#0737、2007年10月7日 今週の話題 TPCAショー2007 恒例のTPCAショーが台北のワールドトレードセンターで、10月3日か ら3日間開催されました。台湾は中国を含めたアジアのエレクトロニクス産業の センターになりつつありますので、最新の情報を集めるには格好の機会と思いで かけました。ちょうど 台風15号が近づく不安定な天候の下でしたが、なかな かみどころの多い3日間でした。 ちょっと数えてみたところでは、会場にブースを持った会社や団体は300 を越えており、昨年に比べて大幅に増えています。このため、これまでのビルの フロアだけでは間に合わなくなり、100社ほどのブースが隣のビルのフロアに 押し出されることになってしまいました。押し出された会社の中には、材料メー カーや主要なプリント基板メーカーが多かったせいか、来訪者の密度からいえば、 第2会場の方がにぎわっていたかもしれません。 TPCAショーのひとつの特徴として、世界のプリント基板業界の情報が充 実しているということがあげられるかと思います。今年も主催者であるTPCA が準備した市場情報のコーナーには、かなりの人々が集まってさかんにデータを 写真に納めていました。なにしろ台湾だけでなく、プリント基板を生産している 主要な国や地域のデータが短時間で得られるのですから。興味深いのは、TPC Aが出すデータは、台湾のプリント基板メーカーの生産額が台湾分と中国分と区 別して出してくることです。これが中国側が出すデータや米国辺りの市場調査会 社が出すデータでは、区別が曖昧で、台湾の生産分まで中国分としてカウントし ていることがあります。(もっとも、中国の公式な立場では、台湾は中国の一部 ですから、中国分としてカウントすることは、それなりにスジが通っているのか もしれません。) TPCAは市場データの出版だけでなく、技術的な文献の出版もかなり活発 に行っているようで、かなりの点数の技術書が書籍コーナーに並んでおりました。 中クラスの出版社などよりは多いかもしれません。売れ行きもなかなかで、何冊 もまとめて購入する人々が列を作っておりまして。このあたりにも、台湾のプリ ント基板産業の裾野の広さが感じられます。もっとも、技術書の中には日本や欧 米の翻訳に近いものも少なからずあるようですが。 それなりに活況を呈していた今年のTPCAショーですが、不幸だったのは、 やはり台風15号が近づいていたことです。3日とも曇りがちで、時々強い雨に 降られました。今年は近いとはいえ、会場が二つのビルに分断されましたので、 雨の降る中を他の会場に移動するのはかなりの難儀でした。金曜日になると、台 風の台北近郊への上陸の可能性が高くなり、来訪者は少なくなり、展示している 会社の方も浮き足立ってきました。TPCAの事務局は予定を30分繰り上げて、 4時半には閉会とし、その日の内に全てのブースを撤収するように、指示をだし 1 ました。この判断は正しかったようで、翌日の土曜日には台風が台北の東側に上 陸し、ほとんどのフライトはキャンセル、新しい新幹線も止まり、とても通常の 経済活動を行える状態ではなくなってしまいました。 ところが、このような環境でも台北地域では生産を続けている中規模のプリ ント基板メーカーがありました。私はその会社のオフィスでミーティングをして いたのですが、社長を含めて50名以上の社員が仕事をしていました。その内の 大部分はビニールの雨合羽にヘルメットという出で立ちだけで、暴風雨の中を小 さなオートバイに乗って出勤してきているのです。午後になると、風雨はさらに 激しくなってきたので、さすがに社長は従業員に安全のためにタクシーで帰宅す るように指示を出していました。それでも私と打ち合わせをしていた営業部長は、 短納期品の配達のために隣の県に出かけていきました。なぜ台湾のプリント基板 メーカーやEMSメーカーが強いのか、その理由を垣間見たような思いがしまし た。 沼倉研史 DKNリサーチ 今週のヘッドライン 2007年10月7日 1. Cirexx International (米国の基板メーカー)10/1 硬質基板に加えて、フレキシブル基板、リジッド・フレックスのMILの 認定を取得。航空宇宙機器用途で積極展開へ。 2. Flextronics(シンガポールのEMS大手)10/1 かつてのEMS最大手の、米国ソレクトロン社の買収を完了。合計の 売上げは、台湾のホンハイ社に次ぐ規模。 3. Sun Microsystems (米国のワークステーション大手)10/1 全社的な合理化策の一環として、デンバーの事業所で130名の従業員を レイオフに。 4. イノヴェックス(米国のフレキシブル基板大手)10/1 コスト削減のために、本社機能を含めて、全社の組織を2008年の 1月までにミネソタからタイの Lamphun に移転。 5. DDi (米国の基板メーカー大手)10/1 航空宇宙関連機器の標準であるAS9100:2004−01の認定を 取得。 6. IPC(米国業界団体)10/1 2 8月の北米プリント基板業界のB/Bレシオは1.06まで上昇。 硬質基板の受注が増加したものの、出荷が減少したため。 7. ディジタイムス(台湾の業界メディア)10/2 チンプーン、ユニテックなどの大手基板メーカーは、自動車関連の 用途へのプリント基板の出荷を増大。 8. ハンスター(台湾の基板メーカー大手)10/2 廉価品ノートPC向けのプリント基板の受注が増えており、第4四半期の 生産は増大の見込み。 9. Frontline PCB (米国の基板メーカー)10/2 プロトタイプのプリント基板の納期を大幅に短縮する新しい 生産管理ソフト「InPlan Flex」を発表。 10. Flextronics(シンガポールのEMS大手)10/2 ソレクトロン社が所有していたフランスの Canejan 工場(従業員 540名)を閉鎖する計画。250名をレイオフへ。 11. JMT SK (韓国の基板メーカー)10/3 サムスン電子の液晶テレビ工場のために、スロバキアでプリント基板 工場を創業へ。 12. モトローラ(米国の大手エレクトロニクス大手)10/1 産業用プリント基板事業(Embedded Communication Computing business,従業員1100名、前年売上げ5億ドル)を、米国の Emerson 社に売却。 13. ディジタイムス(台湾の業界メディア)10/3 キャリアテクノロジー、フレキシアムなどの台湾大手フレキシブル基板 メーカーは、第4四半期には繁忙になることを予測。 