前立腺用薬とバイアグラ

バイアグラについて
勃起不全治療薬として承認前から大きな話題を呼んだバイアグラは、平成11年3月23日発売さ
れました。希望処方価格は 25mg 1錠=1100円、 50mg 1錠=1300円。
勃起障害=EDとは
標題に掲げたED(Erectile Dysfunction:勃起障害)という言葉は耳慣れない言葉であろうが、
国際的には一般的な用語である。男性の勃起機能障害に対し、インポテンスという用語が長く用
いられてきたが、インポテンスという言葉は患者にとって侮蔑的ということで使わないようになっ
ている。
さて、EDとは“勃起を発現あるいは(and/or)持続できないために、満足な性交渉ができない
状態”と定義されている。その発生頻度であるが、40歳以上の男性の約10%が完全なED状態に
あるとされている。したがって世界中には一億を超す患者がいると推定されるように、社会的に
大きな意味を持つ疾患である。さらに問題なのは、このうちの10%の患者しか医療機関を受診し
ないということである。その理由として恥ずかしさや無知、あきらめなどがあげられる。
わが国での疫学調査(丸井、白井他、1998)によると、56歳以上では約50%が中等度以上のE
Dであるとされている。これは同様の調査を行ったイタリア、ブラジル、マレーシアと比べて高率
である。その原因として、日本人男性の高い喫煙率があげられている。
EDの分類
EDの分類は器質性と心因性とに大きく2つに分けられる。
器質性 Ⅰ 血管性(A.動脈性、B.海綿体性、C.混合性)、 Ⅱ 神経性 Ⅲ 解剖学的
Ⅳ 内分泌性
心因性 心理的ストレス等 さらに細かく分類されている[ISIR(世界インポテンス学会)]
EDの危険因子
加齢 糖尿病を代表とする慢性疾患 降圧剤や抗うつ剤などの薬物
自転車などによる会陰部への外傷 喫煙
診断と治療
現在最も進んだ考えとされるA Process of Care Model (R.Rosen、I.Goldstein&H.Padma-Nat
han、1998)から紹介する。
第1段階
診断の第一歩は問診である。まず、第一に患者が本当にEDなのかをはっきりさせることであ
る。病歴聴取にあたっては、医学的な面のみならず、性歴、社会経済的な面も問診する。問診の
取っ掛かりとして、IIEF5[1997年Rosenらによって発表されたIIEF(International Index of Erectile
Function)のコンパクト版]を使うことが勧められている。これは25点満点で、22点以上が正常、2
1点以下がEDとされている。次に現症をとる。チェックすべき点としては第二次性徴、血圧、脈、
神経学、外陰部の診察などがある。臨床検査としては Testosterone、血糖値を含む生化学、PSA
などが含まれる。
第2段階
第一段階の結果を検討し、患者とパートナーの治療要求を考慮して、治療法を選択する
か、他医へのコンサルトをするか決定する。
第3段階
変更可能な要素の除外である。これは、薬剤性EDが疑われれば、原因薬剤の中止か変
更。ホルモンの異常があれば、その補充。ペニスに解剖学的な問題(彎曲症など)があれ
ば、その矯正手術をする。禁酒、禁煙など生活習慣の矯正。
第4段階
内服薬すなわちバイアグラ、VCD (Vacuum Constriction Device:陰圧式勃起補助具)、
Sex Therapy のいずれか( Sex Therapyは日本には専門家は少ない)。
第5段階
PGE1などの海綿体自己注射、 PGE1尿道内注入(日本では自己注射は認められてい
ない、 PGE1の尿道内注入も未発売)。
第6段階
プロステーシスの手術となる(日本でも可能だが、自費)。
以上のような診断とそれに基づく治療のプロセスが推奨されている。
表 国際勃起機能スコア5(IIEF 5)
最近6ヶ月で
1.勃起を維持する自信の
程度はどれくらいあり
ましたか。
非常に低い
1
低い
2
普通
3
高い
4
非常に高い
5
2.性的刺激による勃起の
場合,何回挿入可能な
勃起の硬さになりまし
たか。
性的刺激
