知の知の知の知 - 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会

い~な
あまみ
中 央
しらさぎ
さくら
大阪+知的障害+地域+おもろい=創造
知の知の知の知
社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 社会政策研究所情報誌通算 1407 号 2013.6.29 発行
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くらしナビ・ライフスタイル:エスカレーター「片側空け」
交通弱者から切実な声
毎日新聞 2013 年 06 月 28 日
エスカレーターを歩いて上り下りする人のために片側を空けるのは是か非か−−。この問
題を取り上げたくらしナビ面や社会面(東京本社夕刊)の記事に、300通を超えるご意
見をいただきました。この問題について改めて考えます。
いただいたご意見の約6割が、片側空けに反対する内容だった。特に、高齢者や障害者
ら「交通弱者」からの切実な声が目立った。
●6割「歩かないで」
半年前に膝を悪くしたという東京都文京区の主婦、稲毛和子さん(66)は「下りエス
カレーターは膝への負担が重い。隣を歩かれると不安なので、歩く人は階段へ」と訴える。
左足に障害があるという福岡市東区の病院職員(61)は、エスカレーターに乗る時、
右手でつえを持ち左側に立つが「障害の部位によっては右側に立つ人もいる。両者が混在
したエスカレーターで歩くと、荷物などが周囲の人に接触して、転倒事故を引き起こすリ
スクが高まる」と恐れる。
東京都羽村市の元団体職員(69)は、ダウン症の子とエスカレーターに乗る時、比較
的筋力がある右手で手すりを持たせるために右側に立たせるようにしているが「後ろから
歩いてきた人に押しのけられ、転倒したことがある」と嘆く。
危険性だけでなく、片側空けの非効率さを指摘する意見もあった。さいたま市中央区の
元会社員、井関治さん(74)は「朝夕のラッシュ時間帯、自宅最寄り駅のエスカレータ
ー左側の乗り口に10メートル前後の行列ができている。歩く人が使う右側はがら空き。
みんな何と『マナー』の良いことか」との声を寄せた。
●「急ぐのは国民性」
時間に追われる現代人の暮らしを反映してか、片側空けを支持する声も多数届いた。
茨城県牛久市の塾講師、六信(むつのぶ)和樹さん(28)は、千葉県柏市内の勤務先
から帰宅する時、立っている人に配慮しながらエスカレーターの片側を歩く。「夜間は1本
逃すと次の電車まで30分くらい間隔が空き、帰宅が遅くなる。乗り換えに失敗したら精
神的ダメージが大きい」からだ。
東京都江戸川区の会社員(27)も「駅のエスカレーターでは歩くことが多い」という。
「ステップの左側は、立って乗る人が並んで行列ができている。長く並ばないといけない
ので煩わしい」
。さらに、時間を守ることを厳しく求める日本社会の特徴を強調。「エスカ
レーターで、歩いてまで先を急ぐ人を抑えることは、国民性を変えなければ無理です」と
いう。
海外の事例から片側空けを容認する声もある。大阪府羽曳野市の宮田和彦さん(45)
は「ロンドンの地下鉄駅では『立つ人は右側へ』と明示されている」と指摘。ニューヨー
クでの勤務経験がある大手旅行会社員(51)は「駅では立つ人が右、歩く人は左だった」。
同社の別の社員(52)は、昨年まで3年間滞在した中国・北京の地下鉄駅で片側空け
を見た。
「2008年の北京五輪を契機に、マナー向上の観点から政府が呼びかけた」とい
う。
●「高速」併設しては
エスカレーターの片側空けは日本でも、通勤客の「マナー」として浸透した。ただ、政
府の高齢社会白書(13年版)によると、12年の日本の高齢化率(総人口に占める65
歳以上の高齢者の割合)は24・1%。60年には39・9%に達すると推計されている。
