Ⅲ 研修への参加記録 体育科 器械運動の技能を効果的に高める指導の在り方 -跳び箱運動における補助運動の工夫- 千葉大学教育学部 木更津市立木更津第一小学校 Ⅰ 都築 光 研究主題について 学習指導要領の体育科の目標には, 「生涯にわたって運動に親しむ資質や能力の基礎を育てること」 が示されている。しかし児童の日々の生活運動の減少は体力や技能の低下を引き起こし,運動実践に 対する意欲についても二極化の傾向が認められるようになっている。そこでこの現状を受け,日々の 体育授業の中で児童が身体を合理的に動かす感覚をつかみ,一人一人が技能の向上を実感できるよう な学習指導の在り方について検討していきたい。 指導要領に示されている運動領域の中でも,器械運動は特に日常生活の中では経験することができ ない領域であり,「『できる』『できない』がはっきりしている運動である」と言われるのは,児童の 運動経験の多寡や,調整力水準の高低により,技の達成度に大きな違いが表れてくるからである。こ の器械運動の一つである跳び箱運動は,助走から踏み込み,踏み切り,第1空中局面,着手,第2空 中局面,着地に至るまでの各運動局面別に児童のつまずきが出現するため,児童の技能習得の水準や, 身についている動きの質や種類が捉えやすい運動であるといえる。 この跳び箱運動における児童の大きな課題は,踏み込み局面から着手局面にかけての動きが寸断さ れるために,助走の勢いをその後の空中局面につなげられないことにある。全身の動きを合理的に連 動させて,踏み切りから着手までの動きをつなげていくためには,特に必要とされる動きを抽出し, 繰り返し練習することのできる補助運動を,学習の中で積極的に用いていくことが効果的であると考 えた。 そこで本研究では,跳び箱運動の中でも開脚跳びの技能を効果的に習得させるために必要な指導内 容を体系的に準備し,指導計画として位置づけ,その効果的な指導の展開方法を確立する。児童の技 能水準を把握し,つまずいている点を類型に分けることによって指導内容を焦点化していく。それを もとにして,跳び箱運動に必要とされる動きを習得するための補助運動を工夫し,指導の中で積極的 に用いることにより,それぞれの児童の技能段階やつまずきに対してどのような効果があるのかを明 らかにしていく。 Ⅱ 研究目標 跳び箱運動に要求される多様な動きができる身体の育成を目指し,効果的な指導を展開するための 指導内容・指導方法を確立する。 Ⅲ 研究の実際 1 研究仮説 跳び箱運動の技能を効果的に習得させるための指導内容・指導方法を確立して,補助運動を重点的 に取り入れた指導を展開すれば,技能を高めることができるだろう。 2 研究内容・方法 (1)研究主題に関する基礎研究 (2)分析方法の研究 (3)検証授業の実施 ア 対象 木更津市立木更津第一小学校 第4学年3組(26名) イ 期間 平成23年10月11日~10月25日 ウ 単元 器械運動「跳び箱運動(開脚跳び)」 (4)結果と考察 - 129 - Ⅲ 研修への参加記録 3 研究の具体的内容 (1)研究主題に関する基礎的研究 ア 指導要領に示された器械運動の指導 学習指導要領は,「器械運動の学習指導では『できる』・『できない』がはっきりした運動である ことから,すべての児童が技を身につける喜びを味わうことができるよう,自己の技能の程度に応 じた技を選んだり,課題が易しくなるような場や補助具を活用して取り組んだりすることが大切で ある。」としている。このことから,児童が跳び箱を跳ぶことができるようになるというだけでな く,技を練習していく過程で技を身につける喜びを味わうことが重要である。つまり技に必要な合 理的な体の動かし方がわかった時の喜びを学習指導の中で保障していくことが大切である。そのた めに動きの習得に適した練習内容や場などを工夫していく必要がある。 イ 体力要因としての調整力の位置づけ 廣橋らは,「調整力をSkill(技能)としての調整力とPhysical resource(身体資源)としての 調整力に分け,前者をスポーツ技能などの専門的技能,後者を運動や作業を身につけるための学習 能力や人間の適応能力」としてとらえている。