OICE Discussion Paper Series (ODP) MIN-04 中国の人口政策 稲葉 充彦 1.はじめに 前回のレポートで中国の人口規模とその変動について紹介した。その中で、1949 年から解放後の 54 年間に 中国の人口は大きな変動をともなった。この 54 年間にどのような人口抑制政策がとられたのだろう。本レポ ートでは中国政府の人口抑制政策について詳しく展望する。 2.一人っ子政策 (1)導入 1970 年代まで実質的に人口抑制政策をとらなかった。とくに 50 年代以降の一時期には出産増加政策さえ採 ったことがあった。しかし、70 年代以降、人口が急激に増加したため、人口政策は厳しさを増してきた。晩 婚と計画出産が奨励され、78 年に制定された新憲法では計画出産という方針が明確に示された。翌 79 年には、 夫婦 1 組について子供一人がもっとも望ましく、多くても 2 人とし出生間隔は 3 年以上おくことが提起され、 いわゆる一人っ子政策がはじまった。(羅 2005,P95) (2)内容 一人っ子政策を厳格に実行するために、中央政府は各地方や職場の指導者に計画生産責任制を負わせた。具 体的には奨励と懲罰というアメとムチの政策を各地で実行した。 奨励政策としては、たとえば、両親が第1子をもうけたあとに避妊手術をして第2子を産まないことを宣言 すると一人っ子証書を与え、奨励金、医療・幼稚園・小学校入学への補助金などの優遇措置を与えた。計画を 無視して勝手に出産すると、両親には賃金のカットや罰金などが課せられ、ときには懲戒免職処分となった。 (羅 2005,P95) 3.一人っ子政策の問題点 (1)出生性比 まず、出生性比(女子出生 100 人に対する男子出生数の比率)のゆがみがある。人為的な出生抑制が行わ れないときの性比 106 前後に対して、実際の出生性比は急上昇した。すなわち 1981 年の 107.5 から 89 年 の 111.9 を経て、99 年には 116 というきわめて高い水準に上昇したのである。出生性比のゆがみは将来花嫁 不足という深刻な問題を引き起こしかねない。(羅 2005,P96) (2)闇っ子問題 次に闇っ子問題がある。計画外の出産に対する処罰から逃れるために、子供を戸籍地と違う場所で産んだり、 産んでも戸籍登録をしなかったりすることが多くみられる。このような戸籍を登録してない子供が闇っ子と呼 ばれる。戸籍をもっていないために、闇っ子は就学、医療、就職などの面で多くの問題を抱えている。(羅 2005,P96) (3)高齢化 さらに一人っ子政策の必然的な結果として、高齢化が急速に進んでいる。高齢化率(65 歳以上人口が全人 口に占める割合)は年少人口の減少によって急上昇している。(羅 2005,P96) 1 Copyright Reserved, OICE, 2009 OICE Discussion Paper Series (ODP) MIN-04 4.おわりに 中国政府の人口抑制政策として「一人っ子政策」があることがわかった。この政策は、確かに人口は 減るかもしれないが、3 で述べたような問題点が多々ある。しかしこの人口抑制政策をやめれば、また人 口は増えるかもしれない。中国にとって、人口問題は今後も長年にわたってかかわってくる問題だろう。 <参考文献リスト> 羅歓鎮(2005) 「第 6 章失業率は本当に低いのか」南亮近・牧野文天『中国経済入門(第 2 版) 』日本評論社 2 Copyright Reserved, OICE, 2009
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