フランチャイズ・ビジネスの仕組み

<フランチャイズ・ビジネスの仕組み>
1
フランチャイズとは何か
(社)日本フランチャイズチェーン協会では、次のようにフランチャイズを定義している。
フランチャイズとは、事業者(「フランチャイザー」と呼ぶ)が、他の事業者(「フランチ
ャイジー」と呼ぶ)との間に契約を結び、自己の商標、サービス・マーク、トレード・ネー
ムその他の営業の象徴となる標識、および経営のノウハウを用いて、同一のイメージのもと
に商品の販売その他の事業を行う権利を与え、一方、フランチャイジーはその見返りとして
一定の対価を支払い、事業に必要な資金を投下してフランチャイザーの指導および援助のも
とに事業を行う両者の継続的関係をいう
ところで、フランチャイズ(franchise)とは本来「人や会社などに特権(一手販売権)を与える」
という意味を持ち、契約に基づきフランチャイザー(本部事業者)がフランチャイジー(加盟者)に
特権を与え「共同事業」をおこなうものである。ただし、フランチャイザーとフランチャイジーは、
法律的にも財務的にもそれぞれ独立した経営体として「共同事業」を行うのであって、「共同経営」
ではないことを認識しておく必要がある。
また、フランチャイザーとフランチャイジーは上下関係にあるのではなく、あくまで契約を結ん
だビジネスパートナーの関係で対等である。店舗を経営するフランチャイジーの能力と努力次第で
業績が左右されることも理解しておく必要がある。
なお、フランチャイザーとフランチャイジーの間のフランチャイズ契約は、商取引による「契約」
であり、消費者契約ではない。従って、経営の成功・失敗の責任は個々にあり、当然のことながら
フランチャイザーの経営はフランチャイザーの経営者が負い、フランチャイジーの経営はフランチ
ャイジーの経営者が負うという「自己責任」意識が重要である。
1
2
フランチャイズ・ビジネスの仕組み
フランチャイズ契約とは、フランチャイジーが、①フランチャイザーの商標、サービス・マーク、
チェーン名称を使用する権利、②フランチャイザーが開発した商品やサービス、情報など、経営上
のノウハウを利用する権利、③フランチャイザーがフランチャイジーに与える指導や援助を継続的
に受ける権利を得ることであるということもできる。
そのために、フランチャイザーはフランチャイジーの事業が繁栄するよう、必要な指導と支援を
継続的に行なわなければならない。
一方、フランチャイジーは必要な事業資金や労働力を投入すると共に、フランチャイザーから受
ける上記①∼③の権利に対する対価をフランチャイザーに支払う義務を負う。さらに、フランチャ
イザーによる指導の基で、フランチャイザーと協力しながらフランチャイズの統一的イメージを維
持し、チェーンの発展に寄与する義務がある。
以上のことを図示すると、次のようになる。
図表
フランチャイズ・ビジネスの仕組み
フランチャイズパッケージの提供
商標、システム、ノウハウ
経営指導・援助
フランチャイザー
フランチャイジー
契約
事業の開発
人・物・金の投入
対価の支払い
加盟金、保証金、ロイヤルティ
2
3
フランチャイズ・システムの特徴(メリット・デメリット)
フランチャイズ・システムは、フランチャイザー・フランチャイジー双方にメリットもあればデ
メリットもある。ただし、うまく活用すれば、メリットのほうが大きいと言われている。しかし、
メリットが大きい分、独特のデメリットもある。フランチャイズ・システムを活用してビジネスを
行うのであれば、この点を十分に認識する必要がある。
主なフランチャイジーのメリット・デメリットは次のようなものがある。
図表
フランチャイジーのメリット・デメリット
フランチャイジーのメリット
フランチャイジーのデメリット
・ 独自に開業する場合に比べて危険度が低い
・ フランチャイザーの良し悪しでフランチャ
イジーの経営が左右される
・ 事業の経験が無くても、経営が可能
・ フランチャイジーは自店の販 売 活 動 に 専
念 できる
・ 加盟金やロイヤルティが必要
・ 本部への依頼心が強くなり、経営努力や販
売努力を怠る場合がある
・ 価格メリットによる競争力の発揮が可能
・ チェーンの知名度・イメージを活用
・ 標準化されたシステムであり、創意工夫の
余地が少なく店舗の独自性を出しにくい。
できる
つまり、個々のフランチャイジーの意見が
・ フランチャイザー提供の効 果 的 な 販 売 促
通りにくいシステムである
進策が実施できる
・ 個人経営と比較して比較的小資本で
・ システムが店舗立地や経営者の能力に合わ
ない場合がある
開業できる
・ 安定した原材料・資材の供給を受け
・ チェ−ン内で不良店が出ると、その影響を
受け、他の店もイメ−ジダウンになる
ることができる
・ 環境変化に適応した事業経営ができ
・ 契約条件は基本的に一律であり、加盟希望
者の希望条件が受け入れられる余地が少な
る
い
・ 安定した商品・サ−ビスを販売する
ことができる
・ 契約解除後はそれまでの実績を自分自身の
事業に活かしきれない
・ フランチャイザーが弱体化するとその影響
を受け十分な指導・援助が受けられなくな
りフランチャイジーの経営も弱体化する
3
一方、フランチャイザーには次のようなメリット・デメリットがある。
図表
フランチャイザーのメリット・デメリット
フランチャイザーのメリット
フランチャイザーのデメリット
・ 資本力の小さな企業でも、他人の経営資源
・ フランチャイジーに対して指示・命令権が
活用により、多額の資金や人材を必要とせ
ない(あくまでも、アドバイスや要望)
ず、急速な多店舗展開や広 い 地 域 に 展 開
・ 競争力のあるノウハウやシステムの維持や
継 続 的 な ノ ウ ハ ウ 開 発 が必要であり、
可 能 が可能
そのための資金や人材が必要になる
・ 店舗レベルでの高い販売意欲の維持が可能
・ フランチャイジーが保有する地域ネットワ
・ フランチャイザーの営業政策が地域特性に
対応できない場合がある
ークの活用が可能
・ 店名、店舗デザイン、商品構成、販売方法
・ 一 部 フランチャイジーの 本 部 依 存 体 質
の統一により、消費者に対する販促効果や
や自助努力欠如の出現により、全体
高い信頼度が期待できる
の活力不足、イメージダウンが生ず
る
・ 加盟金やロイヤルティを徴収することによ
り安定した経営ができる
・ 不振フランチャイジーが発生した場合、そ
の対応のための経費と労力が必要になる
・ フランチャイジー指導のための人
員・経費を要する
4
4
その他の類似システムとの比較
外見上はフランチャイズと同様であるが、契約内容や運営システムが異なるシステムがある。ど
れが良くて、どれが悪いというわけではないが、その違いをよく認識しておく必要がある。
●レギラーチェーンとの違い
レギュラーチェーンとは、いわゆる直営チェーンのことで、多店舗展開を図り、各店舗を集中的
に管理し、全体としてひとつの企業としてまとまりを持つ経営形態のことである。
チェーンストア理論に基づいた店舗運営を行うことはフランチャイズと共通点であるが、レギラ
ーチェーンは同一資本によるチェーン展開や本部から各店舗への指示命令権を持っている。しかし、
フランチャイズチェーンは他人資本の活用で、最終決定については店舗のオーナーが行う。
●ボランタリーチェーンとの違い
ボランタリーチェーンとは、一店舗では弱い独立小売店が、経営の独自性を保ちながら、仕入、
販売促進活動を共同化することにより、規模の利益と分業の効率性を得ようとするチェーン組織の
ことである。
また、フランチャイズ契約書には、店舗運営方法や契約の終了や解約に関する項目等、詳細に記
述されているが、一方、ボランタリーチェーンの契約には具体的な約束事は少ない場合が多いとこ
ろに相違がみられる。
●代理店との違い
代理店とは、本部が加盟者との契約で一定の地域内の販売権や商標の使用権を与え、商品・サー
ビスの供給を実施していくシステムである。しかし、フランチャイズチェーンと比較した場合に、
商品の販売に関する必要項目のみの契約内容であり、本部から代理店への指導は継続的には行われ
ず、販売方法等の規制も緩やかである。なお、ロイヤルティや会費は徴収しないのが一般的である。
したがって、代理店側は同時に数社の商品・サービスを扱うことが可能となる。
●パッケージライセンスビジネスとの違い
パッケージライセンスビジネスとは和製英語であり、明確な規定はない。最近、多数の企業がこ
の方式によりビジネス展開をしているが、一般的には、自社で開発したジネスモデルと商標の使用
権を、一定期間、他の事業者に対価を取って貸与するシステムである。その意味では、中小小売商
業振興法に定める特定連鎖化事業(フランチャイズ・ビジネス)の一形態であるということができ
る。ただし、継続的な指導は行われない。
