第19号

2010年 7月
平群里山クラブ会報 第19号
事務局;平群町緑ヶ丘6-16-4
http://web1.kcn.jp/katikati/
田中
勇蔵
℡0745-45-4598
子どもたちを自然の中へ
今年の梅雨は異常に雨が多く蒸し暑い日々が続きます。これもま
た、地球温暖化の一つの表れかも知れません。先日、中央ヨーロッ
パ5カ国のツアーに行ってきました。旧東欧諸国が中心の旅でした
が、どこまでも続く広大な小麦畑と点在する森が繰り返し車窓から
眺められる景色は、ゲルマンやスラブの諸民族が数千年にわたって
森を切り開き畑地を作り出していった結果であったことがよく理解
できました。ここでは「森の中に町がある」のです。ベルリン、ポ
チェコのチェスキー・クルムロフの街並
ツダム、ドレスデン、マイセン、プラハ、ザルツブルグ、ウィーン、
ブラチスラバ、ブタペストなど大都市も小都市も例外なく森と緑の街路樹に囲まれています。この地域では長
期にわたって森を破壊してきた彼らの反省からなのでしょうか、環境問題にはきわめて敏感で先進的です。質
実さと洗練さを兼ね備えた生活がうかがえました。帰阪して電車の車窓から眺める街並に緑はなく「汚い」の
一言に尽きます。なさけなく悲しい思いと、アジア的といわれる人口過密と貧しさを改めて認識させられまし
た。想えば、小学生のころから、大阪の下町の長屋住まいであった私は、緑を求めてよく淀川に出かけたり、
千里山や六甲に行きました。淀川のわんどでエビを取ったり、芦屋川の松林でセミの声を聞くのが楽しみでし
た。その延長上にこのカチカチ山があるのだなーと思います。
さて、この夏も子どもたちにカチカチ山を開放しましょう。子どもの頃の体験は私のように50になっても
60になっても根っこのように心のどこかに住み着いています。子どもを自然の中へ連れて行けば、彼らはそ
こで何かをつかむのです。里山の自然から得る物は彼らにとって宝物のように大切な物になるでしょう。クラ
ブでは3つのイベントに取り組みます。スタッフとしてみなさんの参加・協力をよろしくお願いします。
事務局
「コープ竜田川の夏祭り」
竹・木工クラフト
夏休み「親子自然体験教室」
■7月19日(祝日)10:00~12:00
■集合 9:30 コープ竜田川店玄関
内容: 水鉄砲、竹笛、ネームプレートその
他
子どもが作る手助けをする、多数来場が予想
されます。
昼食は星野会長別宅で
■7月25日(日)10:00~13:00
■集合 9:00 カチカチ山
内容: 水鉄砲・竹笛製作、やぎの餌やりと
カチカチ山散策
すでに連日参加申込みが殺到しています。応
対が大変です。
スタッフは弁当持参でお願いします。
田中勇蔵
「カチカチ山で大冒険」
夏 休 み ボ ラ ン テ ィ ア ス ク ー ル
(平群町社会福祉協議会主催)
■8月4日(水)9:00~3:30
■集合 9:00 カチカチ山
内容: 孟宗竹伐採、カレー皿作り、
カレー作り、自然観察、ヤギの餌やりスタッ
フは竹皿作りや炊飯、自然観察の指導をする。
多数必要
昼食はカレーをお相伴します。
※多くのスタッフが必要です、手伝ってくださる会員のかたは事務局まで連絡下さい。
私とカチカチ山 №12
園庭の「くすのき」は子ども達に人気の遊び場。登ったり、眺めたり、話しかけたり…。
自然の木々は子ども達に安心と冒険心を与え、時には新しい発見を導いてくれる。
カチカチ山を初めて訪れたのは二年前のちょうどこの時期。主人や子ども達の後を追
いながら、たどり着いたその先には素晴らしい景色。「平群町にもこんな場所があるん
だ」と眺めていた矢先、子ども達の騒ぎ声!近くのクヌギで「クワガタ」を見つけたらしい。
