ・三 mの雪堤 があ ったため、通行 可能な
mであ るが、本件事 故 当 時 は道 路 両側 に高 さ
の各 規制 がな され ており 、車道 幅員 は約 三 一
た め の右 側部分 は み出 し通行禁 止 、駐車 禁止
に区 分さ れ、最高 速度 四 ○如/ h、迫 越 し の
件事 故 現場道 路 は中央 線 によ って上下 二車線
争 いのな い書 証 及び証 人 の証言 によれば 、本
事 者間 に争 いがなく 、 原本 の存在 及び成立 に
んど 一 ・二 m以 下 で、 一回だ け 一 ・八 mに至
斜 め前 方 に飛び 出す が、飛び出す高 さは ほと
ヤ で踏 み つけた場合 、 五七回 の試験 中 、 石は
〇踊/ h で走行す る右 ダ ンプ ト ラ ック のタイ
「
踏 み飛ば し実 験」 によ れば 、 石 の 一端 を 六
タイ ャに挟 み込 ん で跳ね飛ば した場合 には石
の両 側 面 に タイ ヤ痕 が付 着 す る こと 、 一方 、
った例 が認 めら れた こと 、右 のよう にダ ブ ル
回 ほぼ真 上 の方向 に高 さ約 三 m以上跳ね上 が
中 に高 く跳ね上 が る こと は少 な いも のの、 一
の車体 部 分又は地面 に衝突 し て転げ 出 し、空
く 、跳ね 出した 石 のほと んど が フ ェンダ ー等
(
タイ ヤ接 地 面 か ら 二 m以 上 の高 さ ) ま で こ
に後 続 車 両 であ る被 害 者 の フ ロ ント ガ ラ ス
ヤに挟 み込 んだと し ても右 の最微速 で走行中
走行 す る車 両 があ って、本件 石を ダ ブ ルタイ
な いのみな らず 、仮 に右道路を 深夜 最微速 で
を ダ ブ ルタイ ヤ に挟 み込 む 可能 性 は ほと んど
ーが最微 速 で進行 した場合を 除 いて、本件 石
り 、か つ、右 道路 状況 にお いては、ダ ンプ カ
制 された道路 で、事 故 発 生当 時凍結状態 にあ
ルト舗 装 の平 坦 な最高速 度 が四 〇踊/ h に規
に反す る証拠 はな い。
があ った に過ぎ な いこと が認 められ、右 認定
各 種 方法 によ る石 の跳ね 飛ば し等 の実験を 行
の石を使 用 し てア ス フ ァルト舗 装 の路 面 上 で
ック及び本件 石と ほ ぼ同 じ重量 ・形状 ・性質
す るた め道 路管 理者 が砂 を満載 した七 tト ラ
に ついて見 ると、本件事 故 の原因を 明らか に
挟 み込 ん で跳ね飛ば す可能 性 があ るか否 か等
では、 四 ○蹴/ h の速 度 で噛 み込 み試 験を し
噛 み込 み試 験」 の結 果
小間 隙 四 皿) によ る 「
路 面 上 に置 いた石 の右 ダ ンプト ラ ック のダ ブ
ルタイ ヤ (
複輪 間 の最大 間隙九 ・六七 皿、最
こ と は な いこ と 、 ま た 、 ア ス フ ァル ト 舗 装 の
にタイ ヤ痕 が付着 す るが、両側面 に付 着 す る
で跳ね上 が った例 はな か った こと 、右 のよう
に、 石 の 一端 を 踏 み つけた場合 は 石 の 一側面
以外 に未 舗 装道 路 上を走行 中 に本件 石を ダ ブ
上 に放 置 さ れ て いた と は 認 め る こと は でき
ず 、 かえ って、被害 者 の先行車 両 が本件道路
車両が本件事故現場道路を通過する前右道路
は後 に認定 す ると おり であ るから 、 これら の
現場道路 上 に放 置 さ れ て いた形 跡 がな いこと
石は本件事 故発 生 の四 〇分前 ま では本件事 故
以上 の事 実 によれば 、本件 道路 は ア スフ ァ
し て いた こと が認 められ、右 認定 に反す る証
った こと があ る に留 ま り 、 二 m以 上 の高 さま
った 結 果 、 「噛 み込 み 石 の跳 ね 飛 ば し 実 験 」
た と こ ろ 困 難 であ った た め 、 一〇 な いし 二 〇
ルタイ ヤ に挟 み込 み、 そ のまま事 故 現場ま で
③
拠 は な い。
によ れば、 石ダ ンプ ト ラ ック の後 輪 ダ ブ ルタ
如/ h程度 の速 度 に落 し て三 〇回以上 の試験
走行 す る に至 った 可能 性 が高 いと いう べき で
れを 跳ね 飛ばす こと はあり得 ず 、また 、本件