14. イノヴェックス(米国のフレキシブル基板大手)10/3 大手のHDDメーカー(シーゲートではない)から、 AFC(Actuator Flexible Circuits)が認定される。 今年から量産用に納入開始の予定。 15. ガートナー(米国の市場調査会社)10/3 フレクストロニクス社によるソレクトロン社の買収は、世界の EMS業界の再編の引き金になる可能性があると分析。 3 16. 17. ECS(台湾のマザーボード大手)10/4 9月のノートPCの出荷は30万台で、8月から50%増大。 Flextronics(シンガポールのEMS大手)10/4 医療機器メーカーの Insulet Corp から、糖尿病患者用のインシュリン 注射装置の組み立てを受注。 米国ノースカロライナ州フランクリン郡の工場(650名)を閉鎖へ。 18. iSupply(米国の市場調査会社)10/4 大手EMSメーカーは、これまでの中国中心から、ベトナム、 マレーシアなどの東南アジアに生産基地をシフトする動き。東欧も候補。 19. Perlos(フィンランドの部品メーカー)10/5 インドの Sriperumbudur にノキア社向けに携帯電話用ハウジングを製造 する工場を建設へ。3千万ドルを投資。770名を雇用の計画。 20. コンパル(台湾のエレクトロニクスメーカー大手)10/5 ベトナムで5億ドルを投資してノートPCの工場を建設する計画。 2009年には80万台、2010年には650万台を製造、 輸出の予定。 21. PPT(台湾のICサブストレートメーカー大手)10/5 当初の予想より需要が大きく、フリップチップサブストレートの 生産能力はやや不足気味。 22. モーレックス(米国のコネクタメーカー大手)10/5 バックプレーンのインターコネクト事業について、 タイコエレクトロニクス社とセカンドソースの提携。 23. ホンハイ(台湾のEMS最大手)10/6 台湾の電子機器用ガラス材料メーカー、G-Tech Optoelectronics の 株式の42.44%を8億1千万台湾ドルで取得。 (注)このヘッドライン・ニュース・レターは速報性を重視するために、若干の 誤訳や数字の変換に誤りがある場合もございます。ご了承下さい。 DKNリサーチ 栄泰産業株式会社 最近の興味深い文献から 4 Articles of DKN Research 1. 2006 Global Material Projection for Flex Circuit October, 2006. http://www.dknresearch.com/Products.html DKN Research, 2.「カーエレクトロニクス用プリント配線板入門ーフレキシブル基板」沼倉研史、 日刊工業新聞社、2006年6月発行、2400円 Introduction for the Printed Circuit Boards of Car Electronics, Flexible Circuits , (Japanese only), Dominique Numakura, Nikkan Kogyo Shinbun, June, 2006, 2400 yens. 3.New「先端実装インサイド、No.29.高密度実装への道、携帯電話」沼倉 研史、実装技術、2007年8月号 The latest electronics package, Part IXXX, Cellular Phones , Dominique Numakura, Electronics Packaging Technology, June, 2007 4. Five Year Projection of the Global Flexible Circuit Market Robert Turunen, Dominique Numakura and James J. Hickman, The Board Authority, Volume 7, August, 2006 5.New「フレキシブル基板材料」沼倉研史、電子材料、 2007年4月号、 工 業調査会、 Flexible Circuit Materials , (Japanese only) Dominique Numakura, Denshi Zairyo, April, 2007 6.「最新ポリイミド材料と応用技術高機能フレキシブル基板と材 料̶」沼倉研史、シーエムシー出版、2006年8月 Leading Edge Material and Application of Polyimide (Materials for the Advance Flexible Circuits) , Dominique Numakura, CMC publication, August, 2006 7. Business Trends and Technology Trends of the HDI Flexible Circuits Roadmap for the Ultra High-Density Advanced Flexible Circuits , Dominique Numakura, KPCA, October 31, 2006 From the Major Industry Magazines 1. Using Physics of Failure to identify Root Cause of Printed Board Failure , Craig Hillman, CircuiTree, August, 2007. 5 2. The Real Lesson of the Xbox Failures Assembly, August, 2007. 3. Printing Miniaturized Components SMT, August, 2007 , Mike Buetow, Circuits , Clive Ashmore and Jeff Schake, 4. BGA Escape/Routing Patterns for Fine-Pitch Devices , Syed Wasif Ali, Printed Circuit Design & Manufacturing, July, 2007. 5. Optimizing the Wire Bond Process July, 2007 7. Under the Hood, How Techonline, May 2007 , Paul Reid, Advanced Packaging, d They Do That? 6 , presented by EE Times and
© Copyright 2024 Paperzz