ボルドーを訪ねて - 東京岐阜県人会

『ボルドーを訪ねて』
東京岐阜県人会
小西悦郎理事 夫人
小西 恭子(東京都出身)
この西隣りが、サンテミリオンと
右岸メドックの中間をいくワインを
産出するポムロール地方。
頂点にあ
るのが、ボルドーで一番値段が高い
シャトーペトリュースである。
なだらかな丘を越えて、さらに
北に進むとコート・ド・ブールの村
ボルドーワインの味の良し悪しは、ブレンドの秘伝
へ入る。日本でも最近注目され始
出している。この度同業の研修旅行に参加して、四月
の技にある。これらの品種のブレンドの仕方が地域、
めているこのワインの70%は輸出
初旬にワインの銘醸地ボルドー右岸を訪れた。ボル
シャトー毎にことなり、ワインの味、香り、骨格の決
用ではなく、フランス国内で消費
ドーワインと言っても、ひとくくりにできない程、幅
めてとなる。左岸はメドック地方中心に、1855年にナ
されている。
広い地域に葡萄畑が広がり、土壌、品種により味わ
ポレオン三世の命令で、パリ万国博覧会展示のために
いが異なる。
ワインは格付けされ、有名な大シャトーが多い。
長い冬から目覚めた葡萄の木に柔らかい芽が顔を
フランス中央山塊から流れ出るドルドーニュ川、ピ
広がっているのかと驚く。
ルドー市の南で合流して大河ジロンド河となり大西
フランスでは、コマーシャルに人
ボルドーの著名なワインコンサルタントのステファン・ドルノンクール氏と
洋に注いでいる。この川がもたらす両岸の土壌の違
間を使って、故意にアルコールをすすめることは特に
害虫被害は、免疫性のあるアメリカ産の株の接ぎ木
いがワインの味を決めている。右岸は石灰粘土質、左
若者への影響を考慮して禁じられているらしい。ワイ
でなんとか終息を迎えることができた。
岸は石ころ、砂が主である。
ン造りの国が、自由にアピールできないことは興味
育つ品種もそれぞれ違って
深い。
私が以前から注目していたのが、とくにボルドー、
左岸ではマルベックは育ちにくく、ほとんどブレンド
いる。幾つかの品種のブレン
右岸のワインは左岸に比べて、メルロのブレンドの
されていないことだ。ところが右岸のこのコート・ド・
ドで造られているボルドーワ
比率が高く、カベルネ・ソーヴィニヨンを少量にして
ブールでは元気なマルベックを栽培している。徐々に
他の品種をブレンドしている。ボルドーワイン、ひい
マルベックの比率をあげていることも分かった。今回
てはフランスのワインの瓶を眺めていると、ラベルに
の研修の成果は、料理に不可欠なスパイスの役目を
シャトーとは葡萄を栽培、収穫、醸造する工場、即
品種の比率がはっきり書いてあるワインにほとんど
マルベックがして、この地方のワインを印象づけたこ
ちワイナリーのことだが、ボルドー地方は、貴族が
お目にかかれない。アメリカ、アルゼンチン、オース
とだ。嬉しいことにリーズナブルな値段で買えること
土地を所有していたのでその館を意味するシャトー
トラリア、チリ etc 新世界と呼ばれているワインは
にもある。
イン、
初めに品種のポイントを
シャトー・ダガサック
(オー・メドック)
にて
おさえておきたい。
■カベルネ・ソーヴィニヨン
=左岸、メドック地区代表品種 砂地質向き、
タンニン、酸、色素濃く、晩熟型
■メルロ
=右岸、サンテミリオン、ポムロール地区代
表品種 アルコールに富みボリューム感が
あり早塾型
■カベルネフラン
=カベルネ・ソーヴィニヨンと同系品種だが、
性格はソフトでやさしい
■プティ・ヴェルド
=補助的役割 フレッシュさを与える。爽快
■マルベック
=補助的役割 スパイシーさと色素の濃さ
特別紀行
ラクターはビーグル犬、動物ばや
りは日本だけではなく、世界中に
レネー山脈に源流を持つガロンヌ川、この二川がボ
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このワインのコマーシャルキャ
(城)が使われている。
さて、今回は右岸で感動したワインを紹介したい
と思う。
ボルドーで一番古いピエール橋を渡った右岸のサ
ヴァラエタルワインと呼ばれ、一品種から造られてい
ボルドーワインの幅広さのひとつとして力強く、色
て、ボトルのラベルに品種名が記されていて分かりや
が濃く、スパイシーで、わいわいワインを飲む楽しい
すい。
お酒になることはまちがいないと確信した。
前記した補助品種に使われているマルベックに注
ンテミリオンは世界遺産の街で、その歴史は古く、
目してみよう。特に、現在アルゼンチンワインの代表
ぜひ一度試飲する価値があると思う。右岸と左岸
ローマ時代にさかのぼる。詩人アウソニウスは、ロー
品種になっている。色は濃く、スパイシーで、肉、と
のワインの違いを自分自身で飲むことによって確認
マ皇帝に政治的手腕を買われて、ガリアの長官に任
くにバーベキュー料理にとてもよく合う。
すると、あなたは今日か
じられた。自分の荘園をうたったのが、今日のシャ
19世紀マルセイユに荷卸しされたアメリカの材木
トーオーゾーヌだという伝説があり、特級のワインと
に付着して上陸した害虫「フィロセキラ」は、ぶどう
してその名を保ち続けている。坂道は石だたみ、自
の根に巣喰う虫でまたたくまに、フランス全土、いや
然の岩や石をくりぬいた家々、塔の上に立つと丘が
ヨーロッパ中の葡萄の木を枯死にいたらしめた。
フラ
連なり、風が心地良い。
ンスの損害だけでも1兆8000億フランだった。この
いっぱし
ら一 端のワイン通にな
れるかもしれません。
シャトーの酒蔵で(ギルドー)
特別紀行
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