金原(1972)はこのSkillとしての調整力を「それ ぞれの運動課題を効果的に達成するためのエネルギーの効果的な使い方」であるとして,Skillと しての調整力の向上を運動技術の上達としてとらえている。また廣橋らも「学校体育における動き つくり,技能つくりの指導内容は調整力つくりの指導内容そのものであるにもかかわらず,現在体 育運動に広く用いられている動きや技能は基礎行動体力としての一要因である調整力を高めるため の要求に十分に応えられるものにはなっていない」と指摘した。これらのことから,学校体育や発 育期体育の中でSkillとしての調整力を高める指導内容を検討し,積極的に技能練習の手段を組み 込んでいくことは,多様な動きができる身体を育成していくために必要であると考える。 ウ 跳び箱運動における運動局面 中島(1979)によると,跳び箱運動は①助走 ・②踏み込み・③踏み切り・④第1飛躍局面・ ⑤着手・⑥第2飛躍局面・⑦着地の7つの局面 から成り立っており,足(踏み切り),手(着 手),足(着地)の交互性のある非循環的構造 を持つとしている(図1) 。また金子(1987) に .. ...... 図 1 跳 び 箱 運 動 の運 動 局面 よると,「助走と両足踏み切りは反転跳びでも 回転跳びでも必ず行われる共通技術,基本技術」であり,着手の局面についても「どの跳び方にも 共通な技術認識」であるとしている。開脚跳び以外の技への適応も視野に入れ,この基本技術にあ たる部分は手脚を円滑に連動させることができるように重点的に指導していきたい。 (2)補助運動の有効性について 跳び箱運動が他の運動に比べて用具やけがに対する抵抗感や恐怖心を持ちやすい運動であるの は,児童が日常生活の中で身体を腕で支えたり腕で突きはなして台を跳び越すような運動をほとん ど経験していないためである。この運動経験の差によって,運動のできばえや技能の習得,運動に 取り組む意欲に大きな違いが生じる。このことから跳び箱運動における各局面の運動感覚を補う工 夫や,下位児の運動負荷が軽減する場づくりを行う。さらに,児童の技術習得時のつまずきに対応 したり,跳び箱運動に必要な運動の感覚を補ったりするためには,単元を通して個に応じた補助運 動を帯状にドリルとして取り入れることで,跳び箱運動に必要な動きを習慣化して扱う方が効果的 であると考える。 資料1 動作分析の観点 (3)動作分析について 児童の技能の向上は動作分析の観点(資料1)の4つを動作 分析ソフトによって数値化し,比較することで評価した。特に ③は踏み切り直後から着手までの腰の移動速度が速いほど助走 の勢いが跳躍に生かされていると見なした。④は着手時の脚が - 130 - Ⅲ 研修への参加記録 水平に近いほど大きな第1飛躍局面ができていると見なした。 (4)指導計画 表1 指導 計 画(6時 間扱 い) 指導計画(表1)では,跳び箱運動に必要な運 1 2 3 4 5 6 動感覚を獲得するために,補助運動を毎時間10分 静的健康観察・準備運動・用具の準備 間できるよう設定した。単元の前半では,運動の 跳 び 箱 運 動 の 各 運 動 局 面 に つ な が る と い う 補 助 運 動 ポイントとなる技術を身につけ,動きの修正や改 善を図るために分習を多く取り入れ,後半では改 善された部分をつなぎ合わせるために全習法によ る練習の割合を増やしていけるよう単元構成を考 えた。また必要に応じて補助運動を組み込んだ分 習法的方法を用いるようにする。児童の課題ごと にグループを編成し,それぞれの課題に合わせた 補助運動を練習に取り入れて指導を行う。 (5)検証授業の実際 ア 単元名 器械運動「跳び箱運動(開脚跳び)」 資料2 調整力テスト イ 対象 第4学年3組(26名) 10秒間で設定された ウ 実技テストについて 枠内から前後左右に ○調整力テスト①JSテスト(敏捷性,巧緻性) 何回両足ジャンプで ②開閉脚跳び(協応性,巧緻性) きるかを測定する。 ○開脚跳びの技能レベルを確認する JSテスト エ 単元の中で扱う補助運動 20秒間で決められた 調整力テスト(資料2)や開脚跳びの技能評価 リズムの手足を動か の結果から,踏み込みから着手までの局面で,動 す跳躍運動を行う回 きのリズムが乱れたり運動が途切れたりする児童 数を測定する。 が多かったため,単元の中で扱う補助運動は,リ 開閉脚跳び ズミカルな助走からの踏み切り,踏み込みから踏 み切りをつなぐ動きの定着,突きはなし動作の習得を中心に構成した。また腕による支持の経験が少 なかったり,筋力が弱かったりする児童も存在したため,手押し車や腕立て突きはなしなどの腕支持 運動も補強運動的に取り入れた。 オリエンテー ション め あ て 別 準備運動の 仕方 用具の準備や 片付けの仕方 跳び箱運動に つながる補助 運動の仕方 め あ て に 沿 っ た 段 階 別 練 習 グ ル ー プ の 個 人 の つ ま ず き 決 定 や 技 能 の 問 題 点 発 表 会 個 人 の め あ て 設 定 全 習 法 に よ る 技 能 の 向 上 めあてに 沿 っ た 段 階 別 練 習 評 価 自 分 の 技 能 の 問 題 点 の 確 認 試しの運動 評 価 の 仕 方 個人のめあて再設定 の確認 整理運動 資料3 片付け・整理運動・静的健康観察 単元で主に扱った補助運動 ①ケンケンパ 助走から踏み込み,踏み切 りまでのリズムを習得させ るために行う。両足踏み切 りに合わせて腕を後ろから 前に振り上げることを意識 させ,手と脚が円滑に連動 するように繰り返し行う。 ②うさぎ跳び 両腕を後ろから前に振り上 げて床に着手し,手首を返 して床を突き放す。両足に よる踏み切りと着手までの 間に空中局面が生まれるよ うに意識させる。腰が頭よ り高く上がるようにする。 - 131 - ③セフティマット跳び上がり うさぎ跳びの動きと壁の突 き放しの動きを開脚跳びの 動きに近づくように合わせ た運動。跳び箱に恐怖感を 感じる児童に対して,思い 切った踏み切りと突きはな しを行わせるため用いる。 Ⅲ 研修への参加記録 ④壁の突き放し ⑤馬跳び 1~2歩の助走からロイタ ー板を用いて両足踏み切り を行い,両腕を突っ張って 壁を突き放す。踏み込み局 面から踏み切り局面に移る 際に意図的に両腕を振り上 げ,着手の動きにつなげる。 開脚跳びに類似した動きと して行う。個人の技能に合 わせて難易度の調節が容易 である。恐怖感を感じる児 童にとっても取り組みやす い。1~2歩の助走と両足 踏み切りを必ず行わせる。 ⑥跳び下り 台や跳び箱の上から高く跳 び上がって,床に跳び下り る。着地時に両膝を柔軟に 曲げるのと同時に両腕を振 り下ろさせ,膝と腕の両方 によって緩衝動作を行うこ とを意識させる。 (6)検証授業の分析と考察 ア 実態調査の結果と考察 「跳び箱運動は好きですか」の質問では,事前調査では42%が好きと回答していたが事後調査 では62%に増加した。また,やや嫌いまたは嫌いと回答していた児童は事前調査の23%から8% に減少した。「跳び箱運動はこわいですか」の質問に 12 こわくない ついては,こわいまたは少しこわいとする回答が34% 17 2 から8%に大幅に減少した(図2)。器械運動は個人 あまりこわくない 3 の技能差や経験差が大きく,「できる」「できない」 3 事前 どちらともいえ… 4 がはっきりする運動であるために,技能の面でも意欲 事後 6 少しこわい 1 の面でも二極化しやすい。しかし開脚跳びの動きの要 3 こわい 1 素を含んだ補助運動を学習に多く取り入れることで, 0 5 10 15 20 意欲の面で消極的になっていた児童の多くが「跳び箱 (人) を跳ぶ前の運動がわかりやすくて楽しかった」「今ま 図2 跳び箱運動はこわいですか でこわがっていたけれどやってみると簡単だった」 「わ (人 ) からなかったことが練習しているとだんだん身につい 事前 事後 てきたのでよかった」などの感想を持つようになった。 