一度もなし
0
全くなし又は
ほとんどなし
1
たまに
(半分よりかなり
下回る回数)
2
時々
(半分くらい)
3
おおかた毎回
(半分よりかなり
上回る回数)
4
毎回又は
ほぼ毎回
5
3.性交中、挿入後何回勃
起を持続することが出
来ましたか。
性交の試み
一度もなし
0
全くなし又は
ほとんどなし
1
たまに
(半分よりかなり
下回る回数)
2
時々
(半分くらい)
3
おおかた毎回
(半分よりかなり
上回る回数)
4
毎回又は
ほぼ毎回
5
4.性交中に、性交を終了
するまで勃起を持続す
るのはどれくらい困難
でしたか。
性交の試み
一度もなし
0
ほとんど困難
かなり困難
困難
やや困難
困難でない
1
2
3
4
5
5.性交を試みた時に、何
回満足に性交ができま
したか。
性交の試み
一度もなし
0
全くなし又は
ほとんどなし
1
たまに
(半分よりかなり
下回る回数)
2
時々
(半分くらい)
3
おおかた毎回
(半分よりかなり
上回る回数)
4
毎回又は
ほぼ毎回
5
合計点数
IMPOTENCE,13(1),1998より抜粋
バイアグラの特性
1.選択的PDE5阻害作用に基づき、性的刺激後の勃起機能を改善します。
2.簡便な経口投与で、非侵襲的な治療を可能にしました。
3.糖尿病、脊椎損傷などによるED患者に対し、効果が認められています。
4.挿入の可能性を高め、勃起を維持し、国内の臨床試験では72.4%の改善率を示しまし
た。
5.副作用は、承認時までに国内で総症例157例中40例(25.48%)に認められ、臨床検査値
異常変動は、157例中31例(19.75%)でした。
なお、副作用による投与中止例は、157例中胸やけ1例(0.64%)でした。
バイアグラの作用機機序
バイアグラは、勃起に重要なcGMP(サイクリックジーエムピー)を分解して、勃起を
抑制するPDE5(ホスホジエステラーゼタイプ5)の働きを抑えることで勃起を実現しま
す。
性的刺激
バイアグラ
副交感神経系
N0の放出
cGMPの増加
陰茎海綿体
平滑筋細胞
PDE5による
cGMPの分解
血管平滑筋の弛緩
血液流入量の増加
陰茎勃起
禁忌 次の患者には投与しないこと
禁忌 次の患者には投与しないこと
(1) 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
(2) 硝酸剤あるいは一酸化窒素(NO)供与剤(ニトログリセリン、亜硝酸アミル、硝酸イソ
ソルビド等)を投与中の患者
(3) 心血管系障害を有するなど性行為が不適当と考えられる患者
(4) 重度の肝機能障害のある患者
(5) 低血圧の患者(血圧<90/50mmHg)又は治療による管理がなされていない高血圧
の患者(安静時収縮期血圧>170mmHg又は安静時拡張期血圧>100mmHg)
(6) 脳梗塞・脳出血や心筋梗塞の既往歴が最近6ヵ月以内にある患者
(7) 網膜色素変性症患者[網膜色素変性症の患者にはホスホジエステラーゼの遺伝的障害
を持つ症例が少数認められる。]
併用禁忌の薬剤
硝酸剤及びNO供与剤(ニトログリセリン、亜硝酸アミル、硝酸イソソルビド等)
A: 一硝酸イソソルビド アイトロール錠10mg/20mg
B: 亜硝酸アミル 亜硝酸アミル
C: 硝酸イソソルビド アパティアテープ アンタップ イソコロナールRカプセル イ
ソピット L-オーネスゲン錠 カリアント錠10 カリアントTPカプセル コンスピット
錠 サワドールL錠 サワドールテープ ジアセラL錠 硝酸イソソルビド錠(ツルハラ)
硝酸イソソルビドテープ「EMEC」 スレンドミン錠 セラモンテ錠 ニトラステープ
ニトロールRカプセル20mg ニトロール錠 ニトロールスプレー ニトロスロー錠 ニ
トロバイド錠5mg ニトロフィックス5/10 フランドル フランドルテープS ベネティI
SDNテープ ヘルピニン-Rカプセル ホクスノールLカプセル ラブノールRカプセル
リファタックL錠 リファタックテープ リベラステープ
D: ニコランジル(生体内でNOとなり、硝酸剤と同様の作用を示すことが認められている。)
