ヒト由来細胞・組織加工医薬品等の品質及び安全性の確保に関する指針

ヒト由来細胞・組織加工医薬品等の品質及び安全性の確保に関する指針
1.目的
「ヒト由来細胞・組織加工医薬品等の品質及び安全性の確保に関する指針」
(平成 12 年 12 月 26 日医薬発第 1314 号)は、ヒト由来の細胞・組織を加工し
た医薬品又は医療用具の品質及び安全性の確保のために必要な基本的要件を定
めたものである。
2.確認申請
細胞・組織加工医薬品等の製造業者又は輸入業者は、細胞・組織加工医薬品
等の安全性及び品質の確保を期するため、当該医薬品等が本指針に適合してい
ることの確認を厚生労働大臣に求めること。
3.主な概要
1)製造方法
(1)
細胞・組織加工医薬品の利用目的等
(2)
原材料となる細胞・組織について
(3)
細胞・組織加工医薬品等の製造方法
(4)
細胞を培養する場合
(5)
細胞に遺伝子工学的改変を加える場合
(6)
細胞・組織以外の原材料について
(7)
細胞・組織の同一性及び均一性
(8)
品質管理
2)安定性
3)非臨床安全性試験
4)体内動態
5)臨床試験(外国における開発状況等)
4.確認後の取扱い
本指針に適合することが確認された場合、薬事法に基づく治験が実施される。
なお、指針への適合が、直ちに医薬品としての製造又は輸入承認に結びつく
ものではない。
組換えDNA技術応用医薬品等の製造について
バイオテクノロジー応用医薬品のうち、組換えDNA技術応用医薬品については、医薬
品の品質及び製造上の安全性の確保を目的として、国内製造を行うものに対して、昭和 61
年 12 月「組換えDNA技術応用医薬品の製造のための指針」を定めた。さらに、昭和 62
年5月に当該指針を改訂し、医薬部外品、化粧品及び医療用具についても適用することと
した。
この指針により、製造業者は組換えDNA技術を利用するに当たって、医薬品等の品質
及び製造上の安全性の確保を期するため、当該製造に利用される設備・装置及びその運営
管理方法等が本指針に適合していることの確認を厚生労働大臣に求めることができるとし
ている。これに基づき、昭和 62 年初回からの累計は以下のとおりである。
○ 既に組換えDNA製造指針に係る確認を受けた製造計画
年度
昭和61年度
昭和62年度
昭和63年度
平成 元年度
平成 2年度
平成 3年度
平成 4年度
平成 5年度
平成 6年度
平成 7年度
平成 8年度
平成 9年度
平成10年度
平成11年度
平成12年度
メーカー
4社
23
12
12
9
7
10
8
13
11
4
13
10
8
6
計
生産物
5件
33
13
17
10
8
10
11
27
32
14
16
15
10
6
227
備考
遺伝子組換え食品の安全性確保の推進
(http://www.mhlw.go.jp/topics/idenshi/index.html )
(1)遺伝子組換え食品とは
組換えDNA技術とは、食品として用いられている植物等の性質、機能を上手に
利用するために、他の生物から有用な性質を付与する遺伝子を取り出し、その植物
等に組み込むといった技術です。
食品の生産を量的、質的に向上させるだけでなく、害虫や病気に強い農作物の改
良や、日持ちや加工特性などの品質向上に利用され、食糧の安定供給に貢献し、天
然資源の節約をもたらすことなどが期待されています。
(2)安全性審査の義務化について
(http://www.mhlw.go.jp/topics/idenshi/anzen/anzen.html)
厚生省は、平成3年に「安全性評価指針」(生活衛生局長通知)を策定し、食品
衛生調査会における審議を経て、厚生大臣が個別に安全性審査を行ってきたところ
ですが、法律に基づかない任意の仕組みとなっていました。
しかしながら、遺伝子組換え食品は、近年、国際的にも広がってきており、今後
さらに新しい食品の開発が進むことも予想されるため、安全性未審査のものが国内
で流通しないよう、安全性審査を食品衛生法に基づき義務化することとし、関係告
示の改正等を行いました。これにより、平成13年4月1日から、安全性未審査の
遺伝子組換え食品は、輸入、販売等が禁止されています。
