理科 - 山梨県総合教育センター

平成25年度教育課程研究協議会【中学校・理科部会】
1 教育課程実施上の課題と指導上の留意点
(1) 学習指導要領の
学習指導要領の趣旨を
趣旨を踏まえた授業
まえた授業の
授業の展開
科学的に探究をする学習を重視することが重要である。その具体的な学習活動として「問題を見いだし
観察・実験を計画する学習活動,観察・実験の結果を分析し解釈する学習活動,科学的な概念を使用して
考えたり説明したりするなどの学習活動などが充実するように配慮する」ことを示している。こういった
学習を単元や1年間を見通して,どういう所に位置付けるかをしっかりと考慮し,年間指導計画を作成し
てもらいたい。その中で学習を深める場面の中では,言語活動を取り入れていくことが重要である。今回,
教科書が厚くなり,内容も充実しているが,教科書の内容を全て教えるという発想を変えなければならな
い。
言語活動の充実
① 言語活動は,今回の学習指導要領の改訂において各教科等を貫く重要な改訂の視点であり,科学的な
思考力や表現力の育成を図る観点からも充実した指導が求められる。
② 理科における言語活動の例として,下の3つが明記された。
ア 問題を見いだし観察・実験を計画したり,結果を予想したりする学習活動→中学校で少し欠けてい
た部分。生徒に問題を見いださせ,実験を計画させたり,予想させたりする。
イ 観察・実験の結果を分析し,解釈する学習活動→第1分野・第2分野の目標であり,分析・解釈が
必要。
ウ 科学的な概念を使用して考えたり説明したりする学習活動。
③ 特に分析・解釈の場面では,予想や仮説と関連付けながら表やグラフ,科学的な用語などを使用して
考えたり説明したりする学習活動が,グループや学級の話合いの中で行われ,繰り返されることにより
分析・解釈が充実し,深まっていくように指導する必要がある。
④ 科学的な用語については,言語活動の基盤となることからも正しく理解させる必要がある。また,諸感覚
を通じて感じ取ったことなどを多様な言葉で表現させる指導を継続的に行うことが大切である。特に,
中学校ではレポートの作成や発表の機会を計画に位置付け,学年に応じて段階的に指導を行う必要があ
る。
⑤ 言語活動の充実のための活用事例集について
思考力・判断力・表現力等を育む観点から,言語活動を充実する際の基本的な考え方や,言語の役割
を踏まえた指導について解説するとともに,指導事例が10事例紹介されている。
※実験結果の予想・・これを忘れがち。もしこういう実験をしたなら,自分たちの仮説が正しければ,
こういう結果になるはず。仮説が間違っていたら,こういう結果にはならないはず。仮説が合っているか
いないか等を予想させる。
中・理科1
⑥ 言語活動充実のポイント
ア 生徒の主体性を引き出す(学級環境)→導入を工夫し,驚きや新しい発見をさせ,話してみたいと
いう主体性を引き出す。指導力を上げることも必要だが,それ以上に落ち着いた学習環境を整えられ
るかがポイント。
イ 探究的な活動の中で言語活動を取り上げる→科学的思考が高まる言語活動でなければならない。話
し合いましょうという指示だけでは話合いはできず,議論にならない話合い活動では意味がない。
ウ 理科の能力が育つのに役立つ言語活動かを常に見直す→あくまで理科の能力が育つ言語活動でなけ
ればならない。活動が入ることによって,どんな理科の力がつくのかを考える。
(2) 観察・
観察・実験機器の
実験機器の点検及び
点検及び計画的整備
学習内容が充実し,それに対応する観察・実験機器も増えており,修理の必要な機器,不足している機
器等について,
理科教育設備整備費等補助金などを活用しながら計画的に整備していくことが重要である。
(3) 実践に
実践に即した研修
した研修の
研修の充実
教師の平均年齢が高くなっているが,世代交代は確実に迫っているので,そういった意味からも研修の
充実が求められている。ベテランの先生方にとっても今までの指導を見直していくことが重要になってく
る。
(4) 学習指導要領における
学習指導要領における学習評価
における学習評価への
学習評価への対応
への対応
評価規準の作成,評価方法等の工夫改善のための参考資料でも意識したのは,ある程度単元というまと
まりの中で指導と評価を行ってもらいたいということである。評価の実施時期,評価方法の見直しを機会