シグマート錠2.5mg/5mg ニコランマート錠 E: ニトログリセリン ニトログリセリン錠山川 ニトロシンパフ ニトロダームTTS
ニトロペン錠 ニトロラム バソレーターRB2.5 バソレーターテープ バソレーター軟
膏ヘルツァー ヘルツァーS ミオコールスプレー ミニトロテープ ミリステープ ミ
リスロールテープ
F: ニプラジロール(β(β-遮断剤であるが、NO供与体様作用が報告されている。)
ハイパジールコーワ錠/錠6
併用注意の薬剤
・非特異的チトクロームP450 3A4阻害薬 (シメチジン等)
・チトクロームP450 3A4の特異的阻害薬(エリスリマイシン、ケトコナゾール、イトラ
コナゾール等)
・チトクロームP450 3A4誘導薬(リファンピシン等)
・降圧剤(アムロジン等)
*シメチジンを含む一般用薬品:
シメチジンを含む一般用薬品:
アルサメック細粒、アルサメック錠、ザッツブロック、ザッツブロック錠、スカイジン、
スカイジン錠、住友胃腸薬スコープ、住友胃腸薬スコープ錠、センロックエース、セン
ロックエース錠、パンシロンH2 ベスト、フロンティア錠等
参考資料
今日の治療薬 解説と便覧 ’99 南光堂
別冊NHKきょうの健康これだけは知っておきたい泌尿器の病気
Medic Vol34 №1
ラージュ 第 234 号 99 3.22
バイアグラハンドブック ファイザー製薬
前立腺肥大症について
前立腺肥大症は、尿の出や勢いが悪くなる、高齢の男性に特有の病気です。排尿時に
このような症状がある場合は、泌尿器科の診察を受けましょう。症状の程度や患者さん
の事情に合った、さまざまな治療法が確立されているので、医師とよく相談して、自分
に合った治療法を決めることが大切です。
前立腺とは
精子を養う液体成分を分泌し、加齢に伴って肥大する。「前立腺」は、男性特有の器官
で、膀胱の出口に、尿道を取り囲むように存在します。透明な液体を分泌し、精液の一
部は、この分泌液によって占められています。前立腺の分泌液は、精子に栄養を与え、
その運動を促進する働きがあるとされていますが、詳しい役割については、まだ不明な
点が多く残されています。成人の正常な前立腺の大きさはクルミ大で、重さは 20g程
度です。
前立腺は、普通、加齢に伴って肥大します。その理由は明らかではありませんが、
何らかの形で男性ホルモンが関係していると考えられています。
しかし、前立腺に肥大結節ができたとしても、前立腺全体が肥大するとは限りませ
ん。前立腺が組織学的な肥大にとどまる人と、臨床的な肥大になっていく人がいる理由
は、よくわかっていません。
前立腺肥大症の特徴
現在では、前立腺肥大症の患者さんは、40∼50 歳代では 1∼2%、60 歳代では 9%、
70 歳代では 12%程度いるとされています。
ところで、
「前立腺肥大症になりやすい」要因として、疫学的統計から、
「野菜をと
らず、肉が中心の食生活が原因ではないか」ということがあげられています。また、こ
の病気がもともと欧米人に多く見られることからもそういわれているのですが、はっき
りした理由はわかっていません。
検査と診断
前立腺肥大症の診断のためには、いくつかの検査が必要ですが、検査に先立ってま
ず問診が行われます。
問診では、「残尿感があるか」「夜中に何度も排尿に起きるか」などの自覚症状を7項
目にわたって患者さんにチェックしてもらい、その症状をスコア形式で計算します。
その結果は、「治療が必要かどうか」の判定の目安にされます。前立腺肥大症と診断され
る人のスコアを集計すると、平均して 15 点ぐらいになります。
前立腺肥大症として治療するかどうかは、排尿障害の症状について、患者さんがど
の程度苦痛に感じているのかが、大きなポイントとなります。
■問診①(スコア方式)
7項目の質問に答えてもらって、点数(スコア)を出し判定します。
■問診②
患者さん本人の感じ方
最高は35点で、合計が7点以下は「軽度」、8~19点が「中等度」、
20点以上が「高度」となります。この問診による判定を参考にして、
治療法を決めます。
1.尿の出具合が原因で
①不快感があるか?
