7.HIV感染者等難病患者の人権 <現状と課題> ※ 感染症や※難病については、患者や家族等に対する差別や偏見が今なお根強く残っている状況にあ ります。 HIV感染症の治療は、近年、非常に進歩しており、抗HIV薬の投与によりウイルスの 増殖を抑え、エイズの発症を抑えることが可能になってきています。しかしながら、今のところウイ ルスを体内から無くすことは、不可能であり、終生、薬剤を服用しなければなりません。このため、 医療費が相当な負担になることから、平成10年4月「身体障害者福祉法施行令」の一部改正により、 HIV感染者等が免疫機能障害として障害認定の対象となり、支援体制が整備されました。 このHIV感染症は、その感染経路が特定されている上、感染力もそれほど強いものでないことか ら、正しい知識に基づいて通常の日常生活を送る限り、いたずらに感染を恐れる必要はありません。 しかし、正しい知識や理解の不足から、医療現場における診療拒否、就職拒否や職場解雇、アパート への入居拒否などの問題が起きています。 ※ ハンセン病については、らい菌による感染症ですが、感染力は極めて弱く、発病した場合でも、 現在では治療方法が確立しており、遺伝する病気でないことも判明しています。しかし、我が国で は、ハンセン病は、特殊な病気として扱われ、施設入所を強制する隔離政策がとられてきました。 その後、ハンセン病に対する認識の誤りが明白となり、平成8年(1996年)に「らい予防法の 廃止に関する法律」が施行され、隔離政策は終結しましたが、療養所入所者の多くは、これまでの 長期間にわたる隔離などにより、家族や親族などとの関係を絶たれ、また、入所者自身の高齢化等 により、病気が完治した後も療養所に残らざるを得ないなど、社会復帰が困難な状況にあります。 このため、平成20年(2008年)に「ハンセン病問題基本法」が成立しました。患者・回復者 に対する偏見や差別意識を解消することはもとより、高齢化対策等の充実も必要となっています。 本市の意識調査では、 「あなたは、エイズ患者、HIV感染者やハンセン病(元)患者の方々に対 して、人権の尊重という点からみて特に問題があると思われるのはどういうことですか?」という問 いに対して、「地域社会での理解が十分ではないこと」が43.2%、「感染しているとわかった人が 就職、職場で不利な扱いを受けること」が24.0%となっています。 今後は、HIV感染者、難病患者が差別や偏見を受けることなく、より人権が尊重された生活が送 れるように、感染症の正しい知識の普及啓発に努めるとともに、相談・支援体制の充実を図ります。 - 70 - 【HIV感染者等難病患者に関する人権上の問題】 (複数回答、単位:%) 0% 10% 20% 30% 感染しているとわかった人が就職、職場で 不利な扱いを受けること 感染していることを本人に無断で他人に伝 えられること 24.0 16.7 13.2 病院や施設が患者の治療や入院を拒否すること 患者やその身内が、結婚を断られたり、離 婚を迫られたりすること 11.1 19.5 差別的な言動を受けること 2.0 療養所や病院等の外で自立した生活を営 むのが困難なこと 9.9 3.0 本人に無断で感染しているかどうか、検査 や調査をされること 特に問題はない 6.9 2.0 23.2 わからない その他 N=1778 無回答 60% 22.7 興味本位で報道が行われていること 宿泊を拒否すること 50% 43.2 地域社会での理解が十分ではないこと アパート等住宅への入居が困難なこと 40% 0.8 2.6 資料:平成25年度人権問題に関する意識調査 【施策の基本方向】 ① 正しい知識の普及・啓発 感染症や難病患者等への偏見や差別を解消していくため、多様な機会や手法の工夫を図り、広く市 民に対して正しい知識と理解を深めるための広報・啓発活動、情報提供を推進します。 また、感染症を予防する知識や意識を育て、学校、家庭、地域で感染症予防教育を推進します。 - 71 - ② 相談・支援体制の充実 在宅で療養している難病患者に対して、日常生活に関する相談や指導等の医療相談体制を充実、難 病患者やその家族の精神的、経済的負担を軽減できるよう、病気等に関する相談情報提供のほか、患 者や家族同士の交流機会、医療費への支援など、長期にわたる療養生活の質の向上に努めます。 また、HIV感染等、あらゆる感染症について、感染不安の軽減を図り、正しい情報が提供できる よう、相談体制が必要です。 ③ 人権に配慮した保健医療の推進 患者にとってより良い医療を確保していくため、医療機関などと協力のもと、適切な情報提供や患 者本人の意思が尊重される医療を推進するとともに、患者の個人情報の権利の保護に努めます。 【具体的な取組】 ① 正しい知識の普及・啓発 事業名 事業内容 担当課 HIV感染者や感染不安のある人に対して適切な情 報提供を行い、プライバシー保護に十分留意しなが エイズに関する相談・支援 ら相談・支援・検査体制の充実を図るとともに、よ の充実 り柔軟な対応が出来るよう、マンパワーの育成を図 保健対策課 り、より良い相談・支援・検査体制づくりに努めま す。 HIV感染予防、HIV感染者やエイズ患者への偏 見や差別を解消するため、性教育の一環として、中・ 高校生を対象に講座を実施します。 また検査普及週間・世界エイズデー等に併せた啓発 エイズ予防教育・啓発の推 活動を実施し、市民のHIV・エイズに対する理解 進 と認識の向上に努めます。 保健対策課 HIVに関する知識を深めるとともに偏見や差別の 解消を図ることを目的に、性に関する教育の一環と して各学校へパンフレットの配布による啓発活動を 保健給食管理課 実施します。 感染症予防のための啓発 感染症についての予防に関する知識の普及と偏見を の推進 なくすため、広報・啓発に努めます。 学校におけるエイズ予防 教育・啓発の推進 保健対策課 HIV感染予防、HIV感染者やエイズ患者への偏 見や差別を解消するため、性教育や人権教育の充実 に努めます。 - 72 - 学校教育課 ② 相談・支援体制の充実 事業名 難病患者に対する医療相 談体制等の充実 事業内容 担当課 在宅で療養している難病患者に対して、専門医や関 係職種の協力を得て、日常生活に関する相談や指導 保健対策課 等の医療相談体制を充実します。 難病患者の療養生活を支援するため、病気に関する 難病患者に対する相談・支 正しい知識と情報を提供する医療相談会を開催する 援 とともに、訪問相談の充実を図り、地域生活での不 保健対策課 安の軽減に努めます。 長期にわたる療養生活において、医療費の自己負担 難病患者への療養支援 の軽減を図り、継続治療を支援します。また、患者・ 家族会への支援を行い、交流・相互支援を推進しま 保健対策課 す。 HIV感染に不安をもつ市民に対して、保健所にお エイズ予防に向けた相 ける相談、抗体検査を実施します。プライバシーへ 談・検査体制の充実 の十分な配慮・対応を図るとともに、マンパワーの 保健対策課 育成により相談体制の充実を図ります。 ③ 人権に配慮した保健医療の推進 事業名 事業内容 担当課 患者の意思が尊重され、同意のもとで適正な医療が 行われるよう、医療関係機関への働きかけを行い、※ インフォームドコンセントの確立や医療体制の充 総務企画課 実、診療情報の開示などを促進します。 患者本位の適正な医療の 促進 患者の意思が尊重され、同意のもとで適正な医療が 行われるよう、医療関係機関への働きかけを行い、 インフォームドコンセントの確立や医療体制の充 実、診療情報の開示などを促進します。また、感染 症などの入院についても、医療関係団体との連携の もと、患者本人の意思が尊重された適切な対応に努 めます。 - 73 - 保健対策課 事業名 事業内容 担当課 患者のプライバシーを保護するため、医療従事者の 守秘義務や医療情報の管理が徹底されるよう、立入 患者の個人情報の保護 総務企画課 検査等において医療関係機関への啓発を進めます。 患者のプライバシーを保護するため、医療従事者の 守秘義務や医療情報の管理が徹底されるよう、医療 関係機関への啓発を進めます。 - 74 - 保健対策課
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