EPTJ Newsletter from DKN Research

#0614、2006年4月2日
今週の話題
米国メーカーのデリバリー信頼性
この2回ほど、米国メーカーの品質保証について辛口のコメントを書いてきましたが、
悪のりして、デリバリーの信頼性について、私の経験を紹介してみたいと思います。
私が米国の基板メーカーの日本市場への窓口として、ある自動車部品メーカーに
売り込みをかけており、ほぼ話がまとまりつつあった時に、会社はユーザーとの間で売
買契約締結するように指示してきました。米国では標準的なものだといわれたその契
約書のドラフトのある項目を見て、私は思わず目をむいてしまいました。そこに書いて
あった内容は、「ユーザーは、納入されたロットの良品の数が、注文数に対してプラス
マイナス10%の範囲であれば、受領しなければならない。」というものでした。いいか
えれば、「いくらか不良品は混入しているが、注文数よりは多く入れてあるので、客の
ほうで検査して良いものだけ使ってくれ。足りなかったら次のロットから補充してくれ。も
し、良品数が注文数よりも多かったら、次の注文ロットに充当して、代金は払うこと。」と
いうことになります。このような売買契約を、日本の自動車業界が受け入れるわけがあ
りません。私はこの契約書はにぎりつぶし、全く別のものを提案することにしました。
このような契約書は、実際のビジネスや品質保証のことをしらない弁護士が作成す
るので、米国市場の現場でこのような状況が普通におこっているとはいいませんが、根
底にそのような意識があることは否定できないでしょう。
この会社は、欧米の自動車部品メーカーに大量のプリント基板を納入していました
が、カスタマーサービス部門には部品実装後に不良と判明した製品が大量に返品され
てきていました。しかし、優秀な弁護士が作成した売買契約書のおかげで、この会社は
ユーザーの損失となった部品や実装の手間賃を補償する義務はなく、不良となったプ
リント基板を代納するか、不良品数を差し引いた製品数で請求書を出せばよいことに
なっていました。ただし、不良の原因究明と改善対策書の提出は必要で、少なくとも一
人の品質保証担当者は、その書類の作成に日夜追われていました。
担当者になぜ返品が多いのかと問いただしたところ、「この製品は作るのが難しくて、
工程の不良率が高く、どうしても検査を抜けてユーザーまでいってしまうものが出てく
る。」との答えでした。「不良率が高いとわかっていて、ユーザーのスペックを満足させ
るような検査をなぜしない。」と追求しましたが、そんなことは考えてもみなかったという
ような顔をしていました。
ユーザー側にも責任の一端はあるかもしれません。それだけプリント基板に起因す
る不良があるとわかっていながら、受け入れ検査もせずに、そのまま部品実装を行い、
部品と組立の手間で膨大な損失を出し続けていたのですから。しかし、このような関係
が長続きするわけもなく、このプリント基板メーカーは、この自動車関連のビジネスで、
一度も利益を出すことなく撤退をすることになりました。(現実にはユーザーからの注文
が他社に移ったようです。)
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沼倉研史
DKNリサーチ
今週のヘッドライン
2006年4月2日
1. ディジタイムス(台湾の業界メディア)3/24
台湾のMLCC市場は、このところ供給能力の不足が伝えられているが、第2四半
期に製品が値上がりする可能性は少ない見込み。
2. ECS(台湾マザーボード大手)3/23
主要ユーザーである米国HP社のパーソナルコンピュータの組立プロジェクトを同
じ台湾のホンハイ社に奪われる。
3. Reed Business Information (米国調査機関)3/24
米国における各種電子部品の納期は、昨年夏から連続して伸びる傾向に。プリン
ト基板も、高難易度品で納期が長期化。
4. ソレクトロン(米国のEMS大手)3/24
スエーデンの携帯電話機メーカー、エリクソン社に対する製品納期を4分の1に短
縮。
5. VdL (ドイツのプリント基板業界団体)3/24
12月のドイツプリント基板業界のB/Bレシオは、前月から0.14ポイント下がっ
て1.17に。依然として高いレベル。
6. エルテック(イスラエルの基板メーカー)3/27
ヨーロッパの医療機器メーカーから、新規に160万ドルのリジッド・フレックスを受
注。
7. ナムタイ(香港/カナダのEMS大手)3/27
工場拡張のために、中国深圳の Guangming Hi-Tech Industrial Park に130万平
方フィートの土地を入手。
8. ディジタイムス(台湾の業界メディア)3/28
台湾の受動部品の需要は、第2四半期も好調を予測。ただし、マイクロソフト社の
ヴィスタの発売の遅れがPCの需要に対して懸念材料。
9. 台湾のマザーボードメーカー 3/28
ヨーロッパでのマザーボード需要を喚起するために、大手のアサステック社とMSI
社が販売価格を5%の値下げ。
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10.ディジタイムス(台湾の業界メディア)3/28
中国政府が、中国国内で稼働している硬質プリント基板メーカーの製造設備に課
税する方針。フレキシブル基板用であれば軽減との情報も。
11.フォックスコン(台湾のEMS最大手)3/28
中国の昆山工場の能力拡大のための1780万ドルの追加投資の申請が認可され
る。
12.キングボード(香港の基板材料メーカー大手)3/28
2005年の売上げは、前年比で85%増の131億香港ドル。利益は14億4千万香
港ドル。
13.エルコテック(フィンランドのEMS大手)3/24
インドの携帯電話組立工場で、能力増強のために、第2組立てラインを4月末、第
3組立てラインを2、3ヶ月の内に立ち上げへ。