[問診]
[点数]
②不安感があるか?
1. 残尿感
・いつもある
5点
③困ることがあるか?
2. 何度も排尿に行きたくなる
・2回に1回以上
4点
④生活に支障があるか?
3. 尿が途切れる
・2回に1回
3点
2.排尿状態に対する本人の
4. (排尿を)我慢できない
・3~4回に1回
2点
満足度(不満度)
5. (尿の)勢いが弱い
・5回に1回以下
1点
6. (排尿するときに)いきむ
・全くない
0点
7. 夜中に何度も排尿に起きる 以上の項目について聞き、治療するか
どうかを決める参考にする。 前立腺肥大症の自然史
前立腺肥大症の病期は、以前から3期に分類されている。第Ⅰ期は刺激症状期で、種々
な膀胱刺激症状を示すが、残尿はまだ発生していない。第Ⅱ期は残尿発生期で、排尿障
害のため 30cc 以上の残尿を発生するようになる。手術療法はこの時期が適応である。
第Ⅲ期は膀胱拡張期で、すでに腎機能障害を生じており、放置すれば腎不全に陥りやが
て死亡する。薬物療法は、第Ⅰ期の前立腺肥大症だけに対して行われる。
薬物療法
かつては、前立腺肥大症に対する薬物というと、まず生薬しかなかったが、最近では
これに progesterone 誘導体を中心とするホルモン剤が加わり、非常に種類も増えた。
そのほか、前立腺肥大症に伴う二次的障害、例えば前立腺炎や腎機能障害などに対する
薬物療法もあるが、それらにはここでは触れないことにする。
前立腺肥大症の症状は主として排尿困難であり、それが修飾されて頻尿・夜間頻尿・
残尿感・尿線細小などの諸現象を呈する訳である。そしてこの疾患の治療にあたっては、
それらの現象に一々対応して薬の種類を変えるということはあまりなく、前立腺肥大症
の診断がついたなら、そのための種々の治療薬のなかから適当なものを 1 ないし数種類
選び、患者の反応を確かめながら投与する場合が多い。薬が有効なら、症状は全体とし
て消失してゆく。したがって、他疾患のような薬物投与マップは作製しにくいので、以
下成分別に、現在市販されている医薬品をまとめる。
植物製剤
エビプロスタット
わが国で初めて市販された前立腺肥大症専用薬として、非常に有名な薬品である。成
分は、スギナ、オオウメガサソウなどの植物から抽出されたもので、消炎・尿路消毒作
用を有する。
用法;1回2錠、1日3回。
作用;抗炎症作用、抗浮腫作用。
副作用;まれに一過性の消化器症状がみられることがある。
セルニルトン
8種類の植物の花粉の混合物から抽出された、本来は慢性前立腺炎のための薬剤で、
肥大症に対してもエビプロスタットに似た作用を有する。
用法;1回2錠、1日3回。
作用;排尿促進作用、抗炎症作用、抗浮腫作用、抗前立腺肥大作用。
副作用;過敏症状、消化器症状、倦怠感。
アミノ酸製剤
パラプロスト
L-グルタミン酸、L-アラニン、アミノ酢酸(グリシン)などの非必須アミノ酸製剤
で抗浮腫作用によって排尿障害改善が起こる。
用法;1回1gまたは2カプセル、1日3回。
作用;前立腺代謝促進作用。
副作用;過敏症、消化器症状。
漢方薬
八味地黄丸
8種の生薬を混合した漢方薬で、腎炎・膀胱炎などとともに、前立腺肥大症にも効用
があるといわれている。この疾患のための薬には、もともと漢方薬に似た生薬が多いの
であるから、本剤もその意味で注目されよう。
標準的使用法;1回2錠1日2∼3回。
副作用;食欲不振、胃部不快感、便秘。
抗アンドロゲン剤
プロスタール