高齢化が進み、駅を利用する「交通弱者」が増えれば、これまで「常識」だった片側空け
のマナーも、見直しが必要になりそうだ。
だが、人々の「善意」によって浸透した片側空けを見直すことは容易ではない。誰もが
安心して便利にエスカレーターを使うには、どうしたら良いのか。
川崎市川崎区の主婦(46)は「年数回訪れる英国では、エスカレーターの速度が日本
よりかなり速かった。あれを歩こうとは思わない」と、エスカレーターの速度を上げ、人々
が歩かないようにする方法を提案した。
高速のエスカレーターだけしかなければ、高齢者はエスカレーターに乗ること自体が難
しくなる。東京都武蔵野市の短大講師(60)は「弱者のために高速と低速のエスカレー
ターを併設してはどうか」というアイデアを寄せた。
大阪ガス行動観察研究所の松波晴人(はるひと)所長は、利用者の心理に働きかける方
法を提案する。
「ステップ中央に縦線を引いて、両側に足形を描き、2人分の立ち位置を認
識させる」
。乗客が自然に立ち止まるような形に誘導する、というわけだ。
立場によって意見が分かれるエスカレーターの片側空け。その是非は現状では簡単に決
められないが、松波所長は「まずは乗客一人一人が自分の問題としてとらえることが大切
です」と訴えている。
【太田圭介】
◇けが人、半数は60歳以上
日本エレベーター協会が08〜09年、エスカレーター事故でけがをした人について調
査したところ、約半数の48%が60歳以上だった=グラフ。
ビルなどに設置したエスカレーターの維持・管理をしている三菱電機ビルテクノサービ
スは「エスカレーターに乗る行為は、体力や判断力が落ちた高齢者にとっては一定のリス
クがある」と話す。
乗るだけでも不安が大きいエスカレーターで、さらに歩行者との接触の危険を感じると
なれば、高齢者らがエスカレーターに安全に乗ることは、かなり難しくなってしまう。
ペースメーカー装着者 障害判定見直し
中日新聞 2013 年 6 月 28 日
現在一律に身体障害者手帳の一級に認められている心臓ペースメーカーの装着者につい
て、厚生労働省は原則、装着後の状態で判断する新しい判定基準を示した。ワーキンググ
ループ(WG)の議論を経て、同省は新基準を決める。新基準は制度改正後に新たに認定
する患者に適用する。
ペースメーカーは小型化、高性能化が進み、装着後、ほぼ支障なく生活できる患者が増
えているとされ、他の障害者とのバランスを取って見直すべきだとの意見がある。基準案
を示されたWGでも、
「装着した状態で判定すべきだ」との意見が相次いだ。
一方、身体虚弱で従来基準を適用すべきだと、家族らが要望していた先天性心疾患の患
者について、同省は引き続き「一律一級」の方針を示した。成人では装着後、日常生活が
極度に制限される人に一級を限定する。新基準などの方針は、十七日に同省であったWG
初会合で示された。
身体障害者手帳を取得すると、税制の優遇や医療費助成などが受けられる。業界団体に
よると、毎年三万人以上が新たにペースメーカーを装着し、大半は高齢者という。
ひと:澤田真一・池谷正晴さん
陶芸作品を国際美術展に
毎日新聞 2013 年 06 月 28 日
何を表現したのかを語ることはないが、顔のある陶芸作品は、どれも細かいトゲのよう
な突起で覆われている。作者の澤田さんは、自閉症であり知的障害者。作品は、世界最大
の国際美術展「第55回ベネチア・ビエンナーレ」でも注目を集めた。「『障害者アート』
の壁を超え、芸術作品として認められた」。指導する池谷さんは喜ぶ。
池谷さんは陶芸のプロではない。高校時代、障害児教育の先駆者の著書に感銘し、大学
卒業後、滋賀県で重度障害児施設に就職。それを機に、障害者の余暇活動として教えるた
め、陶芸を学んだ。一方、澤田さんも、授産施設の運営法人が設けた窯と作業小屋に連れ
られて行くと、自然に粘土をこね出した。
そんな二人の出会いは2001年。澤田さんが他の作品を手本に作った鬼の面を見た池
