世界史

攻略プリント
世界史
「ヨコのつながり」の理解
(同時代史の理解)
□図説の年表や世紀ごとのテーマのページなどを用いて,同時代に起こった出来
事,同時代に存在した人物,同時代の国・地域間の相互関係を理解しよう。と
くに2世紀,5世紀,8世紀,13 世紀,16 世紀,そして環大西洋革命は必ずお
さえておこう。
ア明末の北京に暮らした西洋人キリスト教宣教師の名前を答え,イこの時期の中国でキ
リスト教の布教が進められるようになった経緯を,「プロテスタント」「ポルトガル」の 2
つの語句を用い,説明しなさい。
ア イ Let’s Try!
1
2
クビライ以後,「陸と海とをつなぐ交通ネットワーク」が,どのように形成されたか,
またネットワーク上ではどのような人々が交易に活躍したか,どんな通貨が用いられるよ
うになったかについて,下記の四つの用語をすべて使って説明しなさい(150 字程度)。
泉州 海運 大都 ジャムチ
(2012 年度 大阪大 改題)
(2012 年度 北海道大 改題)
3
とう しょ ぶ
東南アジアでは,島嶼部においては 18 世紀までにすでに,西洋諸国がかなりの影響力
を及ぼすようになっていたが,19 世紀になると,大陸部も含めて,西洋諸国による東南
アジアの植民地化が進められていった。
19 世紀の東南アジア大陸部・マレー半島におけるイギリスとフランスの動きについて,
以下の語を参考にしながら 350 字以内で説明しなさい(必ずしも,それらのすべてを用い
る必要はない)。
海峡植民地 マレー連合州(マラヤ連邦,連合マレー諸州) ビルマ戦争(イギリス=ビルマ戦争) インド帝国 清仏戦争 フランス領インドシナ連邦
(2013 年度 名古屋大 改題)
4
次の問いについて,400 字以内で解答しなさい。なお,解答文中では指定された語句に
下線を施すこと。
18 世紀から 19 世紀にかけてのヨーロッパと南北アメリカで起こった一連の革命 ・ 独立
運動について,以下の語句を用いて説明しなさい。
アメリカ独立宣言 七年戦争 ハイチ ラ=ファイエット ロック
(2013 年度 筑波大 改題)
攻略プリント
世界史
「ヨコのつながり」の理解
(同時代史の理解)
1 モンゴル帝国時代,すなわち 13 世紀の「接触
3 ここでは,「19 世紀」という時代設定と「イギ
と交流」をテーマとして,世界史のヨコのつなが
リスとフランスの動き」という視点から東南アジ
りが問われている。「陸と海とをつなぐ交通ネッ
ア史を論述することが要求されている。「マレー
トワーク」がどのように形成されたのかを,大都
半島」 にイギリスが進出したプロセスと,「東南
を中心としたネットワークを想起しながら説明し
アジア大陸部」 すなわちインドシナ半島に,イギ
ていけばよい。指定語句にジャムチがあるので,
リスはインド帝国を起点に西から,フランスはベ
大都が陸のネットワークの起点であったことは容
トナムを起点に東から,それぞれ進出したことを
南アジアやインド洋を通る海の道とも結びついた。こうしたネットワーク上ではムスリム
易に思い浮かぶだろうが,大運河と海運の発達を
述べる必要がある。そして,「タイ」が東西両方
商人が活躍し,銀のほかに交鈔とよばれる紙幣も流通した。(147 字)
背景に,大都が泉州などの港市と結びついていた
向から進出した英仏の緩衝地帯となったことで,
ことを思い浮かべることができるかが,この問題
独立が維持されたことにも触れるとよい。東南ア
ア マテオ = リッチ〔利瑪竇〕
,あるいはアダム = シャール〔湯若望〕
を解く上でのポイントといえよう。また設問文に
ジア史については,教科書にまとまって記述され
ある「ネットワーク上ではどのような人々が交易
ることはあまりなく,インドや中国,イスラーム
に活躍したか」と「どんな通貨が用いられるよう
との関連で扱われることが多く,また教科書のコ
になったか」という問いに対する「ムスリム商
ラムのような部分に記述されることもある。しか
人」と「交鈔」を,解答にきっちりと盛りこめる
し,東南アジア植民地化の歴史は,「周辺地域史」
かどうかで,得点には大きな差がつくことになる。
のなかでは頻出のテーマである。教科書や図説な
150 字程度と制限字数が厳しいので,必要な内容
どの地図を用いて,大陸部の国と島嶼部の国の位
を過不足なく論述する高い文章力も求められてい
置関係,そしてどの国(地域)にどの列強が進出