chlormadinone acetate (progesteron 誘導体)を1錠中に 25mg 含有する内服剤
である。1日2錠を 16 週間投与する方法が一般的である。自覚症状の軽減は 45%であ
った。この薬剤は副作用がやや強く、勃起力低下、動悸・浮腫等の副作用が認められた。
α1 ブロッカー
ミニプレス
用法;1回 0.5∼3mg、1日2回∼3回。
作用;膀胱頸部、前立腺部尿道、膀胱三角部に豊富に存在する交感神経のα1 受容体を
遮断することにより、尿道抵抗を下げ、排尿状態を改善させる。
副作用;血圧低下、頭痛、動悸、頻脈、精神神経症状、胃腸障害、肝機能障害など。
ハルナール
用法;1回 0.2mg、1日 1 回。
作用;ミニプレスと同様に交感神経のα1 受容体を遮断し尿道抵抗を下げる。しかしな
がらこのハルナールは血圧降下を起こすことが少ない。理由としてα1 受容体はα1A、
α1B、α1Cのサブタイプが確認されており、ヒト前立腺ではα1A、α1C受容体が優
位に存在し、ヒト血管ではα1A、α1B受容体が同程度に存在するといわれている。こ
のためミニプレスのように α1A、α1B、α1Cの親和性が同等である場合には血管の
α1 受容体も同時に作用し降下作用を示すが、ハルナールのようなα1A、α1Cへの選択
的な作用を示すα1 ブロッカーでは降下作用は軽微である。
副作用;血圧低下、頭痛、動悸、頻脈、精神神経症状、胃腸障害、肝機能障害など。
フリバス アビショット
前立腺肥大症に伴う排尿障害治療専門のα1 受容体遮断剤
血管に比べて前立腺・尿道に作用
投与は1日1回
副作用;めまい、立ちくらみ。
併用薬に関する留意事項
急性尿閉は、交感神経興奮に伴うα-受容体による前立腺平滑筋緊張が尿道の閉鎖を
増強すると考えられている。作用を持つ薬剤および日常生活による持続的な交感神経興
奮を避けることが大事である。市販のかぜ薬(総合感冒薬)に含まれるエフェドリン・フ
ェニレフリンなどによる尿閉の誘発も考えられることから、患者のかぜの際に無意識に
家庭内の総合感冒薬を服用したり、前立腺肥大症に関する情報の連絡の不十分さから病
院よりかぜ薬が処方され服用していた症例も報告されていることから要注意である。
同様に、自律神経系の相反性支配・二重支配の立場から考えると、副交感神経遮断に
よりやはり尿閉が起こる。胃腸障害あるいは、胃透視の検査時に用いられる鎮痙薬(ブ
スコパン®、アトロピン代用薬)、すなわちアトロピン系薬剤の抗コリン作用による尿
閉(膀胱平滑筋の収縮力を弱める)にも注意が必要である。さらに、消化器系疾患あるい
は尿路結石のために鎮痙薬を服用している患者でも尿閉の可能性が高くなる。
市販の総合感冒薬に比較的よく配合されている抗ヒスタミン剤には、弱いながらも抗
コリン作用が認められるため、慎重投与である。抗ヒスタミン剤を積極的にアレルギー
疾患の治療に供する症例についても注意が必要となる。抗ヒスタミン剤は内服薬のみな
らず、注射薬・塗布薬の剤型も繁用されているため、剤型への注意も必要と考えられる。
禁忌に前立腺肥大がある主な薬剤
・抗ヒスタミン剤(ポララミン、ゼスラン、ニポラジン、ペリアクチン、レスタミン、
セレスタミン、ハイスタミン、ダンリッチ)
・胃炎・消化性潰瘍治療剤(メサフィリン、コランチル、プロ・バンサイン、ファイ
ナリンG)
・総合感冒薬(PL、ペレックス)
・鎮けい四級アンモニウム塩(ブスコパン、セスデン)
・過敏大腸症治療剤(トランコロン、トランコロンP)など
参考資料