谷さんは「一瞬たじろぐ迫力があった」と振り返る。
作業小屋で二人の間に漂う空気は、
「師弟」と呼ぶにはほど遠い。無言で粘土と向き合う
澤田さんの隣で、池谷さんはコーヒーをすする。「教えるな。ただ待て」。障害者の創作活
動の支え方を説いてくれた人の教えを守る。澤田さんの表情や何気ない仕草から、何を求
めているのかを想像し、道具を作業机に置く。あうんの呼吸だ。
澤田さんは完成した作品に二度と興味を示さない。「多くの人に認められても、真ちゃん
はどこ吹く風だ」と池谷さん。世間と折り合いをつけられない「個性」は、一流の芸術に
昇華した。
【加藤明子】
【略歴】さわだ・しんいち、いけたに・まさはる 澤田さんの作品はスイスの美術館で
常設展示。池谷さんは京都市出身。2人とも滋賀県在住。澤田さん31歳、池谷さん80
歳。
「みんなとずっと仲良く」
、知的障害者らの七夕飾り展示/秦野
神奈川新聞 2013 年 6 月 28 日
来館者を和ませている七夕飾り=秦野市入船町の本町公民館
知的障害者とボランティアが手掛けた七夕飾りが7月7日まで、秦野市
入船町の本町公民館に展示されている。
飾り付けたのは、同館を拠点にスポーツや手工芸などに取り組む「たけ
のこ学級」のメンバーとボランティア計約50人。
約4メートルのササに折り紙やチラシを使って飾り付け、願い事を記し
た短冊を取り付けた。多いのは「みんなとずっと仲良くいられますように」
「友達ができますように」といった願い事。中には、アイドルグループの名を挙げて「コ
ンサートに行きたい」と書き込んだ短冊も見られた。
地域ぐるみの非行少年更生支援で広報映画 朝日大生が製作
岐阜新聞 2013 年 06 月 27 日
広報映画の撮影に挑む朝日大学BBS会の学生ら=岐阜市金町、金公園
地域ぐるみで少年の非行防止や更生支援に取り組む法務省
の「社会を明るくする運動」県推進委員会の広報映画製作に、
朝日大学(瑞穂市穂積)
「BBS会」の学生12人が取り組ん
でいる。撮影はすでに終え、現在は7月の「社会を明るくする
運動強調月間」を前に、編集作業に追われている。映画は今後、テレビ放映や講演会など
で利用される予定だ。
「BBS」はBig Brothers and Sistersの略。同会は、非行
や虐待などの問題を抱える少年ときょうだいのように寄り添い、一緒に遊んだりすること
で更生支援に取り組んでいる。
映画は、非行少年と周りの人との関わりがテーマ。たばこを吸い警察官ともめ事の絶え
ない17歳の主人公が、非行から立ち直り地域の人らに支えられながら懸命に生きる姿を
描く。作品は約15分。
原作は、昨年度の同委員会の作文コンテストで優秀作品に選ばれた大垣市の小学生の作
品。同委員会が同大BBS会に製作を依頼した。
撮影場所やセットの準備なども学生が中心となって行った。こわもての主人公を演じた
のは同大3年の足立定明さん(21)
。リアリティーを出すため、髪の毛を金髪に染める力
の入れようで、
「一人でいると非行に走りやすくても、近くに思いやる人がいれば止められ
る、ということを伝えたい」と話す。
岐阜保護観察所企画調整課の長尾和哉課長は「若い世代が、非行や犯罪を犯した人を見
捨てず、身近な問題と捉え、活動してくれている。頼もしいかぎり」と期待を寄せている。
若者対象の「3分映画祭」
12月初開催
十勝毎日新聞社 2013 年 06 月 27 日
帯広市内で若者支援に携わる「NPOふらっとほーむ群々かふぇ」
は、十勝・帯広を発信する映像を公募して上映する「とかち・おびひ
ろ 3min 映画祭」を12月に初めて開催する。コンセプトは「若
者の、若者のための、若者による映画祭」−。映画祭を運営するスタ
ッフと協賛者、作品を募集している。
「若者の感性を生かした作品を」と作品を呼び掛ける若菜さん(右)と渡邊さん
同NPOは、子供の不登校や発達障害、若者の就労支援に携わる高