中小小売商業振興法や独占禁止法のガイドラインの強化により、規制を嫌ったり、不振店とのト
ラブルを嫌って、この名称を使用しているものも多いと推察される。
5
<フランチャイズ加盟で成功する心構え>
5
加盟者の適性と能力
●フランチャイジーに必要な資質と条件
フランチャイズに加盟して成功する人としない人の「差」はいくつかある。この「差」を生み出す
代表的なものは次の通りである。自らの不足している能力をより高める努力を継続していくことが
重要である。
①自己責任意識が強い
②向上心・チャレンジ精神がある
③分析能力がある
④他人の意見を受け入れる心がある
⑤協働してくれる家族・社員や友人がいる
●企業フランチャイジーに必要な資質と条件
フランチャイズ加盟を検討する企業は年々増えている。また、フランチャイジーをメイン事業と
し、事業拡大したり、中には株式公開を果たした企業もある。加盟条件を法人に限るとするフラン
チャイザーも多くなっている。今後は、法人企業が、フランチャイズ・システムを活用して活性化
を図る企業は、今後さらに増加していくとみられる。一方では多大な投資をして失敗する企業もあ
る。
企業のフランチャイズへの加盟は個人の場合と異なり、経営資源の投入度合いによって成功する
かしないかが異なる。言い換えれば、フランチャイズ・ビジネスに投下できる人、物、金などの経
営資源をどれだけ用意できるかが成功のポイントになる。
企業としたフランチャイズ加盟成功条件としては次のようなことが考えられる。
①フランチャイズ加盟への目的が明確である
②経営者自らが全社員に納得させている
③優秀な社員に担当させている
④将来構想、ビジョンを持っている
⑤PDCAサイクルを正確に実行している
PDCAサイクルとは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(振り返り)→Action(対策立案)
という輪を常に回し、現実に即した経営をすること。」
⑥加盟まで十分な時間をかけたか
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6
フランチャイズ・システムの活用方法とポイント
∼個人の新規創業の場合∼
●創業はハイリスク・ハイリターン
創業の手続き自体は難しくない。例えば個人事業主という形態をとる場合、税務署に開業届を提
出すれば、とりあえず「創業した」ということになる。しかし事業を軌道に乗せ、事業を継続して
いくことは容易ではない。ちなみに企業の平均寿命はわずか7年程度に過ぎないというデータもあ
る。新規創業というのは大変リスクの高い行動といえる。
つまり、創業とは「ハイリスク・ハイリターン」な活動だということである。ハイリスクである
が故に、
「なんとなく勢いで創業した」ではあまりに危険すぎる。事前準備をしっかりして、少しで
もリスクを低くするべきである。
●事業分野の選定
創業を決断したら、次に「どのような事業を行うのか」を明らかにすることが必要である。ここ
で注意して欲しいのは大きく以下の2点である。
1点目は、
「この分野が儲かりそうだ」という点のみから決めてしまうのは危険、ということであ
る。理由は簡単に言えば、「誰でも絶対に儲かる商売はない」からである。
2点目は単に行う業種・業態を決めるだけでは不十分だ、ということである。例えば飲食店をや
りたい、としても、若い人でも気軽に行けるようなお店から、きちんとした格好で行かなければ気
後れしてしまうような超高級店まで、いろいろな展開方法が考えられる。であるから、業種・業態
に加えて、以下の3つのポイントを検討することが必要となる。
・対象顧客:誰を相手にした商売なのか
・提供価値:対象顧客に対して、どのような価値を提供するのか
・独自性:競合とどこが違うのか
●現状確認:自分の置かれた状況はどうなっているのか
今の自分が置かれている状況を客観的に把握する「現状確認」を行い、自分の現状と「創業によ
り何を実現したいのか」
「自分の行う事業はどのようなものか」を対比させ、実現性があるかどうか
を判断する。
自身の収入、資産、借金といった金銭的な側面と、家族、人脈といった社会的な側面、キャリア、
性格といった経営者の資質的な側面に大きく分かれ判断する。これら3つは創業するのに大事なも
のばかりである。
①金銭的側面
新しく事業を立ち上げるには多かれ少なかれ「資金」が必要になる。であるから、手持ちの現金
などの資産や借金はどの程度あるのか、事業開始までにどの程度手持ちが増えるのか、事業にどの
くらいの資金を投入できるか、を準備段階で把握する必要がある。
なお、手持ちの資産・資金を全て事業に投入するのは危険である。創業してもすぐに事業が軌道
に乗り、お金を稼げるとは限らない。創業後赤字続きで資金不足になったからといって銀行に融資
を依頼しても、ほとんどの場合、拒否される。したがって、事業が軌道に乗るまでの生活費を手持
ち資金の中から確保しておくべきであり、
「 創業時の手持ち資金−事業が軌道に乗るまでの生活費=
事業に投入できる資金」と考えるのが良いであろう。
7
②人的側面
事業は一人ではできない。家族の協力や周りの人間のサポートがあってはじめてうまくいく。家
族の協力を得られるのか、事業に協力してくれる人はどのくらいいて、各々どういった面(例えば
資金面、顧客や取引先の紹介など)で協力してくれる可能性があるのかを考える必要がある。
③資質的側面
同じ事業を同じように行う場合でも、経営者によって成功するケースと失敗するケースが当然出
てきる。自身の今までの実務経験をもう一度振り返ると同時に、自分が経営者としての資質をどの
くらい備えているのかを確認する必要がある。
8
7
フランチャイズ・システムの活用方法とポイント
∼法人企業の事業多角化の場合∼
●法人企業の事業多角化のポイント
法人企業がフランチャイズ加盟により事業多角化を検討する場合、まず押さえておくべきことは、
個人創業と同様に『ヒト』
『モノ』
『カネ』いわゆる経営資源の棚卸しである。
「新しい事業にこれら
をどれだけ割けるのか」、また、「特定の資源を利用することを前提条件とするのか」によって、加
盟すべきフランチャイズの業種・業態が絞られてくる。
また、
『時間』も経営資源と考えられる。投入できる時間はどれくらいか、すなわち「どれくらい
の期間で投資回収を図るのか」という点も重要な要素となる。
なお、現在の本業と新しく進出する事業との相乗効果(シナジー)を狙った事業の方がよいと思
われがちであるが、フランチャイズ加盟方式の場合は必ずしもそうとは言えない。フランチャイザ
ーの提供するノウハウをゼロから学ぶ姿勢が大事であり、なまじ経験や知識があると素直に指導を
受けられず、事業的に失敗してしまうケースも多いからである。
また、個人創業と異なる点であるが、
『企業文化・風土』があげられる。チャレンジする気風、あ
るいは仕事を整然と処理する組織としての基礎的能力である。フランチャイズ加盟は、ビジネスフ
ォーマットが用意されているので事業リスクが少ないといっても、この基礎的能力がないと失敗す
る確率は高くなる。
●フランチャイズ加盟と自前で多角化を図る場合との違い
「商売のネタの開発」「運営ノウハウの構築」「物流や受発注システムの構築」「ブランドの確立」
……等々、自前でゼロから始めるとすれば相当の資金、人材投資、時間の投資が必要である。そし
て、失敗して無に帰する可能性があること、仮に成功したとしても、安定して収益を上げられる段
階まで持っていくのに長期間かかってしまうことが大きなネックとなる。
フランチャイズ加盟方式での新規事業であれば、加盟金やロイヤルティという対価を払ってこれ
らのサポートを受けられることがあるということは、
『 本来自社でやるべき業務をアウトソーシング
している』という考え方をしても間違いではないであろう。
●複数加盟・多店舗化による事業拡大
ハンバーガー店とドーナッツ店、牛丼店とレストラン等、複数のフランチャイザーに加盟し、複
数の業態で多店舗化を図って成長している企業、いわゆる「メガ・フランチャイジー」とか「マル
チ・フランチャイジー」と呼ばれ、注目を集めている。
複数チェーン加盟のメリットの第一は、事業リスクを分散できることである。業態にもライフサ
イクルや急激な外部環境の変化により業績不振になる場合がある。もし一つの業態で運営していれ
ば、その業態が不振になると企業業績も不振となってしまう。ところが、複数の業態を行っていれ
ば、悪い業態を良い業態が補って全体としてのブレは小さくなる。
また、不振業態の店舗を、成長期にある業態の店舗に入れ替えるという戦略もとれるようになる。
第二に、複数のフランチャイザーに加盟することによって、フランチャイザー選択の目が肥える。
いわゆる「目利き力」が格段についてくる。それぞれのフランチャイザーの秀でたところを多面的
