「私はこうなのだ」と い過ぎる - Marshall Goldsmith

Bloomberg Businessweek
「私はこうなのだ」と⾔い過ぎる
私たちは、全ての種類の⾏動を合理的に説明するために、私たちが誰かというアイデアを⽤い
る。定義の範囲内に収めるのをあきらめる事は、私たちに最善の仕事をさせる。
マーシャル・ゴールドスミス
マーク・ルーター(Mark Reiter)は、トップの著作権代理⼈で、⾔葉の達⼈である。マークと私
は、私の著作埜 hat got You Here Wonʼt Get you There で⼀緒に仕事をした。この本で私た
ちは成功した⼈たちの・20 の困った癖を議論した。そして、どうやってこの悪癖を取り除き、
ポジティブで永続的な⾏動の変⾰を達成するのかも議論した。
この本にある 20 の悪癖の⼀つに、「私はこうなのだと⾔い過ぎる」というのがある。この「私
はこうなのだと⾔い過ぎる」とは何を意味しているのだろうか。
私たちひとりひとりには、
「私」と定義される⾏動の積み重ねがある。それらは肯定的・否定的
な両⽅の意味で私たちが⾃分たちの不変の本質と考えている⾏動だ。
「私」的⾏動の多くがポジティブなものである(例えば、
「私は賢い」とか「私は⼀所懸命働く」
とか)。⼀⽅でいくつかはネガティブだ(例えば、「私は拙い聞き⼿だ」とか「私は常に遅れて
いる」とか)
。
もし、私たちがほとんどの⼈間がするように、
「私」という⾏動の定義を受け⼊れるなら、ほと
んど全ての⼈を悩ます⾏動を「それは私のやり⽅だ!」と⾔って正当化することを学ぶ。
あなたがこのコラムを読む時、⾃分⾃⾝の⾏動を考えてほしい。何度、あなた⾃⾝の「私はこ
うなのだ」が⼈⽣で重要な⼈とのポジティブな関係を構築する際に障害となったか。何度あな
たは不適切な⾏動を「それは私のやり⽅だ!」と⾔って正当化してきただろうか。
何年か前、⼀般的に素晴らしいリーダーと認識されていたが、ポジティブな評価を与える能⼒
を⽋くと⾒られていた CEO と仕事をした。私たちが彼の 360 度評価フィードバック・レポート
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をレビューして売る時、彼は「あなたは私に何をしてもらいたいのですか。⼈々の間を歩き回
って、そうでない⼈にまで賞賛しろとでも⾔うのですか。私はペテン師のように⾒られたくは
ない!」と不満を⽰した。
「それはあなたが⼈の真価を認めないことの⾔い訳でしょうか」と尋ねた。「ペテン師のよう
に⾒られたくはない?」。
「そうです」と彼は答えた。
彼が真価を認めることに関して酷い評価を必⾄に弁護したので、私たちは⾏きつ戻りつしなが
ら進んだ。彼は⾃分の弁護を述べるときは⾮常に活気があった。例えば、かれが評価を与える
べきでない時について⾮常に⻑くかつ詳細に説明した。それはこのような発⾔だった。

彼には⾼い基準があった。従業員は常にそれを満たしていなかった。

彼は⾒境なく賞賛を与えるのを好まなかった。というのも、本当に称賛に値する時にその
賞賛の価値が安っぽくなるからという理由だ。

彼は誰かを選び出す事はチームを弱めると信じていた。
彼が評価を与えるべきでない時があると指摘する⼀⽅で、彼はポジティブな評価を与えるべき
時が多くあったという事実を完全に扱い損ねていた。彼が素晴らしい正当化を並べた後で、私
はついに彼を⽌めてこう⾔った。「あなたが何を⾔おうが、私はあなたの⾔い訳に感銘を受け
ません。私は賞賛を与える事があなたをペテン師にするとは思っていません。あなたの本当の
問題は、あなたが誰かについて⾃分で限定的な定義をしていることです。あなたは、もしあな
たが従業員を評価すると、その真価を認めているのが本当の「私」でないのではと恐れている。
それはペテン師の定義であって、「私」の定義ではない」。
私は彼に尋ねた。「ポジティブな評価を与えるという素晴らしい仕事をしてみませんか。それ
は、モラルに反するものでもないし、違法でもないし、倫理にもとらないですよね」。
「はい」と彼は認めた。
「それは従業員をよりよくするでしょうか」
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「はい」
「この受けるに値するポジティブな評価の結果として彼らはより良い業績を出すでしょうか」
「おそらく」
「であれば、わたしに説明して下さい。なぜそれをしていないのですか」
彼は笑って答えた。「なぜなら、それをすると私でなくなるからだ!」
その時がまさに変⾰が可能になった時だった。つまり、彼が⾃分⾃⾝に対する厳しい忠誠は無
意味な虚栄⼼だったと彼が気づいた時だ。彼は従業員と会社の成功の機会を傷つけただけでな
く、⾃分⾃⾝の成功の機会までも傷つけていたことを理解した!
彼は、⾃分の「私はこうなのだと⾔い過ぎる」ことを取り除き、ペテン師にならないことを悟
った。彼は⾃分⾃⾝の事について考える事を⽌め、他の⼈の利益になるように振る舞い始めた。
まさに、彼が⾃分の意味のない「私」という定義を捨てた時、彼の他の正当化は途中で頓挫し
たのだ。彼は、直属の部下が彼の評価に全く⾒合うような才能があり、⼀所懸命働く⼈たちで
あることが分かった。彼はついに評価を与えるべきに与える事は、⾼い期待を持っている彼の
リーダーとしての評判を傷つけないことを理解した。
その利益は凄まじいものだった。⼀年以内に、評価を与えるという項⽬はリーダーシップに関
する他の項⽬と同じくらいのポジティブな評価となった。全ては、彼が「私はこうなのだと⾔
い過ぎる」ことを⽌めたからだ。
⽪⾁は彼には通じなかった。彼は、彼が従業員に注⽬すればするほど、彼らは会社に利益をも
たらすために働くという事実を認めた。それは彼にも利益を与えた。
⾯⽩い等式がある。私を少なく(less me) + 彼らに多く(more them) = リーダーのより多く
の成功(more success as leader)。
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次回、あなたが変⾰を拒んでいると分かった時、それはあなたが間違ったもしくは(または)
意味のない「私」という考えにしがみついているからだ、これを⼼に留めておいて欲しい。
マーシャル・ゴールドスミス博⼠は、世界で最も影響⼒のあるリーダーシップ思想家としてシ
ンカー50 のリーダーシップ部⾨の第⼀位に選ばれた
(ハーバード・ビジネス・レビュー誌後援)。
リーダーシップ部⾨の第⼀位に加えて、彼は世界のビジネス思想家の第七位にランク付けされ
た。著作の埜 hat got You Here Wonʼt Get you There はその年のビジネス書籍のベストセラ
ーのトップ・10 に⼊った。別の著書熱 OJO は・19 位であるが、⼆年連続でトップ 20 位内に
⼊っている。
和訳:秋元祐次郎(株式会社秋元アソシエイツ、http://www.akimotoassociates.co.jp)
Translation by Yujiro Akimoto, Akimoto Associates, Inc., Tokyo, Japan
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