校教員の菊地信二さん(54)
、管内小・中学校、高校のスクールカウンセラー若菜順さん
(52)
、ジョブカフェ・ジョブサロン帯広のキャリアアドバイザー渡邊久恵さん(52)
が、昨年4月に立ち上げた。帯広市民活動交流センター(藤丸8階)で毎月1回、「群々か
ふぇ」を開き、4〜10人の若者が交流や創作活動を楽しむ。
「映画祭」は、若者の得意分野を発揮できる場をつくり、地域活性化につなげたいと考
え、アイデアを温めてきた。デジタルカメラや携帯電話の普及で気軽に動画が撮影できる
ようになり、パソコン技術に詳しい若者世代も多くいることから企画。市の「市民提案型
協働のまちづくり支援事業」に選ばれた。
現在、カフェに集う約10人が中心となり、ポスター作りやコマーシャルの映像、音楽
の制作に携わる。今後、管内の高校放送局にも協力を募るほか、“実行部隊”となって手伝う
メンバーも探す。
作品は、十勝・帯広の「街・人・風景・生活」をテーマとした3分間以内の映像(未発
表に限る)
。応募できるのは、1975年4月1日〜98年4月2日生まれのアマチュアの
グループか個人。
映画祭は12月1日、市図書館多目的視聴覚室で、応募作品の中から約20本を上映す
る。映画自主上映グループのNPO法人「CINEとかち」の豊島晃司代表らが審査に当
たり、グランプリには賞金5万円、オーディエンス賞3万円も用意する。
若菜さんは「若者たちが社会、まちづくりに携わるきっかけにしたい」
、渡邊さんは「若
い人の感性で十勝を捉えた作品を応募してほしい。撮る人、見る人、運営する人、みんな
で楽しめる映画祭にしたい」と呼び掛ける。
応募先はDVDの場合、〒080−8799 帯広郵便局留「とかち・おびひろ3min
映画祭」宛て。動画投稿サイトのYouTubeからも応募できる。9月30日必着。
問い合わせは、Eメールgunguntokachi@hotmail.co.jp、
電話070・5065・8547へ。
南石垣支援学校職業コース4人が校外作業
大分合同新聞
2013 年 06 月 27 日
菓子の箱詰めに取り組む生徒たち=農協共済別府リハビリテーションセ
ンター内の障害福祉サービス事業所「みのり」
別府市の南石垣支援学校(安東康二郎校長)高等部の職業コ
ースに通う2年生4人が本年度から、校外作業に取り組んでい
る。知的障害のある生徒に、仕事への意欲や働く上で必要なコ
ミュニケーション能力を身に付けてもらうのが目的。生徒は自
分の力で作業場に通い、大人の障害者と一緒に仕事をしながら
社会経験を積んでいる。
校外作業は毎週水曜日に農協共済別府リハビリテーションセンター内の障害福祉サービ
ス事業所「みのり」で実施。スクールバスを使わず、自宅から施設まで路線バスで通う。
みのりで働く障害者と一緒に、栽培しているミニトマトの収穫や選別作業、地元企業から
受託した菓子の箱詰めなどに挑戦している。
通い始めて2カ月が過ぎ、生徒も作業に慣れてきたようで、
「たくさんの人と働くことが
楽しい」
「少しずつ作業に慣れてきた」と手応えを感じている。
2学期からはセンター内で介護補助や清掃作業にも挑戦するという。センターの佐藤義
智・福祉就労課長(48)は「4人はとても頑張っている。卒業後も地域で安心して暮ら
せるよう、できる限り協力したい」と期待する。
職業コースは2012年度、知的障害のある生徒が通う県内四つの特別支援学校に新設。
2年生からコースに分かれ、卒業時に企業などへの一般就職を目指す。
同校進路指導主任の福地広之教諭(51)は「学校の中だけでは学べない仕事の厳しさ
や責任の大きさを感じているようだ。社会への適応力を高めてほしい」と話している。
障害者のパン店、本格営業
中國新聞
2013 年 6 月 27 日
商品を並べる中村さん(右)たち
広島市東区の社会福祉法人交響
が26日、同区若草町にパン店「ベ
ーカリーカフェロンドンSOAR