イ や に石を 挟 み込 んだ状態 で四 〇な いし六 〇
を行 ったも ののダ ブ ルタイ ヤ に挟 み込 んだ例
あ る。 なお、原告 ら は、本件 道 路 のよう に平
次 に、走行 中 のダ ンプ カーが路 面 上 の石を
皿/ h で走行 し た 場合 、 三 〇数 回 の試 験 中 、
が 一回も なく 、最微速 で前後 進 した場合 に二
坦 な舗装道 路 にお いては、路面 に凹凸 が少な
②
石を 跳 ね 飛ば す こと があ る こと 、 そ の場合 、
〇回以上 の試験 のうち何 回か挟 み込 んだ こと
事 情 にか んが みると 、本件 石 が被害者 の先行
石 の跳ね出す位 置 、跳ね 飛 ぶ方向 は 一定 でな
いた め、走行 中 の車 両 のダ ブ ルタイ ヤが路面
積 雪 の甚 だ し い地域 にあ る こと から、道 路管
さ れ て いたも ので、被害者 の先 行車 両 が これを
本件石がもともと本件事故現場道路上に放置
民間事業者 によ る巡 回 は、気象 状 況等 に照 ら
民間業者 に委 託 し て巡回を さ せ て いたが、右
か、
特 に夜 間 におけ る道 路 状況 の把握 のた め、
れ な い。
も 強弱 の変化 が少 な い結 果、 ダブ ルタイ ヤ に
ダ ブ ルタイヤ に挟 み込 んだ直後 被害者 の運転席
し て道路管 理者 が必要と 認 め る場合 に業者 に
理 者 は前 記 パ ト ロー ル カ ー に よ る 巡 回 のほ
挟 み込ま れた状態 が継続 し て いる石 が これか
に跳ね 飛ば したも のであ ると し ても 、当 裁 判所
指 示を発 し て行 わ れ、業者 は右指 示を受 け た
の凹 凸 によ って受 け る衝 撃 の変 化 も少 なく 、
ら外 れ て跳ね 飛 ぶような決定的 な契機 に乏 し
は、以 下 に述 べる理由 により 、被告 国 の本件 道
都度直ち に巡回を実 施 し、必要あ る場合 には
2
いのであ るか ら、本件事 故 現場道路 上 に放 置
路 の管 理 に瑕疵 があ ったと は いえ ず 、原告 ら の
した が ってダ ブ ルタイ ヤが 石を 挟 み込 む力 に
され て いた本件 石がダ ブ ルタイヤ に挟 み込 ま
路 面 の異 常 の有無 、障害物 の存 否等 道 路管 理
こ の点 に関す る主張 の理由 がな いも のと 判断す
証拠 (
略 ) によれば 、被告 国は 、前 記 国道
上 必 要 な事 項 に っても 実 施 さ れ て いた こと 、
れた 一瞬 ののち に外 れ て跳ね 飛んだも のであ
一人号 のうち本件事故現場道路を含む新潟県
本件事 故 発 生 の日 の前 日 であ る昭和 五五年 二
除 雪等 の作 業 を 行 う も のと さ れ て いた も の
の、右 巡 回 は 、積 雪状 況 の確 認 に留 ま らず 、
り る証拠 がなく、かえ って、平坦 な舗 装道路
内 の三七 ・三 踊 の区 間 に つき 、 そ の維 持 、修
月 二 一日、道路管 理者は道 路 パト ロー ルを実
るo
にお いても 、 ダ ブ ルタイ ヤ に石を挟 み込 んだ
繕 そ の他 の管 理 業 務 を 直 接 行 わ せ て いた こ
施 し、同 日午前 八時 三 〇分頃か ら午後 五時項
ると見 るほか はな い旨 主張 す る。 しかしな が
まま 走行 し てき た車 両 が蛇行 、急激 な加 速 あ
と 、本件事 故当時 、本件道路管 理者 によ る管
まで本件事故現場道路を含む担当区域を巡回
①
る いは減速等 を行 った こと により 、ダブ ルタ
理 は、建 設省 が定 めた道路技 術基 準及び直轄
した が、そ の際 には本件事故 現場道路 上 に本
ら、本件 にお いては、右 主張を裏付 け るに足
イヤが 石を 挟 む力 に強弱 の変化 が生 じ ること
維 持 修 繕 実 施 要領 に基 づ いて行 わ れ ており 、
を 通過す る前 に本件 石が道 路上 に放置 さ れ て
ると、被害者 の先行車両が本件事故現場道路
こ と が でき な いも のと いう ほ か な い。 し て み
るか ら、原告 ら の右 主張 は にわ か に採 用す る
ぶことも 経験 則上十分 であり得 ると ころ であ
