宝塚市立男女共同参画センター・エルは、すべての人が個人として、性にとらわれず、自分らしくいきいきと 充実した生活を送ることができる「男女共同参画社会」の実現を目指すための施策推進の拠点施設です。 センターの愛称“エル”は上記の5つのLの頭文字をとったもので、市民からの公募で決定しました。 巻頭エッセイ 「無知」のいきつくところ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 特集「わたしたちは今日も働いている」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 関連図書の紹介・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 主催講座のお知らせ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 女性学という学問から学んだことに、スウェーデンに るいは間違い)という実態が、多発する性犯罪の、深い おける性の大原則…「女性は自分の体に責任を持て、自 ところでの原因になっているのではないかとさえ思える 分の体を大切にせよ。男は女性の体に責任を持て、女性 のだ。 の体を大切にせよ」というのがある。 今思えば、若いころのぼくたちの夫婦喧嘩は、ほとん 「セクシュアル・ハラスメント」ということばが上陸 どきまって月一回、妻に月に一度の「お客様」 (月経のこ したとき、この国ではそれを「性的いたずら」だの「性 と…こんな隠語もある)がご訪問なさるころだった。性 的いやがらせ」などと紹介していたと記憶しているが、 についての知識が皆無だったぼくには、月経時前後に現 当初からぼくは、その日本語訳に違和感を持っていた。 れる妻の態度や言動がホルモンの影響によるものとはわ れっきとした「性差別」であるセクシュアル・ハラスメ からず、わがままにしか見えなかったのだ。 ントを「いたずら」と表現するこの国の文化とは、どう ぼくは、これまで 40 年以上も人権問題と関わってき いうものなのだろう。それは、 「強姦」を「暴行」という たが、女性問題と真正面から向き合うようになったのは、 ことばでひとくくりにしてしまうことと同じなのではな たった 10 年余り前のことだ。冒頭で紹介した、スウェ いだろうか。 ーデンにおける性の大原則などにも大きな衝撃を受けた 似たようなことばで、苦い思い出があるのが「生理」 ものだ。 ということばである。本来「月経」というべきものを、 「生 妻には、ぼくの性についての無知によってずいぶん不 理」という「生命を営むことに伴って生物体に生じる諸 愉快な、つらい思いをさせてきたのだと思った。そんな 現象」 (三省堂『大辞林』 )という、いわば小便と同じよ ことに気づき、これからはそういうときには配慮しなけ うな表現にあいまい化してしまうのと、根っこは一つに ればと、ようやく思い至ったのだが…。ぼくが、ようや 違いない。 くこんな大切なことに気づいたとき、定期的に妻を訪れ 団塊の世代のど真ん中に位置するぼくは、 「おしべとめ ていた月に一度のお客様は、どうやらご訪問されなくな しべがね…」などという可愛らしいものも含めて「性教 っていたようだった。性に関する知識だけではなく、 「無 育」というものを受けたことがない。女性の体のことな 知」のいきつくところ、そこには知らず知らず、身近な どまったく知らずに、それでも結婚もし子も生(な)し ところで、無神経な人権侵害を生み出す可能性があるこ ているのだが、もしかしたら、そんな性教育の欠落(あ とを肝に銘じておきたい。 (センター所長 浮穴 正博) -1-
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