18 16 15 このことは,補助運動を用いたことによって開脚跳び 13 11 9 9 の動きに慣れて,児童が「できそうだ」 「こわくない」 7 7 4 0 0 という感覚を持ち始めたためと推察できる。 事前実技テストで開脚跳びのつまずきの傾向(図3) をみると,踏み切りから着手までのつまずきが大きく なっていることがわかる。それが連続する後半の空中 図3 開脚跳びのつまずきの傾向比較 局面や着地局面で運動の乱れや中断につながってい る。この運動の乱れや中断のことを事前調査で児童は「難しい」として表現した。そこで単元中の 練習では,運動を後半の突きはなしや着地局面にまでつなげていくために,助走から着手までのつ まずきをまず解消していくことを,分習の中心として重視した。 具体的には,助走から片足の踏み込みを経て両足の踏み切りに至るまでの,全身の動きのリズム を補助運動①で習得させた。また補助運動③④によって腕の振り上げ動作を脚の動きと同調させ, 助走局面と踏み込み・踏み切り局面の融合を図った。補助運動②③④を用いることで,着手局面で の支持感覚や突き放し感覚を身につけさせた。これら一連の動きを全てつなげて開脚跳びの動きに 近づけるために,補助運動⑤を用いて練習を行った。 - 132 - Ⅲ 研修への参加記録 イ 各種データの結果と考察 JSテスト p < . 0 5 開閉脚跳び p < . 0 5 18 (ア)調整力テストの変容 16 16 15.5 14 それぞれの種目について事前と事後の平均値を 15 12 14.5 10 回 回 14 比較したところ,JSテストと開閉脚跳びの結果 数 8 数 13.5 13 6 に5%水準で有意な差が認められた(図4)。今 12.5 4 12 2 11.5 回単元の中で扱った内容は開脚跳びの技能の習得 0 事前 事後 事前 事後 や運動感覚の獲得をねらったものであるため,身 図4 調整力テストの平均比較 体の協応性や巧緻性を測定する開閉脚跳びの平均 値が向上したことは,取り組みが有効であったことを示唆していると考えられる。 (イ)開脚跳び技能の変容 ①踏み込みの距離 1 .8 m 開脚跳び技能の推移(図5)によると,上位児 1 .6 1 .4 と中位児は単元の中盤から後半にかけて,それぞ 上位児 1 .2 れの観点の数値変化が少なくなっている。これは 中位児 1 下位児 0 .8 開脚跳びの補助運動を繰り返し行うことによって, 0 .6 0 .4 助走から突き放しまでの全身の動きが定着し,定 第 1時 第 2時 第 3時 第 4時 第 5時 第 6時 常化されてきたためである。 ② 踏み 切 りの高さ 踏み込み距離が向上したのは,補助運動③④で m 0 .6 / 0 .5 s 行った両腕の振り上げ動作を踏み込み動作と踏み 0 .4 上位児 0 .3 切り動作に同調させる練習が効果的であったため 中位児 0 .2 下位児 と考えられる。これにより助走と踏み込み動作・ 0 .1 0 踏み切り動作を合理的につなぐ動きの感覚が身に 第 1時 第 2時 第 3時 第 4時 第 5時 第 6時 つき,助走の勢いがそのまま踏み切りの高さと身 ③踏 み 切りから着手までの移動速度 5 体の移動速度の向上につながったと推察できる。 m / s 4 .5 一連の動作が円滑になることで,より高い跳躍と 4 上位児 大きな空中姿勢を実現することができるようにな 中位児 3 .5 下位児 ったといえる。 3 2 .5 下位児については,片足で踏み込み両足で踏み 第 1時 第 2時 第 3時 第 4時 第 5時 第 6時 切る動作が定着してきた。不安定だった踏み込み ④着手時の脚の角度 度 75 距離が徐々に一定の距離に近づき,移動速度も安 70 65 定してきた。この踏み込み局面と踏み切り局面に 60 上位児 55 存在したつまずきが解消に向かった理由としては, 50 中位児 45 下位児 40 補助運動③⑤の効果が考えられる。