見晴らし台に登って発見した様で、とにかく大喜び!その光景を見ながら…幼稚園に
もこんな場所有ったらな」とカチカチ山に思いをはせた。
主人は年に 1~2 度、ヒノキ山や隣接の竹林で山仕事のお手伝いをさせて貰ってい
る。作業は予想以上にキツイようだが(笑)終わった後はとても爽快らしい。山の空気、
作業の厳しさ、異世代交流?どれもが新鮮で勉強になるそうだ。
稚園庭にある「くすのき」
私はその頃、PTA 活動に携わり(いわゆる本部)毎日毎日、忙しい日々を過ごしていた。
根元には砂場が広幼がっている
本来、子どもは「家庭・学校(幼稚園)・地域」の中で育つもの。しかし最近の PTA 事情はちょっと難しい。外で働く親
が増え続け、学校行事に参加するだけで精一杯。忙しくて PTA 活動(つまり行事手伝いや安全見守り、環境活動)
にまで手が届かない。また親達自身が 集団で取り組む事に苦手意識を持ち、他人との関わりを避けたがる。そん
な現実があるからこそ、このカチカチ山の様なゆったりとした時間の中で四季の移ろいに目を留め、小鳥の鳴き声に
耳を澄ませ、自然な形で人と環境に関わって貰いたい。
さて、今年に入って娘が通う幼稚園で「一人一世帯運動」が始まった。従来の役員制度が廃止され、一家庭に一
人以上(父や母、祖父母など)が子ども達の育ちに協力する取り組みである。この取り
組み、母親だけでなく、実は父親達の出番に大きな期待が寄せられている。
ここ数年、父親が育児に参加する動きは世間でも大きな広がりを見せている。いわ
ゆる「ワークライフバランス」である。仕事中心でやってきた父親像はもはや過去のもの。
「イクメン」と言う心地よい言葉もよく耳にする。仕事と家庭(育児)を両立させてこそ、素
晴らしい人生を送れる。父親の育児活動に助成金などで支援する地方自治体もある
様だ。幼稚園の父親達にもこの動きに少し便乗して貰おうと、現在秘かに計画中。里
山クラブさんのアドバイスを頂きながら、父親達の手で里山の廃材をうまく使って子ど
も達に何か素敵な贈り物を届けることが出来れば、と思う。
星野代表が先日話された言葉が心に残った。強制的に進めるのではなく「ちょいボ
ラ(ちょっとボランティア)が長続きする秘訣」だと。忘れずに心に留めおきたい。
北 和恵(菊美台)
山羊レポート
写真:左
写真:中
写真:右
5 月 29 日 腰麻痺の予防注射
ヤギに詳しい獣医さんがみつかりました。蚊が媒体となって、糸状虫
(フィラリア)がヤギの体内に入り神経症状をおこす。特にザーネン種
は、予防をしなければこの病気の出る確率はとても高いようです。
6 月中旬 避暑小屋完成
本宅は閉鎖式で西日が当たります。暑さと湿気は苦手なので開放式高床別
荘にしました。
7月上旬 斜面の草刈作業中 先祖は急峻な山岳地帯の出身。この程度の斜面なんてへっちゃらです。
ヤギがかちかち山にやって来てから 3 カ月が経ちました。今まで(県アニマルパークでは)飼育員・入園者から特定の餌
を貰っていたせいか、園内の草はほとんど食べませんでした。専門家に相談すると、ヤギは3・4 日は餌なしでも充分堪え
られると言う事。早速試して見たところ 2 日後には食べ始めました。
ついつい過保護になりがちですが、愛情を持って、ある程度の放任は必要なのでしょう。(紀)
かちかち山博物誌 (18) 西風
「昆虫少年」は今では絶滅危惧種になってしまった。 れる。はるかに小型
であるにしても。命
ひと昔まえ、例えば小学校の夏休みの宿題として、男
名者は随分、凝った
の子は「ムシ集め」女の子は「押し花」といった課題
のだろう。
が定着していた頃には、1学級に2-3人はムシ好き
ただ、学名として
がいた。だいたいチョウ採集から始めるのだが、病膏
