1 今週の話題 寂しいお知らせ ちょっと寂しいお知らせをしなければなり

#1008、2010年3月14日
今週の話題
寂しいお知らせ
ちょっと寂しいお知らせをしなければなりません。それは、このニュースレ
ターの最後の部分に付いていた業界雑誌に関する情報についてです。今週から、
この情報を削除することにいたしました。気が付いた方がおられるかもしれませ
んが、この2、3ヶ月の間、ほとんど新しい論文の紹介がなされていません。な
にしろ、このところ紹介したいような論文が見当たらないのです。
欧米では、1990年代にIT産業の急発展に伴い、エレクトロニクスに関
する業界雑誌の創刊が相次ぎました。それに伴って従来からの雑誌の内容も充実
しました。これらの雑誌は企業の広告が収入源で、読者には無料で配布されてい
ました。したがって、雑誌のかなりの部分が広告で占められていましたが、業界
動向に関する情報や先端技術に関する論文も多数掲載されていて、メーカーのエ
ンジニアやビジネスマンにとっては、非常に価値のある情報源となっていました。
学会のコンファレンスや技術雑誌が、高価で一般人には取っ付きにくかったのに
比べれば、これらの業界雑誌は、申し込みさえすれば送られてくるので、業界で
活動している企業のエンジニアやマネージメント、さらにはマーケティングの担
当者の多くが読者になっていました。学会の雑誌は、学術的には権威のあるもの
の、その分だけ小難しく、一般企業人の目に触れることが少なかったのに比べる
と、業界雑誌ははるかに身近なものでした。無料とはいうものの、掲載される論
文が扱っているテーマは、企業人にとっては日常的なもので、そのまま現場で役
に立つものが少なくありませんでした。
このように活躍していた業界雑誌にとって、2001年に起きたITバブル
の崩壊は厳しい冷や水となりました。広告主の予算が削られたために、プリント
基板関連の雑誌は、軒並みにページ数が減らされました。論文執筆者に対する
「薄謝」はほとんどゼロになってしまいました。それでも、大部分の雑誌は何と
か出版を継続してきていました。掲載される技術論文の質も最低限度のレベルは
維持していました。
その息の根を止めることになったのが、2008年秋以来の世界同時不況で
す。多くの企業で広告予算が凍結され、雑誌出版社は廃業の瀬戸際まで追い込ま
れてしまいました。大規模な人員整理や、雑誌の統廃合などが行われ、配布され
る雑誌はパンフレット並みに薄くなってしまいました。もう技術論文など掲載す
る余裕などないのでしょう。
世の中はネット時代とのことで、業界紙もネットを通じての配信、ホームペ
ージでの掲載などに移行してきていますが、内容の質の低下は否めません。出版
社といえども、利益を追求する企業ですから、採算が取れないとなれば、整理せ
ざるを得ないのでしょうが、これまで雑誌が、業界の発展にしてきた寄与を考え
ると、何とかならないものかと思います。このような業界雑誌出版状況は日本で
1
も同じです。皆さんも他人事だと思わずに、何かサポートの知恵を出してくださ
い。
DKNリサーチ、沼倉研史(マネージング・ディレクター)
今週のヘッドライン
2010年3月14日
1.台湾プリント基板メーカー、2月の出荷状況
メーカー
APCB
ASRock
Avalue Technology
Best Friend Technology
Career Technology
Cheer Times Enterprise
Compeq
Dynamic Electronics
Flexium
GMI Technology
Ibase Technology
ITEQ Corp
Jetway Information
Joinsoon Electronics
K-Bridge Electronics
Kintech Electronics
Nan Ya PCB
Ralink Techology
Raydium Semiconductor
Taiwan PCB Techvest
Taiwan SMT
Transcend Information Inc.