補助運動③の 35 30 脚の動きをさらに分解して与えることで,下位児 第 1時 第 2時 第 3時 第 4時 第 5時 第 6時 にとっては単に走ることの延長にすぎなかった踏 図5 開脚跳び技能の推移(抽出児比較) み込み動作と踏み切り動作が,後に続く着手の前 資料4 上位児の変容例 段階としての意味を持ち,踏み込みと踏み切りの 混同が解消されたためである。習得した踏み込み と踏み切りは,補助運動⑤によって開脚跳びの一 連の動きの練習で定着に向かったと考えられる。 特に変容の大きかった児童について事前と事後を 比較を試みた結果,上位児は踏み込みの距離が3 資料5 下位児の変容例 倍に,踏み切りの高さは約5倍に向上した(資料 4)。下位児は片足踏み切りから両足踏み切りへ の移行に加えて,着手する手の軌跡が大きくなり, 踏み切り後の空中姿勢が生まれたことが明らかに なった(資料5)。 - 133 - Ⅲ 研修への参加記録 (ウ)形成的授業評価からの考察 形成的授業評価による変化を追ってみると,どの 観点も第3時までは上昇しているが,その後,第5 時に向けて下降していく(図6)。第2時で「学び 方」得点が下がっているのは補助運動を用いた学習 の仕方が十分に理解できておらず,効率的に活動で きなかったためで,指導内容の修正を行った第5時 にも同じことが起きている。「成果」が第4時に低 下したのは,児童の技能の習得段階と提示した補助 運動の内容がかみ合っていなかったためで,第5時 に指導内容を段階に合わせて修正してからは,再び 図6 形成的授業評価の結果 「成果」観点は向上を始めている。 (エ)運動有能感からの考察 児童の運動有能感の3観点を事前と事後で比較し 19 た(図7)。これによると,「身体的有能さ」観点 18 と「統制感」観点の値は5%水準で有意に向上した。 17 身体的有能さ また「受容感」観点の数値は低下しているが,5% 16 統制感 水準では有意に低下しているとはいえないという結 15 受容感 14 果になった。補助運動を学習に積極的に取り入れた 13 ことによって児童が開脚跳びに必要な動きを習得で 12 事前 事後 き,その結果,児童に「自信を持ってできる」「や ればできるかもしれない」という自信や自己肯定感 図7 運動有能感の変容 の高まりが生まれ,それが学習の成果や意欲の向上 につながっていったと考えられる。また,「受容感」観点が上昇しなかったのは,単元の中に児童 相互による評価活動や話し合い活動の時間を積極的に取り入れなかったためであろう。技能を習得 ・向上させることを最優先に授業展開を考えたが,相互評価も児童が自分の技能の習得状況を客観 的にとらえる手段となり,互いの励まし合いや教え合いが児童の意欲向上に向けた重要な要素とな りうることを示唆している。 Ⅳ 研究のまとめ(成果・課題) 1 成果 (1)未習得の動きを獲得する手段として補助運動を取り入れたことにより,開脚跳びの技能や巧緻 性や協応性の調整力に有意な向上が認められた。 (2)手脚を連動させる補助運動の導入により,上位児は踏み込みから着手までの動きがさらに大き くダイナミックに,下位児は両足によってしっかりと踏み切りを行うことができるようになった。 2 課題 (1)複合的に起きるつまずきに対応するために,局面と局面をつなぐ補助運動や支持跳躍の感覚を つくる補助運動について,主運動の特性をとらえながらさらに工夫改善する必要がある。 (2)跳び箱運動の基本技術となる動きの体系化をさらに詳細に行い,各種生活運動や体つくり運動, 器械・器具を使っての運動遊びの中で,意図的に指導に組み込む必要がある。 【主な参考文献】 ○廣橋義敬・佐藤道広・望月公雄 著『調整力の開発法に関する研究(1)』 千葉大学教育学部研究紀要第35巻 第2部 1988年 ○廣橋義敬 『体力トレーニング論』千葉大学教育学部大学院講義資料 ○廣橋義敬 著『改訂 スポーツ・体育学概論』株式会社こくぼ 2006年 ○金子明友 著『教師のための器械運動指導法シリーズ1.跳び箱平均台運動』大修館書店 1987年 - 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