EPTJ Newsletter from DKN Research

#0616、2006年4月16日
今週の話題
大同合併の時代
この2、3週間に、業界大手企業の合併のニュースが続いています。大きなところで
は、フランスの通信機器メーカー大手のアルカテルと米国のルーセント、台湾のディス
プレイメーカー大手のAOUとクォンタ・ディスプレイなどがあげられます。中には公式に
は買収といっていても、実質は合併という件名がかなりあります。
この業界大手の大同合併をみていると、おもしろいほどに共通性があることに気が
つきます。合併する企業は、合併による事業の効率化、相乗効果によるビジネスの拡
大を想定しています。よくいわれるのは、1+1=2ではなく、3にも4にもなるということ
です。ところが、各企業の思惑にもかかわらず、実際には逆になっていることが多いよ
うです。つまり、1+1<2になってしまうのです。典型的な例としては、パーソナルコン
ピュータメーカーのHP社とコンパック社の合併、EMSメーカー大手のサンミナ社とSCI
社が上げられます。また、私が多少なりとも関係した米国の例では、フレキシブル基板
メーカーのイノヴェックス社とADフレックス社の合併、シェルダール社とIFT社の合併な
どがあります。いずれも、合併後の売上げは両社の合計よりも小さくなり、極端な場合
には倒産にまで至っています。
改めて、大同合併の背景を分析してみますと、共通していえるのは、これらの企業
の合併前の経営状態があまり良くないことです。あとで振り返ってみれば、ほとんど破
綻状態で、最後の打開策として大同合併を思いつくようです。また共通しているのは、
多くの日本メーカーがやっているような、全社的な改善活動にはあまり熱心でないこと
です。プレス発表などの派手なパフォーマンスはよくやるのですが、トップマネージメン
トの単独行動であることが多く、地道な改善活動はあまりやっていないようです。もっと
も、会社経営が順調にいっていれば、大同合併などの非常手段など必要ないのでしょ
う。
特に米国の場合、合併後は効率化の名目で大規模な人員削減を行うことが一般的
です。となると、一般従業員としては(かなりの上級の管理職まで含めて)、自分のジョ
ブ確保が最大関心事で、社外でのリクルート活動を始めるのは当たり前です。地道な
改善活動や拡販活動どころではなくなっているのが実情です。これでは合併による相
乗効果など期待できないのはあたりまえです。残念ながら、アメリカの若いスマートな
経営者の多くは、従業員の心理を読む余裕はないようです。
また、大同合併の時代に共通しているのは、その業界全体の状況があまり良くない
ことです。業界大手は、同じような問題含み経営状況を抱えているので、経営者同士
はお互いに同じような心理状態にあり、話をしやすいのかもしれません。
さて、最近始まった今回の大同合併の時代は、何か新しい状況が出て来るのでしょう
か、それともこれまでと同様にジリ貧の始まりでしょうか。
沼倉研史 DKN リサーチ
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今週のヘッドライン
2006年4月16日
1. IEK(Industrial Technology Intelligence, Taiwan) 4/7
2012年までに、日本や欧米向け自動車用エレクトロニクス製品の出荷額は185
3億米ドルに達すると予測。
2. ECS(台湾のマザーボード大手)4/10
Tatung s 社のデスクトップPC事業の買収により、第1四半期の売上げは前年比3
倍の229億台湾ドルに。
3. フレクストロニクス(シンガポールのEMS大手)4/7
中国珠海工場の生産を大規模に拡張する計画。150名の管理職を募集中。
4. AUO(台湾のディスプレイメーカー大手)4/10
同じ台湾のクォンタ・ディスプレイを22億米ドルで買収。今後液晶ディスプレイ業界
の寡占化が加速か?
5. マニア(ドイツのプリント基板検査装置メーカー)4/10
2005年は1510万ユーロの赤字。1290万ユーロのリストラコストが足を引っ張
る。
6. ソレクトロン(米国のEMS大手)4/10
中国の蘇州工場で、医療機器の品質管理規格であるISO13485−2003の認証
を取得。
7. メンター・グラフィックス (プリント基板設計ソフト大手)4/10
大型プリント基板の設計時間を大幅に短縮する、新しい設計ソフト、XtremeAR を
商品化。
8. CILS (Computer Inprintable Label System LLC) 4/10
750°F(約400℃)の高温にも耐える、プリント基板用識別ラベルを開発。
9. ディジタイムス(台湾の業界メディア)4/11
台湾の大手マザーボードメーカーの第1四半期の出荷量は、前年同期比で26.
