事例●006 浪越石材株式会社(北海道伊達市) 平成 20 年度 建設業の新分野進出・経営革新モデル 構築支援事業 石職人の腕を活かした 石臼コーヒーミルの開発・販路事業 今ではなかなかお目にかかれなくなった石臼でコーヒー豆を挽くと、熱が発生しない し、酸化せずに⾷物繊維も壊さないため、コーヒーが美味しくなる。浪越石材(株)は石 職人の腕を活かした石臼コーヒーミル「休日のコーヒー」を開発。モデル事業選定に よって改良を進め、販路拡大にも取り組んでいる。 1.事業の背景と動機 自社の石材加工技術を応用、 手軽に使える小型石臼の開発へ ⽩、紅、⿊の3色の丸型石臼ミル。従来のミルより、 少量の粉で濃いコーヒーを飲むことができる 昭和元年に創業した同社は、⽯材加⼯ や⽯材、土⽊⼯事をしてきたが、近年、 ⽯材加⼯の技術を活かしたモニュメン ト、⽯刻品、⽯臼等も製作している。受 注体質からの脱却を目指し、⽯材加⼯技 術の応用分野を探るなかで、⽯臼を小型 化して家庭で手軽に挽ける「パーソナル ⽯臼」を開発することにした。大型の⽯ 臼は業務用で需要が限られているが、小 型化して⼥性でも扱えるようになれば市 場が一気に広がると考えた。 2.進出時の苦労やその対応 手作りに近く量産困難、作業が どこまで標準化できるか検討 自然石固有の色あいを出すために、8 種類の砥石を 順に使って磨きあげる。凹部や目⽴ての細かい作業 は、特殊な工具を使用して削っていく PROFILE 浪越石材株式会社 代 表 者/浪越 準一(代表取締役) 所 在 地/北海道伊達市 資 本 ⾦/1,000 万円 従業員数/10 名 U R L/http://www.stone-nami.com/ 事業内容/昭和元年創業、35 年設⽴。伊達市 を中心に土木工事、石材工事を営んでいる。石 材加工の技術を活かしたモニュメントや石刻品、 石臼等の製作も⾏っている。 ほとんど手作りに近く、熟練した職人 の技能に依存する精度の⾼い作業が多い ため、⽣産量が限られる。どの部分が標 準化できるか、北海道⽴⼯業試験場の指 導を受け検討する。個人向け商品の販売 も手がけたことがないので、 販売ルート、 価格設定、販売方法など専門家らの指導 を受けながら進めていく。 3.新事業の概要 石臼ミルの改善進め、観光客向け と首都圏での販売を強化 本事業は、「⽯臼コーヒーミル」を改 良し、販路拡大を目指すものである。平 成 18 年に、⽯臼コーヒーミルを小型化、 家庭向きのデザイン、⼥性でも楽に回せ るような構造に改良。平成 19 年からは大 阪の百貨店とネットで販売を開始した。 モデル事業に選定されたことによって、 顧客アンケートを反映した製品の改善を 進めると同時に、本州からの観光客や首 都圏向けの販売を強化していく。 4.事業の推進体制 観光販路開拓に編集者が協⼒ 社⻑が営業と技術開発、常務がマーケ ティングを担当。北海道⽴⼯業試験場が 製品改善や作業標準化について技術指 導。旅⾏雑誌編集者が観光販路の開拓、 (株)アイ・ピー・エスがマーケティング、 ⻑嶋オフィスが広告について、それぞれ アドバイスする。 5.差別化戦略・競争戦略 香り高くマイルドな味に 高級感を出し、インテリアにも ⽯臼コーヒーミルの競合品はグラインダ 式ないしミキサー式など⾦属刃を使うコー ヒーミルだが、これは豆を「引きちぎる」 ことで細かくするのに対して、⽯臼式では すり潰すので⾹りを強く引き⽴たせること ができる。またコーヒー豆の皮の部分が分 離されるため、雑味が出ずマイルドな味と なる。⾼級感を出し、インテリアとしても 違和感がないようにする。 6.成果と課題 石材業界に根強い販路開拓への “苦手意識”払拭への⼀石に モデル事業に選ばれたことで売上効 果、人材活用効果、知名度の向上など、 一事業にとどまらない波及効果が期待で きる。受注産業である⽯材業は販路開拓 に苦手意識が強いが、同社が積極的に取 り組むことで業界の意識の変化も期待さ れる。コーヒー豆専門店やコーヒー豆卸 売業を通して売る場合、折り合いのつく 価格がどの程度か模索している。また、 ⽯臼コーヒーミルを PR するために、シ ニア向け雑誌に広告を掲載するために交 渉なども⾏っている。 伊達市 13
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