Tripod Technology
Unitech PCB
USI
Wus Printed Circuit
Yufo Electronics
2010年2月
(百万台湾ドル)
184.0
660.9
117.0
52.8
317.2
53.8
1,052.1
800.9
210.4
766.6
109.7
322.1
599.9
106.2
56.7
57.8
2,363.7
556.0
687.8
1,006.8
340.1
2,344.3
215.0
530.1
1,701.2
258.5
75.3
2.Foxconn(台湾のEMS大手)3/3
2
前年同月比
+102.6%
+14.6%
+11.4%
-26.2%
-12.9%
-5.1%
-12.0%
+58.0%
+43.1%
+2.8%
+21.3%
+12.9%
-9.6%
-22.5%
-35.3%
+8.9%
+56.8%
+102.0%
+89.0%
+49.9%
+76.8%
-8.2%
+10.0%
+5.8%
+11.7%
+36.4%
-12.9%
アップル社の新製品 iPad の生産は順調に進んでおり、3月は70万ユニット
を組み立ての見込み。
3.Fulltech Fiber Glass(台湾の基板用材料メーカー)3/4
ガラスエポキシ用ガラスファイバーの溶解炉の能力がほぼ満杯の状況に。市場
の材料価格も上がっているために、早急に次の溶解炉を建設の計画。
4.UMC(台湾の半導体メーカー大手)3/4
12インチウェハー対応の生産能力を強化するために、新規に1000名のエ
ンジニアを雇用する計画。
5.ABI Research (米国の市場調査会社)3/8
世界のRFIDの市場は、2010年の53.5億ドルから、2014年には
82.5億ドルに成長と予測。
6.Gartner(米国の市場調査会社)3/8
2010年において、世界の半導体メーカーの設備投資は大幅増に。パッケー
ジ組立て関連では、75.5%増の42億ドルに。
7.Dell(米国のPCメーカー大手)3/9
経費削減のために、台湾のデザインセンター(従業員600名)で要員の1
0%をレイオフへ。中国のR&Dは強化へ。
8.IC Insights(米国の市場調査会社)3/10
2010年における世界のICチップ市場は、前年比27%増の2530億ド
ルに達すると予測。
9.Flextronics(シンガポールのEMS大手)3/11
カナダのスマートフォン大手のRIM社の新しいモデル Curve 8520 をブラジ
ルで量産立ち上げへ。
10.Pennsylvania State University (米国)3/11
大きさが100mmのグラフェンウェハーの合成に成功。様々なRFデバイ
スに必要とされる高速トランジスタの実現に大きな一歩。
11.Mississippi State University(米国)3/10
電極に特殊なカーボン材料を導入することにより、飛躍的に充電時間を短縮
できるリチウムイオンバッテリーを開発。
12.Shuen Der Industry (台湾リードフレームメーカー)3/11
3
リードフレーム用テープ材料の社内生産のために、日本の三菱伸銅から技術
移転を受けることで合意。三菱伸銅は資本参加。
13.MIT(米国の工科大学)3/10
特殊な微細構造ファイバー構造を導入することにより、プラスチック樹脂の
熱電導性を飛躍的に向上させる技術を開発。
14.Huawei(中国の通信機メーカー大手)3/12
近日中にハンガリーの2工場が稼働へ。2011年には15億ドルの売上げ
を目指す。ヨーロッパ、ロシア、北東アフリカ市場を想定。
15.iSuppli(米国の市場調査会社)3/11
2010年における世界のHDD市場は、前年比で18%増の277億ドル
に達すると予測。
16.EPIC (European Photonics Industry Consortium) 3/10
新しい市場調査報告書「LEDs: The 2009 Market Review」を発表。高輝度L
ED、OLEDの成長が際立つ。
17.Graphic(英国の基板メーカー)3/11
最新四半期の売上げは、前期比で15%増加。2008年に中国で稼働させ
た合弁事業が寄与。
18.Advanced Circuits(米国の基板メーカー)3/12
航空宇宙用に多層基板を短納期で製作しているプロトタイプメーカー、
Circuit Express 社を1640万ドルで買収。
19.DIGITIMES(台湾の業界メディア)3/12
2010年2月における台湾大手フレキシブル基板メーカーの出荷額は予想
を上回る20∼30%の大幅減少。
20.DIGITIMES(台湾の業界メディア)3/12
マザーボードメーカーの生産体制の拡大に伴い、MCLL、ソリッドコンデ
ンサ、LANコネクタなどの部品供給不足が深刻に。
(注)このヘッドライン・ニュース・レターは速報性を重視するために、若干の
誤訳や数字の変換に誤りがある場合もございます。ご了承下さい。
DKNリサーチ
栄泰産業株式会社
4
最近の興味深い文献から
Articles of DKN Research
1. New 「よくわかるプリンタブル・エレクトロニクスのできるまで」沼倉研史、
2009年1月、日刊工業新聞社、
Introduction of the Manufacturing Process for Printable Electronics
(Japanese) , Dominique Numakura, January 2009, Nikkan Kogyo Shinbun
2.