(ソアー)」を1日限定で仮オープ
ンした。7月3日から本格営業を始め、障害者が生き生きと
働ける場をつくる。
パンやサンドイッチ約50種を製造・販売する。店内の2
0席では食べることもできる。店員の障害者は24~33歳の計5人。これまでは同法人
が運営する作業所に通っていた。店では、パンの製造や接客に携わり、法人職員たちが補
助する。
「ソアー」は英語で、大空を高く舞うという意味。神戸市の食品メーカーと業務提携し、
本格的な店舗運営を目指す。清掃や接客を担う中村愛さん(31)は「商品の種類が多く
て大変だけど、たくさんのお客さんに会える」と期待を膨らませている。
店舗は、交響と社会福祉法人つつじ(東広島市)が共同で開設した就労サポートセンタ
ーの1階を利用する。営業時間は午前7時半~午後7時。日曜日と祝日は休み。同店=電
話082(236)7383。
視覚障害者の自立支援
訪問マッサージ事業開始 神戸
神戸新聞 2013 年 6 月 28 日
視覚障害者の自立を支援するNPO法人「神戸ライトハウス」
(神戸市中央区)が、訪問
型のマッサージ事業を始めた。企業や団体に出向いて、従業員にサービスを受けてもらう。
近年、無資格者を使った店に押され、視覚障害者の店が廃業に追い込まれるケースが増え
ていることから、きめこまかな訪問事業で就労機会を増やす。(塩津あかね)
神戸ライトハウスが始める訪問マッサージ(神戸ライ
トハウス提供) ライトハウスは昨年4月、障
害者自立支援法に基づいて市内にマッサージ
店2店舗を開設。客足が十分伸びていないこ
とから、4月に須磨区のゴルフ店と業務提携
し、月1、2回、訪問マッサージを始めた。
今後、こうした形で市内を中心に訪問し、地
域も拡大する。
料金は15分1500円、30分2000円。出張料は不要。視覚障害者3人1組で企
業に出向き、マッサージ用のベットなども持参するため、企業側は場所を提供するだけで
いい。
派遣する視覚障害者は「あん摩マッサージ指圧師」の国家資格を持っている。太田勝美
理事長は「最近のマッサージ店などに比べると、スマートさで劣っているかもしれないが、
国家資格を持った人の技術をぜひ体験してほしい」と話していた。神戸ライトハウスTE
L078・251・6767
<この子に「家族」を
特別養子縁組25年>(上)
中日新聞 2013 年 6 月 27 日
生みの親から民間のあっせん団体に託され、養子縁組を待つ赤ちゃん=埼玉
県内で
「お金がなくて赤ちゃんを育てられない。助けてほしい」。名古
屋市内の三十代女性は二〇一二年五月、特別養子縁組をあっせんす
る東京都内の民間団体に電話した。二六六〇グラムの元気な男の子
を出産した数日後だった。
夫を交通事故で亡くし、長女(3つ)と暮らしていた。一一年一月ごろに三十代男性と
出会い、付き合い始めた。
「再婚したい」と思ったが、「妊娠七カ月」と告げると男性は携
帯番号を変え、音信不通に。もう、中絶はできなかった。
パートの月収は十六万円。1Kのアパート代は月五万円、長女の託児代に月五万円。九
州の両親には頼れず、市役所では「自分で育てられないか」「無理なら施設」と言われた。
以前、生活保護で相談した時も家賃の安い所に引っ越すよう言われたが、引っ越し費用が
なかった。
産婦人科で民間団体のあっせんによる特別養子縁組について聞いた。調べて最初に目に
ついたのが都内の団体。職員が駆け付け、男の子を預かってくれた。一カ月後、男の子は
米国の白人夫婦に引き取られた。
今も後ろめたい気持ちはある。先月、一歳になった男の子の写真がメールで送られてき
た。丸々と太り、養親に抱かれていた。「手放してごめんね。でも裕福な両親に育てられた
方が、あの子にはよかったと思う」
特別養子縁組の仲介をしている埼玉県熊谷市の産婦人科「さめじまボンディングクリニ
ック」
(鮫島浩二院長)。妊娠を周囲に隠すなどして産まざるを得なくなった妊婦が門をた
