糖尿病患者の栄養管理

Interview
◉臨床現場訪問 ❹
糖尿病患者の栄養管理
∼高血糖に配慮した流動食の投与により血糖コントロールが改善した症例∼
医療法人社団啓卯会 村上記念病院 副院長▶
山辺 瑞穂 先生
MIZUHO YAMABE
事による栄養補給が不能あるいは困難な場合の栄養
には超速効型インスリンの投与を中止することができました
(図1)
。
管理の手段として、
各病態に適した経腸栄養剤は大き
DIMSが患者さんに合って、
食後の過血糖が改善されたのだと思い
な武器となりますが、
その選択は患者さんの状態等に
ます。
DIMS は、
食物繊維が多めに含まれていることもあり、
この
あわせて適切に行うことが重要になります。
血糖管理に配慮した
患者さんにおいては、
血糖の上昇が他の流動食に比べて非常に緩や
流動食がいくつか市販されている中、
その一つとしてDIMSを選択
かでした。
そのため、
おそらく24時間持続効果のあるインスリンで
したところ、
血糖コントロールが改善してインスリンの投与回数も
十分対応ができたということだと思います。
食
減らすことができた症例を経験しました。
本症例はケースレポート
また、
血清総蛋白、
アルブミンは、
入院時 5.5g/dL、
2.6g/dL から
として学会でも発表いたしました。
2カ月後には7.0g/dL、
3.8g/dLと栄養状態も改善してきています
症例❶
寝たきり患者の血糖コントロール改善例
(図2)
。
こうした数値は栄養がしっかり吸収されていなければ上
がってきませんから、
吸収が良好に行われ、
なおかつ食後の過血糖
も悪化しなかったのではないかと思います。
また、
DIMSにはビタミ
症例1は、
2 型糖尿病で、
心筋梗塞、
心不全、
脳梗塞を併発した
70歳の女性です。
2008年4月4日に肺炎と急性心筋梗塞で他院
ンB1 などが強化されています。
糖のエネルギー消費には補酵素と
へ入院されました。その後心肺停止状態となり、
蘇生後脳症で寝た
してビタミンB1 が使われますので、
そういった点もプラスに働いた
きりになってしまったケースです。
経口摂取不能のため、
PEGが造設
のではないかと推測されました。
されて、
4月29日より一般的な組成の流動食が投与されていまし
症例❷
たが、
かなりの高血糖状態で1日4回の強化インスリン療法を行っ
褥瘡を有する高血糖昏睡患者
てもあまり改善されないということで、
5月12日に当院へ加療目的
もう一症例は、
91歳、
女性です。
65歳の時、
糖尿病と診断され治療
にて入院されました。
を開始しました。
最近は糖尿病治療のための薬剤は服用されておら
当院では、
血糖コントロールの改善目的にて、
DIMSを使ってみる
ず、
2007年末より近医で下剤を処方されていました。
2008年6月16日、
ことにしました。
流動食を続ける上では、
腹部膨満と下痢がやはり
近医往診にて体温37.8度、
食欲不振にて輸液を行っています。
その
非常に気になります。
そこで、
最初は600kcal/日
(朝、
昼、
夕200mL
後入院加療か在宅治療か様子を見ているうちに、
6月20日、
様子が
を30 分くらいかけて投与)
ぐらいから開始して、
あまり頻繁に下痢
おかしいということで当院へ救急車で搬送されてきました。
をするようでは脱水になってしまいますから、
排便の状態を見なが
入院時は高血糖昏睡で血糖値は998mg/dLありました。
高血糖・
ら3∼ 4日かけて徐々に増量し、
最終的に1200kcal/日にもってい
高浸透圧症候群は生命の危険がありますから、
すぐに生理食塩水
きました。
及び1/2生理食塩水での脱水の是正とインスリン持続静脈内投与
といった治療を開始しました。それと同時に発熱もあり、高齢の
血糖の上昇が他の製品に比べて非常に緩やか
方は感染症を合併するとこうした状態に陥りやすいため抗生剤も
投与して対処しました。
この患者さんは、
最初はインスリン投与量がかなり多く、
超速効型
Ⓡ
インスリンアスパルト
(ノボラピッド )
を朝8単位、
昼10単位、
夕8
状態が落ち着いたところで、
栄養管理を開始する際、
当初ご家族
単位、持効型インスリングラルギン
(ランタスⓇ)
を夕8単位という
が経口摂取を強く望まれたため、
管理栄養士もいろいろ協力してく
方法で投与していました。
それでも血糖値があまり改善されなかっ
れて刻み食やとろみ食を提供したのです。
患者さんは首を振ったり
たのですが、
流動食をDIMSに変えたところ大幅に改善し、
最終的
うなずいたり、
発語もあるのですが、
なかなか経口摂取がうまくい
きません。
この患者さんは仙骨部
に褥瘡もあったので、
「とりあえず
栄養がしっかり入らないと床ずれ
も治りませんから、
栄養を入れると
いうことが元気になる前提です。
」
といった旨をお話しして娘さんの
了解を得て、
経鼻経管栄養を開始
しました。
しかし、
自己抜去するこ
ともあったため、
最終的にはPEG
を選択しました。
経管栄養のチュー
図1 血糖値の変化
図2 入院中の栄養状態
03
ブを留置することによって確実に
Interview