及び凍 結 防止剤散布 の必 要性 の有無 そ の他 の
た冬期 にお いては、路 面 の積 雪 の状 況 、除雪
状 況 、特 に路面 、路肩 部等 の異 常 の有 無 、ま
ー ルカ ー によ って巡 回させ、右 巡 回は、道 路
故現場道路を含む前記担当区間を道路パト ロ
巡回班 を 編成 し、毎 日 (
職員 が勤 務を 要 しな
い日を 除 く 。) 一回 、原 則 と し て昼 間本 件 事
たが 、本件 道路 上 下面車線共 に本件 石 そ の他
従 いそ の従 業員 二名 に巡回車 により巡 回さ せ
るよう 指 示 したと ころ、同 民間業 者 は指 示 に
事故現場道路を含む担当区域 の巡回を実施す
一〇時頃 及び 翌 二二日早朝 の二回 に渡 り本件
者 は、 同 日、前 記 民間業者 に対 し、 同 日午後
状も 認 めら れなか った こと 、ま た、道 路管 理
、 は見 やす い道 理 であ り、 これら力 の変化 を契
いた ことを前提 と し て、本件 道路 の管 理 に瑕
道路管 理 上必要 な事 項 に ついて実施 さ れ て い
交 通 上支 障 とな る べき 何 ら の異 状も 認 められ
件 石 そ の他交 通上 の支 障と な る べき何 ら の異
疵 があ るとす る原告 ら の主張 は、 そ の前 提を
た こと 、 こと に冬期 にお いては、本件 道路 が
機と し て石 がダブ ルタイ ヤか ら外 れ て跳ね 飛
欠き 、理由 がな いも のと し て排斥 され るを免
であ る 二月 二 一日午後 三 時 四 〇分頃 、本件
クシー会社 の運転手 が本件事故 発 生前 の前 日
な か った こと、 さら に、本件事 故発 生前 、 タ
でき、右 推認を覆す に足り る証拠はな い。
で の約 四 〇分 の間 のであ ると推 認す る こと が
本件事 故 が発 生 した同 日午 前 一時 一〇分頃ま
道路 の管 理体 制 には、 そ の通行 の安 全 性 の確
以 上 の推定事 実 に照らすと 、被告 国 の本件
同 日午後 三 時 五 〇分頃 、同所 の上り車線を
保 にお いて不充 分 なと ころはなく 、仮 に本件
③
通過す るほか、 二社 のタク シー会 社 の運 転手
し ても 、本件 石が出 現し てから本件事故 発生
事 故 現場道 路 の下り車線 を 通過 し 、そ の帰路 、
(
二人 ) が午 前 零 時 三 〇分 頃 に上 下車 線 にお
いて、 いず れも 本件 石 が道 路上 に放置 され て
ま での時 間 が僅 か 四 0分以内 と いう 短 時 間 で
石 が本件事故 現場道路 上 に放 置 され て いたと
い る のを 発 見 し て いな い。
件事 故 現場道 路上 に本件 石が放 置 さ れ て いた
る巡回 及び タ ク シー運転手 ら によ っても 、本
右 のよう な状況 の下 では、
う べき であ るから 、
す る こと は、 およそ不可能 であ ったも のと い
発 見 の上 除去 し、道路 を安全 良好 な状態 に復
あ る こと から み て、被告 国 が遅滞 なく これを
のを発 見 し て いな いこと に加え て、本件 道 路
被 告 国 の本件道 路 の管 理 に瑕疵 があ ったも の
右事実 、特 に、道 路管 理者 、民 間業者 によ
は、平坦な直 線 の道路 で見 通 しも よく、道 路
と は認 められな いと いう べき であ る。
②
の両側 には雪堤 があ り 、路 面 が凍 結 し て いた
こと から 、車 両 の運転者 は路 面 の状 況を十 分
か つ、
注視 し つつ運転す ることが必要 であ り 、
そう す る こと が 可能 な状況 にあ ったと いう べ
き であ るから、仮 に右 道路 上 に本件 石 が存在
し て いたとす れば これを容 易 に発 見す る こと
が でき たも のと推認す る こと が でき る (
右推
認 を左 右 す べき 確 た る証 拠 は な い。) こと に
照らすと 、仮 に右 道 路 上 に本件 石が存在 し て
いたと し ても 、本件 石が出現 した時刻 は、前
記 タ ク シー会 社 の運転手 が右道路 の下り車線
を 通過 した 二月 二 二日午前 零時 三 〇分頃から