に学ぶことができ、事業運営についてのノウハウと勘所も養われる。
第三に、一定の地域で多店舗展開することにより、地域で存在感を増すことができる。雇用面で
9
優秀な人材を集めやすくなったり、よい店舗物件の情報が入ってくるようになる。
10
<加盟検討から契約・開店までのステップ>
8
加盟にあたっての本部の選び方
加盟を決定するまでには、フランチャイザー情報の収集とその分析を行い、次の段階としていく
つかのフランチャイザーに絞込み、フランチャイザー訪問や説明会等に直接足を運び、収益性や開
業以前・以後に渡っての支援体制などについて確認をすることが基本ステップである。
ただし、この段階はあくまで情報収集が目的であり、条件やフランチャイザーの対応が良いから
と言って早急に加盟を決めてしまわないことが大切である。最終的には直営店やフランチャイジー
等にも訪問して、店の雰囲気やオーナーの意見等も聞き、事業の実態を把握する事は必要不可欠で
ある。
なお、この一連の作業にあたっては、次のように表を作成して比較検討すると最終的に絞り込む
のに便利である。
投資金額には保証金や前家賃等の物件取得費が含まれているかどうかも確認しておく必要がある。
また、投資回収期間は「総投資額÷(減価償却費+税引き後利益)」で計算するのが普通であるが、
チェーンによっては総投資額には物件取得費が含まれてなかったり、税引き後利益でなく営業利益
等により計算している場合もある。使用する数値により投資額や投資回収期間は大きな差が出るの
で、確認が必要である。
図表
フランチャイズフランチャイザーの比較表
No
内容
1
業種
2
業態
3
資本金
4
財務状況(成長性)
A社
B社
億円
C社
億円
億円
財務状況(収益性)
※後出の項目
財務状況(生産性)
10を参照
財務状況(安全性)
5
年間売上高
億円
億円
億円
直営店
億円
億円
億円
フランチャイジー
億円
億円
億円
6
創業時期
7
店舗数
店
店
店
直営店
店
店
店
11
フランチャイジー
店
店
店
8
将来店舗数計画(5 年後)
店
店
店
9
必要投資金額
千万円
千万円
千万円
10
収益予測
百万円
百万円
百万円
11
投資回収期間
年
年
年
12
必要人員
人
人
人
13
事業の将来性
14
業界におけるポジション
15
商品・サービスの差別化は
16
フランチャイジーオーナーの評価
17
電話での応対態度
18
情報の公開に積極的か
19
トップの態度は
20
担当者の態度は親切、丁寧か
21
信頼できるか
22
理念が明確
23
経営革新に積極的
24
市場規模の把握と差別化ができて
いる
25
サポート体制が充実している
26
収益性の確保ができている
27
既存店売上が前年を大幅に下回っ
ていない
※13∼27 は最良を 5 点とした 5 点法で採点する。
12
9
フランチャイザー情報の収集方法
関心のある業種や手持ち資金等に見合ったフランチャイザーに電話やメール、また情報誌等に添
付されている資料請求はがきなどで資料を請求する。なお、個別フランチャイザー情報の収集方法
としては以下のようなものがあげられる。
(1)募集用パンフレット
※後出の項目11を参照
(2)事業説明会
※後出の項目12を参照
(3)フランチャイザー訪問
※後出の項目13を参照
(4)既存店舗訪問
※後出の項目14を参照
(5)法定開示書面
※後出の項目15を参照
(6)フランチャイザーのトップまたは部門責任者との面談
※後出の項目16を参照
その他の情報収集方法として以下の物がある。
①新聞・雑誌の記事あるいは広告
②フランチャイザーのホームページ参照
③ザ・フランチャイズ(フランチャイズチェーン本部情報の紹介ホームページ)
④フランチャイズフェアーやセミナーへの参加
⑤社団法人日本フランチャイズチェーン協会への問い合わせ
⑥商工会議所等の各種公的機関への問い合わせ
13
10
フランチャイザーの財務状況からの判断
「中小小売商業振興法」及び「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方につい
て」
(いわゆる「独占禁止法のガイドライン」)により、フランチャイザーは契約前に、いわゆる「法
定開示書面」言われる企業や契約内容の概要やフランチャイジー運営に関する取り決め等について、
加盟希望者に対し開示することを求められている。
この「法定開示書面」の内容が、2002 年(平成 14 年)4 月に改正され「フランチャイザー事業者
の直近 3 事業年度の貸借対照表及び損益計算書」が開示事項として追加された。これを利用して、
どのフランチャイザーが財務上優れているのかを比較するのに以下の①∼④の項目が役に立つ。一
般的に、企業の財務体質は成長性、収益性、生産性、安全性の4側面を分析し、判断する。
ただし、財務状況は企業の成長(年齢)ステージにより判断基準が異なることに留意する必要が
ある。事業経過年数が少ない企業は成長性や生産性は良好であるが、収益性や安全性は低い場合が
多い。逆に、老舗企業は安全性は良好であるが、成長性は低い場合が多い。したがって、各データ
を断片的にみて判断するのではなく、成長性、収益性、生産性、安全性の4側面を総合的に分析し
て判断することが望ましい。
フランチャイザーの成長ステージは、業種・業態や市場規模によって異なり、明確な規定はない
が、概ね次のように区分するのがよかろう。
図表
フランチャイザーの成長ステージ区分のおおよその目安
フランチャイザー スタートア
アーリーステ ミドルステ
レイタース
レイタース
レイタース
成長ステージ
ップ期
ージ期
ージ期
テージ前期
テージ中期
テージ後期
フランチャイジー数
5 店未満
20 店未満
50 店前後
100∼300 店
300∼500 店
500 店以上
①成長性
売上高前年対比率や店舗数増加率が一般的であり毎年プラスになっていることが望ましい。ただ
し、アーリーステージ期には、前年比 200%や 300%等の急成長もありえる。
②収益性
売上高対営業利益率、売上総利益率(粗利益率)、総資本対経常利益率が代表的である。なかでも、
総資本対経常利益率は企業の本業による利益状況を表し、大変重要な指標である。しかし、スター
トアップ期では売上高も少なく投資資金の負担が大きいため、低い数値の場合も多い。
③生産性
従業員 1 人当り売上高や坪当たり売上高などである。スタートアップ期やアーリーステージ企業
は、従業員も少なく、また好業績店が中心なので、良好な場合が多い。
④安全性
企業の対外的支払の可能性等の資金運用状況を示す指標で、自己資本比率、流動比率、固定長期
適合率が代表的指標である。一般駅には、レイターステージ企業は過去からの蓄積もあり、良好な
数値を示す場合が多いが、スタートアップ期やアーリーステージ期では投資へ負債の比重も高く、
ミドルステージ期以降の企業とは単純に比較できない。
14
11
募集用パンフレット
パンフレット内容の見方の留意点は、以下の通りである。
①トップの挨拶、経営理念
会社やチェーンの理念とか経営者の考え方に共鳴、賛同できるかをチェックする。もし、ここで
不信感を持ったり賛同できなければ、長い期間の中で、フランチャイザーとフランチャイジー間の
円滑な関係の維持は困難なので、加盟検討は中止することが望ましい。
②事業の内容
提供商品、サービスは満足できるものか、また市場の将来性や競合との比較において差別化ポイ
ントを有しているかどうかもチェックする。また企業の場合は既存の事業に良い影響をもたらすも
のかどうかの検討も大切である。
③フランチャイズ・システムの概要および特徴・強み
短期間でノウハウの取得が可能か、またフランチャイザーのサポート体制は十分なものかどうか
をチェックする。
④初期投資額
初期投資額とは、開業時に必要な総資金のことであり、物件取得費、内外装工事費、設備費、開
業時在庫、開店費用、フランチャイザーに対する契約金や保証金の合計額である。なお、理想的に
は、6ケ月程度の運転資金を含めることが望ましい。この数値を基に、資金面でみて加盟・出店の
可否判断を行い、金融機関に対する融資交渉をすることになる。
⑤収益モデル
フランチャイザーの提示する収益モデルは、実際の店舗の収益実績をモデルとして算定すること
が理想であるが、必ずしも全てのチェーンがそのようにはなっていないのが現実である。実績に基
づいたものかどうか、売上高は消費税込みか別か、初期投資額に含まれる内容、人件費には経営者
分給与が含まれているかいるかどうか、減価償却費はきちんと計上されているかなどの確認をし、
不明の場合は後日の本部担当者との面談で確認することが必要である。ただし、支払利息について
は、加盟者の資金状況により借入額が異なるので、パンレットには記載していないチェーンが多い。
