Yano Research Institute Ltd

2015 年 1 月 9 日
大学向けビジネス市場に関する調査結果 2014
-大学法人経費削減のため、大学向けビジネスは全般的に拡大傾向に-
【調査要綱】
矢野経済研究所では、次の調査要綱に沿って国内の大学を運営する学校法人向けビジネスの調査を実施した。
1. 調査期間:2014 年 7 月~11 月
2. 調査対象:大学法人(大学を運営している学校法人)、及び大学を主たるクライアントとして営利事業を行ってい
る大学法人出資の収益事業法人、大学向け広告・就職支援事業者、大学向け人材派遣事業者、図書館業務委託
事業者(書店)等
3. 調査方法:当社専門研究員による直接面談、ならびに電話・e-mail 等によるヒアリング、文献調査併用
<本調査における大学向けビジネスとは>
本調査における大学向けビジネスとは、大学を運営する学校法人(主に私立大学)をターゲットとする BtoB ビジネ
スをさす。学生個人や教職員個人を対象とする BtoC ビジネスは除外する。
【調査結果サマリー】
◆ 2013 年度の大学向け人材派遣市場の市場規模は約 230 億円、
中核業務以外の人件費抑制の動きもあり、当面市場は拡大傾向
◆ 2013 年度の大学向け広告・学生募集支援の市場規模は約 440 億円、
学生募集のためのマーケティング支援への需要が拡大傾向に
◆ 2013 年度の大学向けシェアードサービス市場の市場規模は約 365 億円、今後も拡大
◆ 大学法人の収益事業法人(大学法人 100%出資)によるシェアードサービスは
施設管理、購買業務、食堂・カフェの運営代行を中心に緩やかに成長
◆ 大学法人は経費削減のため、中核業務以外はアウトソーシングを行う傾向、
大学向けのビジネスは全般的に拡大傾向に
◆ 資料体裁
資料名:「大学向けビジネス徹底調査レポート 2014」
発刊日:2014 年 12 月 5 日
体 裁:A4 版 413 頁
定 価:120,000 円(税別)
◆株式会社 矢野経済研究所
所在地:東京都中野区本町2-46-2 代表取締役社長:水越 孝
設 立:1958年3月 年間レポート発刊:約250タイトル URL: http://www.yano.co.jp/
本件に関するお問合せ先(当社 HP からも承っております http://www.yano.co.jp/)
㈱矢野経済研究所 マーケティング本部 広報チーム TEL:03-5371-6912 E-mail:[email protected]
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本資料内容を転載引用等されるにあたっては、上記広報チーム迄お問合せ下さい。
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2015 年 1 月 9 日
【 調査結果の概要 】
1. 市場概況
大学向けビジネスで、過去 3 年間に市場規模が拡大傾向にあったサービス分野としては「人材派遣サ
ービス」、「文書管理・ドキュメンテーション」、「広告・学生募集支援」、「キャリアセンター・就職支援サービ
ス」、「資格取得支援講座」、「リメディアル教育講座注 2」、「LMS・e ラーニングサービス注 3」、「シェアードサ
ービス注 4」が挙げられる(表 1 参照)。
これらの分野の市場拡大要因としては、大学法人のコア(中核)業務である学生募集のための業務(広
報業務)、および就職支援業務(キャリアセンター業務)に、大学法人の人員や予算が集中的に投入され
る傾向にある中、それ以外の業務についてはアウトソーシング(外部の民間事業者への業務委託)需要
が高まり、その受け皿となっている各分野の事業者におけるビジネスが成長しているためである。
特に大学向けの人材派遣業務は、昨今の景気の回復によって非正規雇用者に対する需要があらゆる
業界で高まっていることもあって、時給相場が上昇したことによるものである。
また、大学向けの広告・学生募集支援については、少子化の厳しい環境下、学生を確保するために、
大学側が予算を掛けてでも、外部事業者に積極的な業務委託をする傾向もあり、大学の数が頭打ちにな
っている昨今でも尚、市場は成長基調で推移している。
更に、大学法人の間接業務を引き受けるシェアードサービス(大学法人 100%出資の収益事業法人によ
るビジネス)は、緩やかではあるが徐々に業務範囲を広げ、施設管理、購買業務、食堂・カフェの運営代
行を中心に、成長を続けている。
2. 注目すべき動向
大手人材派遣会社が大学法人向けビジネスを拡大
従来、大学事務における人材派遣の担い手として、大学法人が出資して設立した収益事業法人におけ
る役割は少なくなく、なかには収益事業法人の主たる業務が「人材派遣」というところも珍しくなかった。し
かし、2010 年 10 月の労働者派遣法改正により、グループ内関連企業への派遣の割合を 80%以下とする
規制が課された。これにより、グループ内の企業にのみ人材を派遣するという、いわゆる「専ら派遣」が規
制されることになり、出資元の大学にのみ人材を派遣していた収益事業法人もその例外ではなくなったこ
とで、収益事業法人の人材派遣業からの撤退が進んだ。
こうしたことから人材派遣の大手専業者は、大学事務の人材派遣事業を拡大したことで、大学向けの人
材派遣業の市場規模が拡大する結果となった。
一方、「人材派遣」から撤退した収益事業法人は、各種請負業、施設管理、購買代行等のサービス領
域を拡大して現在に至っている。
3. 将来展望
少子化の流れの中で、将来の学生数の減少が推測されるなか、有名ブランド大学を除いては、今後、
