学校保健(保健領域)小学校5年 単元名「けがの手当」

学校保健(保健領域)小学校5年
単元名「けがの手当」
授業テーマ
グループでの話合いや実習を通し
て,自分でできる簡単なけがの手当
の仕方を理解し,日常生活に生かす
ことができる授業
(傷口の砂を洗い流す実習)
Ⅰ
学校保健の構造
学校における健康教育は,学校保健,学校安全及び学校給食に関する指導を包括したものであ
り,それらの管理と一体として進められるものである。人生の様々なライフステージにおいて,
健康・安全について関心をもち,課題に直面した場合に,的確な思考・判断や適切な意志決定・
行動選択ができるようにすることをめざしている。
その中で学校保健は,図のような領域になっており,今回の授業は,日常のけがの手当という
危機管理に伴う保健指導と関連付けた,教科としての保健学習における集団指導である。
教科教育
学
校
保
健
活
動
Ⅱ
保健教育
保健指導
保健管理
健康管理
環境管理
生活管理
保 健 組 織 活 動
・教科としての保健(体育・保健体育)の学習
・関連教科や総合的な学習の時間での健康にかかわる学習
・行事や特別活動などを通した保健指導
・健康管理,環境管理,生活管理,危機管理(救急処置含)
に伴う保健指導
・健康診断,健康観察,健康相談,疾病予防など
・安全点検,環境衛生,施設管理,飲料水管理など
・通学,学級編成,休憩時間,健康管理など
・児童会活動,学校保健委員会,地域との連携など
思考力・判断力・表現力をはぐくむための授業の構想
子どもは日常生活の中で様々なけがの体験をしており,その防止策や対処法に関しては,経験
的に身に付けていると言える。けがを防止するために必要な,原因に対する正しい理解や安全に
心がけて行動しようとする態度,また,危険な状態に陥ったときの回避方法や応急処置などをあ
わせて学ぶことは効果的である。
授業では,まず,自分の問題としてとらえて考えようとする意欲を高めるために,自校で身近
に起こっているけがの実態をグラフやイラストなどで視覚的にわかりやすく提示する。
次に,伝え合いかかわり合う活動が活発にできるよう,少人数のグループでブレインストーミ
ングで意見を出させる。そして,実際に手当の方法を実習させ互いにアドバイスし合うことで,
自分でできる簡単なけがの手当の方法を身に付けさせたい。
さらに,ワークシートを活用し,正しい手当のポイントや実習を通してわかったことなどを記
入させることで学習の振り返りをさせる。そして,学習の成果を今後の日常生活に生かせるよう
にさせたい。
【保健学習の流れ】
知識の習得
経験
体験
話し合い
知識の活用
実習・実験,ブレインストーミングなど
思考力・判断力等を中核とした実践力の育成
ティームティーチングなど
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思考力・判断力・表現力が高まっている姿
グループでの話合いを通して,けがの手当の方法について考え,自分の意見を書いたり
発表したりしている姿
○ 互いにアドバイスし合いながら,実際にけがをした時にも対処できるように正しい手当
を実習している姿
○
手だて①
教材との出あわせ方
保健室来室データを基にけがのイラストを提示することで,校内で起きるけがの状況につ
いて関心を高めさせ,手当の方法について考えようとする意欲を喚起する。
手だて②
伝えあいかかわり合いを深める教師の働きかけの工夫
学習形態を工夫したり,経験を想起させる助言をしたりすることで,活発に意見を交わし
アドバイスさせる。
手だて③
振り返りの場の充実
学習の成果を日常生活で生かすことができるように,ワークシートを活用して学習の振り
返りをさせる。
Ⅲ
授業の実際
保健室来室データを基にけがのイラストを提示することで,校内で起きるけがの状況につ
いて関心を高めさせ,手当の方法について考えようとする意欲を喚起する。 〈手だて①〉
* T1:学級担任 T2:養護教諭
T1は,けがをした経験を想起させ,学校でどんなけがが多いか
予想させた。自分の経験などから積極的に発表していた。T2は,
保健室での手当の状況より「すり傷」「打撲」「切り傷」「鼻血」の順
に多いという実態を伝えた。
次に,学校でよく起きるけがのイラストを提示し,けがの手当の
方法についてイメージさせた。
(学校でよく起きるけがのイラスト)
けがによる保健室来室状況をグラフ化し,学校でよく起きるけがのイラストを提示したこ
とで,自分の経験からけがの状況についてイメージさせることができた。また,けがの手当
の方法について考えようとする意欲を高めさせることができた。
学習形態を工夫したり,経験を想起させる助言をしたりすることで,活発に意見を交わし