また、収益モデルが毎年同じ数値である場合は、信頼性に欠けると思うべきである。一般的に、
初年度は売上高が少ない反面、経費が多くかかり、利益がでない場合が多いので、その根拠の説明
を求めることが重要である。
図表
項
目
モデル事業プラン例
〔事例:飲食店
1年目
2年目
3年目
①年間売上高
6000
7000
7500
②年間売上総利益
3900
4690
5020
④販売費・管理費
3850
3930
4055
2000
2100
2200
店舗賃借料
480
480
480
40 万円×12 ヶ月
減価償却費
300
300
300
設備投資 1500 万円、5 年定額法
ロイヤルティ
300
350
375
売上高の 5%(毎月)
その他
770
700
700
内、人件費
15
備
単位万円〕
考
初年度 65%、2 年目以降 67%
⑥営業利益
50
760
965
②−④
⑦借入利息
60
51
36
年利3%、年末一括返済
⑧経常利益(税前利益)
▲10
709
929
⑥−「借入れ利息」
⑨税引き後利益
▲10
550
600
⑧−法人税等
⑩キャシュフロー
290
850
900
減価償却費+税引後利益
⑪累計キャッシュフロー
290
1140
2040
⑫借入金返済
300
500
700
⑬残余借入金
1700
1200
500
16
12
事業説明会
多くのフランチャイザーは、加盟希望者候補を集めて、事業説明会を開催している。ここでは、
経営理念や事業の内容及び将来構想について数時間かけて説明をする場合が多い。これに参加をし
て、フランチャイザーの実態や経営姿勢を知ることは、非常に効率的である。
ここで、そのフランチャイザーと肌が合いそうだと感じたら、本部や加盟店に訪問するのが良い。
なお、事業説明会において、「絶対に儲かる」とか「不振店はゼロである」と言ったり、大言壮語す
るフランチャイザーは要注意である。また、この時点で加盟契約を勧める企業も要注意であり、絶
対に加盟の意思を表明してはならない。
17
13
フランチャイザー訪問
●フランチャイザー訪問の意義と目的
フランチャイザー訪問は加盟するフランチャイザーを決定するための、情報収集の一環として行
うものである。事前収集した資料のみでは知り得ないフランチャイザー企業の実態や社風を、肌で
体感できる貴重な手段である。複数のフランチャイザーを訪問し、比較することで、それぞれの特
徴がつかめる。
●フランチャイザー訪問のポイント
フランチャイザー訪問時のポイントとしては、次のような事項があげられる。
①事前調査をきちんと行う
②企業の雰囲気を感じる
アポイント時の電話の応対から意識して企業を見ることが重要である。本部訪問の際には、受付
の対応、社内の清掃・整頓状況等をみる。社内に活気はあるかという視点で雰囲気をみることも重
要である。
③フランチャイジー開発担当者の対応
質問には誠意を持って応じてくれたか。納得のいく話ができたか、対応者は信頼できそうな人で
あるか等を判断する。
なお、この時点で加盟契約を勧められても、絶対に署名・捺印してはいけない。口頭であっても
法律上は契約が成立するので、安易な発言はしないことである。逆に、担当者の口頭での約束は、
後日、実行されることは少ないと考え、信用しないことが重要である。
④事後整理
後日のトラブルを避けたり、他フランチャイザーと比較して最終決断をするための資料として、
訪問の内容を記録しておくことが肝要である。
フランチャイザー訪問の主な質問事項
①フランチャイジーの収支状況
→
実際の売上高・利益
②フランチャイジーの支援体制
→
特に不振店対策の内容
→
成長期か安定期か
③フランチャイジーに求める資質
④複数店展開オーナーの有無
⑤フランチャイザーの財務の健全性
⑥フランチャイザーの今後のフランチャイズチェーン展開方針
⑦フランチャイジーリスト
18
14
既存店舗訪問
●既存店舗訪問の目的
実際に営業している店舗の視察は、当該フランチャイズに加盟して自分が成功できるかどうかを
現実的に考えるために大切である。既存フランチャイジーの本音を聞くことができるとともに、当
該フランチャイズチェーンに加盟した後の成功の秘訣を探る機会でもある。店舗視察は直営店、フ
ランチャイジーの双方について行うことが望ましい。
●既存店舗訪問のポイント
①直営店訪問のポイント
直営店はいわばお手本となるべき店舗である。ここでのオペレーションがきちんとできていなけ
れば、フランチャイズチェーン店の繁盛はないと考えて良いでしょう。状況の良くない直営店があ
れば、加盟は見合わせたほうが無難である。
②フランチャイジー訪問のポイント
まずは、フランチャイザーの話とフランチャイジーの話が同じであるかどうかを確認することで
ある。大きく異なるようでは当然ながら要注意である。
また、フランチャイザー紹介の店舗は基本的に優良店舗であるから、率直に成功の秘訣を尋ねて
みることも良いであろう。また他の店舗も複数訪問し、比較してみる。優秀な店舗には共通する特
徴があるはずである。
さらに、有店舗フランチャイズでは、複数のフランチャイジーを視察する中で、その立地を確認
する。そのフランチャイズチェーンに適した立地特性が解れば、店舗物件を探すとき役立つ。
フランチャイジー訪問の主な質問事項
①現実の売上高・収支状況
→
フランチャイザーの事前予測の正確さ
②黒字化するまでの期間
③フランチャイザーの研修・支援体制への満足度
④フランチャイザーへの率直な感想
⑤開業後の苦労・失敗
⑥仕事のやり甲斐
⑦成功の秘訣
⑧今後の事業見通し
19
15
法定開示書面
●契約内容やフランチャイザー企業の概要を確認することが重要
加盟希望者は自らの責任において、契約内容を十分に理解した上で契約締結することが重要であ
る。十分に理解しないまま締結し後で契約を解除することになった場合には、訴訟に発展するなど
後々色々な問題が発生してしまう。
候補チェーンを絞り込み、加盟を決断したら、最終決定に前に法定開示書面を受け取り、契約内
容やフランチャイザー企業の経営状況を判断することが重要である。なお、多くのフランチャイザ
ーは、ザ・フランチャイズ(フランチャイズチェーン本部情報の紹介ホームページ)にて法定開示
書面を開示しているので、これを利用すれば便利である。
●中小小売商業振興法及び施行規則の内容∼主な事前開示項目
以下の項目については企業に必ず事前に確認することが必要である。
①フランチャイズチェーン概要
会社名、住所、従業員数、役員、株主、子会社、財務状況、特定連鎖化事業(いわゆるフランチ
ャイズチェーン事業展開)の開始時期、店舗数の推移、訴訟件数などである。
②契約内容
テリトリー権の有無、契約後の競業禁止や守秘義務契約の有無、フランチャイザーがフランチャ
イジーから徴収する金銭の算出方法や徴収方法、契約違反の際のペナルティ、商品やその他の販売
条件に関する事項、経営指導の内容、使用される商標や商号、契約期間、更新条件、契約解除に関
する事項などである。
●チェックポイント
①事業の種類
フランチャイザー事業者の規模や事業の内容等をよく把握する。
②フランチャイザー事業者の直近 3 事業年度の貸借対照表及び損益計算書
過去 3 ヵ年の財務状況をフランチャイザーの成長ステージを留意して分析し成長性、収益性、安
全性を把握する。
③直近 3 事業年度におけるフランチャイジーの店舗の数の推移
店舗数の増減は、フランチャイザーの経営の判断材料である。成長過程にあるチェーンは必ずと
いって良いほど、店舗数が伸びている。店舗数の減少や停滞チェーンは、どこか問題があると考え
ても過言ではない。したがって、総店舗数や退店数の把握はフランチャイザーの現在における経営
力や将来性等を判断するための材料となる。
④直近 5 事業年度において、フランチャイズ契約に関する訴訟の件数
フランチャイザーとフランチャイジーとの相互の信頼関係を判断するための材料となる。
⑤テリトリー権の有無
テリトリー権が認められているのか、認められていない場合の近隣の出店計画はどうなっている
のかを確認する。なお、テリトリー権とは、商圏範囲が設定されており、その商圏内には他のフラ
ンチャイジーが出店できないという契約のことである。
⑥契約後の競業禁止や守秘義務契約の有無
20
契約終了後も、競業禁止や秘密保持義務などの側面からどのような制限がかかるのか理解してお
くことが大事である。
⑦フランチャイジーから定期的に徴収する金銭に関する事項
ロイヤルティについてはしっかり計算方法・根拠を理解しておくことが大切である。
⑧フランチャイジーに対する金銭の貸付、貸付の斡旋に関わる利率や算定方法など
オープンアカウントなどのフランチャイザーとの相殺勘定・会計処理の仕組みが複雑な場合は納
得するまで説明を受けることが肝要である。