また、未審査の遺伝子組換え食品が輸入されていないか、遺伝子組換え食品の輸
入時の届出が正しく行われているかを検証するため、各検疫所においてモニタリン
グ検査を行っています。
遺伝子組換え食品等の安全性審査は、「組換えDNA技術応用食品・添加物の安
全性審査基準」に基づき、個々の遺伝子組換え食品等について、薬事・食品衛生審
議会の意見を聞きながら、アレルギー誘発性や、有害物質の産生、組換えDNA技
術に伴う派生的な影響等を含め、詳細な審査項目に沿って行っています。
我が国では、これまでに大豆、トウモロコシ等39品種の食品と7品目の添加物
について安全性審査を行い、人の健康に影響がないことを確認しています。
※これまでに安全性審査の手続を経た食品・添加物の例
食 品:除草剤耐性の大豆、害虫抵抗性のトウモロコシ、高オレイン酸大豆など
添加物:キモシン、α−アミラーゼ、リボフラビン(ビタミンB2)など
(3)遺伝子組換え食品の表示の義務化について
(http://www.mhlw.go.jp/topics/0103/tp0329-2c.html)
遺伝子組換え食品については、農林水産省がJAS法に基づき、平成13年4月
から表示義務化を実施していますが、厚生労働省においても、平成12年12月の
食品衛生調査会の意見具申を受けて、食品衛生法に基づき表示を義務化することと
し、関係省令の改正等を行いました。
1.表示義務化の必要性
遺伝子組換え食品の安全性審査の法的義務化を着実に実施するため、輸入届け、
モニタリング検査を実施するとともに、表示制度も、食品の内容を明らかにする
ものであり、安全性審査の義務化と一体のものとして施行しました。
2.表示の考え方
食品衛生法においては、次のような考え方から、遺伝子組換え食品であるか、
非組換え食品であるかの区分について、表示を行うこととしました。
・ 遺伝子組換え食品である旨表示を義務付けると、これに着目した食品監視の対
象となるほか、未審査のものを何の表示もせずに販売等した場合には、義務的
な審査制度の下で規格基準違反となるだけでなく表示基準違反となります。
・ 食品衛生法では、食品添加物の表示を義務付けていますが、これも安全性審査
を経たものであり、その上で、食品の内容を明らかに示すための表示を義務付
けて消費者に食品の内容を理解できるようにしているところであり、安全性審
査を義務付ける遺伝子組換え食品においても同様としています。
3.表示の具体的な在り方
(1)表示内容
① 分別生産流通管理が行われた遺伝子組換え食品の場合
→ 「遺伝子組換え食品」である旨(義務表示)
② 遺伝子組換え食品及び非遺伝子組換え食品が分別されていない場合
→ 「遺伝子組換え不分別」である旨(義務表示)
(参考)
分別生産流通管理が行われた非遺伝子組換え食品の場合
→ 「非遺伝子組換え食品」である旨(任意表示)
(2)義務表示の対象
関係業界が既にJAS法に基づく遺伝子組換え食品の表示の準備を進めてい
るという実態を踏まえ、関係業界が対応可能なものからスタートするという観
点から、食品衛生法の表示制度としては、平成13年4月から、当面、次のも
のを義務表示の対象としていますが、それ以外のものについては、今後、流通
の実態、検証技術の向上、国際的議論の推移等を見守るとともに、関係者の意
見を聴いた上で、具体的内容、実施時期を検討し、状況が整えば表示義務化を
実施していくこととしています。
○ 遺伝子組換え農産物が存在する種類の農産物である食品及びこれを原材料とす
る加工食品
* ただし、次の加工食品については、当面義務表示とはしないものの任意に表示
することを禁止しないものとします。
・組換えDNA及びたんぱく質が除去、分解されているもの
・主な原材料(全原材料中重量が上位3品目で、かつ、食品中に占める重量が
5%以上のもの)となっていないもの
(4)調査研究等の推進について
遺伝子組換え食品の安全性については、例えば、長期摂取による慢性毒性影響や、
抗生物質耐性マーカー遺伝子による薬剤耐性菌の問題、アレルギー誘発性などにつ
いて懸念を示している消費者や研究者がいることから、厚生労働省では、従来から
厚生科学研究事業による「組換えDNA技術応用食品に関する調査研究」を実施し