各大学法人は極めて厳しい経営環境となることが想定される。大学法人のなかでも「学術的な成果」をあ
げることに経営資源を配分できる余力のあるところは限られ、殆どの大学法人は生き残りのために「学生
募集」(=即ち学生(顧客)獲得・収入源)、そして「就職支援」(=即ち学生(顧客)満足度の向上)に、より
経営資源を振り向けていくものと考える。
こうしたなか、大学内の限られた経営資源とノウハウだけでは、益々対応が難しい状況となるため、アウ
トソーシング(大学向けビジネスを展開する民間の事業者)への依存度は高くなるものと推察され、外部の
民間事業者におけるビジネスポテンシャルが増すことになるだろう。
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2015 年 1 月 9 日
表 1. 主な大学向けビジネス分野別市場規模・トレンド
2013年度
市場規模
現況/今後の見通し
人材派遣サービス
約230億円
非正規雇用の拡大が社会問題化している中、公的機関である大学では派遣利
用を拡大しにくい環境にはあるものの、コア(中核)業務以外の人件費抑制ニー
ズは高く、派遣の賃金上昇傾向もあって、当面市場は拡大していく。
文書管理・ドキュメンテーション
約52億円
膨大な発送・封函業務、更には個人情報の管理をしつつのデータベース管理、
入試問題等の特殊な印刷業務等、益々、大学法人からのドキュメンテーション
サービスに対する需要は増していく環境にある。但し、大学数や学生数が頭打
ちになるため、サービスの利用領域は拡がるが、市場規模自体は漸増傾向にあ
ると考える。
清掃
約220億円
日常的な清掃業務や、大規模な清掃業務など、いずれも大学職員で実施して
いるところは殆ど無い。安定した需要はあるが、増えも減りもしない状況のため、
今後も横ばいを見込む。
施設管理・マネジメント
約370億円
各種設備保守、設備の運営・管理は既に相当程度アウトソーシングされており、
直近では一巡された感がある。一方、今後は清掃、警備の業務も含めて、一括
して業務委託する、という流れがでてくると、業務の単価が下がる可能性もある。
今後、漸減傾向を予測する。
広告・学生募集支援
約440億円
広告だけでなく、広告に付随した各種マーケティング支援、Webを介したサービ
スのニーズが今後拡大していく。一方で従来のような新聞広告や、キャンパスの
都心移転が一段落したことで、これに伴う大規模広告の需要は頭打ちのため、
緩やかな成長を見込む。
図書館業務アウトソーシング
約120億円
大学図書館は開架時間の延長、学術雑誌の電子化、レファレンスサービスの高
度化等が求められていることもあり、大学は外部事業者に益々頼らざるを得ない
環境にある。一方、図書館の新設、データベースシステムの導入等は一段落し
ており、安定的な横ばい推移を予測する。
キャリアセンター・就職支援サービス
約13億円
大学法人から外部事業者に対価を払って行うキャリアガイダンス、就職活動セミ
ナーのニーズは徐々に拡大している。また、学生の就職相談窓口業務を大学の
外に置くことによって、学生にとっての通いやすさも増すことから、窓口業務のア
ウトソーシングも今後進んでいく可能性が高い。
資格取得支援講座
約33億円
根強い公務員人気に支えられ、大学内講座では、公務員講座の人気が上昇し
ている。また就職状況の好転を受けて、会計士、宅建講座も好調である。一方、
こうした講座以外はやや低迷気味である。今後も「公務員講座」を中心に、ニー
ズは拡大していくと考える。
リメディアル教育講座
(注2)
約18億円
推薦・AO入試等、学力試験を経ずに合格する大学生が増えるにつれて、数
学、理科、社会の基礎学習を受けさせるニーズが大学側で拡大している。内部
の講師では基礎教育に対応できないため、外部事業者の依存は強まるものとみ
る。また、公務員をはじめとする、就職試験対策として基礎学力をつける講座も
人気となりつつある。
LMS・eラーニング
(注3)
約52億円
語学教育、資格教育、リメディアル教育における大学へのLMSの提供は広がり
を見せているものの、導入は一巡した。サービスがクラウド化されたことで、コンテ
ンツの低価格化が進んでおり、利用者は増えても市場規模はそれ程増えない構
造となりつつある。
書籍・雑誌販売
約880億円
学術書に占める洋書および海外学術誌の電子書籍の割合が年々増えている。
このため、同サービス利用額は為替相場にも左右される。一方、学術誌の電子
化の進展で、コンテンツ・データベースの販売は増えるも、取扱総額はゆるやか
に減る方向にある。
大学法人向けシェアードサービス
(注4)
約365億円
大学法人は財務基盤安定のため経費削減に注力している。このため収益事業
法人の設置に対する意向が高まる。入試広報、キャリアセンター等のコア(中核)
業務以外はアウトソーシングへの依存度が高まるものと考える。
サービス分野
過去3年間の傾向
矢野経済研究所推計・作成
注 1. 大学を運営する学校法人に対するサービス(ビジネス)を提供する事業者売上高ベース
注 2. リメディアルとは、大学の講義を受講する上での基礎学力をつけるための学生に対する補習教育サービスをさす
注 3. LMS・e ラーニングとは、学習管理システムおよびネットワークを使った学習コンテンツ・サービスをさす
注 4. シェアードサービスとは、分散している間接業務を集中させ、効率化を図るサービスをさす
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