の Zephyrus は使わ
ずると他のムシに転向、カミキリムシ、オサムシ、ト
ンボ、蛾など、それぞれの好みに応じて専門化してい
れ て お ら ず 、
った。
Theclini と総称され
勿論、チョウ専門、というグループも残るが、年齢
る。「早い者勝ち」
とともに興味が限定されたりしてなかなか大変であ
という国際命名規
る。例えば、モルフォチョウだけ、とかトリバネチョ
約のせいか。さらに、個々の種になると属名が変わっ
ウ(鳥羽蝶)以外、興味なし、とか。それらは財力が
てしまう。例えば、日本には 25 種類が生息するが、
ないと入手できないので、普通の「昆虫少年」には高
14 属にも分けられて、何が違うのか素人には分りに
嶺の花だが、日本の山野で採集できる種類でも、限定
くい。学問的には意味があるのかもしれないが(ない
コレクションの対象には十分なる。高山チョウ専門と
かもしれない)、全部をまとめて Zephyrus でいいで
か、タテハチョウ全部とか、区分けには事欠かない。
はないか、と思う。
その中でも、
「ゼフィルス」
(ミドリシジミ族のシジミ
*
チョウ)は人気が高くて「昆虫少年」なら一度は魅せ
カチカチ山には5種のゼフィルスがいるだろう、と
られるチョウである。蝶集めの「はしか」のようなも
2009 年はじめに予測した(カチカチだより 13 号)
。
のか。
アカシジミ、ウラナミアカシジミ、オオミドリシジミ、
「ゼフィルス」とは「西風」を意味する。もともと
ミズイロオナガシジミ(写真)、それに奇少種のウラミ
はギリシャ神話に登場する西風をつかさどる神の名
スジシジミ(殺風景な名前だがきれいなチョウであ
前で、若くてハンサムな青年として描かれている。西
る)。
風は生命のもと、と考えられたためらしい。「東風ふ
2010 年 6 月、これらのうちアカシジミとミズイロ
かば匂いおこせよ梅の花」と詠われたように、日本で
オナガシジミを確認した。星野一子氏によると、小屋
は東風が春の便りになる。東西で逆の発想なのが面白
脇のクヌギにふらりと飛んできたという。年に一度の
い。
訪問客はのんびり休んだのち、また、ふらりと飛び去
ゼフィルス族のチョウにも美麗種が多く、雄の翅表
った(佐野 浩)。
が金緑色に輝くグループはモルフォチョウに比肩さ
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この木なんの木?
カチカチ山の木シリーズ・・・第19回
かやの木(イチイ科 カヤ属)
カヤの実は日本版アーモンドという話を聞いてから急に榧の木に興味が沸い
てきた。
信貴山には樹齢なんと 1500 年の榧の木がある。カヤの実からは上質の食用油が
とれ、材は最高級の碁盤や将棋盤になる。信貴山寺で会席料理を食べた際、この
カヤの実(正確にはその中の種子)を調理したものが出たが、今ひとつおいしい
とは思わなかった。
なんでも種子を 1 週間灰汁の中に漬けて、アクを抜いてから、
皮をとり、炒って食べるとおいしいそうである。何年か前のこと、ある友人に吉
野にカヤの木があるというので連れて行ってもらった。急峻な崖っぷちに、へば
りつくように枝を広げた 2 メートルたらずのカヤの木があった。見ると紫がかっ
た茶色いやわらかい丸い実が付いている。確か堅い実だったはずだが、と思いながら食べて見たが、まずくてす
ぐはきだしてしまった。後になって考えたところ、これはイヌガヤの実だったのだと思う。同じカヤでも、これ
は役に立たないイヌの名がついている。しかしこのイヌガヤ(イヌガヤ科 イヌガヤ属)から取れる油は、古代
に朝鮮から伝わり、その明るさと冬凍らないという優秀さから、今でも京都の神社では灯明として使われ、吉野
