お薬通信 NO.7 皆様の中には便秘がちで、下剤を使用している方もいらっしゃると思います。一口 に便秘に対する下剤といってもいくつかの種類があり、それぞれ作用する過程が異な っています。下剤は「内容物に水分を含ませて軟化させる」「腸の運動を促進する」 「腸の内容物を粘滑させる」等の作用により排便を促します。今回は、便秘と下剤に 関するお話です。 ★ <便秘とは?> 一般的には排便間隔が延長、糞便量が少なく(健常人 150g程度)、3 日以上便通の ない状態をいう。 ・特に苦痛がなく日常生活を営める場合 → すぐに治療の対象となることはない。 ・腹痛や膨満感、残便感など不快感がある場合 → 治療の対象となる。 ★ <病態面からみた便秘の分類> 分類 器質性便秘 原因は? 症状 大腸癌・炎症・腸閉塞・腸管 疾病により様々 癒着など 大腸の緊張低下→蠕動運 ①弛緩性便秘 動減弱→水分が吸収され 腹部膨満が主 (大部分を占める) 便が硬くなる 機能性便秘 (慢性便秘) ②痙攣性便秘 痙攣性収縮が生じ便の通 腹痛・残便感あり。便は兎糞 過が障害される 状、排便はスムーズではない ③直腸性便秘 便意を意識的にこらえる →排便反射が抑制される 便が直腸内に多量にとどまる ※器質性便秘では治療は原疾患に向けられ、機能性便秘では薬の前に生活習慣・食生活全般を見 直すことが必要となる。下剤は補助的に使用するのが望ましい。 ★ <日常生活で注意することは?> ① 朝食を必ずとり、朝食後の排便習慣を身に付ける。 →大腸の運動は早朝覚醒時が最も亢進しており、食物摂取による 結腸への刺激が加わると便が直腸に移行し直腸壁の刺激により便意が生じる。 ② 繊維の多い食事をとり、便量を増やす。 →大量の食物残渣は大腸粘膜を刺激し内容物の移送運動を高める。 ③ 精神面でゆとりのある生活を心がける。 →腸管運動は微妙な神経支配をうけており、精神的な緊張は腸管の運動を抑制する。 ★<下剤(当院採用薬)の分類> Ⅰ;塩類下剤(マグミット錠) 浸透圧により腸管に大量の水分を保持し、内容物を増大させやわらかくする。 腸管 軟化 × 水分吸収抑制 Ⅱ;大腸刺激下剤(プルゼニド、ラキソベロン液、ダイオウ) 耐性を生じやすく、増量 腸管粘膜・神経を刺激して腸管運動を促進させる。 刺激 をしないと便通がなく なることもあるため、で 腸管 きる限り連用は避けた 方が望ましい。 刺激 Ⅲ;浣腸剤・坐薬(ケンエーG 浣腸、テレミンソフト坐薬) 直腸を局所的に刺激して排便反射を誘発する、潤滑液としても働く。 刺激 腸管 滑りを良くする 刺激 ★<服用後どのくらいで効果が現れるか?> 個人差はあるものの、上記の当院採用の内服薬ではほぼ半日くらいといわれていま す。浣腸薬では 3 分位、坐薬では 5~60 分位と言われています。 市販薬のコーラックも含め、刺激性下剤を乱用すると、耐性の増大のため効果が減 弱し薬剤なしでは便通が得られなくなる恐れもあります。また、長期使用はこの下 剤の依存症を引き起こし、大腸がその働きを下剤に依存する腸弛緩症候群を起こし ます。したがって刺激性下剤による便秘の治療は短期間にとどめておくべきです。 参考文献 今日の治療指針 2003、薬剤師のための服薬指導ガイド メルクマニュアル医学百科 上尾中央総合病院 医薬品情報室(文責) TEL 048-773-1219(直通) 作成日:平成 20 年 8 月 26 日
© Copyright 2024 Paperzz