アドバイスさせる。
〈手だて②
手だて②〉
アドバイスさせる
。
〈
手だて②〉
T1はすり傷と鼻血の手当の方法について,ブレインストーミングで考えるように指示した。
T2は同じ予想でも気にすることなく記入してよいことを伝え,経験から想起させるように助
言しながら各グループの話合いを支援した。どのグループでも,活発に意見を伝え合っていた。
鼻血の手当の予想では,同じグループから「上を向く」「下を向く」という相反する意見が出
た。話合いで出された疑問は,T2が正しい手当の説明をするときにあわせて解説した。
「すり傷」の手当は,
水で洗うよね。
消毒するんじゃない。
カットバンをはることも
あるよ。
「鼻血」の手当は,
押さえてるよ。
上を向いてるよ。
ぼくは下を向くよ。
違う意見が出たけど,どっ
ちがいいんだろうね。
「鼻血」の手当は,
硬い骨の下の柔らか
いところをしっかり
つまんで,下を向き
ます。上を向くと,
鼻血がのどに流れる
ので気分が悪くなり
ます。
(手当の方法について話し合う)
(鼻血の手当の説明)
鼻の部分をスポンジで製作。骨の部分は紙
粘土で作成。中に細いゴムチューブを通し,
色水を流して鼻血に見立てた。
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実習では,来室時の手当を想
あれ,なかなか落ちな
起するように助言すると,掲示 いよ。
した正しい手当のポイントと照 どんなふうに洗えば砂
らし合わせながらアドバイスし が落ちるかな。
合っていた。
薄いゴム手袋
また,なかなか砂を落とすこ それじゃ落ちないよ。
に糊で砂(水槽
指でもっとしっかりこ
とができない子どもには,「指
用)を少量付け
でグルグルこすると砂が取れる すったほうが,きれい
傷口に付いた砂
に落ちるよ。
よ。」など,実演してアドバイ
に見立てた。
(砂を洗い流す実習)
スしている姿が見られた。
ブレインストーミングによる話合い活動は,付箋に予想をどんどん記入することができ,
話すことに苦手意識をもっている子どもにも活発に考えを伝え合わせることができた。しか
し,同じグループ内で相反する意見が出されたとき,じっくり話し合わせる支援ができなか
ったことが課題となった。また,実習のアドバイスでは,来室時の手当を想起させながら助
言すると,自分が上手にできた方法を実演しながらわかりやすく伝え合う姿が見られた。
学習の成果を日常生活で生かすことができるように,ワークシートを活用して学習の振り
返りをさせる。
〈手だて③
返りをさせる。
〈手だて③〉
手だて③〉
ワークシートを活用して学習の振り返りをさせ
鼻血は,硬い骨の下の柔
た。感想の一部を紹介する。
らかい場所をつまんで下
○ 傷口をこすると痛いから,ティッシュでふ
を向くことがわかった。
いていたけど,ちゃんと砂が落ちるように洗
これから家などでけがを
い流そうと思った。
したら簡単な手当は自分
でする。
○ ぼくは今まで,鼻血が出たとき硬いところ
を押さえていた。これからは柔らかいところ
を押さえて早く止まるようにしたい。
(これからの目標を発表)
学校以外の場所でけがをした時に,自分でできる手当はすると記入した子どもが多かった
ことから,正しい手当の方法を今後のけがの手当に生かそうとしている姿が見られた。
Ⅳ
授業を振り返って
〈手だて① 教材との出あわせ方〉
○ 保健室来室データを基にしたイラストを提示したことで,けがの状況についてイメージし
やすくなり,手当や対応の方法について考えさせることができた。
〈手だて② 伝え合いかかわり合いを深める教師の働きかけの工夫〉
○ ブレインストーミングは,意見を活発に出させて伝え合うためには有効であった。友だち
との意見の交換から,自分の意見との違いに気付かせ,正しい手当の方法を知ろうとする意
欲をもたせることができた。
○ 話合いや実習の中で,保健室来室時の子どもたちの手当の様子などを話しながら助言する
ことで,より自分のこととして意識させ,伝え合いを活発に行わせることができた。
● ブレインストーミングで相反する考えが出た時に,専門的な助言が必要であった。
〈手だて③ 振り返りの場の充実〉
○ 授業後に,傷口の砂をきれいに洗い流してから来室する子どもが増えていることから,学
習の振り返りで自分の考えを整理したことが日常生活に生かされている。
● 学習の成果を学校全体へ広めるために,発育測定や保健室来室時などあらゆる機会を活用
して学校教育全体を通して学校保健活動を推進していきたい。
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