4月始業式 校長講話 - 新潟県立津南中等教育学校

4月始業式
校長講話
平成28年4月5日
津南中等教育学校長
遠間 春彦
今日から新学年が始まります。昨年、この場で皆さんと初めて会い、緊張しながらお
話したことを思い出しています。入学式が午後からだったので、2年生の皆さんはまだ
始業式にはいませんでした。
そのとき、私は公職選挙法の改正により選挙権年齢が18歳に引き下げられることに
ついてお話しました。
そして、昨年6月に公職選挙法が改正され、今年の6月19日以降に公示される国政
選挙から、投票日に満18歳になっている日本国民が投票することができるようになり
ました。
これまでどのような人たちが選挙権を行使できたかのかを見てみると、政治や議会に
対するその時代の考え方を知ることができます。今日は、少し社会科の授業のようにな
るかもしれませんが、選挙権の歴史についてお話したいと思います。
皆さんも歴史で勉強してきたように、明治時代に初めて国会がつくられたとき、衆議
院議員を選挙できたのはどのような人たちでだったでしょうか。これは、よく社会科の
試験問題にも出題されるのですが、直接国税15円以上、満25歳以上の男子という制
限がありました。このとき有権者のしめる割合は全人口の約 1.1%だったそうです。
それでは、なぜ、納税額によって選挙権を制限していたのでしょうか。それは、国会
の開設を要求していたのが主に地主や豪農などの裕福な人々であり、政治とはそのよう
な比較的裕福な人々の利益を実現するためのものと考えられていたからでした。
大正時代になり、経済が発展してくると、財産を持たない労働者も、自分たちの代表
を議会に送りたいと要求するようになりました。そのため、納税額による選挙権の制限
をなくそうという運動が盛んになります。またちょうどそのころ、隣国のロシアでは革
命が起こり、労働者などが主体となる政府が誕生しました。こうした動きに対応するた
めにも、当時の政府は選挙権における納税額の制限を撤廃し、25歳以上の男子すべて
に選挙権を与える普通選挙法を制定することとしました。
こうした、大正デモクラシーとよばれる時代風潮の中、女性の政治参加を要求する運
動も高まりを見せていきました。しかし、戦前においては、政治は男性によって行われ
るものといった考えは変わることはなく、日本は日中戦争、太平洋戦争を引き起こして
しまうことになりました。
太平洋戦争後、再出発することになった日本は、連合国軍総司令部の指令により、婦
人参政権を認めることとなりました。女性が政治に参加することにより平和的な国家が
建設できると考えたからでした。そして昭和20(1945)年、満20歳以上の全て
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の男女が選挙権を獲得するとともに、女性も被選挙権を獲得し、翌年行われた戦後初の
衆議院議員選挙では39名の女性代議士が誕生しました。そして、この国会で現在の日
本国憲法が審議され、制定されたのです。
今回、選挙権年齢が18歳に引き下げることになりました。この改正は、満20歳以
上の全ての男女に選挙権が与えられてからちょうど70年ぶりの改正になります。
満18歳以上の国民に投票権が与えられたのは、この公職選挙法ともうひとつ、憲法
改正国民投票法があります。これは、日本国憲法が定める憲法の改正手続きにおいて、
両議院の総議員の3分の2以上の賛成によって憲法改正が発議された場合、国民投票を
行い、過半数の賛成が必要とされるというものです。実際には18歳以上の人がこの国
民投票を行うことかできるようになるのは、平成30年6月以降となりますが、それで
も日本国憲法の改正について、18歳以上の国民は意思表示ができるようになったので
す。
これらの改正の意味をどう考えたら、よいでしょうか。
いままでは政治や憲法にあまり関心を持っていなかった若者にも、もっと国の在り方
を考え、積極的に政治参加してもらいたいという期待の現れだと考えますか。
それとも、どうせ若者は投票に行きはしないのだから、選挙権や投票権だけは与えて
おき、あとでいろいろな負担を負ってもらおうということだと考えますか。
私は、ぜひ前者であってほしいと願っています。
そのために、わたしたちは、政治や憲法に日頃から関心を持ち、いろいろな視点から
考えることがこれまで以上に必要になります。そうすれば、自ずと選挙や投票に行かな
ければという気持ちになるのではないでしょうか。
これは、選挙権が与えられる6年生だけの問題ではなく、1年生の頃から広く政治や
社会の問題について知り、考えてもらいたいと考えています。
そのための資料として、4月から本校の図書館でその日の新聞を3紙(地元紙1紙、
全国紙2紙)を閲覧できるようにしました。
同じ内容を報じる記事であっても、どの新聞を読むかによって賛成、反対と意見が分
かれていることがあります。自分の考える意見と同じ意見の新聞を読むだけではなく、
むしろ自分とは異なる意見の新聞を読むことによって、皆さんの思考力は間違いなく鍛
えられ、説得力も増します。ぜひ、時間をつくって図書館に行き、その日の新聞を読む
という習慣を身に付けてもらいたいと思います。
以上で今年度最初の講話を終わります。
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