なお、オープンアカウントとは、フランチャイジーとフランチャイザーの間に発生する金銭の債
権債務について、それを相殺する勘定を設定しておき、その会計処理をフランチャイザーが行なう
ものである。特に廃棄ロスや棚卸ロス等に対してチャージがかかるのか、十分に確認した方が良い。
⑨契約に違反した場合に生じる金銭の支払いその他義務の内容
どのような契約違反の場合にどのようなペナルティが課されるのか十分に確認しておく。
⑩経営の指導に関する事項
十分な経営指導が受けられるのか説明を受けると同時に、販売条件や受講料等にフランチャイジ
ー負担が生じるのか確認しておく。
⑪契約の期間並びに契約の更新及び解除に関する事項
どのような解約にいくらの解約違約金を支払うこととなるのか十分に確認しておく。
21
16
フランチャイザーのトップまたは部門責任者との面談
●トップ(経営者)または部門責任者との面談の目的
フランチャイザーのトップまたは部門責任者との面談は、そのチェーンに加盟するか否かの最終
決断を下す際、必ず行いたいものである。それは、フランチャイズに限らず、企業が成功するか否
かは、経営者の考えや力量に大きく左右されるからである。なお、フランチャイザートップとの面
談が理想的であるが、規模の大きな企業の場合には、部門責任者との面談になる場合が多い。
一方このことは、フランチャイザーにとっても同じである。即ち、自分たちの展開するフランチ
ャイズチェーンの将来は、フランチャイジーオーナーの資質に大きく依存する。能力がなかったり、
自社の社風にそぐわなかったりするフランチャイジーオーナーの存在は、順調なフランチャイズチ
ェーン展開の妨げになってしまう。したがって、一般に優良なフランチャイザーはフランチャイジ
ー選考に慎重で、加盟契約締結の前のトップまたは部門責任者の面談は必須項目となっている。ト
ップが責任を持って加盟希望者の資質を見極めようとするからである。
●トップ面談のポイント
必ず「経営理念」の再確認をしていただきたい。フランチャイズチェーンは理念共有体である。
この理念に心から賛同できるかどうかが重要なポイントである。
さらに事業パートナー関係を築ける人物か、人間的にも信頼できる良い人物かを見極めることも
重要である。部門責任者の場合もこれに準じる。
また、前述したが、フランチャイジー開発担当者の説明とフランチャイザートップや部門責任者
の発言に食い違いがないかどうかの確認も重要である。
トップ面談での主な質問事項
①経営理念の再確認
②フランチャイズチェーン展開の方針
③将来の事業展望
④理想的なフランチャイジー像
22
17
物件探索・立地評価
●立地選定・物件探しのポイント
加盟する業種・業態にもよるが、有店舗業態の場合は、店舗の立地選定は大変重要なことである。
なぜなら、立地条件は、企業の努力で変更は難しいのである。開業後、
「こんなはずではなかった!」
と嘆かないためにも、しっかりと立地を見極める目をもっていただきたい。
●店舗立地基準の理解
まず、自身が加盟を希望するチェーン(業態)の「立地基準」をよく理解することが必要である。
店舗立地基準の理解があいまいであると、物件探索の依頼はもとより、決められた期間内に物件を
探せないばかりか、立地評価も正しく下すことができない。
図表 3-3 は立地基準の事例である。マーケット条件、設備条件など、満たさなければならない条
件が簡潔に列挙されている。これらの条件を自身のチェーンや業態に当てはめてしっかりと理解し
ていただきたい。
図表
出店エリア
ある弁当チェーンの立地基準
1都3県(東京・千葉・埼玉・神奈川)
東京 23 区(うち中央区・千代田区・港区など都心のオフィス街を除く)
人口密度
半径 500m圏居住人口1万人以上・労働人口5千人以上
半径 750m圏居住人口2万人以上・労働人口1万人以上
営業時間
24 時間
物件条件
給排気口必須・室外機設置スペース・看板設置
電気容量(電灯 15∼20KVA
動力 25∼33KW)
都市ガス 35¢以上(プロパンも可)
水道直結で 20φ
排水 100φ
天井の高さ 2700mm以上
●加盟希望者自らが行う立地評価の方法とポイント
フランチャイズ・ビジネスの場合、単独で開業する場合と異なり、立地評価や売上予測は大半の
フランチャイザーが行ってくれる場合が多い。しかし、だからといってフランチャイジー側が何も
しないでよいというわけではない。統計解析を使った難しい評価方法はフランチャイザーに任せる
として、フランチャイジー側では、むしろより一層お客様に近い視点での立地評価が必要になって
くる。そのポイントは次の通りである。
①立地評価の鉄則
立地は
空間
をトータルにとらえる概念である。空間という広がりをとらえる場合、その構成
要素は「点・線・面」の 3 つの次元に分けられる。この 3 つの次元はどれが欠けても立地の実態を
正しくとらえることはできない。
立地評価の鉄則は「マクロから入りミクロに到達すること」であり、最初から物件(ミクロ)に溺
れてはいけまない。商圏(お客様)の側から物件を見ていくことが重要である。立地評価はまず、面(商
圏評価つまり対象顧客がどれだけいるか)をおさえ、線(動線評価、お客様が近づきやすいか)に入り、
23
点(地点評価)に到達する流れが基本となる。
②面・線・点でトータルにとらえる
最初は「商圏」評価である。ここでのポイントは、加盟しようとしているチェーンがターゲット
とする顧客のライフスタイルや今後の動向を知ることが中心になる。その商圏内に新たな店舗が成
立するだけのマーケットボリュームがあるのか、業態コンセプトに合ったマーケットなのかを実地
調査と統計データでチェックする。実査では商圏内を徹底的に歩く(車の場合は実走する)ことが重
要である。統計データは労をいとわず役所や商工会議所などで収集する。
次は「動線」評価である。周辺商圏や街区内での物件の位置や動線の向いている方向が重要であ
る。お客様は物件に近づきやすいか、途中に動線を分断する要素(バリア)はないか、競合店との位
置関係はどちらが有利かなどを実査する。この時、動線をつくる大事な要素である集客施設(マグネ
ット)の有無やそれへの動線の続き方をチェックすることも忘れてはいけない。
また、同じ動線でもその中身がポイントである。道路の情報をみる場合、単なる通行量の多さだ
けでは不十分で、自身の業態がターゲットとする車種・通行速度・同乗者の人数などまできめ細か
く観察することが大切である。
3番目が「地点」評価である。加盟しようとするチェーンの標準フォーマットでは 30 坪の物件が
必要なところに、いくら「商圏」評価や「動線」評価がよくても、15 坪の物件では話にならない。
「少々狭くてもなんとかなるさ」と先走って物件を契約しても、後で後悔するのは目に見えている。
また、それに加えて物件自体の視認性はよいか、道路付きはよいか、車のイン・アウトはしやすい
か、といったミクロな視点での判断も重要である。物件がよく見えるということは、単にチラシを
まく以上に長い目でみて大きな広告効果があるからである。
以上の 3 点を具体的には、次のような視点で判断することになる。
①商圏:『面』でとらえる
●事業が成立するだけのマーケットボリュームが存在するか
●事業の性格にあったマーケット特性を持っているか
チェック項目
収集方法
・商圏人口・世帯数及び伸び率
住民基本台帳・国勢調査
・人口ターゲット比率(年齢別)
住民基本台帳・国勢調査
・昼間人口
国勢調査
・居住形態(持ち家・借家など)
国勢調査
・所得水準
地域経済総覧(東洋経済新報社)
・家計支出水準
家計調査年報
・貯蓄水準
地域経済総覧(東洋経済新報社)
・地元購買率
消費購買行動調査(県、市町村)
・通勤通学先
国勢調査
・自家用車保有率
地域経済総覧(東洋経済新報社)
②動線:『線』でとらえる
●候補地の商圏内での配置は問題ないか
●候補地は商圏内の動線に沿っているか(その動線の太さは太いか)
●商圏内のお客様は候補地に近づきやすいか(周辺に障害物はないか)
●候補地と競合店の位置関係はどうなっているか
チェック項目
収集方法
24
・場所の分かりやすさ
・商圏内の消費者動線の方向
・中心(マグネット)からの店舗位置
・動線に対して車線の面する方向(順または逆)
・商圏分断要因(バリア)の存在
・店前通行量(歩行者・車両)と道路の性格
・競合店数
・競合店と比較した場合の立地の優位性
・他に競合店が出る可能性の有無
実査・現地ヒアリング
地図読み取り・実査
地図読み取り・実査
地図読み取り・実査
地図読み取り・実査
実査・道路交通センサス
電話帳・業界リスト・実査
実査
実査
③地点:『点』でとらえる
●物件自体は当該事業に適用できる規格(大きさ・形)か
●物件自体の視認性はよいか
●物件自体の道路付きはよいか
