お薬通信 NO.19 「急な発熱・頭痛・歯痛・生理痛に…」などのキャッチフレーズで、薬局・ドラッグスト アでは様々な解熱鎮痛薬が市販されています。病院でも、鎮痛や解熱のためのお薬が処方 されることは少なくありません。 こういったお薬が手元にあると、いざという時に安心ですね。 しかし!「私は頭痛持ちだから」などの理由で頻繁に飲んでいると、知らず知らずのう ちに、お薬があなたの体を蝕んでいるかもしれません…処方箋なしで買えるお薬でも油断 できません!そんな訳で、今回は解熱鎮痛薬の有害作用についてのお話です。 ★解熱鎮痛剤は「両刃の剣」! お薬には副作用がつきものですが、解熱鎮痛薬にもやはり、ありがたくない作用がある のです。頻繁に服用すると、以下のような問題が起こるおそれがあります。 【1】胃潰瘍の原因になったり、腎臓の働きを悪くすることがあります! 解熱鎮痛薬は、体内で炎症の誘発物質となるプロスタグランジン類が合成される時に働 く、シクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素の活性を抑えることによって、炎症による発 熱・痛みなどの症状を和らげます。 プロスタグランジン類は、炎症反応を起こすだけではなく、体内の様々な器官に働きか け、生理機能を保つという重要な役目を持った物質です。 胃 血小板 腎 →胃酸分泌を抑える・胃粘膜の防御機構を強める →血小板の凝集を促進(または抑制) →腎血流量の増加・水分の再吸収の抑制 …この他、気管支・子宮等、様々な器官に作用します。 解熱鎮痛薬を服用すると、これらの働きまで妨げられることになります。 心臓・脳血管の疾患に少量のアスピリン製剤(当院採用品バイアスピリンなど)を用い ることがありますが、これは血小板への影響を利用しているのです(少量では血小板凝集 を抑制、しかしアスピリンが多すぎるとこの作用は打ち消される)。 問題は、胃や腎臓に対する影響(副作用)です。 何が起こる? 胃への 影響 自覚症状 胃のもたれ、食欲低下、胸やけ、吐き気、 胃酸分泌が増えるだけでなく、 空腹時にみぞおち付近が痛む、便の色が黒 胃粘膜の胃酸に対するバリア っぽい…など が弱くなり、潰瘍を生じやすく ☞薬自体の鎮痛効果により自覚症状がなかなか現わ れず、突然の吐血、下血、黒色便で初めて気付く なる。 場合もあります。 腎臓への血液流入が減り、余分 顔や手足がむくむ、体がだるい、尿量が減 な水分・老廃物を貯めこむ状態 る、尿が赤みを帯びる、発熱、吐き気、下 になることがある。 痢…など 成分によって、これらの影響(副作用)の出やすさは少々違いますが、解熱鎮痛薬を 腎臓への 影響 服用して上記自覚症状が何か出た場合には、すぐに医師の診察を受けましょう。 【2】頭痛で繰り返し鎮痛薬を飲むことが、頭痛の原因になることがあります! 頭痛のある方では、毎日のように痛み止めを飲 薬剤誘発性頭痛のメカニズム むことによって、小さな痛み刺激に対しても敏感 に反応するようになり、早朝目が覚めた時から痛 頭痛 頭痛 みが現れ、一日中続く状態になることがあります( 薬物誘発性の頭痛)。夜中、頭痛で眼が覚めてしま うこともあります。 こうなると、ますます薬がやめられない状態に なります。(→右図参照) 痛みの感受 性が上昇 もしこのような状態になってしまったら、飲ん でいる痛み止めを一旦やめないと、根本的な解決 になりません。 鎮痛剤 薬 物 誘 発 性 の 頭 痛 を 防 ぐ た め に は 、 鎮痛薬 の服用は1ヶ月に 10 日間以内(週 2 日以内)にとどめる必要があります。 慢性頭痛にもいくつかのタイプがあり、それぞれ治療法が異なります。また、頭痛は、 何かの病気のサインとして起きている場合もあります。適切な対処をしないと病状を悪化 させることもありますので、一度医師にご相談されることをお勧めします。 ☞私は毎日アスピリンまたは痛み止め注1)を飲むのだけれど…という方へ。 ・心臓や脳血管などの疾患があり、バイアスピリンなどのアスピリン製剤を服用している。 ・関節痛・腰痛・手術後などで痛み止めを服用している。 このような場合は、薬物誘発性の頭痛の心配はありませんので、医師の指示通り 服用して下さい。中止して体調を悪くしてしまっては大変です!! また、風邪などによる頭痛で一時的に服用する場合も、心配ありません。 但し、もしも胃や腎臓への影響(副作用)による自覚症状(→前頁の表参照)など、心配な症状 がありましたら、できるだけ早く医師または薬剤師にご相談下さい。 注1)該当する当院採用薬は以下の通りです。 アスピリン・バファリン 330 ㎎錠・ランツジール・ボルタレン・ ブルフェン・ソレトン・ナイキサン・ロキソニン・ソランタール・ セレコックス・カロナール (飲み薬ではありませんが)ボルタレン坐剤・インドメタシン坐剤 ★「アスピリン喘息」をご存知ですか? アスピリンをはじめとする解熱鎮痛薬・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を服用して 起きる喘息発作のことを、「アスピリン喘息」と言います。成人喘息の約 10%で起こると 言われています。 一度痛み止めを飲んで喘息発作を起こしたことがある方は、今後も発作が誘発されるお それがありますので、不用意に服用しないで下さい。 (参考文献) 薬局 Vol.53 No.1 2002(南山堂) NSAID(非ステロイド性抗炎症剤)ハンディマニュアル(日本ベーリンガーインゲルハイム㈱) 重大な副作用回避のための服薬指導情報集1(じほう) 頭痛大学 HP 上尾中央総合病院 医薬品情報室(文責) 喘息 Vol.17 No.1 2004-1(メディカルレビュー社) TEL 048-773-1219(直通) 作成日:平成 20 年 9 月 26 日
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