あるごとに行ってもらいたい。また,教師が無理なく指導と評価を行い,その中でPDCAサイクルを
確立していくことが重要である。
(5) 全国学力・
全国学力・学習状況調査等の
学習状況調査等の活用
全国学力・学習状況調査やTIMSSの調査問題の結果だけでなく,質問紙の調査の結果等を多面的・
総合的に分析し指導改善に結び付け,本当の課題を分析した上で対応していくことが重要である。良い所,
課題点をよく見て実際の指導に生かすとともに,学習の状況を見て改善を図ることが必要である。
(6) 理科関連事業の
理科関連事業の推進
科学の甲子園ジュニアも予選が重要である。一人では解くことができない問題を,友達のアイディアを
もらいながら解いていく。生徒たちの意欲がでるような展開をお願いしたい。
2 全国学力・学習状況調査について
(1) 平成24
平成24年度全国学力
24年度全国学力・
年度全国学力・学習状況調査の
学習状況調査の追加分析結果
① 分析結果から見られる特徴的な傾向
ア 教師と生徒の理科についての意識と平均正答率に関する分析
・生徒の理科の授業に対する意識が高いと平均正答率が高い傾向が見られる。
・指導のねらいが必ずしも生徒に認識されているとはいえない傾向が見られる。
・指導のねらいに対して肯定的に回答している方が生徒の平均正答率が高い傾向が見られる。
イ 知識・技能の習得と活用に関する分析
・複数の領域に共通した課題が見られる。
・国語の授業で自分の考えを書くとき,考えの理由が分かるように気を付けて書いていると回答した
生徒の方が,理科の「記述式」に関する問題の平均正答率が高い傾向が見られる。
・数学の問題で簡単な比例式を解くことや表から必要な情報を適切に選択し処理することができてい
る生徒の方が,理科で式を立て計算する問題の正答率が高い傾向が見られる。
② 分析結果を踏まえた指導改善のポイント
ア 科学的な思考力や表現力の育成
理科の指導において,生徒自らが学習の目標を認識して,学習活動に取り組むようにすることが大切
である。そのために,問題を見いだし,観察.実験を計画する学習活動,観察,実験の結果を分析し解
釈する学習活動,科学的な概念を使用して考えたり説明したりするなどの学習活動が充実するように配
慮する。また,各教科等の言語活動を,理科の学習活動にも生かすことが重要である。
中・理科2
イ 基礎的・基本的な知識・技能の習得
【各領域に共通】
・電力量や質量パーセント濃度などを扱う際に,量的な関係の意味を理解する。
・観察・実験の結果を,表にまとめたり,数値を処理したり,グラフ化したりする。
【物理的領域】
・電力や電力量などの物理量の意味を理解する。
【化学的領域】
・質量パーセント濃度の意味を理解する。
・化学的な事物・現象について粒子のモデルと関連付けて理解し,説明できるようにする。
【生物的領域】
・花の模式図や植物の模型を使って,生物の体のつくりの共通点や規則性を見いだす。
【地学的領域】
・気体に関する知識を,活用できる知識として身に付ける。
(2) 観察・
観察・実験の
実験の技能の
技能の習得状況に
習得状況に関する分析
する分析(
分析(概要)
概要)
① 調査分析結果から見られる特徴的な傾向 (◇多くの生徒ができている技能 ◆課題のある技能)
ア 観察・実験の技能の習得状況から見られる傾向
【全体的な状況】
◆技能に関する知識はあっても,実際に技能を使えない場合がある。
◆普段の授業においては観察・実験を班として行うことはできているが,一人一人の技能の習得は不
十分なものがある。
【物理的領域】
◇回路図を見て,豆電球,抵抗,電池からなる回路を実際に組み立てられる。
◇電流計を用いて,電流を測定する回路図がおおむねかける。
◇電流計を用いて,豆電球に流れる電流を測定できる。
◆電流の測定において,電流計の端子を適切に選択し,最小目盛りの 1/10 まで読み取ることに課題
が見られる。
【化学的領域】
◇5%塩化ナトリウム水溶液を 100g つくるのに,必要な水の質量を正しく計算で求められる。
◆メスシリンダーを使った水の体積の測定において,最小目盛りの 1/10 まで正しく読み取ることに
課題が見られる。
◆5%塩化ナトリウム水溶液を,適切な操作で 100g つくることに課題が見られる。
【生物的領域】
◇顕微鏡の使用において,高倍率でピントを合わせられる。