チェック項目
・店前障害物の有無
・視認性
・角地か一面か
・間口
・地形
・車のイン・アウトのし易さ
・道路との段差
・駐車場の確保(同一敷地に可能か)
収集方法
実査
実査
実査
公図・実査
公図・実査
実査
実査
実査
④立地評価にはバランス感覚が大事
以上のように立地をとらえると、よい立地とは『①自店のターゲットとなりうる顧客がたくさん
いて、②それらの人たちが近づきやすくて、③目に止まりやすく入りやすい立地』とシンプルに表
現できる。駅前が良くて住宅地はダメとか、ロードサイドのほうが駅前より良い、といった二者択
一の問題ではない。それぞれのチェーンの業態コンセプトにあった「良い立地」というものがある
わけである。
立地評価で最も大事なことは、お客様の目でみた
バランス感覚
である。動線の悪さや車の入
りにくさを物件の広さでカバーしようと思っても、お客様は不便なことをすぐに見抜いてしまう。
「あの店は広くてゆったりしているけれども、行きにくいから・・・」となってしまう。点・線・
面のどの要素も基準を満たした上で、いずれかの項目が突出して良いのなら問題はないが、基準に
満たない要素を別の要素でカバーしようとしても立地評価では通用しない、と考えていただきたい。
25
18
事業計画書の作成及び資金計画
その1
●フランチャイザー作成の事業計画書の見方
フランチャイザーが、立地、店舗の規模、その他の条件を考慮して事業計画書を作成し提示して
くれるケースがある。この場合、フランチャイジーを増やしたいというフランチャイザーの意向が
働き適切さを欠くことがある。加盟希望者は、フランチャイザーのこのような意図を考慮して説明
を聞く必要がある。なお、平成 14 年4月の独占禁止法のガイドラインの改正により「予測売上げ又
は予測収益を開示する場合には、根拠ある事実、合理的な算定方法に基づく必要があること及びこ
れらの根拠となる事実、算定方法等を示す必要がある」となった。
事業計画書のチェックポイントは次のとおりである。
①「予想売上高」と「予想収益」は適切か
数字の根拠となる事実、算定方法、他店と比較するなど合理性を欠いていないか等を確認するこ
とが必要である。
②投資費用がもれなく計上されているか
加盟金、保証金、物件取得費、設備資金(店舗改装費、機器導入費)等がもれなく計上されてい
るかチェックすることが重要である。
③経費がもれなく計上されているか
月々支出する経営者(役員)報酬、人件費、地代家賃、ロイヤルティ、広告宣伝費、支払金利、
減価償却費(借入金返済の原資となる)及びその他経費が漏れなく計上されているかチェックする。
特に減価償却費は、利益を大きく見せるために計上いないこともあるので、必ず計上して損益を見
るようにする。
④資金計画は適切に行なわれているか
全額自己資金の場合は問題ないが、借り入れをして経営をする場合が一般的であるので、売上高
に基づく利益・減価償却費と返済金のバランスが適切であるかチェックする。
⑤投資資金の回収年数は何年か
投資額は何年で回収できるか確認することと、類似の店舗と比較して妥当な年数であるかチェッ
クする。
●自ら事業計画書を作成する場合のポイント
フランチャイザー提示の事業計画書を鵜呑みにするのではなく、自らも作成することが望ましい。
そのポイントは次のようなものである。
①事業計画書作成のコツ
事業計画書作成に当たっては、次のことについて配慮する。
・事業目的・内容およびその全体像が見えるようにする
・自分が理解できる言葉、数字で表現する
・資金計画、収支計画等の策定に当たり過大評価または過小評価は避ける
②5W2Hのキーワードでアイデアやイメージを整理
・Who
誰が
[組織、要員、人員計画]
・What
何を
[商品、サービス、形状、品質]
・Where&Whom
どこで
誰に
[販売拠点、地域戦略]
26
・How
どのように
[販売方法]
・Why
何のために
[市場環境、顧客ニーズ]
・When
いつ
[開始時期、達成時間、中長期計画]
いくらで
[投資計画、運転資金、売価、経費]
・How
much
27
18
事業計画書の作成及び資金計画
その2
●事業計画書の構成・内容
事業計画書の様式はいろいろあるが、以下に 1 つのモデルを提示する。一般的に事業予定の概要
を文章で表現する部分と、その事業にかかる資金や収支を金額で記入する部分の二部構成(下記A,
B)になっている。
【A.事業概要】
①「企業の形態」
フランチャイジーは個人経営が一般的であるが、企業形態として株式会社、有限会社等の法人の
場合もある。どの形態を選ぶかは、それぞれメリット、デメリットがある。
②「開業予定日」
許認可や資格など取得の状況を考慮して、余裕を持って設定する。
③「企業の名称」
看板はフランチャイズチェーンの名称となるが、独立した企業としての社名が必要である。
④「資本金」
資本金は法人の場合、株式会社 1000 万円以上、有限会社は 300 万円以上が必要である(新規創業
者については最低資本金規制特例がある)。
⑤「事業の予定場所」
小売業、飲食業、サービス業それぞれ店舗立地は重要である。前項の「5.物件探索・立地評価」
を参照することをお勧めする。
⑥「予定従業員数」
費用のうち人件費は大きなウェイトを占める。フランチャイズチェーン加盟にあたっては、事業
規模と従業員数(正社員・パート・アルバイトとも)を勘案して慎重に考える必要がある。
⑦「業種」
業種とは、通常、小売業、飲食業、サービス業と記入する。が、加えてコンビニエンスストア、
居酒屋、クリーニング業と具体的に記入する。
⑧「提供する取扱品・主製品又はサービス」
取り扱う商品・サービスを扱い比率の高いものから具体的に記入する。
⑨「創業する目的や動機」
創業する場合、誰でも目的、動機や思い入れはあるので自分の気持を忠実に記入する。
⑩「当事業の経験」
当事業について経験があれば実績を記入し、フランチャイジーとしてフランチャイザーの研修実
績又は研修予定を記入する。
⑪「強みやセールスポイント」
フランチャイザーから提供される商標、ノウハウ等を含むフランチャイズチェーンパッケージに
ついて強みを確信および確認する意味で記入する。
⑫「仕入先・販売先(顧客層)」
仕入先はフランチャイズフランチャイザー又はフランチャイザー指定の業者からか、独自仕入方
式なのかを確認し仕入先を具体的に記入する。販売先は顧客ターゲットを誰にするかを記入する。
28
⑬「事業の全体像」(事業アピールおよび事業の強み・特徴)
事業の全体像を記述、図、または一連の流れで把握できるように表現する。これは自分自身のイ
メージを固めると共に、関係者の理解を得やすくし事業をアピールするメリットがある。
【B.資金・収支計画】
(1)必要資金とその調達方法
①「設備資金等」
事業を始めるに当って使用する設備を購入するための資金である。例えば、店舗の建設・改装、
機器設備等の購入費が該当する。また、フランチャイズチェーンに加盟する加盟金、保証金、店舗
を借りる際の敷金なども含めて記載する。
②「運転資金」
設備資金以外のものはすべて含まれ、例としては商品仕入、材料仕入、人件費、ロイヤルティ、
店舗・事務所の賃借料、広告宣伝費等が代表的である。
③「資金調達」
初期投資に関わる資金をどこから調達するかを計画することである。調達資金は、出所によって
名称が違うとともに持っている性格も異なる。
資本金(個人の場合は元入金)とは、フランチャイジー(経営者)本人や出資者が投資した資金
で、返済の義務を伴いません。借入金とは、銀行など金融機関から借りた資金で、1 年以内に返す
短期借入金と 1 年以上の期間借りることのできる長期借入金がある。
(2)収支の見込み
④「売上高」
事業を始める前から 1 年分の正確な収入額を計算することは困難である。準備作業として、小売
業では予定の店舗の広さ、商品構成、客単価(飲食業では席数、回転数、客単価)から営業日数、
立地を考慮して予測することになる。この点についてはフランチャイザーのデータを利用したり、
経営コンサルタント等専門家の指導を受けることをお勧めする。
⑤「売上原価」
小売業では商品代、飲食業では材料費等、サービス業では外注費等が該当する。
⑥「売上総利益」
売上高から売上原価を引いたものである。通称「粗利益(アラリエキ)」と呼ばれている。
⑦「販売管理費」
事業を行なうにあたり、営業や販売、一般管理に掛かる費用を言い、全費用のうち売上原価を除
いたもの全てと考える。具体的には、役員報酬、人件費、地代家賃、広告宣伝費、ロイヤルティ、
支払利息、減価償却費等がある。
⑧「営業利益」
売上高から売上原価と販売管理費を引いたものである。
⑨「税引後利益」
法人等の税金(通常は税引前利益の約 40%)を営業利益から引いたものである。
※なお、性格には営業利益の後に営業外収益をプラスし、営業外費用を差し引いた経常利益があ