たく。未成年が四割で最年少は十三歳。中には性犯罪に遭ったケースもあった。
妊婦には子どもを養子縁組に出す意思を、最後まで確認する。これまで一割強に当たる
九人は気持ちが変わり、自分で育てることになった。中には「赤ちゃんを捨てるつもりだ
った」という親も。経済苦から妊婦健診も受けずに自宅で出産。子どもを押し入れに隠し、
生後すぐにパートに出た。鮫島院長の活動を知り、連絡。子どもは保護された。
厚生労働省によると一〇年度に虐待死した子ども五十一人のうち、半数の二十三人がゼ
ロ歳児。鮫島院長は「妊産婦に密着した産院が、縁組に取り組む意義は大きい」と話す。
最高裁判所によると、一一年度に国内で成立した特別養子縁組は三百七十四件。このう
ち社会福祉法人や産院など、十五の民間団体によるあっせんは三分の一とされ、〇七年度
から五倍以上に急増している。
〇九年設立の一般社団法人「ベビーライフ」
(東京都江東区)は、七十八人の赤ちゃんを
あっせんしてきた。親の年齢層は十代~四十代と幅広いが、大半が未婚で、無職か派遣な
どの非正規社員。
「経済力がなく育てられない女性が増えている」(篠塚康智代表)
◇
「特別養子縁組制度」は、望まぬ妊娠で生まれた子どもを違法にあっせんしていた事件
が契機となり、一九八八年に始まった。それから四半世紀。長引く景気低迷による経済苦
などから、子どもを手放す親は依然多く、法的に実親と関係を切り、養親の戸籍に入る同
制度が再び注目されている。中でも最近、特に増えている民間あっせんを通じた、実親と
養親の「今」を追った。
<この子に「家族」を
特別養子縁組25年>(下)
中日新聞 2013 年 6 月 28 日
特別養子縁組を仲介した「まおちゃん」
(仮名)を抱く鮫島浩二院長=埼玉県熊谷市で
まおちゃん(仮名)は二〇一二年春、埼玉県熊谷市の「さめじまボンデ
ィングクリニック」
(鮫島浩二院長)で生まれた。臨月に駆け込んできた
母親は、事情があって育てられず、特別養子縁組を希望した。
養親になったのは東北地方の夫婦だった。妻(45)は十回以上の体外
受精の末に流産。体力的にもきつく、経済的負担も大きい不妊治療は限界
だった。それでもあきらめられなかった。その年の一月、鮫島院長に養親
になりたいと相談した。その数カ月後、
「赤ちゃんが生まれた」と連絡があった。
生後五日、クリニックでまおちゃんと対面。妻が出ないおっぱいを吸わせると、まおち
ゃんは吸い付いた。
「やっとママになれた。夢みたい」
半年間の試験養育期間を経て同年秋、法律上も親となった。
「子どもは社会が育てると思
えば、実子も養子も同じ。幸せをいただいて、生みの親に感謝している」と学校職員の夫
(44)は言う。
関東地方の四十代女性も十年以上の不妊治療の末に、四年前に特別養子縁組でしん君(仮
名)を迎えた。流産を繰り返す「不育症」。妊娠八カ月での死産もあった。米国で卵子提供
を受けることも考えたが、親に恵まれない子どもを育てる方が社会的意義も大きいと思っ
た。しん君には産科病院で、生後一週間で面会した。「キラキラ輝いて見えた。私の子だと
思った」
鮫島院長は特別養子縁組制度が始まった一九八八年から、縁組に関わっている。不妊治
療を受ける夫婦の一方で、中絶する女性-。その双方を救えるのでは、と思ったからだ。
これまでに五十七組を養子縁組。すべて無償のボランティアだ。
養親は不妊治療を受けた上で、児童相談所に里親登録している人に限定。赤ちゃんの性
別や障害の有無にかかわらず育てることが条件で、養親には何度も面接して意思を確認す
る。中には出生直後に緊急手術を受けた子どももいたが、養親は「どんな子でも育てる」
と引き取った。
養親は自然妊娠できる四十五歳前後までを年齢の目安として、健康診断も受けてもらう。
「本当に育てられるかの客観的な条件に加え、養親には子どもを丸ごと引き受ける覚悟が
必要」と言う。