Advanced Screen Printing Process
-Practical Approaches for
Printable & Flexible Electronics , Dominique Numakura, 3rd IMPACT
(International Microsystems, Packaging, Assembly and Circuits Technology
Conference) and the 10th EMAP (International Conference on Electronics
Materials and Packaging)
October 2008, Copy of the paper and power point charts written in
English are available by request.
3.「ロール・ツー・ロール(RTR)によるフレキシブル基板の製造可能性と
課題」沼倉研史、2008年3月、情報機構
Roll to Roll Production of Flexible Circuits, Possibilities and
Issues
Dominique Numakura, Joho Kiko, Tokyo, March 2008 (Japanese
only)
4.
Coombs
Printed Circuits Handbook, 6th Edition, Part 15-Flexible
Circuits , Dominique Numakura, McGraw Hill, New York, September, 2007
5.
Screen Printing Process for High Density Flexible Electronics ,
Robert Turunen, Dominique Numakura, Masafumi Nakayama and Hisayuki
Kawasaki, IPC Printed Circuit Expo/APEX and the Designers Summit, April
2008.
6. New 「プリンテッド・エレクトロニクスの展望」沼倉研史、電子材料、20
09年6月号、
The Prospects for the Printed Electronics , Dominique
Numakura, June 2009, Electronic Parts and Materials
7. New
Thick-Film Circuits with Silver Via Holes , Hisayuki Kawasaki,
Masafumi Nakayama, John Rufiange and Dominique Numakura, Printed Circuit
Design & FAB, July, 2009.
8. New 「高精度多層印刷技術の動向と部品内蔵基板への展開」(沼倉研史)
5
Electronic Journal 第 183 回 Technical Symposium,
Technology
Trends of Advanced and Multiple Printing Technologies for Embedded
Components Circuit Boards , Dominique Numakura, July, 2008, Electronic
Journal
9. New 「DKNリサーチの新技術、プリンタブル・エレクトロニクスと超薄型
フレキシブル基板用コネクタについて」沼倉研史、2009年4月、PCB00
7、IPC・EXPO特別インタビュー、 New Printable Electronics and
Ultra Thin Flex Connector Developed by DKN Research , Robert Turunen
and Dominique Numakura, Live Interview of PCB 007, during IPC APEX EXPO,
April 1, 2009
http://iconnect007.net/sendstudionx/link.php?M=26458&N=324&L=2748&F=H
10. New 「フレキシブル•エレクトロニクス徹底解説」、沼倉研史、電子ジャー
ナル、2009年10月
Industry Trends of Flexible Electronics ,
Dominique Numakura, October 2009, Electronic Journal
11. New「連載、沼倉研史の見る・知る・わかるプリンタブル・エレクトロニク
ス」、沼倉研史、エレクトロニクス実装技術、2008年12月∼2009年1
1月
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