る。さらにその後に、特別収益をプラスし、特別損失を差し引いて税引前利益となる。しかし、開
29
業前の計画段階では、営業利益を税引前利益とする方法で良いであろう。
なお、支払利息については、営業外費用として計算する方法もあるが、中小企業の場合は販売管
理費として計算することが現実的であり、ここではその方法をとっている。
(3)返済計画と資金調達
⑩キャッシュフロー(返済財源)
実際に手元に残る資金で、借入金返済の財源となる。税引後利益と減価償却費が該当する。なぜ
減価償却費が返済財源かというと、費用として収支計画のなかで計上しているが、実際には、現金
支出はしていないので資金として残っているからである。
⑪「返済額」
金融機関から借り入れた資金の返済する金額を返済額という。
⑫「差引過不足額」
返済財源と返済額の差額がプラスであれば資金が残り、内部留保として他に活用することができ
る。マイナスであれば、その対策が必要になる。
⑬「別途資金調達計画内容」
差引過不足額がマイナスの場合、当初の資金計画以外に資金計画が必要になる。黒字基調になる
のが一般的に2∼3年と言われている。創業当初は非常に資金繰りが厳しいことも想定されるため、
スタート時点で余裕資金を持っておくという別途資金調達策を講じておくことが望ましい方策であ
る。
図表
氏名
事業基本計画書
生年月日
現住所
TEL
FAX
E−mail
①企業の形態
②開業予定日
③企業の名称
④資本金
平成
年
⑧提供する商品又
はサービス
⑦業種
⑨創業目的や動機
⑩当事業の経験
⑪強み・セールスポイント
相手先(所在地)
⑫仕入先と
取引の契機(特徴)
仕入先
30
日
千円
⑤事業の場所
⑥従業員
月
販売先
販売先(顧客層)
⑬事業の全体像(事業のアピール及び事業の強み・特徴)
図表
資金調達及び返済計画表
(1)必要資金とその調達方法
投
資
資
金
金
額
③資金調達
金
①設備資金等
<資本金
・土地
(元入金)>
額
・建物
・加盟金
・敷金
<役員借入金>
・保証金
・設備
・その他
小
計
②運転資金
<銀行借入金等>
・商品
・人件費
・地代家賃
・ロイヤルティ
・諸経費
<その他>
・その他
小
計
合
計
合
計
(2)収支の見込み
期
間
第1期
第2期
第3期
④売上高
⑤売上原価
・商品仕入
・その他
⑥売上総利益
⑦販売管理費
・人件費
・地代家賃
・ ロイヤルティ
・広告宣伝費
31
裏付け(背景や根拠)
・支払利息
・減価償却費
・その他
⑧営業利益
⑥−⑦
⑨税引後利益
⑧×(1−
税率)
(3)返済計画と資金調達
期
間
第1期
第2期
第3期
⑩ キャッシュフロー
(返済財源)
税引後利益+減価
償却費
⑪返済額
⑫差引過不足
⑬別途資金調達計
画内容
備考
32
裏付け(背景や根拠)
19
加盟契約
●フランチャイズチェーン契約における心構え
加盟希望者は、法定開示書面・フランチャイズチェーン契約書を熟読し、不明な点があれば、納
得するまでフランチャイザーに質問するように心がけることが重要である。また、自分が『独立し
た事業者』であること自覚し、自ら積極的に立地調査を行い、事業計画を立てるように努める必要
もある。各種情報誌やインターネットを通じてフランチャイザーの情報を収集し、複数のフランチ
ャイザーを比較検討するだけでなく、弁護士・税理士といった専門家や、商工会議所の相談員に相
談することをお勧めする。
他方、フランチャイザーも、加盟希望者の十分な理解を得るように努力しなければならない。フ
ランチャイザーの担当者の中には、加盟を急がせたり、美辞麗句を並べたりする者もいるが、そう
した行為が後々のトラブルの原因となり、かえってそのフランチャイズチェーンブランドの価値を
低めることになる。
なお、フランチャイズ・システムは多数のフランチャイジーを組織化して統一的に運用するもの
であるから、個々のフランチャイジーとの間で異なった内容を定めるわけにはいかない。そのため
加盟希望者がフランチャイザーと交渉して契約内容を変えることは極めて難しいと言える。
●フランチャイズ契約書のチェックポイントと契約時の心構え
①フランチャイズの付与
フランチャイズチェーン契約によって、フランチャイジーには、
『 フランチャイズ』が付与される。
具体的には、商標等の使用とノウハウの実施が許諾される。加盟希望者としては、商標や特許につ
いて登録されているかをフランチャイザーに確認する必要がある。
なお、ノウハウを詳細に列挙することは困難なので、契約書中には抽象的に例示されるだけであ
る。
②フランチャイザーに対して支払う金銭
フランチャイザーに対して支払う金銭として、加盟金・ロイヤルティ・保証金がある。加盟金と
は、フランチャイジーがフランチャイザーと同一の商標を使用して事業を営む権利・テリトリー権・
従業員の初期研修などの対価として、契約締結時に一括して支払われるものである。なお、フラン
チャイズチェーン契約が終了しても加盟金は返還されない。
ロイヤルティとは、商標やノウハウの使用・営業開始後の経営指導・フランチャイザーによる広
告宣伝などの対価として、定期的(通常は月払い)に支払われる金銭である。売上高や粗利益に対
する歩合(パーセント)の場合もあれば、定額の場合もある。また、廃棄ロスや棚卸ロス等につい
てチャージがかかるのかは十分確認する必要がある。
保証金とは、フランチャイズチェーン契約期間中にフランチャイジーがフランチャイザーに対し
て負う債務(未払いロイヤルティや損害賠償金)を担保するために、加盟契約時に支払われる金銭
である。フランチャイズチェーン契約が終了すれば精算され残額が返還される。
その他に、宣伝広告費、研修費用、設備メインテナンス費用などを別途徴収するフランチャイザ
ーもある。
③テリトリー
フランチャイズチェーン契約書に指定された店舗設置場所・営業地域のことをテリトリーと言う。
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当該地域における独占的な営業権をフランチャイジーに保証している場合もあれば、単なる営業拠
点を定めるだけのものもある。
独占的なテリトリー権が保証されていない限り、自己の店舗の近くに直営店や他のフランチャイ
ジーが出店してきてもフランチャイジーとして文句は言えない。このように、テリトリーについて
の規定は、フランチャイジーの将来の経営計画に大きな影響を与えるので、フランチャイザーの出
店計画もふまえて十分検討していただきたい。ただし、最近は独占的テリトリー権を保証しない契
約が多い。
④店舗運営
店舗運営については、初期研修・教育制度、各種マニュアルの貸与、加盟後の指導・支援、内外
装のデザイン、従業員の服装、商品の仕入れ方法等多岐に渡る。フランチャイジーに対するフラン
チャイザーの指導援助が具体的にどのようになされるか(スーパーバイザー派遣の頻度、研修の回
数や費用等)を確認していただきたい。
⑤契約の終了
契約期間は様々であるが、多くのフランチャイズチェーン契約では自動更新条項がついている。
フランチャイザーがフランチャイズチェーン契約を解除する場合について、ほとんどのフランチ
ャイズチェーン契約書では詳細な定めがおかれているが、フランチャイジー側からの解除について
はあまり詳しく書かれていない場合が多い。フランチャイジーから一方的に解約する場合は、違約
金の支払が義務づけられているケースがほとんどである。
⑥競業禁止義務及び守秘義務
フランチャイジーがそのフランチャイズチェーンに類似した他の営業行為をすることを禁じる義
務を競業避止義務(競業禁止義務)という。フランチャイジーがフランチャイザーから提供された
ノウハウや営業秘密を他に流用したり、第三者に開示したりすることを禁じる義務を秘密保持義務
(守秘義務)という。フランチャイザーは、そのブランド価値やノウハウを守らねばならないから、
ほとんどのフランチャイズチェーン契約書ではこれらの義務が定められている。しかも、フランチ
ャイズチェーン契約終了後も、一定期間これらの義務は存続するとされている場合が多い。
⑦その他の契約
フランチャイジーが営業をするためには、店舗を確保し、設備や什器備品をそろえなければなら
ない。そこで、フランチャイズチェーン契約とは別に、店舗の賃貸借契約や設備のリース契約を締
結するのであるが、それらの契約書の末尾に、
「フランチャイズチェーン契約が終了した場合、本契
約も当然に終了する。」などと記載されていることがある。このような特約ある場合、フランチャイ
ジーがフランチャイズチェーンから脱退しようとすると、リース残金全額の支払義務が生じたり、
賃貸人に対する高額な違約金支払義務が生じたりしてしまう。
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開業準備