特別養子縁組は児童相談所を通じても行われているが、障害の有無などが分かる二歳程
度まで、子どもは紹介されない場合が多い。民間団体は、生後数日で養親をマッチングさ
せるのが特徴だ。
東京都江東区の一般社団法人「ベビーライフ」。特別養子縁組を仲介し、子ども一人を紹
介する際に、交通費や出産にかかる費用など実費に加え、団体運営費約百八十万円を、養
親に負担してもらっている。それでも養親希望者からの相談は絶えず、月に数人預かる子
どもの縁組先はすぐに決まっている。
国会では、自民党の野田聖子衆院議員らによる「養子縁組の活性化」を目指す動きもあ
る。
ただし、民間のあっせんは増えているが、実態が不透明なところが多い。縁組に取り組
む産科医師もほとんどいない。負担が増えるだけでメリットがないからだ。鮫島院長は「国
は民間団体に養子縁組を認めているが、あっせんのやり方がばらばら。一定の対策は必要」
と話している。 (この連載は細川暁子が担当しました)
東京マラソン出場枠、来年も同数 3万5500人
共同通信 2013 年 6 月 27 日
東京マラソン財団は27日の理事会で、来年2月23日に開催する次回大会のフルマラソ
ンの出場枠を前回と同じ3万5500人(チャリティー枠を含む)にすることを決めた。
16歳から18歳までと、障害者らが対象の10キロの部も500人で変わらない。
一般参加者の申し込みは8月1日から31日まで公式サイトを通じて受け付ける。一定
額の寄付で出場できる定員3千人のチャリティー枠は募集開始を前回より1カ月早め、7
月1日から先着順で受け付ける。
4月のボストン・マラソンで起きた連続爆破テロを受け、警備や救護体制を強化するこ
とも確認した。具体策は今後、検討する。
「諦めなければ幸せに」
脳性まひ女性エッセー刊行
東京新聞 2013 年 6 月 28 日
ユーモアあふれる文章でリハビリ体験記をつづった柴田さん
川崎市高津区の出版社レイラインが、県立川崎高校の卒業生で、脳性ま
ひ患者の柴田智恵子さん(68)=旧姓松沢、北九州市在住=のエッセー
集「ハラハラ、ドキドキ、なぜ歩くの、智恵子さん」を刊行した。重い障
害を背負いながらも、リハビリに悪戦苦闘する日常が、ユーモアあふれる
文章でつづられている。
柴田さんは一九四五年、韓国生まれ。敗戦で家族と日本に引き揚げた。生来歩行に難が
あり、三歳で脳性まひと診断されたが、当時は病状に世間の理解が乏しく、小学校から普
通学級に通った。東京都内から川崎に転居して川崎高に進学。二十歳で結婚後、九州へ移
った。
川崎高時代に同級生だった同社の東郷礼子代表は「ダンスが大好きで天真らんまん。障
害をものともせず、階段を四つんばいになって上がっていた」と当時の印象を明かす。六
年前に柴田さんが川崎を訪れた際に旧交を温め、その後、手紙などをやりとりする中で前
向きに生きる姿を多くの人に伝えたい、と発刊を提案。柴田さんが書きためていた日記や
手紙などをまとめたのが本書だ。
柴田さんは、併発した頸椎(けいつい)症を治すために数年前に大手術を受けた。二度
と歩けなくなる恐れもあったが、リハビリで車いすを手で押しながら坂道を上り、足を鍛
えている。
「私は諦めない。この坂道を頑張る。勇気凛々、前へ進め!」と不屈の精神で。
障害者の夫との結婚、子育て、両親の死…幾多の喜び、悲しみがあった。「人は、公平。
諦めないでいればその人なりに幸せになれる」と信念をつづる。
「坂道を上ったり、百メートル歩いたなど、見過ごしがちな日々の小さな達成感に満ち
ている。人生の意外な喜びに共感してほしい」と東郷代表。各書店で販売中。千五百七十
五円。
(栗原淳)
月刊情報誌「太陽の子」、隔月本人新聞「青空新聞」、社内誌「つなぐちゃんベクトル」、ネット情報「たまにブログ」も
大阪市天王寺区生玉前町 5-33 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 社会政策研究所発行