◆顕微鏡の使用において,最初に低倍率の対物レンズから始め,段階的に高倍率にして観察すること
に課題が見られる。
◆顕微鏡を使った観察において,対象物を的確に捉えて,生物のスケッチの方法に基づいてスケッチ
することに課題が見られる。
【地学的領域】
◇堆積岩や火成岩の観察において,岩石を比較するための視点を挙げられる。
◆堆積岩や火成岩の観察において,ルーペを正しく使用することに課題が見られる。
イ 学力調査の結果と技能の習得状況から見られる傾向
学力調査で課題が見られた技能について,実技を伴う調査を行ったところ,次の課題が見られる。
【測定値の読み方の技能】
◆学力調査において,「電流計の読み方の技能」を問う設問2(1)の正答率は 45.4%あり,課題が
見られた。本調査分析においては,「電流計を接続して,端子を選んで,最小目盛りの 1/10 まで
読み取ること」及び「メスシリンダーの読み取りにおいて,最小目盛りの 1/10 まで読み取ること」
に課題が見られる。これらの結果から,測定器具の値の読み方の技能が身に付いていない生徒がい
ることが考えられる。
中・理科3
【一定の濃度の水溶液をつくる技能】
◆学力調査において,「『特定の質量パーセント濃度の水溶液をつくる』という技能」を問う設問(1)
の正答率は 52.0%であり,課題が見られた。本調査分析においては,「一定の濃度の水溶液をつく
るために必要な水の量を計算で求めること」はできるが,「実際に水溶液をつくること」に課題が
見られる。
② 調査分析結果を踏まえた指導改善のポイント
【各領域に共通】
・基礎的・基本的な技能でも一人一人に身に付いていない場合があることを踏まえ,観察・実験を個
別に行うような場面を設定することが大切である。
・生徒相互に技能を確認させ,技能の定着を図る場面を設定することが考えられる。
【物理的領域】
・生徒一人一人が実験を通して,測定の意味や技能を身に付けるよう指導することが大切である。
・電流計を用いた電流の大きさの測定では,電流計の端子を適切に選択し,最小目盛りの 1/10 まで
読み取れるようにするためには,精度の良い観察・実験の器具を整備し生徒一人一人が実験に取り
組めるようにすることが重要である。
【化学的領域】
・メスシリンダーを用いた測定では,目の位置を読み取る面と水平にして,最小目盛りの 1/10 まで
読み取るように指導することが大切である。
・塩化ナトリウム水溶液(食塩水)など安全な水溶液を扱う際,一定の質量パーセント濃度の水溶液
を適切な操作でつくることができるように指導する。その際,生徒一人一人が実験を通して,体験
的に身に付けることができるように指導することが大切である。
【生物的領域】
・顕微鏡の扱いやスケッチの仕方については,中学校の3年間を見通して,定着させることが大切で
ある。
・顕微鏡を用いた観察では,低倍率で視野を広く観察してから,段階的に高倍率で詳細に観察してい
くことの意義を,体験を通して指導することが大切である。
【地学的領域】
・堆積岩や火成岩の観察において,比較する視点を明確にして,適切に観察結果を記録することが大
切である。科学的な根拠を踏まえて岩石を分類できるように指導することが大切である。
3 科学の甲子園ジュニア山梨県大会について
(1) 目
的
山梨県内の中学生が集い,科学の楽しさ,面白さを知り,科学と実生活・実社会との関
連に気付き,科学を学ぶことの意義を実感できる場を提供することにより,科学に関する
興味・関心を高めるとともに,未知の分野に挑戦する探究心や創造性に優れた人材を育成
する。
また,第1回科学の甲子園ジュニア全国大会への山梨県代表選手の選考会を兼ねる。
(2) 日
程
平成25年11月2日(土) 午前 筆記競技・実技競技
午後 表彰式・閉会式
筆記競技と実技競技からなる。理科・数学等の複数分野において,実生活・実社会との
(3) 競技内容
関連,融合,領域に配慮した出題とし,生徒の習得済みの知識に加え,競技に必要な新た
に示された情報を統合することで課題を解決する内容とする。
(4) 参加資格 ① 山梨県内の中学校1,2学年に在籍する生徒で,3人を1チームとし,各校2チーム
まで出場できる。
② 引率責任者は校長が認めた当該校教員とし,引率責任者の引率がない場合は競技に参
加できない。
中・理科4