の山奥の村でもつい最近まで明かりに使われていたとか。非常に重要な木だったのだ。
その昔、美人の誉れ高き小野の小町が、言寄る深草少将に 100 日間通う難題をかけ、日ごとにカヤの実の数
で数えたところ、カヤの実が99個になった99日目の大雪の日に少将は力尽きて倒れてしまった。カヤのみぞ
知る哀れなイケメン・・・
カチカチ山には、まだ小さいが平群のある神社から挿し木したカヤの木が育っている。この木に実が付くのは
何年先だろうか。
(星野 一子)
ならコープから環境保全活動助成金4万円を頂きました
今年は、環境ボランティアの20団体に同額で助成されました。
ちなみに、わがクラブの応募テーマは
――「家畜を導入した里山再生・保全の新しい試み」
山羊の飼育・放牧による除草や生命環境教育の実施――
です。が・・・・・ヤギは気高く高貴な生き物です。人になつきもしないし媚もしません。
エサの好き嫌いの激しいこと。武士は食わねど・・ですか。身は痩せ細ってきているのに。
(勇)
7月までの活動実績
4・21(水) 大釜川上流ハイキング道整備(広域農道から上)、
14名
4・28(水) ヒノキ林間伐、クヌギ苗植林
9名
4・29(木)(みどりの日) 探鳥会(カチカチ山周辺、竜田川)
9名
5・ 9(日) 的場雑木林整備、自然観察道補修、竹炭用孟宗竹伐採 11名
5・12(水) ヒノキ林間伐
6名
5・19(水) 櫟原街道整備
6名
5・26(水) 的場竹林整備、草刈
10名
6・ 2(水) カチカチ山整備、窯補修、
11名
6月 5(土) 大和高原茶摘
11名
6・ 9(水) 竹炭焼き、草刈、中野山林青梅収穫
11名
6・13(日) 桃源郷草刈
雨天中止
6・16(水) カチカチ山整備、中野山林青梅収穫
9名
6・23(水) ヒノキ林下草刈
雨天中止
6・30(水) 桃源郷草刈
7名
7・ 4・5(日、月) 七夕用笹の切り出し、搬入(プリズム平群)
2名
7・ 7(水) 馬鍬淵竹薮伐採 (11 日の定例は 19 日になります) 10名
定例活動は毎週水曜日と毎月第2日曜日
毎週木曜日はログ倉庫作りです。
いずれも9:30~3:30
7月以降の活動予定
7月
14(水) 19日の準備、水鉄砲用の真竹伐採、
カチカチ山草刈
19(海の日) コープたつたがわの夏祭りに出展、
竹細工その他
21(水) 25日の準備、里道・カチカチ山整備
25(日) 親子自然体験教室(県全域対象)
28(水) 4日の準備、自然観察道整備
8月
4(水) 子ども自然体験教室(社協主催)
8(日) ヒノキ林草刈、桃源郷草刈
11(水) 盆休み(桃源郷草刈)
18(水) 桃源郷草刈
25(水) カチカチ山東斜面草刈
♪♪
馬鍬淵竹薮伐採(写真)
上;作業前 下;作業後
9月
1(水) カチカチ山整備、5日の準備
5(日) 森の音楽会(今年は月がありません、
観月会はなし)
8(水) ヒノキ林除伐、下草刈り
12(日) 的場雑木林整備
15(水) 的場雑木林整備
22(水) ヒノキ林間伐
29(水) ヒノキ林間伐
10月
6(水) 的場雑木林整備
10(日) 自然観察会・昼食会
13(水) 椎茸小屋整備、椎茸原木並べ
20(水) ヒノキ林間伐
27(水) ヒノキ林間伐
森の音楽会 出演者募集中!
編集後記***
じめじめと暑い鬱陶しい梅雨。田圃の稲や作物にこの雨の季節は必要だと思いながら、ついつい出るのはぐちばかり。
山のヤギ達はやっとカチカチ山生活になれてきたようで、少しは仕事をし始めました。山の住民はわれらとばかりヤギが
大きな顔をしています。梅雨が開けたら下界?に比べ少しは涼しいはず、風のある日は軽井沢です。ぜひカチカチ山にお
出かけ下さい。(星野 一子)