9%増の1071万ユニットに。
10.イソラ(欧州/米国の基板材料メーカー大手)4/11
米国ロジャース社からの特許侵害通告に対して、同社の高速基板用銅張積層板I
S640シリーズは違反していないとして、販売を継続することを発表。
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11.アサステック(台湾のマザーボード大手)4/12
2005年の出荷額は前年比で42.3%増の3558億台湾ドルに、
しかし、税引後の利益では14.4%増の193.5億台湾ドルに留まる。
12.EDN(台湾の業界メディア)4/12
市場価格の下落が甚だしく、第2四半期において、台湾の液晶パネルメーカーはA
UOとCMO以外は赤字になる見込み。
13.EDN(台湾の業界メディア)4/12
台湾のマーザーボードメーカー大手4社の第1四半期の出荷は、前期比で10.
5%の減少、第2四半期はさらに10∼12%減少を予測。
14.UP Media Group (米国の基板業界メディア)4/11
3月26日から6日間に渡って PCB Design Conference West を開催。セミナー、展
示会とも参加者は前年を上回る。
15.ディジタイムス(台湾の業界メディア)4/12
韓国のLGフィリップスの値下げ方針に対して、台湾の液晶ディスプレイメーカーは
さらなる値下げの対応策。
16.China Economic Service (台湾のメディア)4/5
台湾メーカーが昨年EUに輸出した製品の10%にあたる6億25百万台湾ドルは、
RoHS規制をクリアできないと分析。
17.Nanotechnologies Inc. (米国の電子材料メーカー)4/12
ナノテク材料に特化する材料メーカー、Energetic Materials and Products Inc. を
分離独立させる。
18.サムスン電子(韓国のエレクトロニクス最大手)4/13
高密度メモリーチップのスタックトパッケージ用に、小さいフットプリントの新しいW
SP技術を開発。
19.IPC(米国)4/12
2007年2月20∼22日に開催される、「IPC EXPO」技術コンファレンスの論文
募集を開始。
20.EEタイムス(米国の業界メディア)4/12
世界のHDD業界は、2005年に生産額(23%増)の新記録を作ったが、2006年
はスローなスタート。
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21.Nantero Inc. (英国のベンチャー企業)4/12
2007年には、カーボンナノチューブを使った、新しいメモリーデバイスを実用化の
見込み。
22.Commercial Times (台湾の業界メディア)4/13
半導体サブストレートメーカーは、需要が増大して来ているために、先に発表した
値下げを取り消し。
(注)このヘッドライン・ニュース・レターは速報性を重視するために、若干の誤訳や数
字の変換に誤りがある場合もございます。ご了承下さい。
DKNリサーチ
栄泰産業株式会社
最近の興味深い文献から
Articles of DKN Research
1. Digest Version of the 2006 Global Projection for Flex Circuit DKN Research,
March 2006. http://www.dknresearch.com/GPFC2006.html
2. 「よくわかるICパッケージのできるまで」沼倉研史&J.ヴァーダマン、日刊工業新聞
社、2005年12月発行、1800円
Easy understanding Series, How to make IC packages , (Japanese only), Jan
Vardaman & Dominique Numakura, Nikkan Kogyo Shinbun, December, 2005, 1800
yens.
3. 「先端実装インサイド、No.12.高密度実装への道(4)新しいICパッケージ」沼倉研
史、実装技術、2006年2月号
The latest semiconductor package, Part IV , Dominique Numakura, Electronics
Packaging Technology, February, 2006
4. Gppd Things in Small Packages: Exploring japaqn s PCB Industry , Roy Sakelson
and Dominique Numakura, CircuiTree, April 2006
「高密度フレキシブル基板の最新技術動向」沼倉研史、電子材料7月号別冊、実装技
術ガイドブック、2005
The Latest Technology Trends of the High Density Electronic Circuits , Dominique
Numakura, Denshi Zairyo, the Special Edition of Jisso Guidebook, July, 2005
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5. Technical Roadmap of High Density Interconnects with Flexible Substrates in
Portable Electronics , Robert Turunen & Dominique Numakura, PCB Design
Conference West, Mar. 10, 2005, Santa Clara
From the Major Industry Magazines
1. The Next Generation of Insoluble Anodes , Stephane Menard, CircuiTree, April
2006.
2. How Nanotechnology Applies to Electronics , Alan Rae, Circuits Assembly, April
2006.
3. Traceability Data Integrity-Challenges and Solutions , Mitch DeCaire, SMT, March
2006
4. UL Approval and Rigid-Flex Bob Burns, Printed Circuit Design & Manufacturing,
April 2006.
5. Vacuum Bonding Technology , Wolfgang Reinert, Advanced Packaging, March 2006
6. 2006 Technology Forecast , electronic design, January 12th, 2006
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