ている中、
個々の病態に合った流動食を選択する必要性をさらに
痛感しています。
今回ご紹介した症例のように、
疾患に適した流動食
を選択することにより、
インスリン投与量の減量や血糖コントロー
ル、
栄養状態の改善につなげることができました。
この2症例以外
にも、
インスリンを1日4回投与していた症例にDIMSを投与して
管理したところ、
1日1回のインスリン投与で済むようになり、
在宅
あるいは療養施設でもあまりQOLを損ねることなく管理できると
いうことで介護の方に非常に喜ばれた症例があります。
やはりバランスのとれた栄養補給が重要
図3 血糖値の変化
一方、
糖尿病に配慮した流動食においては、
糖質の含有量を抑え
栄養と水分が入りますし、
娘さんが非常に熱心に在宅で介護されて
た組成なども考えられていますが、
例えば PEGなどの経管栄養投
いますから、
家に帰りやすい方法ということでお勧めしました。
与の場合はどうしても使用が長期にわたることが多く、
やはり極端
な栄養組成には注意すべきでしょう。
食物繊維などで血糖のコン
血糖コントロールが容易となり褥瘡も治癒
トロールを工夫し、
バランス良く三大栄養素やビタミン、
ミネラルを
DIMS は、
6月30日より経鼻にて1日600kcal
(1日3回投与)
摂取しないと、
患者さんはなかなか元気にならないですね。
一般的
から開始し、徐々に腹部の状態を見ながら増量していきました。
な健康食のバランスに一番近いもの、それに加えて食物繊維が
7月13日より1200kcal 投与を続けたところ、
この方も血糖コント
豊富であるということが、
糖尿病患者さんへの流動食投与に求め
ロールが非常に改善されてきました。
血糖が下がってきたら、
静脈
られる条件なのではないかと思っています。
内インスリン投与からいったん強化インスリン療法に切り替えまし
た。
強化インスリン療法で落ち着いてきたところで、
超速効型イン
患者さんのQOLを高める努力を
スリンを中止し、
持効型インスリングラルギン
(ランタスⓇ)
を1日2回
糖尿病はインスリンを使えば血糖のコントロールはなんとか可能
に分けて投与しています
(図3)
。
です。
それよりも、
例えば閉塞性肺疾患や癌があったり、
感染があっ
2回に分けた理由は、
インスリンの効果がおよそ24時間持続す
たりしたら、
まずそちらを考えてあげるべきだと思います。
その患者
るため、
過剰投与による低血糖を防ぐためです。
血糖を見ながら量
さんにとって何が一番 QOLに影響を及ぼすのか、
ということです。
の調節をして、
血糖が高ければ少し増量するということをしながら
例えば糖尿病があっても、
末期のがんであれば、
私は家族の人に
治療を続けました。
も全く食事の内容について制限をさせません。
それは患者さんに
栄養状態に関しては、
当初経口摂取を行ったときに食べられず
とって残された時間を有意義に使っていただくことの方が大事で
に急激に低下した血清総蛋白やアルブミンあるいはコリンエステ
はないかと思えるからです。
やはり人は食べる楽しみを制限される
ラーゼの値も徐々に改善し、
肌つやも良くなり、
褥瘡も入院時はか
というのは非常に苦痛なのです。
そうしたQOL を大事にしてあげ
なりひどい状態でしたが、
退院時にはきれいに治癒しました。
たいですね。
今後も患者さんのQOLの向上のためにも、
栄養士と
ともに症例の病態を把握し、
介入していく必要性を感じています。
適切な流動食の利用でインスリン投与量が
減量できる
さらに、在宅ケアにおける地域連携をうまくとっていき、退院後の
管理や QOLの向上についても貢献できればと考えています。
これらの症例の治療を通じて、各病態に適した流動食が増え
1
クロスワードパズル
1
全てのマスをアルファベットで埋めてキーワードを導き出してください。
当てはまる解答の全ては DIMS の製品特長に関連しています。
タテのヒント!
L
3
2
1 IMSは、抗酸化作用を持つ○○○○○○○C や E を強化しています。
■D
■
2
■脂肪酸○○○は、血糖値や中性脂肪を下げる作用があります。
3
■糖尿病の食事療法では、
○○○○○を1日当たり20∼ 25g 摂ることが推奨されています。
2
3
ヨコのヒント!
T
1
■プレバイオティクスの1つである○○○○○糖
2
■DIMS
は、良好な栄養○○○○○○○です。
4
3
■糖尿病の米名は?○○○○○○○○
4
■脂肪酸○○○は、血糖値や中性脂肪を下げる作用があります。
◉キーワード:□
(太枠)
を組み合わせてください。 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドラインに沿った
□□□□
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04
熱量
たんぱく質
脂質
糖質
食物繊維
200kcal
8.0g
5.6g
28.6g
4.8g
ビタミン C
ビタミン E
オリゴ糖
DHA
EPA
200 ㎎
20.0 ㎎
0.2g
34 ㎎
50 ㎎
●DIMS 熱量・栄養成分
(1本 200ml当たり)