地震破壊の模擬実験, 担当教官 (亀伸樹, 中谷正生), 定員: 1-2名

地震破壊の模擬実験, 担当教官 (亀伸樹, 中谷正生), 定員: 1-2名
Location: 地震研2号館
概要
断層面上のすべりが動的に拡大していくのが地震である。その動力学とは、断層周辺の弾性体にたまっていた静的
歪みエネルギーが、連続体の運動方程式にしたがって運動エネルギーに転嫁していくものであり、そのバランスか
ら決定される滑り領域先端の拡大速度が主要な出力である。文献 (Scholz, The Mechanics of Earthquakes
and faulting, Chap. 4: Mechanics of earthquakes, and a few papers referenced therein. Aki and
Richards, Qauntatitative Seismology, Chap. 11: The Seismic Source: Dynamics) でこの力学的メカ
ニズムを学んだのち、模擬断層上で自発的に破壊が拡大していく系の実験をおこない, 理論と観測を比較する。で
きれば, 応力分布や摩擦強度をわざと不均質にして地震破壊の拡大速度をとちゅうで減速・加速させてみたい。
図1. 昨年度の履修者による実験装置の設計図の一部
t = 20 s
ビデオカメラ
5 cm
t = 27 s
寒天板
5 cm
図3. 一定載荷のもとで自発的に成長するクラック
図2. 昨年度の履修者によって製作された破壊実験装置. 透明な物質(寒天)
(図の中央に黒くみえる横長の切れ目). 光弾性に
を実験試料として用い, 破壊域周辺の応力集中を光弾性(透過する光の偏光
よって応力の高まっている部分が明くみえている.
度が歪みに依存する)という手法で可視化することに成功,破壊の拡大と, そ
クッラク先端の応力集中は, クラックの長さに正
れを駆動する応力集中場をムービー撮影することに成功した. 今年度の履
の依存をもち, それによるポジティブフィードバッ
修者は必要に応じて, これを改造する.
クが 地震のような高速の破壊伝播を引きおこす.
地震破壊の模擬実験ビラ (裏面)
図4. ムービー画像の解析からえられた,クラック成長の様子. 載荷は334グラム重で一定であるが,クラックが成長す
るにつれて, 破壊拡大のスピードが増加している.
図5. 図4の結果を応力拡大係数 K (遠方荷重の1乗, クラック長さの0. 5乗に比例) と破壊拡大速度 Vrの関係としてと
らえてみた. 応力拡大係数がもっと大きい完全な動的破壊では, 破壊拡大速度は, レーリー波速度程度の一定値とな
るが, この実験はでは, Kに強く依存しており, これは, 自発的に拡がりはするが, それが, 応力腐食とよばれるクラッ
ク先端での化学反応で律速されるサブクリティカルクラック成長とよばれるものであったことを示唆している. 今年
は, なんとかして, 本当に動的な破壊をおこしたい.