フランス研修記2012 3日目 この日はエスデザルグを訪問の予定であったが、ムッシュの体調不良により急遽キャンセルに。 あまりの苦しそうな表情に一時はどうなることかと思ったが、よくなって何よりだった。 ムッシュが休んでいる間、エルミタージュの丘に行くことに。頂上のシャペルまで目指す。坂は 想像通りの急坂でなかなか息が切れる。地形は入り組んでいるがよく整備されていて、ブドウの木は 悠然と並んでいる。あまりの急勾配に立っているだけでもつらい場所もあるのに、ここで作業をす るとなると言葉にすれば簡単だが大変だ。頭がさがる。 登り始めて3,40分くらいで到着。シャペルは思ってい たよりだいぶ小さく、聖地のようにたたずんでいる。当た り前だが風通しも良く、日当たりも最高。景色も素晴らし い。 本や雑誌でいくら読んだり見たりしていても、実際の風景 などは分からない。このような思い、感想などをしっかりと 感じてスタッフ、お客様に伝えたいとあらためて思った。 シャペル周辺はポール・ジャブレ・エネの畑があると聞い ていたが、周辺はほとんどシャプティエの看板ばかりだっ た。どこかにあるのだろうか? ブドウの木は幹も太くたく ましい。畑もとてもふかふかとしていて足跡がしっかりと 付くくらい。畑を見る、感じることの出来たワインは本当 に飲みたくなる。 ホテルに戻り出発。シャトーヌフ・デュ・パプによる。思っていたより小さな村で、本当にワインの 村という感じがした。ヨハネ22世がつくったとされる城の廃墟は村の上にあるということで、そこか らは全体を見渡せ、ブドウ畑も広がっている様子がよく分かった。そして風も強く、とても寒い。 昼食もここで取り、味わいはそれなりにというところだったが、スーツを着た人や様々な世代の人で よくにぎわっていた。今は冬だが観光シーズンは村の雰囲気はやはり変わるのだろうか。 プランタン社に到着。 1935年の創業と歴史のある会社だが、思っていたよりは規模は小さかったが、興味深い見学が 出来た。いい人、という言葉が似合うニコラが案内をしてくれる。この日まで大寒波によりトリュ フが凍ってしまっていて、ここ1週間満足にとれていないらしい。1985年以来の不作だと言い、 ようやく明日あたりから市場に出てくるらしい。 中に入ると圧倒的なきのこなどの乾物の 香りが迫る。従業員も多くなく、日本で言 うパートのおばちゃん的な人が仕分けやら ラベルを貼ったりと、黙々と言うよりは悠 々と働いている。 ニコラがトリュフを取り出してきて説明 してくれた。凍ってしまっているものと そうでないものを見せてもらったが、見た 目ですぐには分からない。凍ってしまった ものはまずトリュフにかかせない香りがダメらしい。 ちなみに価格は先週で泥付き1キロ850ユ ーロだったらしい。はたしてこれがどれくらい安いのか、または高いのかはすぐには分からない。 表面を削り、中 を確認する。小 さいナイフは必 ず持っていた 茸の中に異物が無い か確認。手荷物検 査のよう 奥には出荷待ちのトリュフが並んでいた。凍らせているものもあり、日本への輸入はアルカンではフレ ッシュのものを凍らせて真空にしてもらっているらしい。そうすると香りは飛びにくくなるそう。ここ で疑問が出るが、ムッシュがその疑問を聞いてくれた。凍らせたら香りがダメになるのではという問い に、フレッシュのものは大丈夫で収穫する前にすでに凍ってしまったものは香りは弱いままと言うこと だった。ちなみに日本への輸出は12%。明日のトリュフ市の案内をお願いし、プランタンを後にする。 Grmenon グラムノンでは人懐っこい笑顔のミッシェル・ローランが迎えてくれた。日も暮れてき たということもあり、先に畑を見学させてもらう。この地の特徴は330メートルの標 高にあり、今はミストラルの影響でワインは酸があり、まったりとした味わいにはなら ないと言っていた。