●資金調達
(1)資金調達の分類
フランチャイザー希望者にとって最大の課題は開業資金の調達である。自己資金で全額賄えられ
ることが理想であるが、そのようなケースは稀である。資金調達の方法は以下の通りであるが、初
期投資の半分は自己資金で賄えるように準備を進めることが肝要である。
自己資金
預貯金・退職金・土地等の固定資産・株式等の
有価証券
身内、友人、株主・社員からの出資や借り入れ
公的金融機関からの融資
国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、商工組
合中央金庫
地方自治体の融資制度
県や市町村の融資制度
民間の金融機関からの融資
都市銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合
その他
リース、フランチャイザーのローン制度
(2)公的融資と助成金
開業資金が足りなければ、資金を借りることになる。民間の金融機関も融資窓口の候補であるが、
最近では国の創業支援制度も充実しているので、有利な公的融資が利用できるようになっている。
その代表が国民生活金融公庫の融資制度である。
なお、公的金融機関からの融資のメリットは以下の通りである。
①融資条件が民間金融機関より柔軟
原則、融資条件としては担保と保証人が必要であるが、無担保・無保証の制度もある
②民間金融機関に比べて金利が低い
借り手によって金利が変化することなく一定である。
③返済条件・借入期間に弾力性がある
元金返済に据え置き措置もあり、借入期間も長期のものが多い。
なお、ほとんどの地方自治体でも事業向けの融資制度を設けている。この中に「開業資金」に関
する融資制度を用意している自治体も多くある。また、従業員を雇い入れる際も助成金が受給でき
る場合があるので、商工会議所等へ相談するとよい。
●店舗建設・内外装工事
フランチャイズ加盟の場合、注意していただきたいのが、店舗の建設や内外装工事に当たって、
施工はフランチャイザー指定業者が実施するのか、フランチャイジー側で地元の業者に依頼するの
かである。
通常、店舗設計はイメージや仕様の統一を図るためフランチャイザー側で実施するが、施工は上
記のいずれかをとる。フランチャイザー指定業者の場合は、他にも多数施工実績があるため、詳細
な段取りなども含めてフランチャイジー側のスケジュール管理はやりやすいといえる。
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一方、フランチャイジー側で業者発注する場合は、フランチャイザー担当者も施工のスケジュー
ル管理は行うが、業者が慣れない施工の場合、工期に遅れが生じないようフランチャイジー側でも
しっかりと開業までのスケジュール管理を行うことが必要になる。
●開業前研修
フランチャイズに加盟して開業するまでに必ず受講しなければならないのが、開業前にフランチ
ャイザーが実施する研修である。フランチャイザーによって異なるが、短い場合で3日間、長い場
合は直営店での実習も含んで 2 ヶ月以上ということもある。また、大手コンビニエンスストアのよ
うに、夫婦で受講することを条件にしているフランチャイザーもある。
●従業員採用
開業にあたって、どんな人をどのように採用するかは大きな課題である。時間とコストもかかる
ので、早めの準備が必要である。
従業員の採用手順は以下の通りである。
①採用数を決定する
②採用基準を作成する
③勤務条件(仕事の内容・給料・勤務時間・休日など)を決定する
④採用の募集を行う
⑤書類選考・面接を実施
⑥採用決定・研修
従業員の募集方法には以下のものがある。
①求人情報誌
②新聞折り込みチラシ
③地域のミニコミ誌への広告
④店頭ポスター
⑤職業安定所(ハローワーク)、人材バンクへの求人募集
⑥紹介、口コミ
⑦縁故
採用に当たっては、書類選考とともに面接が大変重要な役割を果たす。本人の人柄はもちろん、
なぜこの採用に応募したか、仕事への意欲・やる気があるか、言葉づかいや身だしなみは大丈夫か、
規則正しい生活を送っているかなど、全般にわたって評価する。なお、採用側としては「面接チェ
ック表」を作成し、一人で面接を行わず、複数人で判断することが望まれる。
●開店直前準備及び開店
施工が完了し店舗の引渡しが終わると、備品類等の搬入や実際の店舗を使った採用スタッフのオ
ペレーション研修など、特に開店前数日間は実戦さながらの超繁忙期に突入する。
この頃になるとスケジュール表は時間単位で管理することになり、一瞬たりとも気の緩む時はな
い。開業日に向けて徹夜が続くことも多々ある。
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21.加盟後のトラブル処理
●トラブル処理の方法
トラブルの多くは,業務運営に関する苦情から始まるが,お互いの話し合いにより誤解がとける
場合が少なくない。しかし,対応が不十分な場合には訴訟問題となり,裁判所の和解調停または判
決による解決が必要な案件に発展していくケースがほとんどである。そこで,誰にトラブル処理を
申し出るのか,申し出にあたって注意する点について以下に説明していく。
①
誰に申し出るのか
a.日常のフランチャイズ・システム運営について
加盟者は,通常本部から店舗運営のために派遣されたスーパーバイザー(SV)と接触する機会
が多いので,まずSVに申し出てください。このとき得られた回答が十分でない場合は,フランチ
ャイズ本部に申し出るとよい。
b.十分な話し合いをしても,契約内容が不履行の場合
(社)日本フランチャイズチェーン協会,最寄りの商工会議所・商工会および中小小売商業振興
法を所管する経済産業局,独占禁止法を所管する公正取引委員会地方事務所の相談窓口へ申し出を
行う。なお法的手段を考えている場合は弁護士への相談が適切と思われる。
②
申し出るにあたっての注意点
フランチャイズ・システム契約はあくまで,事業者同士の2者間の商法上の契約である。したが
って,通信販売のような消費者による契約ではないので,加盟者からの一方的な解約はできない。
【トラブルの経緯の整理】
フランチャイズ本部において問題の円満な解決が行われるためにも,また,不幸にして法令違反
について所管の役所への申し立て,裁判所への審議の申し立てを行うにしても,どのようなことが
トラブルの争点になっているのかが明確になっていることが重要である。
したがって,次のような点に留意することが必要です。
「言った言わない」が一番問題となるため,誰とどこでどんなやりとりを行ったのかを時
系列的に記録しておきます。相手との会話をテープに録音する等の方法も有効でしょう。
通常,トラブルの争点は1つであることは少なく,複合的であることが多いものです。た
とえば,
「 間違いないといわれた売上予測がはずれ,売上増加策の支援もしてくれなかった」
といった場合は,それぞれの事項について整理することをお勧めします。
現在トラブルが原因で売上にどのような障害が発生しているのか,計数的に把握できれば
そのデータも保存しておきましょう。
③
合意成立時の処理
これまで述べてきた解決方法は,基本的には当事者の合意によるものである。紛争というものは
当事者の合意と納得により解決されることが望ましいことはいうまでもない。仮に金銭の支払義務
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が発生する場合でも,当事者の合意があったほうが現実的な履行が可能だからである。
一定の合意が成立した場合は,その内容を「合意書」,「和解書」の形で確定させておくようにす
る。また,加盟契約を解約する場合は「解約合意書」を忘れないことが必要である。
なお,当方が相手方に対して債権を有しているが,相手方の対応に不安が残る場合は,当該合意
書を公正証書の形で残すことをお勧めする。公正証書中に「…については強制執行をすることがで
きる」という条項を入れておけば,相手方が支払わないときに強制執行をすることが可能となるた
めである。
●当事者の合意で解決しなかった場合
当事者の合意で解決しなかった場合は,訴訟等の法的手段に訴えることになります。具体的なこ
とは弁護士と相談のうえ対応を決めてください。なお,フランチャイズ・システムの訴訟に精通し
た弁護士に依頼するようにしてください。
中小小売商業振興法施行規則の改定により,法定開示書面に訴訟件数を記載することが必要とな
って以来,フランチャイズ本部は訴訟を回避したがる傾向にあると思われます。ですから,いきな
り訴訟を提起するのではなく,裁判所の調停を間にはさむことも有効な手段です。
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