14.オプトサーキット(インドの基板メーカー)3/28
インドのバンガロールに、新たに高機能プリント基板製造ユニットを稼働へ。
15.デュポン(米国化学メーカー最大手)3/28
米国とアジアにおいて、ドイツのアグファ社のプリント基板用フォトツールフィルム
の販売について提携。
16.キングボード(香港の基板材料メーカー大手)3/28
プリント基板材料の製造能力強化のために、今年中に15億ドルを投資する計画。
17.アサステック(台湾のマザーボード大手)3/29
9月から、中国、上海の工場で生産される携帯電話の量産出荷を開始の計画。
18.ナンヤPCB(台湾の基板メーカー大手)3/29
インテルなどの大手ユーザーにおいて、フリップチップ用基板の納入遅延問題を解
消するために、設備能力を大幅に強化する計画。
19.ZVEI (ドイツの業界団体)3/29
2006年のドイツのエレクトロニクス産業の成長率を情報修正し、1650億ユーロ
の売上げを見込む。
20.フォトサーキット(米国基板メーカー大手)3/29
昨年の倒産から、半年で再建に成功。850名の従業員の雇用も確保。
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21.IPC(米国)3/29
2月の北米プリント基板産業のB/Bレシオは1.13で、依然として高いレベルを
維持。フレキシブル基板が牽引。
22.Mフレックス(米国のフレキシブル基板メーカー)3/30
シンガポールのフレキシブル基板メーカー大手のMFSテクノロジー社を買収する
方向で交渉中。
23.Frost & Sullivan (市場調査会社)3/30
ヨーロッパのSMT装置の市場規模は、2012年に5億5千万ドルに成長すると予
測。
(注)このヘッドライン・ニュース・レターは速報性を重視するために、若干の誤訳や数
字の変換に誤りがある場合もございます。ご了承下さい。
DKNリサーチ
栄泰産業株式会社
最近の興味深い文献から
Articles of DKN Research
1. “The Global Business Trends of the Flexible Circuits, Direction to the High-Density
Advanced Flexible Circuits”, Dominique Numakura, KPCA Magazine, August, 2005
(Korean language)
2. 「よくわかるICパッケージのできるまで」沼倉研史&J.ヴァーダマン、日
刊工業新聞社、2005年12月発行、1800円
“Easy understanding Series, How to make IC packages”, (Japanese only), Jan Vardaman
& Dominique Numakura, Nikkan Kogyo Shinbun, December, 2005, 1800 yens.
3. 「先端実装インサイド、No.12.高密度実装への道(4)新しいICパッ
ケージ」沼倉研史、実装技術、2006年2月号
“The latest semiconductor package, Part IV”, Dominique Numakura, Electronics
Packaging Technology, February, 2006
4. 「高密度フレキシブル基板の最新技術動向」沼倉研史、電子材料7月号別冊、
実装技術ガイドブック、2005
“The Latest Technology Trends of the High Density Electronic Circuits”, Dominique
Numakura, Denshi Zairyo, the Special Edition of Jisso Guidebook, July, 2005
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5. “Technical Roadmap of High Density Interconnects with Flexible Substrates in
Portable Electronics”, Robert Turunen & Dominique Numakura, PCB Design Conference
West, Mar. 10, 2005, Santa Clara
From the Major Industry Magazines
1. “How to Design with Flex in Mind”, Mark Finstad, CircuiTree January, 2005.
2. “Integrating AOI and Selective Soldering”, Mark Cannon, Bob Klenke and Phil
Zarrow, Circuits Assembly, February, 2006.
3. “Paste, Stencils and Process Control”, Armin Rahn, SMT, February. 2006
4. “Flex Circuit, Manufactruing in Box?” Tom Woznicki, Printed Circuit Design &
Manufacturing, February 2006.
5. “The IC Package”, An-Yu Kuo and Zhen Mu, Advanced Packaging, February, 2006
6. “2006 Technology Forecast”, electronic design, January 12th, 2006
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