今日の治療薬 解説と便覧 ’99 南光堂
別冊NHKきょうの健康これだけは知っておきたい泌尿器の病気
薬物療法の実際 第3版
常用新薬集 第35版
薬事ハンドブック(1999)
薬局 VOL.45 №6(1994)
医薬ジャーナル VOL.31,№5(1995)
薬 剤 名
● パラ プロスト
組成 剤型 容量
容 量
備 考
細粒:(1g=2カプセル)
カプセル:L-グルタミン酸
265mg
L-アラニン 100mg
アミノ酢酸 45mg
1回2カプセル( 1g)
セルニチンポーレ
ンエキス
● セルニルトン
Cernilton
(扶桑)
錠:63mg
1回2錠
● エ ビプロスタッ ト
錠:1錠中
(オオウメガサソウエキス、
ハコヤナギエキス、
セイヨウオキナグサエキス、
スギナエキス等)
1回2錠
塩酸プラゾシン
● ミ ニプレス
Minipress
(ファイザー)
錠:0.5mg、1mg、2mg
初期:1日1~1.5mg、
2~3回分服
維持量:1日1.5~6mg、
2~3回分服
適応:本態性高血圧症、腎性高血圧症
前立腺肥大症に伴う排尿障害
禁忌:本剤過敏症
相互作用:利尿薬、降圧薬
(ニフェジピンなど)
副作用:(重大)意識喪失(その他)めまい、
頭痛、動悸、胃腸・肝障害、頻尿など
塩酸テラゾシン
● ハイ トラ シン
Hytracin
(ダイナボット-大日本)
● バソメッ ト
Vasomet
(三菱化学-日研)
錠:0.25mg、0.5mg
1mg、2mg
1日1mg、2回分服より
開始、
1日2mgに漸増、2回
分服
適応:本態性高血圧症、腎性高血圧症
褐色細胞腫による高血圧症
前立腺肥大症に伴う排尿障害
禁忌:本剤過敏症
相互作用:降圧薬
副作用:めまい、頭痛、動悸、浮腫、
肝障害、胃腸障害、頻尿など
ウラピジル
● エ ブラ ンチル
Ebrantil
(科研-三和)
カプセル:15mg、30mg、45mg
1日60~90mg
2回分服
適応:本態性高血圧症、腎性高血圧症
褐色細胞腫による高血圧症
前立腺肥大症に伴う排尿障害
禁忌:本剤過敏症
相互作用:利尿薬、降圧薬
副作用:めまい、頭痛、動悸、浮腫、
肝障害、胃腸障害、頻尿など
塩酸タムスロシン
● ハルナー ル
Harnal
(山之内)
カプセル:0.1mg、0.2mg
1日1回0.2mg食後
特徴:α1受容体遮断薬、作用持続時間
が長い、下部尿路平滑筋弛緩作用が強い
適応:前立腺肥大症に伴う排尿障害
禁忌:本剤過敏症、腎機能障害
副作用:血圧低下、起立性低血圧、鼻閉、
浮腫めまい、頻脈、発疹、悪心、嘔吐、胃
部不快感、肝障害、嚥下障害、咽頭部灼
熱感
ナフトピジル
● フリバス
Flivas(旭化成)
● アビショッ ト
Avishot( オルガノン)
錠:25mg、50mg
1日1回25~75mg
特徴:α1遮断薬、作用時間が長い
適応:前立腺肥大症に伴う排尿障害
Paraprost
(日研)
● バロメタン
Balometan
(トーアエイヨー-山之内)
Eviprostat
(日本新薬)
適応:前立腺肥大に伴う排尿障害、残
尿および残尿感、頻尿
1日3回
副作用:一過性の胃痛、胸やけなど
1日2~3回
1日3回
適応:慢性前立腺炎、初期前立腺肥大
症による排尿困難、頻尿、残尿および
残尿感、排尿痛、尿線細小、会陰部不
快感
副作用:過敏症状、嘔気、食欲不振、胃
部不快感、便秘など
適応:前立腺肥大症による排尿困難、
頻尿、残尿
副作用:過敏症、胃腸障害、倦怠感