実は車を降りたときから常に風が吹いていて寒く、遮るものがない 畑はなかなかの風っぷりでとても寒かった。 ブドウの木は等間隔に並んでいるが無いものも結構あり、これは樹齢が高いために死んで しまった木も多くあるためらしい。樹齢100年以上の木はたくさんあり、幹も太く貫禄が にじみ出ていた。 何よりの特徴は、周りにはグラムノンの畑以外無く木に囲ま れていて周りに影響を与えることなく、かつ与えられないと いうこと。後で見るブルゴーニュなどは作り方が違うため区 画ごとに畑の色が違うのが印象的だった。隣の畑が自分の思 う造りと正反対だった場合、お互いに理想で はない影響を与え合ってしまうがそういうこ とが無いということだ。 醸造所に戻りワインを試飲させてもらう。中は思っていたより広く、そして当たり前だが 寒い。とは言っても他と比べれば小さくて古く、また貫禄もある。 自分のイメージとしてグラムノンのワインは酸がしっかりとしていて、若いうちはやや 強すぎる印象があるのだが今回試飲したものはどれも優しい味わいで、現段階でもおいし すぎるくらいの味わいだった。これは2011年からなのか、また日本ではないからなのか。 天井にはカビがびっしり Grmenon トップキュベはもちろんなのだが、今回印象的だっ たのはまずヴィオニエ。香りは華やか、味わいも口 いっぱいに広がる芳醇な味わいがあり、濃縮感、凝 縮感、ヴォリューム感どれも強いのだが支え合って いてハイレベルなバランス。アフターの強めの心地 よい苦みが全体を引き締めている。 次は最も優しい味わいと感じたサンプルのグルナッ シュV.V 。買いブドウなのだが砂の土壌で、他のワイ ンとは少し違う印象だった。 ヴァン・ソーブルも印象的で、これは収穫が一番遅いため、枝にもえぐみが無くなるほど熟 すため除硬しなかったらしい。優しい味わいのなかで、最もタンニンを感じた。 他にもキュベ・パスカルの2004年などスペシャルワインも飲ませてくれ、この先もう 飲む機会がないかもしれないのでじっくりと味わさせてもらった。ほんのり熟成感が出て いるが、まだまだ若く色も鮮やかなルビーを保っていた。バランスも良いがまだまだ秘め たものがある感じ。数年後にまた飲みたい。最後に記念写真もとり、予定も大幅に遅れ出発。 Restaurant O'Rabasse ここでのレストランでの食事は正直に書いてし まうとあまり印象は無かった。トリュフコー スといってもあまりトリュフが思っていたほど 使われていなかったからか、またホテルからも 遠くその分期待度が高すぎてしまったのか。街 は人通りは全くなく、レストランはもちろん他 の店も全くなく、こんなところにあるのかとい う場所だった。よく営業していた、と言っても おかしくない。もちろん、店の雰囲気もよくサ ービスの女性もさわやかだった。 今回の研修はいたりつくせりで、ただ感謝の気持ちでいっぱいの旅だった。最高のワ イン、食事に多くふれたからこそ、そこに差が出てしまうのはやはり感じてしまうこと だし、1つ1つのレストランは素晴らしいが雰囲気や体調、気持ちなどでおいしかった のかそうではなかったのか、満足したかしなかったのか左右されることをあらためて感 じた。オザミにきていただいたお客様にもそれをしっかりと感じ取ってサービスしてい きたい。 日本でいるときに知る情報は実際現地ではどうなのか。どういう人でどう思っている のか。それを知りしっかりとスタッフ、お客様に伝えることが今回の自分の目的の1つ であり、また微力ながら恩返しの1つでもあると思うので実行していきたい。ワインほ ど人を引きつける飲み物もなかなか無いと思う。これほどまでにおいしいワインをと飲 みに来る人、生産者を訪れる人は他の農作物や飲み物には無いことだと思うので、人を 魅了させるワインをこれからも知っていきたいと思った。 【オザミ59 岩間 芳樹】
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