る。
したかを確認して,教科書でばらばらに記述され
解答例
1
2
モンゴルでは,ジャムチとよばれる駅伝制が整備され,大都を起点とした陸路の交通が活
発になった。また大運河と海運の発達により,大都は泉州・杭州などの港市と結ばれ,東
イ 宗教改革によるプロテスタントの勢力拡大に対抗するため,カトリック教会はイエズ
ス会を中心にアジアなどの海外布教に力を注ぎ,ポルトガルのインド航路開拓以降のア
ジア進出と結びついて,中国にも宣教師が派遣された。
3
イギリスは,マレー半島のペナン島,マラッカとシンガポールをあわせて海峡植民地を成
立させ,さらに錫などの資源を求めて半島内陸部へと進出してマレー連合州を形成した。
また3回にわたるビルマ戦争でコンバウン朝を滅ぼした後,ビルマをインド帝国に併合し
た。一方フランスは,
ナポレオン3世時代にインドシナに出兵してコーチシナ東部を獲得し,
2 アの語句を答える設問をうけて,イでは明末に
中国でキリスト教の布教が進んだ経緯が求めら
ている知識を頭の中で地図上に描けるようにして
おこう。
れている。ここで 16 世紀のキリスト教に関わる
4 環大西洋革命という世界史では頻出のテーマが
出来事を考えると,まずは宗教改革とこれに対す
扱われている。「18 世紀から 19 世紀にかけて」と
る対抗宗教改革の動きが思い浮かぶ。すなわち宗
いうタテの流れに,「ヨーロッパと南北アメリカ」
教改革以後のプロテスタントの増加に対抗するた
というヨコからの視点を織り込んで論述すること
ランス領インドシナ連邦を成立させ,1899 年にはこれにラオスも組み入れた。またイギリ
め,カトリック陣営は対抗宗教改革を開始し,イ
が求められている。北米植民地をめぐる英仏の抗
ス・フランス両国の緩衝地帯としてタイの独立は維持された。(350 字)
エズス会を組織して中国などアジアへの布教を進
争を起点に,イギリスの財政難,アメリカ独立革
めたことについて述べれば,ほぼこの問題には答
命,フランス革命,ラテンアメリカ諸国の独立と
18 世紀に,イギリスとフランスの抗争は,植民地戦争に発展した。イギリスは七年戦争と
えたことになる。しかし,ここで残された問題
つながる流れを,ヨーロッパと南北アメリカが互
が「ポルトガル」という指定語句の使い方である。
いに与えた影響に留意しながら述べればよい。指
イエズス会を通じて布教を進めたのは主にスペイ
定語句の「ラ=ファイエット」は,フランス革命
ンであるから,ここでポルトガルを使うことは適
の中心人物の一人であるだけでなく,アメリカ独
切とはいえない。むしろ,イエズス会によるアジ
立戦争にも参戦していることにも触れる必要があ
アへの布教拡大の背景にあったインド航路の開拓
る。政治・社会思想の歴史や人権保障の歴史につ
とからめて,ポルトガルは使うべきであろう。こ
いても,図説のまとめなどを参考にして整理して
のように中国とヨーロッパとで同時代におこった
おこう。
さらにカンボジアも保護国とした。その後もフランスは阮朝に軍事的圧力を加え,ユエ条
約でベトナムを保護国としたが,ベトナムの宗主権を主張する清はこれを認めず,清仏戦
争が勃発した。これに勝利したフランスは,1887 年にベトナムとカンボジアをあわせてフ
4
攻略ポイント解説
同時期に勃発したフレンチ=インディアン戦争に勝利したが,財政難に陥ったため,北米植
民地で重商主義政策を強化した。これに対し植民地側は反発し,独立戦争に発展した。戦
争中にロックの影響で革命権を明示したアメリカ独立宣言が発布された。戦争は植民地側
が勝利し,アメリカ合衆国が独立した。アメリカ独立の影響はヨーロッパに及び,旧体制
下のフランスで革命が勃発し,王政が廃止され共和政となった。アメリカ独立戦争に義勇
兵として参戦したラ=ファイエットは,革命中に採択されたフランス人権宣言の起草者の
出来事,すなわち世界史の「ヨコのつながり」を
一人となった。さらに,アメリカ独立戦争とフランス革命の影響はラテンアメリカへ波及
おさえ,その中から必要な情報を取り出す力が求
した。まず,フランス領サン=ドマングで黒人奴隷が独立運動を起こし,史上初の黒人共
和国ハイチとして独立すると,
その後 1820 年代までに多くの国が独立を達成した。
(398 字)
※入試問題の解答・解説等は,ことわりがない限り編集部が独自に作成したもので,各大学が公表したものではありません。
められている。