ており、今後とも遺伝子組換え食品の安全性評価に関する研究等を推進することと
しています。
また、遺伝子組換え食品等の安全性審査の法的義務化の施行に合わせ、未審査の
遺伝子組換え食品等が流通しないよう、輸入時の届出やモニタリング検査等の体制
を整備する必要があることから、引き続き「遺伝子組換え食品検査の信頼性確保に
関する調査研究」において技術的な検討が進められているところです。
さらに、現在の遺伝子組換え食品の安全性審査は最新の科学的知見に基づいて行
っていますが、将来、仮に、こうした食品による予期せぬ健康影響が出現した場合
に迅速に対応するため、安全性審査基準の中で種子(遺伝子組換え前の宿主の種子
及び組換え後の各世代における種子)の保存を行うよう申請者に義務付けています。
(5)情報提供について
(http://www.mhlw.go.jp/topics/idenshi/qa/qa.html )
国民への情報提供としては、薬事・食品衛生審議会の審議内容の公開や安全性審
査に係る申請書の一部の一般公開を行っているほか、遺伝子組換え食品の安全性審査
に関する具体的内容等を紹介したQ&Aやその他関連資料を厚生労働省のホームペー
ジに掲載しています。また、消費者が正しい情報に基づいて、食品の安全性を理解で
きるよう、上述の研究成果についても適切に公表するよう努めることとしています。
(6)国際的な取組
①CODEX委員会 バイオテクノロジー応用食品特別部会
(http://www.mhlw.go.jp/topics/idenshi/codex/codex.html)
平成11年6月に開催されたWHO/FAO合同食品規格委員会(コーデックス
委員会)総会において、バイオテクノロジー応用食品の安全性評価に関する国際基
準を策定するため、バイオテクノロジー応用食品特別部会が設置され、日本が同特
別部会の議長国となることが決定されました。
その第2回会合が、平成13年3月25日∼29日、千葉県の幕張メッセ国際会
議場で開催され、 バイオテクノロジー応用食品のリスクアナリシス(危険性の分
析)のための一般原則及び組換えDNA技術応用植物由来食品の安全性評価に関す
るガイドラインについて検討が行われました。これら2つの文書については、コー
デックス委員会の手続において、ステップ3(提案規格案をコメント要請のため各
国政府等に送付する段階)からステップ5(規格案として採択されるため事務局か
らコーデックス委員会に送付する段階)に進めることで合意されました。また、今
後組換えDNA技術応用植物由来食品のアレルギー誘発性評価に関するワーキング
グループ及び組換えDNA技術応用微生物由来食品の安全性評価のガイドラインに
関するワーキンググループを設けて、具体的な検討を進めることとされました。
なお、第3回会合は、平成14年3月4∼8日に開催され、平成15年(200
3年)6月に最終報告を行う予定です。
②その他
ア.OECD
平成12年6月にOECDにおいてバイオテクノロジー応用食品の安全性等につ
いての報告書がまとめられ、同年の九州・沖縄G8サミットに報告され、同サミッ
トでは、コーデックス委員会におけるバイオテクノロジー応用食品の安全性につい
ての議論を引き続き支持していくことが合意されました。
イ.WTO(世界貿易機関)の動き
平成11年7月の一般理事会において、日本側(農林水産省)から遺伝子組換え
食品の取扱い等新たな課題について検討する場をWTOに設置することを提案し、
平成11年11月30日∼12月3日にシアトルで開催された第3回WTO閣僚会
議において、遺伝子組換え食品等の安全性の評価、表示等の検討に関する提案がさ
れましたが、会議が決裂したため、方向は定まっていません。
ウ.バイオセイフティ議定書
生物多様性条約に基づき、バイオテクノロジーにより改変された生物(遺伝子組
換え作物を含む)が輸出入により国境を越えて移動する場合の手続を定めるため、
平成8年以降、作業部会を設けて、バイオセイフティ議定書交渉が進められてきま
した。平成12年1月のモントリオール非公式会合で大筋合意が得られ、同年5月
の生物多様性条約締約国会議で正式に採択されたところですが、日本はまだ批准し
ていません。